その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
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「……! ……パ!」
「なんだ……まだ寝かせろよ……」
「パパ! 起きるの!」
耳に入った我が娘の声に意識が一気に覚醒する。俺は確か、海のど真ん中でクリオネモドキと共に自爆して、その後は……思い出せない。五体が一応無事なことを見るに、他のメンバーも恐らく無事なのだろう。
キングスワールドエンドを使用した俺は、自爆技にも関わらず変身者とキバットを生還させる方法を思いついた。その方法とは空間魔法を使うことである。爆発するコンマ一秒にキバットを空間魔法で作り出したワープゲートに放り込み、俺自身は爆発をバットファンガイアで無理やり耐えることにしたのである。
「パパ! 良かったの……起きたの!」
「……雫たちは?」
「お姉ちゃんたちはみんな部屋にいるの。ピンピンしているの」
「そうか……良かった」
改めて無事が伝えられたことで心から安堵する。どんなに信じていたとしても、心配なものは心配なのだ。今回ばかりは二次災害も大きかっただろうに……よくぞ無事でいてくれた。
「バカ……また離ればなれになるのかと思ったじゃない」
「悪かったな。方法があれしか思いつかなかったんだよ」
「……罰としてしばらくはこのままで居てよ」
「お安いご用さ、お姫さま?」
歯がガタガタ言いそうなセリフを平然と口にする。キバ本編の音也よりは比較的マシであると思いたい。マシだよね?
と、一人悶々としていると雫が見つめてきたのですかさず抱き締め返す。それだけで満足そうに喉を鳴らすのだから困ったものだ。とはいえ可愛いのには間違いないので俺は目元を緩めて雫の髪を撫でるのだった。
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俺が目を覚ましてから一週間が経過した。本当なら一週間も滞在する必要はないのだが……これにはしっかりとした理由が三つある。
まず、手に入れた再生魔法の鍛錬のために、というのが理由の一つである。再生魔法は空間魔法並みに扱いが難しく、一週間使ってようやく数秒で発動するまでにこぎ着けたのである。ちなみに再生魔法は回復にも使えるし死人を蘇らせることもできる。
そして次の理由が、イクサに新たな発見があったのでそいつの調整をしていたのである。ライジングイクサの時に使うライザーフエッスル。あれをプロトイクサのベルトに読み込ませたらどうなるのだろうか? と疑問に思った俺は、試しに変身してからライザーフエッスルを差し込んでみた。
結果は……気がついたら変身解除しており、ハジメ、雫、露葉さん、シアがぶっ倒れていた。何があったかを聞くと、ライザーフエッスルを読み込ませたイクサは何故か黒と銀を基本としたスーツに変わったらしい。そしてその姿に変わった直後、俺は一番近くに居たハジメに襲いかかったそうな。ハジメは三発ほどで気絶したらしく、騒ぎを聞きつけた雫、露葉さん、シアが頑張って俺からベルトをもぎ取ったらしい。黒いイクサに変身中の俺は、一言も喋ることなく人間の急所ばかりを狙う……まるで機械のような動きだったという。原因究明は今だ出来てないのだが、戦闘力だけは凄まじいので今後の戦闘に取り入れることを検討している。
そして三つ目の理由。俺たちとミュウはこのエリセンの町でお別れだ。とても四歳の少女を大迷宮に連れて行くことなど出来ない。しかし別れ話を切り出そうとすると、ミュウは決まって超甘えん坊モードになり、「必殺! 幼女、無言の懇願!」を発動するので中々言い出せずにいた。
「はあ……そろそろ切り出さないとなあ」
現在俺は、桟橋に腰をかけている。目の前にはミュウVS雫たち美女~ズの鬼ごっこが繰り広げられている。海人族の特性を十全に発揮してチートの権化達から華麗に逃げ回るミュウを見るのはとても微笑ましいのだが……やはり憂鬱なのだ。
と、どこか浮かない表情を浮かべながらため息をついていると……突然足下からザバァ! という音が聞こえた。海中から水を滴らせて現れたのは、ミュウの母親であるレミアだ。何故か両足の間に出てきた。レミアは俺の膝に手を掛けて体を支えると、かなり位置的に危ない場所から俺のことを見上げている。しかし体勢や未亡人であるが故の肉体が放つ色気とは裏腹に、レミアの表情は優しげである。
「有難うございます。音也さん」
「どうした? 急に……」
「うふふ、娘のためにこんなにも悩んで下さるのですもの……母親としてはお礼の一つも言いたくなります」
