その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
翌日の昼過ぎ。俺は魔物が攻め込んでくるであろう方角と真っ直ぐに向き合いながら黄昏れていた。
偵察機からの情報だと魔物の軍団がここまで辿り着くのは日本時間でいう三時ぐらいだ。迎撃には俺とハジメの所持してるアーティファクトをフル活用するつもりだが……とりあえず先手はやわらかチハたんの突撃とティーガーIIの狙撃からである。
「あの……紅君」
「……先生か」
「準備の方は大丈夫ですか?」
「問題ないさ。あとは敵がここまで来るのを待つだけだ」
先生の方向には振り返らず答える。すると近くにいた以前雫とシアのことを侮辱した騎士の男が何やら怒りの音楽を流しながら近寄ってきたが……速攻で威圧をぶつけて黙らせる。
「俺はお前が雫とシアに言ったことを許してはいない。まずはお前の謝罪が先だからな?」
「ぐ……」
「謝る気がないのなら今すぐ失せろ。そうでなければ俺の方も抑えられない」
「き、貴様……」
「デビッドさん。一度戻ってください」
「うっ……承知した」
先生の言葉に項垂れた様子で立ち去ったデビッド。俺はそれを見やって握り飯を取り出して口にした。が……すぐに口を離した。
「……味が薄いなあ」
「どうかしたんですか?」
「いやな。キバの鎧……ほら、ティオと戦ったときに途中で変身したあの姿。あれになると暫くの間食べ物を口にしても味が薄く感じるんだ」
「それは……大丈夫なんですか?」
「今のところはな。このまま味が薄くなる程度の副作用なら良いけど」
そういえば雫の項を見ると妙にかぶりつきたくなる衝動もある。何なんだろうか。それに貧血気味であるし……うーん。
そのまま思考を巡らせていると……雫たちも俺の近くにやって来た。
「よいかな。ご主……ゴホンッ! お主に話が……というより頼みがあるのじゃが、聞いてもらえるかの?」
「……ティオか。なんだ?」
「うむ、頼みというのは……妾も今後の旅に同行させてほしいのじゃ」
「はあ? そりゃまた……別に構わないがあまり羽目外すなよ?」
ぶっちゃけ断る理由もないし戦力としてはそこそこ優秀なので了承する。なんかハアハアしてるのはいただけないのでカブトのような回し蹴りで蹴り飛ばしておくが。
「おい音也。ちょっと話がある」
「ハジメか……どした?」
人目の付かない場所まで連れてかれた。恐らく話したいことは……。
「なぜ自ら戦争に飛び込もうとしてるんだ? お前はこの世界の戦争に興味はなかったんじゃ……」
ビンゴ。やはり気になるだろう。
「ないさ。だが……これ以上あの人たちと関わりたくないからがために戦うだけだ。今回ばかしはこれ以上つきまとわれないための策だと思ってくれ」
「なんだ……ま、そういうことなら構わんさ」
「いや、説明してなくて悪かったな。兎に角離れるためにも一肌脱いでくれ」
「あいよ。それにしても生徒のことは大切って言ってたのに戦え……か」
「人間は矛盾だらけの生き物さ。今更そこを攻めたって意味はない」
「それもそうか……」
「……お、来たみたいだぞ」
偵察機からの映像であと数十分で町へ到達することが分かった。俺は偵察機にとりあえず牽制してもらいつつも先ほどの場所まで急ぐ。
「ティーガーIIの用意は?」
「完了している。チハもいつでも突っ込める」
「よし……」
「く、紅君。どうしたんですか?」
「襲来だ。数は六万弱。一時間以内に終わらせてくるから町の人を頼むぞ」
それだけ伝えると俺は一目散にティーガーIIに乗り込んだ。上空から襲来しようとしている一際大きなプテラノドンモドキに照準を合わせる。スコープで拡大して見ると……黒いフードを被った男が搭乗している。
その他にもブルタールのような人型の魔物の他に、体長三、四メートルはありそうな黒い狼型の魔物、足が六本生えているトカゲ型の魔物等々……もう沢山だ。
「とはいえ……それだけ的がデカくて遅いんじゃただの的だぜ」
高貫通高精度のレールガンアハトアハトを馬鹿にしてはいけない。対空戦車道ほど難しくはない時点であのプテラノドンモドキの運命は確定している。
「目標ロックオン……偏差修正完了。アメリカやソ連が恐れた理不尽なアウトレンジ砲撃。存分に食らって逝きな」
ズドバアアアアアアアアアン!!!
「……当たったな。よし」
すぐさまティーガーIIを宝物庫に投げ込む。そしてベルトを巻いてナックルを手にした。
さらに俺の両隣には雫とユエが並び立ち、後ろにはハジメとシア、そしてティオとキバットが並び立った。
「雫、露葉さんは?」
「大丈夫。先生に預けてきたから」
「そうか」
憂いはこれで晴れた。ティオの時のように手加減をする必要はない。ザワザワしてる民衆にはハジメが制作した文書を愛子先生が読んでくれれば何とかなるので問題ゼロ。
『レ・ディ・ー』
「さあ……準備はいいな?」
「もちろんさ」
「ええ……殺りましょう」
「んっ」
「いつでもOKですぅ!」
「妾も準備完了じゃ」
「絶滅タイムだ……行くぞ」
『フィ・ス・ト・オ・ン』
「……祭りの始まりだあ!」
そう叫ぶと、俺は一気に地面を踏み抜いて駆け出すのだった……。
音也が今回魔物の駆逐を承認したのは善意があるように見せかけて実は手を切りたいからっていうのが本心です。彼も面倒な人だとは思っているのです()
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)