※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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かなり急ピッチに進めてしまい申し訳ないのです…が、あまり原作通りにやってしまうと粛清されかねないのです。ご了承お願いします。


第八楽章 寂しい生き方

〝ぬ、抜いてたもぉ~、お尻のそれ抜いてたもぉ~〟

「…………」

 

妙に艶めかしい声で叫んだ龍に思わずジト目を向ける。いや、直接空気を振動させて喋ったわけではないだろう。恐らく念話の類いで脳内に直接話しかけている。

 

声質は女の物だ。しかし問題はそこではなく……なぜ龍が人語を話せるのか、である。

 

「ハジメ、何か分からねえか?」

「……考えられるのは五つ目の山脈地帯よりも向こう側の完全に未知の魔物ってことか竜人族であるのとかだ」

〝む? いかにも。妾は誇り高き竜人族の一人じゃ。偉いんじゃぞ? 凄いんじゃぞ? だからの、いい加減お尻のそれ抜いて欲しいんじゃが……そろそろ魔力が切れそうなのじゃ。この状態で元に戻ったら……大変なことになるのじゃ……妾のお尻が〟

「ビンゴだと……つくづく俺の運とやらに呆れるぜ」

「だな。希少種族二人に先祖返り一人だろ? しかもクソ神の真意を知ったり迷宮攻略完了したりな……どこか変な方向に運が良くないか?」

「しかも竜人族とくれば五百年前には滅んだはずだろ? ユエたち吸血鬼族よりも先に……それなのに生きてるってどういうことだよ」

「とりあえずザンバット抜いてやれ。話はそこからだ」

「やれやれ……おい、今からこいつ引っこ抜くから我慢しろ」

 

深々と突き刺さったザンバットの柄を握って片足をケツに乗せて思いっきり引っ張る。思ってた以上にミッチリと刺さっていて中々抜けねえな……。

 

〝はぁあん! ゆ、ゆっくり頼むのじゃ。まだ慣れておらっあふぅうん。やっ、激しいのじゃ! こんな、ああんっ! きちゃうう、何かきちゃうのじゃ~〟

「うるせえよ。何だ、もっとグリグリした方がいいのか?」

〝あはぁあん! ぐ、グリグリはらめぇなのじゃあひぃ! 〟

「くそ……本当に深く刺さりやがってるな。キバの鎧使って抜けないってどんだけだよ。てか暴れるんじゃねえ!」

〝む、無理なのじゃ。あまりに甘美であひぃん! 〟

「だああ……もう少し我慢しろ! あと黙れ! 集中できねえだろうが!」

 

仕方がないので一時的に〝限界突破〟を使用。するとザンバットはズルズルと竜のケツから滑り出てきた。とはいえ竜からしたら凄まじい痛みに襲われてるに違いない。

 

〝あひぃい──ー!! す、すごいのじゃ……優しくってお願いしたのに、容赦のかけらもなかったのじゃ……こんなの初めて……〟

 

……痛かったよね? めちゃくちゃ痛かったよね? 違ったの? 

 

「ハジメ、悪いけど話聞いてやってくれねえか? 俺もう死にたい」

「任せろ。少し休みな」

 

黒龍が変化して超絶美人な女性が現れたのを尻目に俺は変身を解いて露葉さんの隣に座り込む。どうやらあの戦闘から離れてたことで怪我はしていないらしい。

 

「あの……大丈夫ですか? 顔色が悪いですけども……」

「大丈夫ですよ。露葉さんもご無事で良かった」

「……なぜか、守られるってことが懐かしい気がします」

「そうでしたか……ま、そうですよね」

「あ、あの紅君。その方は?」

「雫の姉さんだ。なぜかこの世界に召喚されたらしい。理由は不明だがな……」

「そ、そうなんですか」

「てか偵察機戻すの忘れてたが……なんだこれ。魔物が一人の人間の元に集結してるな。数は数万規模か?」

「え?」

「とりあえず手榴弾だけ落として帰還させるか……しかしあの男、妙に見覚えがあるな」

「あの! その男の人……黒髪で黒い瞳じゃなかったですか?」

「ん? おお……確かに黒髪で黒い瞳をしてるな。先生にしては勘が冴えてるじゃねての。しかし、どうしたんだ急に」

「……いえ」

 

急に黙りこくった先生。おそらく、何かしら思うところがあったのだろう。だが、あいにくなことに俺は先生の都合など知ったことではない。

 

よって、スルーすることを決め込んだ。

 

「ふうん……そうか。おいハジメ。魔物の大群が近くにいるみたいなんだが」

「ああ。こいつから聞いたさ。どうも操られていたらしいぜ?」

「こ、こいつ呼ばわり……妾にはティオ・クラルスという名前があるのじゃが!?」

「るせえ変態。んでどーすんのよ。俺は魔物の大群を相手するなんてゴメンだぞ」

 

バッサリ切って捨てつつもハジメに問う。と、いうのも俺はクラスメイトたちに無関心だがハジメはもしかしたら思うところがあるかもしれないと感じたからである。

 

しかしハジメの答えはアッサリした物だった。

 

「俺もゴメンだ。俺たちはウィルを捜しにここまで来たんだ。で、見つかったわけだからこれ以上ここにいる理由もない」

「……それもそうか」

「とはいえ町の連中にこのことは伝えないとだからな。早いとこ町に戻って魔物が攻めてくることだけを伝えに行こう」

「だな。おい、山を降りるから全員ティーガーIIに乗れ。重力魔法使って一気に駆け下りるぞ」

 

