その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
ハジメたちと合流した俺たちは、折角なので少しお高い宿に泊まることとした。ご飯もあって風呂もある。防犯もしっかりしてる。値段は少し高いが気にすることはない。
ちなみに受付嬢はオバチャンだったらしい。ハジメはテンプレじゃなくて少しガッカリしたとかなんだとか。
とはいえ最早ガイドブックとも言える地図をハジメが貰ってきたし五十万ルタぐらいもついでに貰ってきたので良しとする。
「いらっしゃいませー、ようこそ〝マサカの宿〟へ! 本日はお泊りですか? それともお食事だけですか?」
宿内に入ると当たり前のように視線が集まるが無視して受付嬢の元へ行く。「まさか」ってのが気になるが……まあいいか。
「宿泊だ。ギルドの受付嬢から貰ったガイドブックでここに来たんだが……あのガイドブックに書いてある通りで良いのか?」
「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」
「一泊だ。食事付きで風呂も頼む。確か十五分百ルタだったな?」
「そうですね。今ならこの時間が空いてますが……」
「それじゃあ……ここからここの二時間」
「に、二時間も!?」
受付の女の子がビックリしているがここは譲れない。俺もれっきとした日本人である。風呂は大好きなのだ。もう一度言おう。ここは譲れない。
「え、え~と、それでお部屋はどうされますか? 二人部屋と三人部屋が空いてますが……」
「それぞれ一つずつ頼む」
「分かりました……」
「ハジメとシアは同室でいいな?」
その声に周囲がザワッとする。恐らく女三人男二人で考えてたのだろうが……残念。俺の女は離れると何しでかすか分からないのだ。
「ほ、本当にいいんですか? それならハジメさんに私の初めてを『ゴチンッ!』はきゅん!?」
「やかましい。あ、部屋の割り振りはそれでいい。そうしないと何しでかすか分からんからな」
「察してくれて助かる。んじゃあ飯まで休むぞ」
「おう」
周囲から飛んでくる嫉妬と羨望の視線を軽くスルーして俺は部屋の鍵を受け取る。そしてそのまま部屋の中へ入った。
んでベッドにダイブ。仰向けに寝転がる。
「……音也の目、やっぱり綺麗」
「そうか? 義眼だから不気味だと思うんだけどなあ……」
「そんなに自分を悲観しないで。私にもそう言ってくれたでしょ?」
「……そんなニュアンスの事は言ったな」
「私たちは貴方がどうであろうと……地獄まで付いていくから」
「重たいなあ……俺ばかり見てると足下が見えないかもしれないだろ?」
「そうさせたのは……」
「……音也」
「そうなのか……?」
俺としては……雫のことは助けたかったから助けただけであり、俺の我が儘でしかない。さらに言えば、俺としては露葉さんを死なせてしまいそうになってしまったことに対しての贖罪でもあるのだ。
それが……こんなにも依存されている。俺の我が儘でこうなってしまったのだ。好意を向けてくれるのは嬉しいが俺の心は痛い。
そしてユエに関しても「助けて」と明確に示されたから助けただけだ。助けてそのままサヨウナラしても良かったのである。
それが今では……こんなだ。俺の我が儘で二人の心をある意味で壊してしまったのである。
俺は微笑みながら覗き込んでくる雫とユエの顔を見て、ほんの少しだけ陰のある笑みを返して眠りにつくのだった。
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一方その頃
「えへへ……ハジメさんと一緒ですぅ」
「飯まで結構時間があるな。新しいアーティファクトの仕上げをしてしまうか……」
ハジメが何やら直径四十センチ長さ五十センチ程の円柱状の物体を取り出した。さらに物体に手を置いて錬成を開始する。
「ハジメさん? それは何ですか?」
「お前の新しい武器だ。流石に素手だとリーチに限界があるからな。中距離ぐらいまでは対応できる武器になる」
「そうなんですねぇ……それにしてもハジメさんのれんせい? を見るのは興味深いですぅ」
かなり近い距離でハジメの手元を見つめるシア。時折ウサミミがツンツンとハジメの頬を叩いており、彼女がとても上機嫌だということがよく分かる。
「そうか? かなり地味だと思うんだが……」
「当然のことですけど兎人族に錬成を扱えるウサギは居ませんからねぇ」
「それもそうか……っと。背中に当たってるぞ」
「当ててるんですよぉ」
「言ったろ。俺には帰りを待つ人がいるって」
「それでもですぅ」
「物好きだなあ……お前も」
「ところでハジメさんの帰りを待っている人と最後に話したのはいつ頃でしたか?」
「ん? そうだな……」
シアの質問にハジメが少し手を休めて考え込む。が、すぐに顔を上げて答えた。その瞳は遠くにある思い出を懐かしむかの如く深い色だ。
「なんだかんだで二ヶ月以上前だな。オルクス大迷宮に行く前の日の夜に俺の部屋で語らったのが最後……だ」
「どんなことを語らったんですか?」
「そんなこと聞いても面白くないだろうに……まあ、色々だな。あの時の俺は弱くて仲間内で無能と呼ばれていたから守って欲しい……とか」
「え、無能!?」
「無能、だ。元々はお前ら兎人族よりもスペックが低かったんだが……生きるために色々としたら化物になっていたんだよ」
「そう……なんですか」
「あの日の夜に話されたんだよな。ずっと、俺のことが好きだったんだよってさ」
ハジメはさらに遠くを見るような瞳をする。あの時は確かに弱くて男としては有り得ない事を頼んでしまった。しかもその約束を破るように自分は奈落の底に落ちてしまった……と、シアに話す。
「チキンでヘタレな俺はあの時……告白されて気が動転したよ。しかもYESともNOとも言えずに保留して……それだけが気がかりだ」
「……ハジメさんも優しいですね。いや、優しいのは今更でしたか」
「後味が悪いだけさ……それだけなんだよ。多分」
「あの……私で良ければなんですけど、少しでもハジメさんの心の傷を癒やせるならお手伝いさせてください」
「シア……」
「そのためにも私の初めてを……」
「なんでその方向に滑るんだ! マジで残念ウサギだなこの野郎!!」
先ほどのシンミリとした雰囲気から一転。一気に賑やかとなる部屋内。本人同士からしたら他愛のない言い合いなのだろうが……傍から見れば俗に言うケンカップルに見えなくもない様子であった。そのことに二人は、特にシアは気がつかずにハジメに「自分の初めてを!」とせがむのだった。
気が向いた時に他の作者様の作品を読んでいます。基本的にありふれ系統ですけど……参考になることもあるので結構良いですよね。
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)