その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
「おいこら、なんだよ化物って」
髪型が崩れて義眼がバッチリ見えてることに気がつかずにハウリアたちに近寄る。それに合わせて一歩向こうは後退るのだから余計イライラする。
「音也、落ち着きなさいな」
「義眼が見えてるぞ」
「は? ……ホントだ」
雫とキバットに言われたことでようやく気がつく。
「やれやれ……音也も結構アホらしいとこあるんだな」
「ハジメが言うのかい……それならお前もイクサの変身解けよ。魔物を見る目されてるぞ」
「……忘れてた」
俺もハジメも変心したとはいえ根元の部分は変わりきらないらしい。
とりあえず俺は義眼を隠し、ハジメが変身を解いたことでようやくマトモに話を聞いて貰えることになった。まあシアに丸投げしたけど。
「まずは……皆様のお名前を教えて頂けますかな?」
「音也だ」
「ハジメ」
「雫よ」
「……ユエ」
「俺は……まあ何とでも呼べ。一応キバットっていう名前はあるがな」
「……なるほど。それでは音也殿、ハジメ殿。先ほどのご無礼、誠に申し訳ございません」
「なあに気にするな」
「事情はシアから聞きました。私はカム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。なんでも命を守って頂ける代わりに樹海の案内を……とのことでしたな?」
「だな」
「お任せください。シアが信頼しているのであれば我々も貴方方を信頼いたしますよ」
「チョロい……」
思わず零す。さらにハジメが思わずといった様子でツッコんだ。
「おいおい、いくらなんでも簡単に信頼しすぎじゃないか?」
「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから……」
「情が深いのは知っていたがここまでとは……」
「ふん……昔から変わらないのだな」
「なんだ、コウモリモドキは知ってたのか」
「……キバットは物知り」
「俺はキングやクイーンと制圧に出ることも多かったのでな。種族の特性はある程度理解している」
昔から兎人族はこういった具合で家族の誰かが信頼したのなら他の兎人も信頼していたそうな。その性格故に奴隷売買へ売り出された者も他の亜人族より多いらしい。
こいつらハウリアのことは正直どうでも良い。しかし奴隷と来ては流石に心中が穏やかではなくなる。
「……種族が違うだけで差別して奴隷にするのか、人間は」
「今に始まったことか?」
「……いや、元の世界でもか」
「そうね。どの世界でも人間は愚かなのよ……」
「お前たちは人間じゃなかったか?」
雫とハジメも思うところがあったらしいがキバットに止められた。言われてみれば俺たちも一応人間である。
「まあいいや。帝国兵はまだいるだろうが……」
「え、えっと音也さん」
「あん?」
「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……どうするんですか?」
「どうするって……邪魔するなら殺すだけだろ。今回のことは基本的にハジメがどうするか決めるけどな」
「まあ俺も同じ意見さ。邪魔するなら殺す。それだけだ」
「こ、殺す……ですか」
「同じ人間だろうが関係ないさ。邪魔するなら殺す……っと」
ドパンッ!
