その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
半年後
「おはよう南雲くん。今日もギリギリだね?」
「あはは‥‥おはよう白崎さん。昨日までに終わらせないといけない作業があったんだ」
「お、来たなハジメ。作業ってのは‥‥」
「話してたプログラミングだよ。徹夜したから眠くて眠くて‥‥」
半年間学校に通って分かったことがある。まず、このクラスは顔面偏差値がめちゃくちゃ高い。その中でも特にイケメン&美女は、クラスの中人的人物になっている。とりわけ人気が高いのは、香織&雫コンビと天之河光輝だ。
俺の扱いはというと案外落ち着いている。まあ俺は比較的フランクに接してたしせがまれたらヴァイオリンを演奏するぐらいだ。
しかし‥‥誠に残念なことなのだが、このクラスではイジメも発生している。
「おいおい。徹夜してまでプログラミング? 嘘に決まってんだろ」
「そうだよ。オタクなこいつはどうせ朝までエロゲーでもやってたんじゃね?」
「それしかねえよなあ?」
このクラスには小悪党組がいる。そのリーダー檜山大介が先導してハジメのことをイジメているのだ。単純にハジメのことを下等生物として見てるのだろうが、多分香織がハジメと仲良しなのが気に入らないのもあるのだろう。学校でも超人気の白崎がただのオタクに近づくのは許せないとか‥‥そんなくだらない理由だ。
しかしハジメは卑屈になることもなく全て苦笑いで受け流している。メンタル最強枠だろ。
ちなみにハジメは俺がイクサだと知った日から俺と一緒に格闘訓練を始めた。ハジメは一般人なので無理はさせずに最低限の知識と動きは教えてある。
飲み込みの早さは比較的優秀だったのでハジメも現在は同世代相手なら普通に殴り勝てると思う。彼自身が温厚だからその力はあくまでもケガしないために使ってるらしいが。
なにはともあれハジメへのイジメがあること以外は案外楽しく生活していた。勉強は苦手ではないし交友関係もそこそこ。つまらないわけがない。
そんなわけで昼休み。ワープしたとかは禁句だ。
「おいおい。ゼリーだけでいいのか? いくらなんでも足りないだろ」
「親は早出だしね。仕方ないよ。それにそこまでお腹減ってないんだ。さっき出すもの出したから」
「察した。大丈夫か?」
「まだなんとかね」
「あれ? 南雲くん。珍しいね、教室にいるの。お弁当? よかったら一緒にどうかな?」
「いつもは屋上だが今日は‥‥すまん忘れてた」
「あ~、誘ってくれてありがとう、白崎さん。でも、もう食べ終わったから天之河くんたちと食べたらどうかな?」
ハジメが空になったパッケージをヒラヒラさせる。厄介事から早く逃れて寝たいのだろう。
「えっ! お昼それだけなの? ダメだよ、ちゃんと食べないと! 私のお弁当、分けてあげるね!」
天使ではなく悪魔がいるらしい。だけどハジメ。そんな困ったような顔するな。勘違いされるぞ。
「香織。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
爽やかに笑いながら気障なセリフを吐く光輝にキョトンとする香織。少々鈍感というか天然が入っている彼女には、光輝のイケメンスマイルやセリフも効果がないようだ。
「え? なんで光輝くんの許しがいるの?」
「ぶふっ」
思わず笑ってしまう。どっちもどっちなのだが‥‥見る分には面白い。見る分には。
「天然さん相手は大変みたいだなあ‥‥」
「それもあるけど香織は‥‥ね?」
「雫。まあ‥‥そうだよなあ」
俺へも視線が飛んでくるが無視。勝手にやっとれ。視線だけで人は殺せないぞ。
そのうちクラスのアイドル的存在である畑山愛子先生が教室に入ってきた。愛子先生は身長155cmぐらいながらもちょこちょこと走り回ってはドジを踏む可愛い先生である。
「ま、あいつらは結ばれてほしいよなあ」
腰に巻かれたベルトを触り、内ポケットに入っているイクサナックルの感触を確かめながらも未だにやり取りを続けるハジメと香織を見守る。
暇だしレストランのように演奏でもして暇でも潰そうと思ってケースに手をかける。
その瞬間であった。
教室に魔法陣が現れたのだ。その魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。
愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫ぶも‥‥遅かった。
魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったからである。
俺は咄嗟に空いている手で顔を覆った。あまりに眩しくてとてもじゃないが目を開けてられないのである。
外は晴れていた。つまり雷ではない。
電球がショートした。それならここまで明るくはならない。
超新星爆発。あり得ない。
つまり今体験していることは‥‥間違いなく非現実的なことだ。
とすれば‥‥俺が今できることは何一つない。ただひたすら、光が収まるのを待つしかないのだ。
動けないことにもどかしさを感じつつも俺は光が引いていくのを待つ。
一分、三分、いや五分だろうか? 一体どのぐらいの時間が経過したのか‥‥とてつもなく長い時間が経過したような気はする。
ざわざわと騒ぐ無数の気配を感じて俺はゆっくりと目を開いた。そして、周囲を呆然と見渡す。
「なんだ‥‥ここは」
まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。
背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。美しい壁画であり素晴らしい壁画でもある。だが‥‥なぜかおぞましさを感じた。
よくよく周囲を見てみると、どうやら俺たちは巨大な広間にいるらしいということが分かった。
一言で表すなら大聖堂だ。それぐらいに神聖で神々しい雰囲気を感じ取れる。美しい光沢を放つ滑らかな白い石造りの建築物のようで、これまた美しい彫刻が彫られた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。素材は大理石といった高級な素材だろう。
よく分からないが‥‥俺たちはとりあえずはその最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。周囲より位置が高い。
「クラスメイトが全員いる‥‥?」
あの休み時間の間に教室にいた人間は皆んなここに来たということか。とても信じられないし非現実的すぎるが‥‥考えられる事象は一つしかない。
小説や漫画、アニメではテンプレのように行われる事象だ。
その名を「異世界召喚」。
「俺たちは‥‥異世界に来てしまったのか」
持ち物はイクサナックルにベルト、ヴァイオリンとそのケース。最低限は揃っている。
「ね、ねえ音也くん‥‥」
「ハジメ」
「これってさ‥‥もしかして」
「そのもしかしてだ。それ以外はあり得ない。集団で幻覚を見るというのもおかしな話だ」
「あの時の外は憎たらしいぐらいに晴れてた。雷ではない。超新星爆発なんて滅多にないし電球がショートしたところであれだけの光は感じない‥‥」
「つまり、そういうことだ」
「‥‥受け入れるしかないね」
「それにしても俺たちの目の前にいるしわくちゃの老人共は‥‥」
「テンプレなら狂信者?」
「流石だ」
「あ、いかにも立派な身なりの人が前に出てきたよ」
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
「‥‥聞いたか?」
「勇者‥‥なんたるテンプレ」
ゲーム&特撮オタク、めちゃくちゃ冷静。
「これから全てを説明いたしますので場所を変えていただきます」
「‥‥しゃあない。ハジメ、香織の側から離れるなよ。この事象に一番強いのはお前だ」
「分かったよ」
俺たちは胸に言いようがない不安を抱えながらも場所を移動するのだった‥‥。
どんどん行きますよ。書き次第しばらくは出していきます。
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)