その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
「んで? 事情ってどんなよ」
「は、はい……実はですね」
要約するとこんな感じだ。
曰く、兎人族はハルツィナ樹海でひっそりと暮らしていたらしい。そんでシアはハウリア族というところに生まれたそうな。なんか他にもハーズだとかコニギョとかいるらしいが……まあシアはハウリアってとこの生まれらしい。ほら、日本でも関東と関西じゃ性格そのものが違うだろ? そんな感じだ。
ハウリア族含めて兎人族たちは総じて温厚であり、また争い事も苦手だという。
「……そんな中、私が生まれたんです。私は亜人族には持ち得ない魔力を所持して生まれました。それに兎人族は普通濃淡色の髪をしてるんですけど、私は青みがかった白です。さらには未来視なんていう固有魔法も使えますし、魔力を直接操る術も生まれながら知っていました」
「ほう……イレギュラーなんだな」
「いくら情の深い兎人族でも魔物と同じ特性を持っているのなら迫害します。それぐらいに魔物は忌み嫌っているんです」
しかしハウリア族は見捨てなかったのだ。忌み子とも呼ばれる存在だったシアのことを同じ兎人族からも隠して十六年もの間ひっそりと育てていたそうだ。
仮に育てていることがバレれば【フェアルゲン】という樹海深部に存在する亜人族の国に存在がバレれば一族まとめて処刑される。さぞかし窮屈だったのだろう。
しかし……。
「……つい先日、見つかってしまったんです」
「へえ……」
「私たちハウリアは追っ手が来る前に逃げ出しました。とりあえず北の山脈地帯に逃げ込んで山の幸を使って暮らそうとしたんですが……」
その目論見は早々、粉々に打ち砕かれたらしい。どうも道中で奴隷売買が盛んな【帝国】の兵に見つかったという。
帝国兵は目の色変えてハウリアを追いかけ回した。ハウリアの男たちが足止めしようとしたが、争い事が嫌いなハウリアたちが訓練された兵士に敵うわけがない。
始めは百人規模だったハウリア族も今では半数以下に減ってしまったとか。
「逃げるためにライセン大渓谷に来たんですけど……ここでも魔物に追いかけ回されて一族の数は減っていくだけなんです。北の山脈側に行ける出入口は帝国兵が見張っていて脱出も不可能なんです」
「ハジメ……これってあれか?」
「チェックメイト?」
「分かってるな」
「あの……このままだと一族全滅なんです! 私、ずっと迷惑かけてきたのに何もできないのは悔しくて!!」
「「……」」
「音也……どうするの?」
「……私たちは音也について行く」
「ハジメは?」
「……条件付けても良いか?」
「条件ですか?」
「俺たちは樹海の探索をしようと思っていたところだ。家族を助けることが出来たら……樹海を案内してもらいたい」
「へ……?」
「いや、へ? じゃねえよ。樹海を案内すると約束すれば命は助かるんだぞ」
「いえ……そんなことで良いんですか?」
「なんだ。何を要求すると思ったんだ?」
「私の初めてを奪われるものか『取り消しても良いんだが?』いえそんなことはないです! このシア・ハウリア、喜んで案内させて頂きます!!」
助けて貰えると分かって豹変したシアを見て、俺たち三人は殆ど同じ感想を抱いた。
「……残念ウサギだ」
「残念ウサギね」
「ん……残念ウサギ」
「ねえ音也。貴方はあのウサギさ……シアに何か思うところはあるの?」
「ない。どうでも良いがハジメが助けるってなら俺も手助けはするさ」
あまり関わりたくはないし大切な人以外本当は興味ない。あくまでもハジメが助けたいと言ったから助けるだけなのだ。それ以上もそれ以下も……ない。
「あ、こら! 俺の服で鼻水拭うんじゃねえよ!!」
「ずびばぜ~ん……なみだがどまらないんでず~」
「……なんかお荷物が増えたわね」
「お前、少しはオブラートに包めよ」
「私は音也がいるなら誰が来ても良いけどね。奪われそうなら……」
「ん……私も」
「……黙ってたがお前も大変なのだな」
「少しは手助けしてくれよコウモリモドキ」
……ウサ耳少女のシア・ハウリア。確かに美人だけどどこか残念なところがある少女を保護し、俺たちはシアの家族がいる場所までバイクで急行するのだった。
────────────────
「もう直ぐ皆がいる場所です! あの魔物の声……ち、近いです! 」
「だああ……耳元で叫ぶな! 音也、イクサ貸せ!」
「はいよ!」
併走してベルトとナックルを投げ渡す。ハンマーは……大丈夫か。
ここからそう遠くない場所では確かに魔物の叫び声と人の悲鳴が響き渡っている。心の音楽も悲壮な物でとても聴いてられない。
「掴まってろよ残念ウサギ!」
「え、ちょ、きゃああああああ!!!」
「変身っ!!」
『フィ・ス・ト・オ・ン』
何気に初めてみるバイクでの走行中での変身。普通に変身出来るのは良かったが座った状態のイクサスーツがハジメの目の前に出てくるのはなんとも言えない気分になる。
いやまあ……本編でもその人のポーズに合わせて出てきたけどさ。そこまで再現する母さんってマジで何者なんだろう。
「行くぞゴラァ!!」
「ちょちょちょ?! お空飛んでる?!」
「おお……錬成で坂を作ってそのまま飛び出しやがった」
映画なんかではよく見るバイクで飛び出しを素でやってのけるところに軽く尊敬の念を抱く。そんな間にもハジメはナックルから衝撃波を飛ばして空に浮いていたワイバーンのような魔物を牽制している。
今更かもしれないが衝撃波は空気を圧縮したものだ。遠距離には向かない。
『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』
「デイヤアアア!!!」
すれ違いざまにワイバーンモドキにイクサナックルを叩き付けているのを確認した俺は、地上で呆然とその様子を見上げているハウリアたちの元へと急行した。
「雫、ユエ。あいつらの保護と障壁展開を頼んだ」
「……音也は?」
「雑魚を片付ける」
発達した耳は遠くから襲撃しようとする魔物を正確に捉えていたのだ。
とりあえず対物ライフルを手にして構える。目は閉じ、呼吸を潜め……そこだ!
「……! 雫、ユエ! 頭を下げろ!!」
「「っ!!」」
ドガアアン!!!
二人の頭の上を対物ライフルが発射した弾丸が通り抜けていく。ちなみに実弾だ。戦車砲を対物ライフルにしたようにも見えるのだが気にしたら負けだろう。
発射された一条の閃光は常人では僅かにも認識できない距離にいた無粋な襲撃者の左目を狙い違わず……撃ち抜いた。
「……よし、死んだな」
銃口から上がる煙をフッと吹く。さらにワイバーンモドキを殲滅したハジメの乗ったバイクが俺の横に止まった。
風圧で俺の髪が巻き上がり、義眼が現れる。それを見たハウリアたちは……。
「「「「「「「ば、化物?!」」」」」」」
あまり体が丈夫ではないのでとにかく不定期です。が、なるべく一日一話、最悪二日に一話は投稿しますのでよろしくお願いします
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)