「へ?」
「いやそのウサ耳は何のためにあるんだ? 魔物がいたじゃねえか」
ハジメがシアの後ろから襲撃しようとした魔物を撃ち抜いた。まあ気がつかないのも仕方ない。その魔物はまだ数キロは先にいるのだから。
しかも奈落の底の魔物のように気配遮断を使えていたし。
「ま、何時までもここに留まるわけにもいかないしな。行くか」
雫と手を繋ぎユエを背中に乗せ、キバットは右肩に乗せて俺は先行して歩き出した。その後ろをハジメたちがゾロゾロと付いてくる。
なんか子供がキラキラした目で見てくるのが何とも言えない。流石に無辜にはできないぐらいの心は持ち合わせてるのを今ほど恨んだこともないだろう。
「はあ……」
「音也……大丈夫? 私の胸揉む?」
「ぶふっ」
「……雫、抜け駆け」
「何よ。貴女は引っ付いてるじゃない」
「ねえお兄ちゃん」
「あんだよ……」
「女の子のお胸を揉んだらお兄ちゃんも元気になるの?」
純真無垢な瞳で質問してくる小学六年生ぐらいのウサ耳少女。俺は思わず雫たちを睨んでから答える。
「そんなわけないだろ。良いか、二度と他の人にこんなことを言ったらダメだからな」
「ええ……それならどうやったらお兄ちゃんは元気になるの?」
「その事をまだ知る必要はない。良いな。これ以上はなしだ」
「うーん……」
「コウモリモドキ、助けてくれや」
「無理だ。元はと言えばお前が二人を同時に愛するなんて言ったのが悪い」
「ごもっとも」
一行は相変わらずゾロゾロと進む。たまに出てくる魔物は俺かハジメが蹴散らすので損害は当然ゼロだ。
やがて俺たちは遂にライセン大峡谷から脱出できる場所にたどり着いた。どうも崖に人工的に作られた階段を登れば良いらしい。
特に立ち止まることもなく俺たちは階段を登り切った。目の前には……。
「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」
三十人の帝国兵がたむろしていた。どいつもこいつもフランスも下卑た音楽を垂れ流していやがる。
「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」
「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」
シアがハジメの後ろに隠れる。そこでようやく、俺たち普通の人間が存在したことに気がついたらしい。
「ん? お前たちは……人間だよな」
「いかにも」
「はぁ~? なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から」
「少なくともお前らよりはマトモな理由だな」
「……ふん。まあ良いか。大方奴隷商だろう? そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」
「断る」
「……なんだと?」
「耳くそ詰まってるのか? 断ると言ったんだ」
取り付く島もないといった具合で丁重にお断りする。今にも掴みかかりそうな顔をした小隊長だが……背中のユエと左隣の雫を見て目の色を変えた。
「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇが唯の世間知らず糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんたちはえらい別嬪じゃねぇか。てめぇの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ」
「……ユエ、降りろ」
「…………ん」
「音也……?」
「下がれ」
表情をストンと落とす。風で前髪が崩れ、義眼が露わになった。
こいつは触れてはならない物に触れた。
俺の愛する二人を奪おうと宣言した。
「コウモリモドキ」
「……良かろう。有り難く思え。絶滅タイムだ!」
化物のような威圧感を隠しもせずに俺は目の前にいる敵を睨みつける。
「……絶滅せよ」
ガブリ、とキバットが俺の右手にかぶりつき、腰に鎖が巻き付いた‥‥と思えば止まり木のようなベルトへと変形する。さらに顔にはステンドグラスのような模様が浮かび上がった。その模様はまるで、裏に隠していた怒りのよう。
「……変身。ザンバット、来い」
造作もなくザンバットソードを召喚する。この世界にキャッスルドランが存在するのならば……キバの鎧を着こなしている限りは使えるはずだ。
「…………」
期待通りにザンバットソードが召喚されたので、パシッと柄を握る。さらには巨大なキバの紋章を兵士たちの足下に忍ばせて……拘束した。
「な、なにをっ?!」
「言っただろう……絶滅せよと」
イクサハンマーフエッスルを作った工程で生み出された擬似フエッスルを取り出す。
名は単純に「ザンバットフエッスル」だ。
「……行くぞ」
「ウェイクアップ・ザンバット」
キバットの宣言と同時に周囲が皆既月食の夜のような空間に包まれる。さらに数えきることなど到底できない量のザンバットソードが空間内に出現した。
逃げようとする帝国兵。しかしキバの紋章から逃げ出すことなど不可能だ。なんせあのヒュドラですら抜け出せなかったのだから……。
「た、助けてくれ! 俺が悪かった! 帝国のことならなんでも話すから命だけは──」
「遅い。何もかも……」
命乞いなど聞いてはいない。俺の耳には何も聞こえない。俺が見ているのは心の中の殺意のみ。
その殺意を俺は迷わずに空中に浮いているザンバットソードたちに送った。するとザンバットソードたちは……まるで自分の意思を持ったかのように動き出す。
さあ……始まるぞ。
絶望に染め上げられた絶滅の時間だ。
察しのよい人ならなんの技か分かるはず…()
それと感想のページが何気に四ページ超えてたんですね…感想をいただけるとモチベが右肩上がりですので良かったらお願いします()
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)