その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
「うわあ……まるでラピュタ」
ティーガーIIからグリューエン大火山を見て思わず零す。
グリューエン大火山はかの天空の城を包み込む巨大積乱雲のように巨大な渦巻く砂嵐に包まれているのだ。その規模は、グリューエン大火山をすっぽりと覆って完全に姿を隠すほどで砂嵐の竜巻というより流動する壁と行ったほうがしっくりくる。
しかも気配を確認するに内部には視界がほぼゼロにも関わらず魔物が大量に潜んでいるらしい。徒歩で行ったら時間が掛かりすぎる。
「一気に強行突破するか……」
流す魔力の量を上げて大体150kmhで砂嵐の中に突入する。さらに砲塔を真正面に固定して目の前に現れた敵のみを撃ち抜いていく。ついでに機銃を起動させて牽制程度に乱射しておいた。
全包囲の気配感知に加えて瞬光を使った極限の集中、そして限界まで研ぎ澄まされた耳を同時に使用しているので疲労が半端ない。
が、なるべく無表情を意識した御蔭で砂嵐を数分で抜けることが出来た。強い男は決して弱みを見せようとしないのである。
目の前にはエアーズロックを何倍にも巨大化させたような岩山が飛び込んでくる。砂嵐を抜けた先は静かなもので、周囲は砂嵐の壁で囲まれており直上には青空が見える。竜巻の目にいるようだ。
確か入り口は大火山の頂上。ティーガーIIの登板能力なら問題なく行けるだろうしチハも魔力を使えば何とかなるだろう。
そのまま登板すること三十分で頂上に到着。ここからは徒歩だ。
「うわ……クソみたいに暑いな」
「そうね……」
「あら、雫は暑さに弱かったかしら……」
「ん~……」
「ふむ、妾は、むしろ適温なのじゃが……熱さに身悶えることが出来んとは……もったいないのじゃ」
「これで適温とかすげえわ」
「ハジメさ~ん……暑いですぅ」
「俺も暑いんだ。こいつは砂漠の日照りとは別物の暑さだが……タイムリミット関係なしに早めに攻略してしまった方が良さそうだ」
さっきまでは快適な空間に籠もってたのも相まってめちゃくちゃ暑い。とはいえ時間がないので俺はイクサを装着しながら大火山へと突入した。
ちなみにイクサ内は適温が保たれており装着していると涼しかったりする。
俺たちは周囲の環境にウンザリしつつも大迷宮スピード攻略を開始するのだった。
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攻略開始から数時間。現在、多分きっとmaybe五十層くらい。確証がないのは俺たちの集中力が切れ気味だからである。
無論途中で静因石を見つけたら即刻回収している。なお静因石がトラップの起動スイッチになっているところは予め俺の義眼とイクサの透映スコープで見抜いている。
ただしハジメが集中を切らした状態で静因石を引っこ抜いたため現在は噴き出たマグマを避けるためにハジメの制作した小舟の上に居るが。
「やれやれ……しかしこの小舟。どこまで流されるんだ?」
「分からねえな……空中マグマロードを通ったり急流下りしてるが終わりはまだ見えないぞ」
クソみたいに暑い環境にウンザリしているハジメのイライラした声が響く。しかし俺の耳は……この先の道がどうなっているかを正確に捉えていた。
「……ここから速度が上がりそうだな。振り落とされるなよ!」
自分は立ち上がりながら全員に指示を飛ばす。この先に待ち受けているのはこれまでとは比べ物にならない急流。さらにそれに合わせてマグマ混じりの炎弾を飛ばしてくるコウモリが大量に現れそうだ。
一気に出てくるなら殲滅系統の技が良い。折角だし最近追加された武装を試しみるか……。
「ハジメ、左半分を頼んだぞ」
「お、それは152mm榴弾砲か?」
「安直にイクサキャノンだな」
ハジメが遊び半分で制作した外付けイクサキャノンを取り出した。大口径故に精度は最悪レベルだが威力は折り紙付きである。
ただしイクサハンマーのようにフエッスルはない。あくまでも外付けの強化武装である。
ギャリンッ!!!
「おお……すげえ音」
かつてこの砲を搭載した戦車はたった一両でドイツ軍の人口を丸一日遅らせたという。その理由は戦車自体の性能もあるだろうが……殆どの戦車を一撃で粉砕するこの砲があったのも大きいはずだ。
そんな素晴らしい砲が俺からしたら雑魚同然のマグマコウモリに放たれたらどうなるだろう。答えは簡単。粉砕される。
「おいおい。予想以上の威力だな」
ドパンドパンドパンドパンドパンドパン!!
ドゥルルルルルル!!
