その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
「やほ~、はじめまして~、皆大好きミレディ・ライセンだよぉ~」
凶悪な装備と全身甲冑に身を固めた眼光鋭い巨体ゴーレムからやたらと軽い挨拶をされた。思わず間抜けな声を出してしまう。
が、すぐに気を取り直して挨拶をした。
「ミレディ・ライセンと言ったな? 俺は紅音也だ。オスカー・オルクスの日記には既にミレディ・ライセンは故人だと記されていたが……それにミレディ・ライセンは人間だったはずだぞ。そんなゴーレムではなく」
「オスカー……オーちゃん? もしかしてオルクス大迷宮の攻略者かな?」
「そうだな。俺たちはクソみてえな神とやらに無理やりこの世界に召喚されたんだ。こっちとしては戦争をする気なんてゼロだから大迷宮を全て攻略して元の世界に帰れる力を手に入れようとしてる」
「なるほどねえ……あのクソ野郎に召喚されたんだね」
「解放者はクソ野郎でくそったれな神を殺そうとしたんだよな……そんな口調になるのもしゃあなしか」
心なしか俺の口調も悪くなる。それぐらいに俺たちをこの世界に召喚したクソ野郎な神を恨んでいるのである。身勝手をそのまま文字にしたようなクソ野郎に慈悲はない。
「色々話して欲しいことはあるが……まずはお前を倒した方が良いのか? ここに鎮座していたってことは最後の試練なんだろ?」
「察しが良いねぇ~」
「試練だというのに聞きたいことを先に聞き出すのもどうかと思ってな……コウモリモドキ」
「ガブリッ! 」
「……まずはお前を倒してからだ。その後にゆっくりと話を聞かせて貰うぞ」
「礼儀がなっているねえ……最近の若者でもこんな人がいたんだ」
「減ってるとは思うがな……よし、とりあえずハジメ、シアとユエに雫を連れてあのゴーレム軍団の殲滅を頼む」
「任せろ」
ここはライセン大迷宮。ライセン大渓谷よりも遥かに魔法の分解作用が働いているため闇のキバの鎧を装着できるのは15分少々だろう。
故に手加減をする必要性はゼロだ。最初から全力でいかなければ俺が死ぬ。
なぜか先ほどから宙に浮かんでいる石のブロックの上に飛び乗ってミレディゴーレムを睥睨した。
「その鎧は……そっか。君が継承したんだね。なら手加減はいらないね!」
天井がガタゴト言い始める。嫌な予感がして思わず天を見上げた。天井からパラパラと破片が落ちくるが……いや、破片だけではない。天井そのものが落下しようとしているのだ。
「こいつはっ!?」
「ふふふ、先手必勝だよぉ。騎士以外は同時に複数を操作することは出来ないけど、ただ一斉に〝落とす〟だけなら数百単位でいけるからねぇ~、見事凌いで見せてねぇ~」
「くそ……紋章!」
咄嗟にキバの紋章を作り出して落ちてくる天井にぶつける。この空間の天井はレンガのような岩石が規則正しく敷き詰められてるのだが……それが豪雨のように、しかも俺のいる場所限定で降ってくるとしたらとんでもない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!! ゴバッ!!
「来た……!」
「ウェイクアップ・ザンバット! 」
片手でザンバットフエッスルをキバットに吹かせる。と、同時にザンバットがまるでとあるオールレンジ兵器のような軌道で天井へと向かった。
紋章に落下した岩石の重さに思わず呻き声を上げながらもザンバットを飛ばし続ける。さらに魔皇力を使って〝金剛〟を発動させた。どうやら魔皇力ならば魔力ほど分解されずに済むようだ。
「ぐぅおおおお……!」
「あはは。何時まで耐えられるかなぁ?」
ミレディの神代魔法は恐らく重力関連だ。そうでなければ今紋章に乗っかっている岩石群がここまで重たい訳がない。
何度も何度も岩石を破壊していくが……いくらでも替えはあるのだろう。次から次へと降ってくる。
「こんの……野郎!」
紋章の展開はそのままにザンバットを消し去る。その拍子に発生する爆発を使って走り出す。そのまま俺はミレディゴーレムの目の前まで縮地で走ってきた。
「はは……やるね。あの攻撃を回避するなんて」
「馬鹿にしてもらっては困るんでな」
鎧の中から不敵に笑う。後ろから駆け寄ってくるハジメたちを見るに、ティーガーII辺りでも使ってゴーレムを粉砕したのだろう。別に砲塔を使うだけなら魔力も要らないのである。
まあハジメならティーガーIIを自力で動かすことぐらい訳もないはずだ。その証拠としてハジメはイクサの状態でティーガーIIを片手で持ち上げて走ってきている。
「待たせたな! 行くぞ!」
「ん……〝破断〟!」
ユエが鋭い水の刃を飛ばす。その間に俺たちは一気に距離を詰めた。
『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ:アッ・プ』
「ウェイクアップ・I! 」
俺とハジメは同時に跳び上がる。さらにその下を雫とシアが駆け抜けていった。それを確認して俺たちはミレディゴーレムの心臓部に五億ボルトの電圧&魔皇力をたっぷりと乗せたパンチを叩き込んだ。
俺の義眼はミレディゴーレムの核が心臓部にあることをバッチリ捉えていた。その旨を念話で伝えた上での攻撃である。
「シア!」
「おんどりゃああああ!!!」
とはいえ奴の装甲はアザンチウムというクソみたいに硬い鉱石で生成されている。ダブルパンチだけでは威力不足だ。それならば……積み重ねればよろしい。
ドゴンッ! ドゴンッ! ドゴンッ! ドゴンッ! ドゴンッ! ドゴンッ!
