その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
前回のファイナルベント(死刑宣告)はリュウガを多少なりとも意識してたのですが……気がついてくれた人がいて嬉しいです()
「さて……時間がない。ハジメ、以前作っていた潜水艦に金剛を付与して島の近くに置いてくれ」
「おうよ」
中央の島には最初に見たマグマのドームはなくなっていて、代わりに漆黒の建造物がその姿を見せていた。
俺は変身解除しながらも中央の島に向かい、既に島に降り立っていた雫たちと合流して一見扉などない唯の長方体に近づく。すると長方体の一部が扉になってらしく、近づいた瞬間にスッと開いた。
中に入った途端に扉は閉まった……と、同時にマグマが扉にザザーン! とぶつかった。しかし扉はビクともしてないし振動も伝えてない。ひとまずは安心出来そうだ。
それにしてもこの迷宮の創設者は魔法陣以外何も残さなかったらしい。これまでの住処がかなり生活感のある部屋だっただけに面食った感じはある。
「確か……ナイズ・グリューエンだったよな。オスカーの日記にはとても寡黙な人だったと書いてあったが……」
「身辺整理でもしたのかしら。本当に魔法以外残してないわね」
魔法陣に足を踏み入れながら呟くと雫がすぐに返してくれた。相変わらずの地獄耳である。
それにしても手に入れた魔法は空間操作だ。神代魔法はやっぱり壊れている。神代魔法を発動させるのに普段は莫大な魔力を使うが……キバの鎧を装着していればほぼノータイムで発動可能だ。
神代の凄まじい力をノータイムで発動出来るキバの鎧……あれ? 神代魔法よりも鎧の方が凄くない?
「音也……これ」
「ん? おお……攻略の証か。サークル状のペンダントなんだな」
首にかけながらペンダントに感想をもらす。これまでは指輪だったので少し驚いたのである。とはいえ証には変わりないので問題ゼロだ。
なにはともあれ魔法を手にできたし証も手に入った。あとは脱出するだけだ。
「ユエ、外に出る前に障壁でマグマを抑えてくれ」
「ん……でもどうやって脱出する?」
「ハジメの作った潜水艦だ。噴火なら上に飛ばされると思うからな……まあ最悪下に行ってもなんとかなるだろうけど」
ちなみに潜水艦は俺とハジメのミリオタ魂が爆発した影響でまんま小さめの原子力潜水艦そうりゅうの形をしている。
こいつを制作したときにユエに拗ねられた上に雫に搾り取られたが……まあ懐かしい思い出ということにしておこう。
ユエが聖絶を三重に重ねがけしたのを確認した俺は外界へと繋がる扉を開けた。直後にゴバッと音を立てて灼熱の奔流が部屋の中に流れ込んで来た。
マグマの中からマグマを見るという何気に貴重な体験をしつつも俺は信頼と実績の聴力で潜水艦を探し出す。
「……あれか。ユエ、入り口まで行くからある程度の調節を頼むぞ」
「んっ」
「ハジメ、シア、雫、露葉さん。先に入るんだ。俺は最後に入る」
ハッチを開きつつもファンガイアスレイヤーで有無を言わさずにハジメたちを放り込んでいく。最後にユエと共に潜水艦に入り込んでミッションコンプリートだ。
と、安心してはいられない。俺はすぐさま潜水艦の操縦席に座って魔力を流し込み、何時でも動かせるように準備する。
しかし……思った以上にマグマが粘力を持っていて潜水艦が上手く操縦出来ない。外からの振動を無効化する魔法を潜水艦に施しているので衝撃は伝わらないが、どうも潜水艦は上ではなく斜め下に進んでいるようだ。
「厄介な……これはしばらくミュウたちと会えねえかもだぞ」
「マジかよ。理由は?」
「噴火なら上に飛ばされるはずが斜め下に進んでるんだ。脱出とはほど遠いだろ?」
