その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
第一楽章 ライセン大渓谷
「いつまで続くんだこれ」
「さあ?」
……魔法陣を起動させた先に見えた物。それは洞窟だった。無条件に魔法陣を起動させたら外だと思ってたのでガックシきたのだが無理やり心を持ち直して歩き続けてるのである。
途中、様々なトラップや仕掛けがあるがハジメが予め回収していた攻略の証であるオルクスの指輪のおかげでスルスルと進めてるのは良いが。
「あら……? 音也、あれって光じゃないの?」
「……ホントだ」
「……ん!」
「あ、こらユエ、走るんじゃねえ! ってハジメも雫も……だあああ!」
「……お前もたいへんだな」
光を見て走り出した三人を追いかける。かくいう俺も頬が緩んでいるのは内緒だ。だって嬉しいんだもの。数ヶ月とはいえ光を見なかったのは……やっぱり寂しいものだ。結局俺も走ることとなったのであっという間に光の元へ辿り着いた。
ここ数ヶ月吸ってなかっただけでも……もの凄く旨く感じるのはきっと間違いではない。
「……帰ってきたのか」
「ああ……」
周りは断崖絶壁に囲まれ、魔力が拡散していくような感覚こそあるものの……ここは確かに地上だった。オスカーの日記に今俺たちのいる場所を【ライセン大峡谷】と呼んでいた。どうもここは地獄の処刑場として古代より有名らしい。
だが。それでも、だ。俺たちは……確かに太陽の光を浴びて地上に立っている。
「……よっしゃぁああ!! 戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」」
「うおっ?! 音也……珍しいな」
「なんだよ。嬉しいじゃねえか」
「ま、それもそうか。確かに戻ってきた。戻って……来たぞぉおおお!!!」
「んっ──!!」
「ほらほら、そこは石があるわよ」
「落ち着け。嬉しいのは分かった」
雫とキバットに止められなかったら間違いなく30分はひたすら笑って叫んで辺りをゴロゴロしたに違いない。それぐらいに嬉しかったのだ。
とはいえここは処刑場。魔法が使えないというのに魔物がわんさか出てくるらしく、俺たちの周りにも例外なく魔物が囲んでいた。
「……あれ?」
「どした雫」
「随分と気配が弱く感じてね……」
「察した。まあこんぐらいなら変身しなくても何とかなるだろうな」
そう言いながら……俺はごく自然の動作で、息を吐いたら吸うかのようにレールボウガンモードとなっているファンガイアバスターモドキを取り出して即座に引き金を引いた。
パンッ! という軽い音がした次の瞬間には囲っていた魔物の脳骸がビチャビチャと地上に撒き散らされる。
今、何が起きた? という間抜けな表情をする魔物を軽く睥睨する。ハジメもいつの間にか近接銃術である「ガン=カタ」の体勢をとっていた。最早この場にいる魔物が生き延びる方法は存在しない。
「さて……覚悟はできているか?」
「「俺たちはできている!」」
パンッ! ドパンッ!
そこから始まるのはもはや戦いではなく蹂躙。魔物達は、ただの一匹すら逃げることも叶わず、まるでそうあることが当然の如く頭部を吹き飛ばされ骸を晒していく。全滅までに三分もかからなかった。
「……よっわ」
「だな」
「でしょ?」
「……二人が化け物」
「「ひでえ」」
息もピッタリ。ベストパートナーだ。
とはいえ弱かったのは事実。ライセン大渓谷といえばこの世界に存在している七つの大迷宮のうちの一つである【ライセン大迷宮】が存在してるはずなのだが……こんだけ弱いんじゃこの大渓谷自体が迷宮というわけではなさそうだ。
ちなみにライセン大渓谷はひたすら西へ行けば【グリューエン大砂漠】に、東へ行けば【ハルツィナ樹海】へと辿り着く。流石に砂漠をいきなり横断するのもあれなので俺は皆にその旨を話して樹海へ行くことを決めた。
「イクサリオンでいいよな……そういえばバイクは三人乗りOKだったか?」
「ここに法律もクソもないだろ」
「おっふ……」
とりあえずユエを前に、雫を後ろに乗せて俺は真ん中に跨がる。美女サンドイッチ具材はヴァイオリニスト。見上げてくるユエと雫の柔らかい何かのせいで俺のメンタルヘルスはもの凄い勢いで削られているがはたして何時まで耐えられるだろうか。
なにはともあれ俺とハジメはバイクに魔力を流し込んでその場から走り出した。
流石にエンジンの構造云々は再現出来なかったので非常に静かな音でバイクが疾駆する。ちなみに車輪にはハジメが錬成効果を付与した鉱石を使っているので地面を自動錬成して平らにしてくれる。乗ってる側としてはとても居心地が良い。
ライセン大峡谷は基本的に東西に真っ直ぐ伸びた断崖である。そのため脇道などはほとんどなく道なりに進めば迷うことなく樹海に到着する。
魔力が拡散していくのでそこまで長時間バイクは使えないだろうが仮に使えなくとも歩きでなんとかなる。ぶっちゃけ出くわす魔物は大したことないし。
そんなことをボンヤリと考えながらも疾駆することおよそ30分。途中途中ですっかり存在を忘れていた露葉さんの贈り物である腕時計で時間を確認しつつもほぼノーストップで俺たちは大渓谷を走っていた……のだが、ふと気になることがあったので立ち止まることとなった。
その気になることってえのは……。
「グルガアアアアアアア!!!」
「ひいい! お助けを~!!」
……わりかし強そうに見える双頭のティラノサウルスモドキとその下をぴょんぴょこ逃げ回るウサ耳少女が見えたのである。とりあえずイクサリオンにブレーキをかけて停止。胡乱な瞳で命懸けの追いかけっこをしている二名を見やる。
「何だあれ」
「ウサギさん?」
「ぶふっ」
「なあキバット。兎人族ってわざわざこの大渓谷に出てくるのか?」
「いや……兎人族は森の奥でなるべく人間に見つからないように暮らしていたはずだ。あいつら限定ではないが亜人族は奴隷として人気だからな」
「奴隷、ね……まああっても仕方ないか」
「ん……あの兎人族は悪ウサギ?」
「どうだろうなあ……あと雫。首締めるの止めてくれねえか?」
助ける気は今のところゼロなので呑気におしゃべりをする。まあ念の為にイクサベルトを巻いてイクサナックルを手にしておく。
するとウサ耳少女が俺たちのことを見つけたらしい。猛然とこちらへダッシュしてくる。
「だずげでぐだざ~い! ひっ──、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」
「グガアア!!」
「……どうするの?」
「ハジメ。あいつの保護頼む」
「助けるのか?」
「いや……なんかティラノモドキが殺意向けてきてるからぶっ殺そうかと」
「なるほどな。とりあえず分かった」
「ついでにユエと雫にも手伝ってもらってあいつの事情を聞いといてくれや。んじゃ」
イクサリオンから降りて地面を蹴り飛ばす。そして……何時ものように変身プロセスを取った。
『レ・ディ・ー』
「変身」
『フィ・ス・ト・オ・ン』
そろそろ一日一話ペースにしようかなあ……明日からちょっと忙しくなるのでペース落ちるかもです
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)