※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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体調が安定しない…しばらく薬とお友達です()
本当に投稿ペースが不安定で申し訳ないです…。


第八楽章 未来は変えられる

それから十日もの間、俺とハジメはイクサの制作に取り組んだ。とは言っても俺は必要最低限の錬成しか出来ないので軽い手伝いしかできない。大まかなところはハジメに丸投げだ。

 

ちなみにユエはシアを、雫はハウリアたちを特訓している。これは俺たちの助けがなくなったら再びピンチに陥るということを話したからである。シアに関してはユエに傷を一つ付けられたら俺たちの旅に同行するという条件付きだが。

 

「ハジメ……どうだぁ?」

「あとは微調整で多分完成だな。お前の所持してるイクサがなかったら完成しなかったぞ……」

「電力を魔力で補ってるんだっけか?」

「だな。バーストモードならば出力は既存のイクサより高いぞ」

「まあ俺は使わんけど」

「そりゃまたどうしてだ?」

「使い慣れたイクサを使いたい」

「ああ……なるほど」

 

ごもっとも、と言いたげなハジメの表情にクスリと笑う。しかしすぐに笑顔を消すと、真面目な顔でハジメに催促をした。

 

「とりあえず装着してみろ。問題なければ量産してハウリアたちに渡してやろうぜ。別れの餞別だ」

「別れの餞別が凄まじくて笑えてくる」

「そう言うなって……あ、コウモリモドキ」

「なんだ?」

「スイカ食べるか?」

「スイカ!?」

「とは言っても迷宮で見つけた魔物が落とした果物なんだがな。酸素を通さない鉱石の中に入れてあるから腐ってないぞ。こいつ、味がスイカなんだよな」

「是非とも頂こう。俺はスイカが大好物なんだ」

スイカモドキを適当なサイズに切り裂いてキバットに渡す。俺自身も手頃なサイズのスイカモドキを口にした。相変わらず美味い。

「なあコウモリモドキ。ウェイクアップ・IIIってあるよな?」

 

俺自身は見たことのない技だ。しかし存在するのであれば、使えるということだけでも知っておきたいのである。

 

「確かにあるが……それがどうかしたか?」

「それってどんな技なんだ?」

「うーむ……言うならば『シャクッ』んぐ、広範囲の大爆発だな」

「規模はどんぐらいだ?」

「国の一つや二つが一撃で消し炭になるぐらいにはデカい規模らしいな。俺の一つ前のキバット……所謂俺の父親はウェイクアップ・IIIを使用してキングもろとも死亡したと伝えられている」

「ブラスト○ーンみたいだな」

「なんだそれは……」

「自爆技だ」

 

ムシャムシャとスイカモドキを頬張りながら答える。なんか前より薄味に感じるのは気のせいだろうか。

 

それと最近妙に鉄分を多めに摂らないと貧血になってしまう。何だろう……。

『レ・ディ・ー』

「変身」

『フィ・ス・ト・オ・ン』

「お、完成したのか」

 

いつもより高めの電子音が聞こえたので思わずハジメの方を振り返る。

 

まあ俺の目にはハジメではなくイクサバーストモードが立っていたがな! 

 

「うむ……良い感じだな」

「旧イクサと比べるとどんな感じだ?」

「自分の魔力が少しずつ吸われていく感覚はあるが前よりも力を出せそうだぞ」

「闇のキバの鎧には?」

「無茶言うな」

「ま、大丈夫そうだな。あとは量産してハウリアに渡せばOKだろ。元のイクサは……どうするか」

「貰ってくか?」

「ダメだろ。大樹の近くに放置してけば誰かしらは気がつくだろうからそれで行くぞ」

 

と、そこまで話したところで俺の耳がハウリアたちやシアがこちらに向かってくる音を捉えた。どうやら雫やユエも一緒みたいだ。

 

なんかシアに関しては走ってきてるみたいなんだが……これはハジメに変身を解くように言うべきなのだろうか。

 

「ハジメさ~ん! 私、やりましたよぉ~!!」

「あん?」

 

ハジメが変身したイクサに飛びつくシア。この様子を見るに……。

 

「ユエ?」

「……不覚」

「あらら……」

「魔法の適性は比較的低かった……でも身体能力に特化している。しかも化物クラス」

「具体的にどんぐらいだ?」

「……強化してない音也の6割ぐらい」

「マジで?」

 

俺の六割となると……だいたいステータス値で6000~7000である。俺たちが大苦戦したヒュドラ程度なら一発で終わらせるぐらいには強いということになる。

 

しかもシアは素手だ。ユエの地獄のような魔法のラッシュを掻い潜って一撃与えられたというのならば……なるほど、化物と評されても別におかしいことではない。

 

「あ、あの……音也さん」

「ん?」

「……約束、覚えてますか?」

「俺たちの旅に連れて行くって話か?」

「は、はい」

「なんで俺に聞くのさ……まあ俺としては正直どっちでもいい」

「そんな雑な……」

「いやな。俺は雫とユエ、そしてハジメのことしか今のところ興味ないんだ。その三人が大切にしたい人ならば俺も全力で守るけどな」

「そ、それって……言い換えればその三人を説得できたなら連れて行って貰えるってことですか?」

「そうとも言える。まあユエは反対しないだろうし雫は……興味すら持たないかもだがな」

 

俺はハジメの方を見やる。いつの間にか変身を解除したハジメは……怪訝そうな顔をしている。

 