「なるほど……ま、永遠の別れって訳でもないし何とかなるだろ」
とりあえず重力魔法をフル活用して潜水艦が回転しないようにして無理矢理進行方向を定めた俺に対して結構呑気な調子のハジメさん。
とはいえハジメの言う通りでもあるので特に反論はせずに潜水艦を操ることに没頭する。随分と激流だが聴力と気配感知に加えて義眼を使ってうねっている地下内を壁にぶつからずに航行していく。
一応水中では20ノット……いや、25ノットは出せるがマグマがかなり粘っこいので出せても15ノットだろう。ぶっちゃけ速度出しすぎると操作難しくて死ぬし。まあ瞬光使えばなんとかなるか。
「音也くん……目から血が出てるよ」
「大丈夫だ……大丈夫……」
「無理したらダメだよ。代わろうか?」
「大丈夫だって。大人しく座ってろ……」
規定量の魔力だけでは駄目だ。もっと流してしまえ。ついでに瞬光発動させて集中力を限界まで高めておく。
今の気分はゲームで神プレイをしたときに感じる「全ての動きが読める」ような状態である。説明が難しくて曖昧な言い回しだがそういう感じだ。
「右、左、左、右、左、右、右……」
と、なんとも奇妙な暗号的な感じで言葉を発すること数時間。ようやく地下の旅が終わりを告げることとなった。
突如として潜水艦がフワッと浮き上がってしばらく滞空した後に急降下。衝撃を基本通さない素材で出来た潜水艦に直接振動が来るレベルの凄まじい衝撃が走った。
「……なんだ? 外は……海?」
どうやら俺たちは何処かの海底火山の噴出口からいわゆるマグマ水蒸気爆発に巻き込まれて盛大に吹き飛ばされたらしかった。現に俺の目には蛇のようにのたうつマグマと猛烈な勢いで湧き上がる気泡で荒れ狂った海が見える。
再び噴火に巻き込まれたくないので俺は一気に魔力を潜水艦に流し込んでその場を離れた。
「……全く、次から次へと災難が降りかかるな」
「音也、どういうこと?」
「潜望鏡を覗け。そうしたら分かる」
「お前顔色ヤバいって。俺が代わるから少し休んでろ。抵抗しても押しのけてやる」
「ほら、これを飲んで」
ハジメの手によって強制的に操縦席から放り出された。こうして休む時間はないのだ。何故なら……。
「ウソ……あれってクラーケン?」
潜望鏡を覗いた雫が零す。そう、次なる災難というのは全長三十メートルほどのクラーケンのことだったのだ。
三十本ほどの触手をクネクネさせて容赦なく襲い掛かって来るクラーケンモドキ。俺は露葉さんから貰った回復薬を飲み込んでから指示を飛ばした。
「魚雷を発射しろ。あと俺は外に出て迎撃してくる」
『フィ・ス・ト・オ・ン』
「無茶しすぎだろお前。数時間前にはキバの鎧を装着してたのに大丈夫なのか?」
「大丈夫に決まってるだろ。俺は紅音也だぞ?」
「めちゃくちゃな理論なのに納得している自分が憎い」
ハッチを開けて水を魔法で押し出しながらも外に出る。そして宝物庫からイクサキャノンを取り出した。え、ティオに渡しただろって? あれはハジメの宝物庫だ。ティオに渡す直前に念話して投げ渡して貰ったのである。
ついでに言っておくとイクサキャノンは水陸両用榴弾砲だ。ハジメ曰くAPS水中銃というやつを参考にしたらしい。そこまで詳しくは知らないが。
「来いよ……殺意を見せてきたことを後悔させてやる」
俺はスーツ内でニヤリと不敵な笑みを浮かべると、触手を伸ばしてきたクラーケンモドキに対して地獄とも言える責め苦を敢行するのだった。
次回からはエリセンの町、そしてメルジーネ海底遺跡へと入ります。それと音也の体の異変が進行中ですが……どうなるのか分かるのはまだ先の話です。楽しみにしていてください。
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)