その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
「た、頼む! 殺さないでくれ! な、何でもするから! 頼む!」
「…………」
一人を残して無数のザンバットに滅多刺しにされて死に絶えた帝国兵たち。正しくこの場は地獄だ。希望などあるはずもなく、ただただ絶望だけが支配する。そんな場だ。
「今、何でもすると言ったな?」
「へ?」
「何でもすると言ったんだな?」
「あ、ああ! 何でもする!」
「ならば質問だ。他に捕まえた兎人族はどうしたんだ? 全員帝国に移送したのか?」
「は、話せば殺さないのか?」
「お前自身が条件を付けられる状況にあるわけがないだろう。話せないのなら今すぐ殺す」
紋章を生き残った帝国兵の背中側に回して引っ捕らえる。そのまま移動させて俺の足下に持ってきた。
「ぐああああ!? わ、分かった! 話す! 話すから!!」
「とっとと吐け」
「た、確か移送したと思う……人数は絞ったから……」
「人数を……絞った?」
「ど、奴隷として売れない兎人族は……俺たちがこの手で処分したんだ。当たり前だろ? 売り物なんだからな」
「…………」
その言葉に悲痛そうな面持ちになるハウリアたち。言動から察するに役に立たないと判断した老人や男は殺害済みなのだろう。
逆に考えれば、需要のある若い者や特に女はとっくに移送して売りに出されたということだ。
「一つ問おう」
「な、なんだ?」
「なぜ、亜人族を差別する?」
「それは……他種族だからだ」
「……それだけか?」
「あ、ああ。亜人族は人間様よりも下位の存在だろ? 人間に良いように扱われて当然なんだ」
悪びれもせずに答える帝国兵。この世界で亜人族は人間より下位の存在であり、辱めたり虐めたりするのが常識なのだろう。
どこまでも下らない。
「…………」
「か……は……はな、せぇ!」
「死ね」
「待て! 待ってくれ! 他にも何でも話すから! 帝国のでも何でも! だから!」
問答無用。俺は帝国兵の首を掴んで持ち上げるとエネルギーを爆発させた。
ダンダンダンダンダンダンダンダン!!
連続した爆発音が響き渡る。エネルギーの爆発は帝国兵の全身隈無く伝わり、四肢や内臓を辺りにぶちまけながら四散していった。
「ふん……」
変身を解除する。俺の心には風のない湖の水面のように何の揺らぎもない。とりあえず死体は邪魔でしかないので一つ一つ谷底へ投げ捨てた。
「あ、あの……音也さん」
「なんだ」
「さっきの……最後に残った人は見逃しても良かったのでは……」
「なぜ?」
「え、だって……もう敵意はなかったですよね? 敵意をなくしたのなら見逃しても良くないですか?」
どうやら亜人族は奴隷にして当然! とほざいた奴にすらも憐憫を垂れるらしい。どこまでも温厚というか平和主義な種族だ。
見れば他のハウリアたちも「そうだよ」といった具合で頷いている。
「悪いな。俺は一度殺すと決めたら必ず殺す。それに今回ばかりは人間のことが嫌いになってしまいそうだ」
とはいえ俺は俺。他所は他所だ。俺は自分の愛する二人を侮辱したから殺しに出たまでであり、それ以上もそれ以下もない。
これは人道に反する行動だ。そんなの重々承知している。
しかし俺は奈落の底で決めたのだ。愛する人や大切な友のことは命を賭けても守ろうと。そのためには努力を惜しまず、自分が傷つくことも人道から離れていくことも躊躇しないと。
もう二度と、自らの力に溺れたが故に誰かを守れなかったということが起きないためにも……。
「……シア、ちょっと良いかしら」
「は、はい。なんでしょ『バチンッ!』いっつ……!? お父様にもぶたれたことないのに!!」
「恥を知りなさい。貴女たちはあくまでも守って貰ってる側。守られてるくせに負の感情を音也にぶつけるのは私が許さない」
「っ!!」
「自ら剣を抜いたのに敵わないと分かった途端に命乞い? 敵意を見せてないから殺さない? 甘いの。それじゃあ甘い」
「あ、甘いって……」
「甘いのよ。砂糖たっぷりのミルクティーぐらいね……」
雫は感情を露わにして怒っている。ユエもまた、不機嫌そうな顔をしている。その理由は大方雫と変わらないのだろう。雫の喩えが少し可愛いのは置いておく。
とはいえ俺はシアが言いたいことも何となく分かる。それにシアたちの中では人道に反するということはあり得ないのだろう。
突然先ほどのように人道から大きく外れた行為を見せられても困惑するだけのはずだ。
「そこまでにしとけ。俺はそんなに気にしてないから……」
「音也……」
「ここでボサッとするのも時間が勿体ない。あの馬車を使って一気に運んでしまおう」
無傷の馬車をイクサリオンにロープで繋ごうとする。
「あ、俺のバイクで良いぞ」
「ハジメ……うし、任せる」
ハジメのバイクに馬車をロープで繋いだ。俺自身は馬車に乗り込む。後から雫とユエが続き、他のハウリアたちもゾロゾロと馬車に乗り込み始めた。
なおシアはハジメの後ろに乗り込んだ。よっぽど気に入ったらしい。ハジメ、ファイトだ。
そんな俺の意思を読み取ったのか、ハジメは苦笑いして二輪を発進させた。
俺はヴァイオリンを取り出す。雑に座った状態どが弾くことなら容易い。ガトゴト揺れたところで音を外すことなどありえん。
「音也……」
「なんだユエ。甘えモードか?」
「ん……」
背中に抱きついてくるユエ。それを見た雫も俺の隣に寄り添ってきた。
後ろにいるハウリアたちが居心地悪そうである。申し訳ねえなあ……なんて思いはしない。
「ねえ音也。なんで一人で帝国兵を殺したの?」
「私も気になる……」
「俺もだな。あの状況は全員で殺害に向かう場面ではなかったか?」
「そのことか……まあ一つはザンバットフエッスルを試してみたかったことだな」
完成させたとはいえ未だに使ったことはなかったのだ。流石に仲間内の訓練でダークキバに変身するのは気が引けるのである。
そしてもう一つ、理由があるのだが……。
「あとは……俺が人殺しに心を揺さぶられないかを試した。結果は特に何も感じなかったけどな」
邪魔者は殺す。その信念は思ってた数倍心には染みついているようだ。結果としては上々であろう。
とりあえず話すことは話したので俺は目を閉じて弓を引く。曲は……キバ本編でも登場したやつだ。「音也のエチュード」とでも言えばお分かり頂けるだろうか。
どことなく哀愁漂うエチュードが馬車内に木霊する。この曲、本編で音也が死亡したときやクイーンが愛した曲だとしてキングの前で演奏したシーンが印象的である。
俺もこの曲は特に力を入れて練習している。今では俺の得意曲として君臨しているし。
♪♪♩~ ♬♪♩♪ ~
……やがて、演奏を終える。何時ものように弾き終わって、俺は一息付いた。
後ろから鼻をすする音が聞こえてくるのはきっと気のせいだろう……。
「……」
「音也……?」
「……寝てる」
「どちらか膝枕してやれ……そのままだと痛いだろうからな」
「「…………」」
「……しまった。爆弾だったか」
「……雫、私がやる」
「何言ってるのよ。私に決まってるじゃない」
「むにゃむにゃ……おれのために……あらそうなぁ……」
「……交代ならどうよ?」
「……それでいい」
「ふたりまとめて……あいし……てやるぅ……」
明日は仕事ですので書けるかどうか……とりあえず頑張ります()
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)