その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
レミアに襲われてから夜の時間可愛くなった雫やユエや露葉さんを相手してから数日後。俺たちはメルジーネ海底遺跡に出発することにした。
海底遺跡と言うだけあって大迷宮は海底にあるらしいのだが……情報が〝月〟と〝グリューエンの証〟に従えという物しかないのだ。一応それらしき場所まで辿り着いたは良いが海底には何も見つからなかった。海底遺跡というくらいだからそれらしき痕跡が何かしらあるのではないかと考えたのだが甘かったらしい。
とはいえ場所的には現在いる位置で間違いないらしいので潜水艦を浮上させて月が出るまで待機することにした。
「……どこの世界でも人間はクソだが自然は綺麗だな」
潜水艦の甲板に座り込みながら呟く。ここまでの旅で人間に絶望気味な俺であるが……自然は裏切らないらしい。
夕焼けの空に浮かぶ一番星を見つけて思わずヴァイオリンを取り出す。即興で曲が思いついたからには弾かないと気が済まない。
♪♪♬~ ♬♬♬♩~
短調、さらにゆっくり目を意識して弓を引き続ける。夕日の映り込んだ海に哀愁漂う音色が吸い込まれていく様子はどことなく風流のある情景だ……と思いながらも弓を引く。
気がつけば夕日は海に沈みかけており星が次々と顔を覗かせていた。
「……相変わらず上手だね」
「露葉さんか……」
いつの間にか隣には露葉さんが座っていた。どうやら風呂に入ってきたばかりらしく髪の毛が湿っている。いや、露葉さんだけではない。雫やユエ、ティオも俺の傍に寄ってきていた。
ちなみにハジメ、香織、シアは俺とは反対側の甲板に居るらしい。
「……音也、宮廷のヴァイオリニストになってほしい」
「なんだそれ……あ、昔は宮廷のヴァイオリニストが居たのか?」
「ん……でも音也ほど上手じゃなかった」
「音也ほど上手なヴァイオリニストはこの世に存在しないと思うわよ?」
「それもそうだよね。だって日本でも神童だったり天才だなんて呼ばれてたし」
「天才だなんて……いや、普通に嬉しいや」
「ふむ。ご主人様の腕前は確かなものじゃの。故郷にもヴァイオリンを弾く者はいたが……ここまで心で聞く演奏をする者は見たことないぞよ」
「心に響く……ね。確かにそれは分かるかも。なんというか、耳で聞く分には凄い演奏程度の感想なんだけど心で聞くと……何かが違うのよね」
どうやら俺の演奏は耳で聞くのではなく心で聞く演奏らしい。俺自身はよく分からないのが痛いのだが……まあ仕方がないか。
その後も雫たちは俺の演奏についての感想を述べ、盛大に照れることになるのだが……これはまた別のお話。
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一方ハジメside
「ハジメくん、隣座っていい?」
「好きにしな」
「あ、私はここに座りますねぇ」
「……本当にフリーダムな奴だな」
「ハジメさん最近香織さんに構い過ぎですよぉ……たまには私にも構ってください」
「シアさん、ハジメくんは旅の最中どんな感じだったの?」
「そうですねぇ……基本はツンケンしてるんですけど時折見せる優しさがとても格好良いんですよね。私はそこに惚れちゃいまして」
「そうなんだ……ハジメくん、この世界でも内面は変わらないんだね」
「るっせ」
「ほら、いつもはこんな感じでツンケンしてるんですよ。たまにゲンコツ落とされますしねぇ」
「それはお前が痴女みたいな発言するからだろ? それに俺の身に危険を感じたから正当防衛だ。セーフセーフ」
「うう……香織さんとの扱いの差が酷すぎます」
「ハジメくん……ダメだよ。差を作ったら」
「俺が愛してるのは……いや、これ以上は泥沼だな。止めるか」
「なんか釈然としないなあ……」
「そう言うなって。ほら、月が昇ったぞ……」
立ち上がるハジメ。その目は真っ直ぐと音也の持つグリューエン大火山攻略の証であるペンダントを捉えているのだった。
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「わあ……ランタンに光が集まっているわね」
