※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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いつの間にか六十話目ですが……かなりハイペースでここまで進んだ気がします()



第十七楽章 ホルアド

「パパ~」

「なんだミュウ」

「風が気持ちいいの~」

 

……現在俺たちはフューレンのギルド支部長イルワから頼まれごとをされたので、それを果たすためにホルアドに向かって走行していた。

 

以前はホルアドに来てすぐにオルクス大迷宮に潜ったのでじっくりと町を見に行くのは初めてである。

 

それにしてもミュウは二輪がお気に召したらしい。初めて乗せてからというものことある毎に「乗せてほしいの!」とねだるのである。

 

まあ俺も二輪が嫌いでないし運転にも自信があるので一向に構わないのだが……たまに自分で運転したいと言われるのだけは勘弁してもらいたい。

なおミュウが座ってる位置は以前までユエが座っていた位置と同じである。

 

やがて走行すること一時間。俺たちはホルアドに到着した。

 

「……懐かしいな」

「ああ……」

「そうね……」

「パパ? お兄ちゃん? お姉ちゃん? どうしたの?」

「いや、前にも来たことがあるんだけどな。随分と久しぶりに来たような感覚になったんだ。思えばとても濃密な時を過ごしてきた訳だし……当然ではあるけどな」

「ふむ。ご主人様は、やり直したいとは思わんのか?」

「呼び方おかしいだろ……まあ、俺はやり直そうとは思わないな」

「それはなぜじゃ?」

「元々俺は神の言うとおりに戦おうとは思ってなかった。奈落の底へ落ちたのはある意味で幸運とも言えるんだ」

「俺は……一つの気がかりを除けば後悔はないな」

「ふむ? ハジメ殿の気がかりとは?」

 

そういえばティオはハジメと香織の事に関しては知らなかった。シアは勝手に未来を見て知ってたのだろうが……全員が知ってる訳がないか。

 

「俺の気がかりは……まだ無能と呼ばれていた頃にたった一人俺のことを気にかけてくれた女の子の安否だ」

「ハジメさん……」

「思えばこのホルアドの宿場で約束したんだもんな……守って欲しいと」

 

遠くを見るハジメ。詳しいことは俺にも分からないが……きっと、深い関係になっていたのだろう。

実際に俺とハジメが奈落に落ちたとき、香織は今にも泣きそうな目で飛び込もうとしていた。恐らくあの状況では雫を止めることに忙しかったかのだろうが……きっと香織本人の心にも大きな傷が付いたに違いない。

 

とはいえ……いつまでもここで立ち止まるわけにも行かない。俺は全員に目配せをして先頭を歩き始めた。

 

やがて数十分で俺たちは冒険者ギルドのホルアド支部に到着した。ホルアド支部の扉は金属製だった。重苦しい音が響き、それが人が入ってきた合図になっているようだ。

 

とりあえずミュウを肩車してギルド内へ足を踏み入れる。

 

「あんだあ? えらいピリピリしてやがる……」

「ひう! パパぁ!」

「よしよし……」

 

ミュウをあやしながらもギンッと睨みつけてきた無粋な冒険者共を睨み返す。ついでに威圧を展開して気絶しないギリギリの強さでほぼ物理的に圧していった。

 

さらにナックルを取り出す。変身するわけではないが……このような緊迫した場で低い電子音というのは凄まじい威圧感を放つ物である。

 

『レ・ディ・ー』

「お前ら覚悟は出来ているんだろうな? 家の子を散々怖がらせておいて……トラウマにでもなったらどう責任を取るつもりなんだ? ア゙ァ゙?」

 

途端に土下座し始める冒険者たち。俺はそれを満足そうに見てそのまま受付嬢の所まで歩いて行った。

 

「ようお嬢さん。支部長はいるかい? フューレンのギルド支部長から手紙を預かっているんだけどな……本人に直接渡せと言われているんだ」

「は、はい。お預かりします。え、えっと、フューレン支部のギルド支部長様からの依頼……ですか?」

「お、疑ってるな? それならこいつを見れば納得するだろうよ」

「き〝金〟ランク!?」

「そういうことだ。頼むよ」

「ひゃ、ひゃい!」

 

バタバタと奥へ引っ込んだ受付嬢。それを見やってミュウを片手抱っこに切り換えた。

 

「パパぁ。格好良かったの!」

「そりゃどうも」

 

ナックルを懐にしまいながらミュウの髪を撫でる。それにしても奥から徐々に近づいてくる悲壮めいた心の音楽はなんだ? 

 

なんか不穏な感じがしたのでミュウのことを露葉さんに任せて警戒心を少し上げる。とは言っても目をほんの少し釣り上げたぐらいにしか周囲には分からないだろうが。

 

するとギルドの奥からズダダダッ! と何者かが猛ダッシュしてくる音が聞こえだした。やはり緊急事態なのだろう。

 

ほんの少しの間の後カウンター横の通路から全身黒装束の少年がズザザザザザーと床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきて、誰かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡し始めた。

 

「あれ、遠藤?」

「く、紅! お前本当に紅なのか!?」

 

奥から出てきたのは遠藤浩介だ。俺は殆ど接点がないが存在感の薄さをクラスメイトから弄られていたのを覚えている。

 

確か自動ドアに三回につき二回は開かない……だったか。とにかく影が薄い。今の今まで存在その物を忘れていた。

 

「あ、そういえば南雲もいるんだったよな!? 南雲はどこだ!」

「ここに居るだろ」

「白髪の男子は南雲ハジメだぞ。幽霊扱いなんかするなよ?」

「うおっ!? お前……なんか随分と変わったな。雰囲気とか見た目とか」

「そこはどうでも良いだろ……で、お前はなんでボロボロなんだ?」

 

ハジメに言われて気がついた。遠藤は全身ボロボロで結構ヤバいんじゃね? という状態にも見える。

すると遠藤はガシッと俺の肩を掴んでまくし立てた。

 

「俺のことは良いんだよ。それよりお前たちは迷宮を攻略して脱出するだけの実力はあるんだよな?」

「まあそうだが……」

「なら頼む! 俺と一緒に迷宮に潜ってくれ! このままだと白崎さんや重吾たちも死んじまうんだよ!」

「何だと……香織が?」

「ハジメ……落ち着け。あと遠藤もだ。何であいつらが死ぬことになるんだよ。団長が付いているじゃないか」

「……死んだんだよ」

「は?」

「死んだんだよ! 俺を庇って! 迷宮に潜ったので騎士は全員俺を庇って死んだんだ!!」

「……そうか」

「……惜しい人を」

 




さて、次回は香織たちクラスメイトとの再会になります。元より光輝には嫌悪の目を向けていた音也の反応、楽しみにしてください(ハードル上げ)

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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