反論は受け付けないという雰囲気を出しながら俺は露葉さんの手を握って立ち上がるのだった。

──────────────────

 

「どうしてですか!? 紅君や南雲君なら魔物の大群を退けることぐらい出来ますよね!?」

「はあ……」

 

……ここは水妖精の宿。俺たちはティーガーIIで町へ戻ってきて早々愛子先生に魔物が明日にでも攻め入ってきて町は滅びるとだけ伝えて貰った。

 

まあそこまでは良い。問題はその後である。恐らく俺たち二人の態度が気に食わなかった愛子先生は全てが終わった後、俺に今にも掴みかからんばかりの形相で詰め寄ってきたのである。

 

「貴方たちは……町の人を見捨てるんですか!?」

「そうとも言えるのは否定しないさ。だが一つ言わせろ。俺たちはウィルを捜すためだけにこの町に来たんだぞ。それ以上もそれ以下もないんだ」

「そんなこと……!」

「もっと言ってしまえばな。俺はこれ以上あんたらと関わりたくない」

「?!!」

「直接俺が何かされたわけではない。だがな。親友がイジメられるのを見て見ぬふりをしたクラスメイトや先生を許すつもりはない」

「私は見て見ぬふりなんか……!」

「確かにあんたはハジメのことも気にかけてたな。だが根本的な解決に繋がったかと言えばそうではない。やってることはイジメてた奴らと同じだ」

 

……あの時。ハジメのことを俺以外に心から気にかけていたのは香織と雫、そして露葉さんだけだった。他の人間は全員敵だと言っても過言ではなかったのだ。

 

「そんな奴らと協力しろってか? ふざけるなよ。まっぴらごめんだね。第一俺の目的は日本へサッサと帰ることだ。邪魔するなら誰だって殺してでも前に進んでやるさ」

「……それは、とても寂しい生き方ですよ」

「なに?」

「あんなに穏やかだった紅君や南雲君がここまで変わってしまったのは恐らく凄絶な体験をしたからでしょう。その苦しみや痛みを理解できるとはとてもではないですが言えません」

「…………」

「ですが紅君。貴方の今の生き方は……日本で受け入れられると思いますか? 帰ってきてすぐに変えられる物ですか?」

「……何が言いたい」

「私が言いたいのは……紅君、誰かを殺すということに慣れてしまったら貴方は大切な人を幸せに出来ないかもしれないということです」

「……言ってくれるな。それはあんたが断言出来ることではないぞ」

「分かっています。未来のことは誰にも分かりませんから。それでも言えるのは……寂しい生き方では人を幸せにするのは難しいということです」

 

……妙に説得力のある言葉だ。これは先生の本気の説教だからだろうか。

 

無論先生の言葉に全て納得したわけではない。しかし……雫たちの幸せに繋がるというのなら動いてみる価値はあるのかもしれない。

 

それに寂しい生き方というのは……どこか心に来る。だが、それと同時に“好き勝手言ってくれるな?

分かってるのか?”という気持ちが募ってきてるのだが……放置しておこう。

 

「……先生。一つ聞かせてくれるか」

「何でしょう?」

「先生は、俺がどんな決断をしたとしても俺の先生でいてくれるか?」

「当然です」

「……先生が望まぬ結果になったとしても?」

「先生の役目は生徒たちがより良い決断を出来るように手伝いをすることです。生徒たちの決断に対して何か言うことなんて……あってはならないことなんですよ」

「……そうか」

 

それだけ聞いた俺は立ち上がって先生から背を向けた。

 

「紅君?」

「……あんたらと協力するわけではない。が、あいつらの幸せのためになるというのならば……今回だけは暴れるとしよう」

「……それは!」

「そういうことだ。それじゃあ早めに寝ろよ。明日は楽しい祭りだからな」

 

後はもう……何もない。俺は人のいないレストランの席を立って外に出た。

 

「……終わりましたか?」

「終わりましたよ。明日、賑やかな祭りを開催することにしましてね」

「そうでしたか……」

 

宿の外には露葉さんが湖畔の草むらに腰を降ろしている。俺はその隣に座った。

 

「露葉さんは……本当に何も覚えていないんですか? 俺のことも……雫のことも」

「……ごめんなさい」

「…………」

「でも、一つだけ覚えてることがあるんです。私は誰かにこれを渡そうと思っていて……」

「……何ですか? それ」

 

露葉さんが取り出した物は……ガラケーのような物と鍵だった。どこか見覚えのある道具である。

 

「分からないんです……でも、誰かに渡さないといけないことだけは覚えています」

「それは何に使う道具なんですか?」

「私には……」

「……そうですか」

 

俯いてしまった露葉さん。俺はそれを見て思わず肩を抱いた。

 

「……?」

「……そんなに落ち込まないでください。俺がいます」

「……優しい。とても、懐かしい感じがします」

「…………」

「もう少しだけ、このままで良いですか?」

「勿論です。気が済むまで……」

 

露葉さんの頭が俺の肩に乗る。艶のある長い黒髪に思わず見とれながら、俺は黙って露葉さんと密着するのだった。

 




これまで殆ど説明してませんでしたが露葉の見た目は艦これの扶桑のような見た目です。和傘や着物がよく似合う女性…と言ったところでしょう。

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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