ペンダントのサークル内には女性がランタンを掲げている姿がデザインされており、ランタンの部分だけがくり抜かれていて穴あきになっている。そこに月がすっぽり埋まるようにかざすとランタンに光が溜まり始めたのである。
やがてランタンに光を溜めきったペンダントは全体に光を帯びると……その直後、ランタンから一直線に光を放ち、海面のとある場所を指し示した。
なるほど、「月の光に導かれて」というミレディの言葉は正しかったらしい。随分と粋な演出で感動した。
俺は全員を潜水艦内に押し込んで潜行を開始した。真っ黒な夜の海をライトとペンダントの放つ光だけが闇を切り裂いている。その光は海底のある一点を指し示していた。
その場所は海底の岩壁地帯だった。無数の歪な岩壁が山脈のように連なっている。昼間にも探索した場所でその時には何もなかったのだが……潜水艦が近寄りペンダントの光が海底の岩石の一点に当たると、ゴゴゴゴッ! と音を響かせて地震のような震動が発生し始めた。
その音と震動は岩壁が動き出したことが原因だ。岩壁の一部が真っ二つに裂け、扉のように左右に開き出したのである。その奥には冥界に誘うかのような暗い道が続いていた。
「よくよく考えたらハジメのアーティファクトってチートアイテムだな。本来なら結界を張って気流調節しながらここまで来ないとダメなのに……」
「音也のイクサもかなりのチートアイテムじゃないか? それ一つで案外なんでも出来るだろうよ」
売り言葉に買い言葉。相変わらずハジメは口が上手い。なんてことを思いながら俺は途中で見つけた五つの岩にランタンに溜まった光を照射したり襲い来る魔物を魚雷で退けたりしながら潜水艦を先へ進めた。
と、少し油断しつつも進んでいたが……そういう時に限って何かが起こるものだ。
「ん?」
「お?」
「なんだ?」
「ん……」
「あら?」
「ぬおっ」
「はうぅ!」
「ひゃあ!?」
「危な……大丈夫?」
突如として股間がフワッとした。そしてその次の瞬間にはズシンッ! と潜水艦が地面に激突したらしく、激しい衝撃が船内に伝わったのである。
ちなみに吹き飛ばされかけた香織は露葉さんが助けていた。イケメン。
潜水艦の外は大きな半球状の空間だった。頭上を見上げれば大きな穴がありどういう原理なのか水面がたゆたっている。水滴一つ落ちることなくユラユラと波打っており俺たちはそこから落ちてきたようだ。
「全て水中って訳じゃないんだな……有り難い」
「だな……とりあえず、だ」
『『レ・ディ・ー』』
「「変身」」
『『フィ・ス・ト・オ・ン』』
久しぶりの同時変身。からの……。
『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』
『イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・アッ・プ』
俺が地面に、ハジメが天井に攻撃を加える。地面には五億ボルトの電磁波が迸り天井には太陽が如くの熱戦が駆け巡る。
ぶっちゃけただの地獄なので俺たちの後ろ側に被害が及ばぬようユエには結界を張って貰っている。後で礼をしないと。
なお俺たちの必殺技ラッシュによって通路の奥にも潜んでいた魔物が全滅していた。どうやらフジツボモドキやヒトデモドキが控えてたらしい。まあ全部地面に半身を溶かしながら落ちているが。というか溜まり水らしき場所も蒸発してただの窪みになっている。どれだけ凄まじい空間だったのかがよく分かった。
「む? ご主人様よ。まだ魔物が奥に居るぞよ」
「……みたいだな。どうやらあれが本命らしい」
先にある大きな空間に魔力反応があった。しかもここまでの魔物と一線画する強さである。先ほどまでの魔物が前菜なら今目の前にいる魔物はメインディッシュ……と言ったところか?
しかしどんな魔物が来ようとも邪魔をするなら潰すだけである。
俺はスーツ内で獰猛な笑みを浮かべながら目の前にある大きな空間へと足を踏み入れるのだった。
メルジーネ海底遺跡はあと2,3話使うかもです。もしかしたら、ですけど…()
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)