「……まあバレてるよな。俺はその辺を隠すのは苦手だし」
「ミュウだって幼いなりに考えているんです。あの子もこれ以上、大好きなパパを引き止めていてはいけないと分かっているのです」
どうやら幼子にすらも気遣われていたらしい。そうなってしまっては世話ない。ミュウの無言の訴えが、行って欲しくないけれどそれを言って俺たちを困らせたくないという気遣いの表れだったとは……全く、逞しく成長したものだ。父親として、とても嬉しく思う。
「……分かったよ。今日、話をしよう。明日出発するってな」
「では、今晩はご馳走にしましょう。音也さんたちのお別れ会ですからね」
「そうだな……期待してるよ」
「うふふ、はい、期待していて下さいね、あ・な・た♡」
「据え膳食わぬは男の恥ってか? いやしかしなあ……」
……その後、俺たちに気がついた雫たちが鬼の形相で寄ってきたのは別の話である。
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「……もう、会えないの?」
「…………」
夕食前。俺はミュウのことを真っ直ぐ見て、明日には出発すると伝えた。ミュウは着ているワンピースの裾を両手でギュッと握り締め、懸命に泣くのを堪えている。
二度と会えないのか。これは答えにくい質問だ。今だに帰る方法は見つかっていないしどのような形でどのタイミングで帰ることになるのか分からない。それにもうエリセンに来ることがないかもしれない。これが今生のお別れの可能性だってあるのだ。
「……パパは、ずっとミュウのパパでいてくれる?」
どう答えるべきかと悩んでいると、ミュウはその答えを聞く前に言葉を重ねてきた。俺はそんなミュウに対して、両肩をしっかり掴むと真っ直ぐ視線を合わせた。
「ミュウが……そうして欲しいなら。俺は何時までもお前のパパでいるさ」
「なら、いってらっしゃいするの。それで、今度は、ミュウがパパを迎えに行くの」
「迎えに……か?」
あまりにも無謀で、実現不可能な目標だ。きっとミュウは、俺が世界を越えて自分の故郷に帰ろうとしていることを正確には理解していないのだろう。それ故に出てきた考えのはずだ。
しかし、「無理だ」とは言えなかった。その理由は簡単だ。ミュウの表情が、まるで困難を相手する時の俺のような表情だったからである。
「パパが行けるなら、ミュウも行けるの。だって……ミュウはパパの娘だから」
「ミュウ……」
しっかりと、この短い期間で俺の背中を見て成長してくれたらしい。そんなこの子を……いや、愛しい娘を、今更手放そうなんて思うわけがない。俺は一つ、誓いを立てることにした。
「ミュウ、約束しよう」
「約束?」
「全部終わらせたら。必ず、ミュウのところに戻ってくる。みんな連れて、ミュウに会いに来る」
「……ホント?」
「あったり前だ。ミュウに嘘吐いたことなんてないだろう?」
何時になるかは分からない。もしかしたら一生会えないかもしれない。だが今は、そんなこと考えなかった。考えようともしなかった。父親たるもの、愛娘との約束を守れないなんて有り得ない。
「帰ってきたらミュウも俺の故郷へ連れて行ってやるよ。俺の故郷、生まれたところはな。この世界以上にびっくり箱のような世界なんだ」
「パパの生まれたところ……みたい!」
「よし、なら良い子にして待ってるんだ。ママを困らせたらダメだぞ?」
「はいなの!」
ミュウを肩車しながら約束を交わす。と、同時にレミアに視線を送った。事を勝手に決めてしまって申し訳なかった、と。
そんな俺に、レミアは優しく首を横に振った。その暖かな眼差しには、責めるような色は微塵もなく、むしろ感謝の念が含まれていた。
「ねえパパ。ママも一緒?」
「そ、そうだな……母親を置いて行くなんて無理だよな」
「はい、あなた。娘と旦那様が行く場所に、付いていかないわけないじゃないですか。うふふ」
オマケでとんでもない約束が付いてきた。ミュウを娘と見るならレミアは妻である。ついさっきの俺の父親宣言は、ある意味で婚約になる。
その事に気がついたのか、雫たちが一気に俺の元へ攻め込んできた。先ほどまでのシンミリとした空気はどこへ行ったのだろうか。
しかしこの方が俺たちらしい、か。そんなことを思いながら、俺は自らが起こした喧騒を止めに入るのだった。
アンコントロールスイッチ! ブラックハザード! ヤベーイ!!
なんでこうなったのかは…私がハザードフォーム大好きだからです()
ちなみに黒いイクサの見た目は本来白い部分が黒に、青いラインが銀色に変わっています。フェイスシールドと胸の部分は据え置きです。
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)