その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
まあ……楽しいから良いんですけども()
「……付いたわね」
長い滑空時間の後、私……八重樫雫はようやく地に足を付けた。
「早速……行くか」
人が通った跡を辿って私は移動を開始する。無論、縮地でだ。
こうして奈落の底へ落ちるのは元から計画済みだった。こうでもしなければ私の気はさらに狂ってしまう。だから……仕方なかった。
たまに現れる魔物を容赦なく斬り捨てて私はひたすら走り続ける。疲れなど気にしてはいられない。魔力の回復だって走りながらでも可能だ。
それよこれも、また音也に会うため。ただそれだけのため。
この日まで、よく光輝たちを斬り捨てなかったと思う。何度も音也は死んだと言われて私の心はズタズタだった。だから私は考えを改めたのだ。邪魔者は全て消していくと。
もしかしたらヤンデレみたいかもしれない。だけど仕方のないことだった。私はもう、音也の支えなしでは生きていけない。
私の深層心理を完璧に理解しているのは音也だけだ。香織ですら全てを把握はしていない。把握していれば無条件に頼ったりなど……。
「邪魔」
「ピイッ?!」
「グギャッ?!」
下への階段を見つけては下り、また走り出す。人が通った跡がある限り、音也は生きている。
下っては走る。下っては走る。疲れが感じなくなってからもひたすら下っては走る。
疲れすぎて幻聴が聞こえ始めたのか、音也の弾くヴァイオリンの音色を聴き取る。一体何階層下ったのか既に分からないが、少なくとも一階層15分ぐらいのペースだ。必要最低限の魔物だけを斬り捨て、ひたすらに人が通った跡を追う。
「おと、やぁ……!」
唯一にして絶対の心の拠り所。私が人生で初めて心から愛したいと思った男。どこまでも優しくて魅力的な人間。私のことを一番分かってくれた人。
「おとやぁ……おと、や……!」
一種の呪文なのだろうか。こんな姿を見られたら引かれてしまうだろうか? 否、大丈夫。音也ならきっと受け入れてくれる。
幻聴として聴こえてくる音也のヴァイオリンの音色はより一層、大きく美しく響き渡る。これはヴィヴァルディの「四季」だろうか。音也はよく私の目の前で弾いてくれたっけ。
よく私のお願いも聞いてくれた。一見無茶に思えるお願いだって彼は快諾してくれた。
ああ、早く会いたい。そのためにも……。
「貴方たちは……消えろ!」
「ギギッ?!」
「ゴギャアア!!」
「ピギッ……」
「キシュア!!!」
目の前に現れた障害は斬り捨てるのみ。この手がいくら汚れてしまおうと、音也にもう一度会えるのならそれでも良い。
走って抜いて斬って下ってまた走って。何度も繰り返していくうちに階段を下った回数も37で数えるのを止めた。
いくら下へ行けば行くほど魔物が強力になったところでこの思いには勝てるわけがないのだ。完全に作業である。ただひたすら走って抜いて斬って下って……。
「ハァ……ハァ……」
ヴァイオリンの音色が確かなモノとして聞こえ始める。あれは……幻聴なんかではない!
それなら……音也はきっと近くにいる!!
「音也……!!!」
きっと、もうすぐ会える。何時もと変わらない笑顔を見せてくれる。私のことを優しく抱きしめてくれる。
もしかしたら南雲くんだっているかもしれない。二人とも生きていたのなら……私はきっと嬉しくて泣き出してしまうだろう。いつの日か香織に良い知らせを持ってくことだって出来るかもしれない。
「四季」は既に「冬」の第三楽章。切ない音色がまるで私の心のよう。今すぐにでも抱きしめるために飛び込んでしまいたい私の心を……表してるようだ!
「もう少し……音也、待ってて!」
私はより一層速く脚を動かし、辻斬りのように魔物を斬り捨てながら前へ前へと突き進むのだった……。
明日は一応仕事があるので出せても一話……なはず。いや、二話出せるかもです()
そこまで期待はせずに待っててください()
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)