「ノールックで殲滅しているハジメが俺は怖い」
「おまいうだぞ」
軽口をたたき合いながらも急流下りをしながら敵を殲滅していく。俺は152mm砲とハジメはドンナーでの射撃とGAU-8アヴェンジャーの恐るべき殺意の嵐は気がつけば数百を超えるマグマコウモリを撃破していた。
やがてマグマコウモリはぱったりと姿を消し……代わりに今まで下り続けていたマグマが突然上方へと向かい始めた。
「……落ちる。掴まれ!」
勢いよく数十メートルを登ると、その先に光が見えた。洞窟の出口だ。だが問題なのはマグマが途切れていることである。
このまま落ちては小舟がひっくり返ることは明らかだ。俺はいつでも飛び出せるようにファンガイアバスターを取り出した……次の瞬間、小舟がマグマロードから飛び出した。
小舟から放り出されたのでファンガイアバスターで雫とユエ、露葉さんを捕まえながらも叫ぶ。ティオは……まあ良いか。
『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』
「……お前ら掴まってろよ!」
「ご主人様。妾も……」
「足にでも掴まれ。そら……行くぞ!」
ある程度落ちたところで宙に浮くマグマ見つけた。その下にはぽつぽつではあるが地面が見受けられるので真上からブロウクン・ファングをぶち込む。当然マグマには穴が開く。さらに……そこから追い打ちだ。
「〝氷水よ〟」
ユエが初級魔法で水を作り出す。まあ奈落の底の吸血鬼姫の作り出す初級魔法はコップに注ぐような水ではなく滝のような激流だが。
穴の開いた宙浮くマグマがほんの数秒だけ固まる。それだけの時間があれば俺たちは数百メートルの移動が可能だ。
「ふう……なんとかなったな。ユエ、ありがとう」
「ん……!」
地面に着地してユエの頬を軽く撫でる。そして周囲を見渡してみた。
【ライセン大迷宮】の部屋と異なり球体ではなく、自然そのままに歪な形をしているため正確な広さは把握しきれないが、少なくとも直径三キロメートル以上はある。地面は上から見た通り殆どマグマで満たされており、所々に岩石が飛び出していて僅かな足場を提供していた。
周囲の壁も大きくせり出している場所もあれば、逆に削れているところもある。空中には、やはり無数のマグマの川が交差していて、そのほとんどは下方のマグマの海へと消えていっている。
そしてマグマの海の中央にある小さな島があった。海面から十メートル程の高さにせり出ている岩石の島。それだけならほかの足場より大きいというだけなのだが、その上をマグマのドームが覆っているのである。
「……奥に扉があるな。あそこが解放者の住処か?」
「階層の深さ的にもそう考えるのが妥当だろうな……だが、そうなると……」
「……最後のガーディアンが潜んでいる、ということですね?」
すっかり逞しくなったシアが鋭い視線を周囲に向けている。そのウサ耳はピコピコと絶え間なく動いているのを見るに、今も索敵をしているのだろう。
「ねえ音也くん。あの島、良く見て」
「ん?」
「岩壁の一部に穴がおびただしく開いている。恐らくこれから魔物が出てくるからそれを規定数倒すことが最後の試練だよ」
相変わらずの鋭い洞察力だ。俺と生きる時間が数年しか変わらないというのに……どんな人生を送ってきたのだろう。
と、そんな呑気に考えてる時間はない。何やら不審な音が聞こえ始めているので俺は気を一気に引き締めた。
「ゴォアアアアア!!!」
「来た!」
「あれは……マグマの蛇か?」
キバットの言う通り、現れたのは全身マグマに包まれた蛇である。それが二十体。この地獄のような環境で多数を相手するのは中々に辛いだろうが……やるしかない。
「恐らくあいつらは普通の攻撃で倒すことが出来ない。どこかにマグマを形成するための核、魔石があるはずだからそれを探せ!」
「「「「「「「了解!」」」」」」」
『ラ・イ・ジ・ン・グ』
矢継ぎ早に指示を飛ばしながら地面を蹴ってスーツを切り換え。ライジングイクサへとチェンジした。プロトイクサは近接主体でマグマ蛇への有効対策が思いつかなかったのである。
え、152mm榴弾砲イクサキャノン? あれは総弾数が少なすぎて長期戦には心許ない。
「ティオ、行け!」
「久しぶりの一撃じゃ! 存分に味わうが良い!」
そう言って揃えて前に突き出されたティオの両手の先には、膨大な量の黒色魔力。それが瞬く間に集束・圧縮されていき、次の瞬間には一気に解き放たれた。竜人族のブレスだ。
無論、それだけで終わるわけがない。
「〝刀飛〟」
「〝絶禍〟」
「〝紅壊〟」
地獄の魔法三重奏。剣閃が飛び散り黒く渦巻く球体が出現し紅い波動が発射される。
「この戦いが終わったらハジメさんと一日デートしたいですねえ」
「あら、そうしたら私も音也くんにお願いしようかしら?」
ドリュッケンを変形させて炸裂スラッグ弾を撃ち込みながら気の抜けた声を出すシアと優しく笑いながらも仕込み針を正確に核に撃ち込んでいる露葉さん。
そんな様子に俺とハジメは思わず苦笑いしながらも……互いに頷き合って己の生を否定する魔物の命を狩りに出るのだった。
まだまだ気が早いんですが……次回作の構想が少しだけ思いつきました(まずは完結させろ)。
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)