鬼気迫る表情で大槌を叩き込むシア。さらに雫の剣技によってミレディゴーレムがバランスを崩した。
「うわわ! やられっぱなしは癪だか──」
「させるかあ!」
「ウェイクアップ・II! 」
『イ・ク・サ・ハ・ン・マ・ー・ラ・イ・ズ・アッ・プ』
「ハジメ!」
「行くぞ……音也!」
ハジメが構えたイクサハンマーの射出部分に飛び乗る。その瞬間に凄まじい騒音を立てながらイクサハンマーの杭が発射された。
当然俺の体はもの凄い勢いで加速しながらミレディゴーレムに向かうこととなる。その状態で両足を突き出せばあら不思議。電磁加速した杭によって生み出された加速と本来のウェイクアップ・IIの破壊力がプラスされてえげつない威力になる。
「食らええええ!!」
ズゴアアアアアアア!!!
先ほどのダブルパンチ。そしてシアの連続攻撃によって多少は凹んでいたミレディゴーレムの装甲に俺の両足がヒットした。
上辺の装甲は難なく貫通。しかしここからが本番である。
「うあああああああ……!!」
ガリガリガリガリガリガリ!
横スピンを加えてアザンチウムの装甲を削りにかかる。いくらアザンチウムといえども核爆発を余裕で耐えきる鎧のドリルキックを食らって少しずつではあるが傷ついているようである。
『イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ:アッ・プ』
「しぶとい野郎だ……サッサとあの世へ逝きやがれ……!」
白熱化したイクサカリバーを手にしたハジメが突貫してくる。しかしこれだけでは終わらない。
「身体能力強化……VI! 早いとこ逝きやがれ! ですぅ!!」
「……邪魔よ。死になさい。 〝迅風の乱〟」
シアと雫も背中側からミレディゴーレムの心臓部目がけてそれぞれの攻撃を叩き付ける。が……まだ終わるわけがない。
「お願い……燃え尽きて! 〝蒼天の嵐〟!」
本来ならば魔法を発動させることさえ難しいライセン大迷宮。そんな中であっても奈落の底の吸血姫には関係ない。外付けタンクのようなアーティファクトに入っている魔力も全て引き出した上での最上級魔法を発動させた。
「ぐっ……な、なんて攻撃なのっ」
「これで……終わりだ。ミレディ・ライセン」
思いっきりミレディゴーレムの心臓部を蹴り飛ばして空中で宙返り。その間に紋章を使ってティーガーIIを先ほどまで攻撃していたミレディゴーレムの心臓部に銃口をピタリと合わせた。
さらに弾薬をチェンジ。硬芯徹甲弾という普通の徹甲弾よりも貫通力の高い弾薬をリロードした。こいつはアザンチウムでコーティングされており、通常の徹甲弾よりも軽いながらも貫徹力は凄まじくなっている。
ただし作る手間は通常よりかかるため現在は数発しか所持していない。義眼で正確に心臓部を狙い撃ちしなければならないのである。
「存分に食らえ……!」
心臓部を再度見つけてティーガーIIのA・Aをコツンとアザンチウムで生成された装甲に置いた。所謂ゼロ距離……というか接射である。この距離ならバリアは張れないな!
俺は内部に乗り込んでもう一度だけ心臓部を確認して……
ズドバアアアン!!!!
撃鉄を起こした。
訪れる静寂。先ほどの喧しさからすれば不気味なほどの静けさ。
俺はティーガーIIから外に出て戦車ごと地面に降り立った。
「……あ、はは。素晴らしい……よ。ホント、素晴らしい。君たち、なら……きっと……」
ミレディゴーレムの目から光が消える。そして……その巨体を地面に横たえるのだった。
どーしてもティーガーIIを使いたかった……だってパイルバンカー代わりに凄まじい貫通力を誇るA・Aを所持してるんだもん。許してください()
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)