「そもそも、だ。お前は何で俺たちの旅に同行しようと思ったんだよ。その強さがあるなら俺たちの助けがなくても余裕で暮らしていけるだろ?」

 

ごもっともなハジメの言葉。ユエの言ったことが本当ならば魔物は余裕で殺せるだろうし人間に捕まることもないはずだ。

 

それなのになぜ、わざわざ危険な旅に同行したいのかが謎である。

 

「そ、それは……その……」

「なんだモジモジして。気持ち悪いぞ」

「んな!? ひ、酷いですよ!」

「喜怒哀楽の激しいこと……」

「ああもう! 何で気がつかないんですか! 私はハジメさんの傍にずっと居たいんですぅ! ハジメのことがしゅきなんですぅ!」

「…………は?」

「噛んだな」

「ん……噛んだ」

 

ユエをあすなろ抱きしながら見つめる。とりあえず同行したい理由は分かった。あんな状況だ。吊り橋効果も相まってハジメのことが好きになるのは無理もないかもしれん。

 

理由がどうであれハウリアを助けようと口にしたのはハジメだ。それに長老たちに食ってかかり、シアたちの処刑を取り消したのもハジメの御蔭である。俺ではない。俺は戦っただけだ。

 

「……いやいや待ってくれよ。お前、何で俺のことを好きになるんだ」

「……理由がどうであれ、私たち一族の命を助けてくれたのはハジメさんです。基本的にツンケンしていて掴み所のない性格してますけど私は時折見せる貴方の優しさに惚れたんですよ」

「は? 優しさ?」

 

奈落の底で変心したハジメ。左腕を失ってでも生きるために、帰るために足掻き続けた男。

 

それでも……深層心理はどうやっても変わらないようである。

 

「いつ優しさなんて見せた……というかな。俺には帰りを待ってくれてる人がいるんだが」

「知っていますよ」

「はあ?」

「私の固有魔法は未来視ですよ? そのぐらいお見通しです」

「それなら尚更聞きたいな。なぜ、俺をわざわざ選ぼうとする」

「心から好きだから、ですよ?」

「……」

「ハジメさんの帰りを待ってくれてる人のことを想っているのは分かっています。それでもこの気持ちに歯止めをかけることなんてもう出来ないんですよ」

「……その想いに応えられるかは分からないぞ」

「知っていますか? 未来は絶対じゃないんですよ。今はそうでも……未来は変わるかもしれないんです」

 

先ほどまでの明るさは微塵も感じさせない、シアの真面目な様子。それを見つめるハジメの顔を見て、俺はハジメがなんて答えを出すのか予報がついた。

 

目を逸らしてユエの頬を存分にムニムニすることに集中する。

 

「危険な旅だ。命が幾つあっても足りないかもしれない」

「化物で良かったですよ。その御蔭で貴方たちに付いていくことが出来ますから」

「俺たちの旅に付いてくるなら家族には二度と会えないかもしれないぞ。それに俺の住んでた世界はお前にとって住みにくい世界だ」

「それでも……ですよ。それだけの覚悟を私はもう決めているんです。何があっても貴方の傍に居ると」

「…………」

 

見つめ合う両者。俺はシアの心から流れる音楽をこっそり聴いてみる。

 

その音楽は……まるで風一つ吹いていない湖の水面のように静かで落ち着く物だった。シアの言葉は嘘偽りない物だ。俺が心配することは何一つない。

 

「……ふふ。それで終わりですか? それなら私の勝ちですね」

「なんの勝敗だよ……」

「私の想いが勝った……ということですよ。……ねえ、ハジメさん」

「……何だ」

「私も……連れて行ってください」

「…………はあ。分かった分かった。降参だ」

「!!」

「好きにしろよ。この物好きめ……」

 

諦めたのか、ハジメが両手を上げて苦笑いする。それを見たシアは……ハジメの胸元に飛び込んだ。

 

「あら……あらあら。くっ付いたのね?」

「雫、お帰り」

「ただいま。後で構ってね?」

「おう。ところでハウリアは?」

「それなんだけど……あ、来たわね」

「ん?」

 

少し歯切れの悪い雫。訝しく思って問い詰めようとしたのだが、どうやらハウリアたちがやって来たらしい。

 

……なんか人を確実に殺したような目をそれぞれがしてるんだけど。

 

「ボス! ノルマ達成しました!!」

「は? ボス?」

「ご苦労様。お供もろとも狩ったのかしら? 私のノルマは各チーム一体の魔物を狩ることだったはずなんだけど……見た感じ数十体は狩ったみたいね?」

 

カムが雫のことを「ボス」と言った。一体どんな教育したんだろうか。

 

こいつら兎人族はとことん争いごとを嫌う種族だったはずなのにこれはおかしい。

 

「生意気にも殺意を向けてきやがったので丁重にお出迎えしてやったんですよ。なぁ? みんな?」

「そうなんですよ、ボス。こいつら魔物の分際で生意気な奴らでした」

「きっちり落とし前はつけましたよ。一体たりとも逃してませんぜ?」

「ウザイ奴らだったけど……いい声で鳴いたわね、ふふ」

 

……思ってた数倍酷かった。俺は思わずユエに被さるような状態で意識をすっ飛ばすのだった。

 




これからプロトイクサの電子音は赤で、現行イクサの電子音は黄色で表現する…つもりです。

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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