※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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お待たせしました。最新話投稿です。それにしても初期の頃は一日5000UA…凄い()
ちなみに今後、時折キバ風のタイトルを入れてくつもりです。大抵キバ風のタイトルの時は重要な回だったり戦闘多めだったり…です(雑)


第十五楽章 無双・咲き乱れよ桜吹雪

ここは夜の王都。普段なら皆が寝静まり、どこか神秘的な空間が広がっているのだが……この日だけはかつてないほどの騒ぎに発展していた。

 

王都は大結界なるものが周囲を包み込んでおり、余程の事がない限りは魔人族の侵攻を受けることはない。大結界は異世界チート組であるクラスメイトでも割るのには一苦労するレベルに強固なのだ。破られた、という一報を聞いて信じる方がどうかしているだろう。

 

国民があわてふためき、王室が大慌てで対応に乗り出している中、到着した化け物組のうち雫と露葉は一足先に侵攻してくる魔物を迎撃しに出た。本来なら王都が攻め入られて滅ぼされても関心を持たないだろう。しかし音也が「先生を助けるために」とお願いをされて断る訳がない。結局、偵察に向いている八重樫姉妹が一足先に討伐へ向かい、音也とティオを除いた後のメンバーはリリアーナを光輝たちに届けるべく夜闇に紛れて王宮の隠し通路を進んでいた。ちなみにティオは王宮近くの上空で待機している。

 

しかし三重に張られた大結界が完全に壊された事によって時間がないと判断したハジメは、香織を残して魔物の迎撃に出かけてしまった。王女なのに扱いがどこか雑なリリアーナは涙目になっていたがそれを知る者はいない。

 

 

「……姉さん、聞いた?」

「ええ。あの巫山戯た白竜使いが大結界とやらを壊したみたいじゃない」

 

大量に攻め入ってくる魔物を前にして余裕綽々の八重樫姉妹。しかしその目は魔物には一切向いていない。大結界の先を見据えている。

 

彼女たちは相当ご立腹のようだ。【グリューエン大火山】にて不意打ちを受けたことをまだ根に持っているらしい。特に露葉は、あのクソ野郎のせいで音也のファンガイア化が進んでいると思っている。実際には他の要因もあるが、あながち間違いではないので反論の余地はない。

 

「やることは勿論?」

「当たり前よ」

「流石姉さん」

「お礼参りって所かしらね。とりあえず……」

「ええ。とりあえず……」

 

「「ぶっ殺す」」

 

なんとも物騒なことを平然と吐き出す八重樫姉妹。その瞳は殺意一色で染まり切っており、誰が見ても裸足で逃げ出すレベルに恐ろしい表情をしている。目の前にやって来た魔物を鬱憤晴らしのように必要以上に嬲っていることから彼女たちの心情がよく分かるだろう。

 

「〝瞬転〟」

 

露葉が音もなく空間魔法を発動させて転移する。〝瞬転〟は短い距離を一瞬で空間移動する魔法である。しかし彼女の手にかかれば一キロ程度なら連続で瞬間移動が可能だ。敵中真っ只中に転移した露葉は、ギョッとした表情を浮かべた魔人族や魔物を血の海に沈め始めた。

 

雫は少し遅れて最前線に到達。抜刀して一挙斬り捨てていく。

 

「〝斬羅〟」

 

雫も空間魔法を発動させた。〝斬羅〟は空間に亀裂を入れてずらす事で、対象を問答無用に切断する魔法である。雫はその魔法を己の剣に付与して発動させた。呆オーズの必殺の如く、一度剣を振るうごとに空間が連続で歪んでいく様は悪夢以外の言葉が思いつかない。

 

それは現在進行形で殺戮されている魔人族も同じらしく、まるで化け物か、神でも見たかのような尋常ではない表情をしている。

 

「〝爆炎の術〟」

「〝絶断〟。〝迅雷〟」

 

突然地上に紅蓮の花が咲き、空間を歪ませる神速のような剣撃が連続で飛ばされる。数十万は居たであろう魔物は跡形もなく姿を消し、命からがら助かった魔人族は全力で逃走を始めた。まるで何か凄まじい攻撃が来るのを予感していたかのように。

 

「雫」

「ん、姉さん」

 

その場を光のように立ち去る二人。直後に何もない空間に楕円形の膜が出来たかと思うと、そこから特大の極光が迸った。極光は、一瞬で雫たちが直前までいた場所を跡形もなく消し去り、それだけにとどまらず射線上にあった建物を根こそぎ吹き飛ばしていく。

 

「何という速度だ。忌々しい……」

 

男の声が響くと同時に、楕円形の膜から白竜に乗った赤髪の魔人族フリード・バグアーが現れた。その表情には、渾身の不意打ちが簡単に回避されたことに対する苛立ちが見て取れる。

 

白竜が完全に〝ゲート〟から現れると、タイミングを合わせたように黒鷲や灰竜に乗った魔人族が数百単位で集まり、雫と露葉を包囲した。

 

しかし、二人に焦りの表情は見受けられない。むしろ嬉しそうな表情である。長年の親の仇を見つけたような、狂気に彩られた笑み。音也やハジメが作り出す殺気や威圧感とは別ベクトルに恐ろしいその表情は、フリードや他の魔人族を畏怖させるのには十分だった。

 

満月を背に宙に浮く雫と露葉。雫が手に持つ剣が月光を反射し、三種の神器である天叢雲剣を手にしているかのような神々しさを感じさせられ、露葉の艶のある黒髪が風に揺られて月明かりを辺りに振りまいている。初めて見た人間は女神が二人降臨したのかと勘違いするかもしれない。

 

 

「来なさい。坊やたち」

「小娘ごときがぁ!」

「神敵のくせして調子に乗るなぁ!」

 

露葉の挑発に乗せられた若い魔人族たちが、フリードの制止を振り切って我先にと突撃を開始した。しかし半径一メートル以内に近づいた途端に雫の神速の抜刀術によって斬り捨てられる。運良く死を免れた所で数秒命が延びるだけ。露葉の仕込み針によって永遠の旅へと出かけることとなった。

 

「惜しいな。……しかし、いくら無詠唱という驚愕すべき技を持っていたとしても、この状況を切り抜けるのは無謀というものだろう。どうだ? 私と共に来ないか? お前ほどの女たちなら悪いようにはしない」

「はあ? 気持ち悪いわね。私の心は音也に捧げてるの。あんたのようなブ男の元へわざわざ降りることなんて天と地がひっくり返っても有り得ないわよ」

 

雫の吐き捨てるような言動に青筋を立てるフリード。それを見た露葉がフッと鼻で笑ったのも原因の一つだろう。

 

「殉教の道を選ぶか? それとも、この国への忠誠のためか? くだらぬ教え、それを盲信するくだらぬ国、そんなもののために命を捧げるのか? 愚かの極みだ。一度、我らの神、〝アルヴ様〟の教えを知るといい。ならば、その素晴らしさに、その閉じきった眼もッ!?」

 

最後までは言わせない、聞きたくないとばかりに露葉が先制攻撃を仕掛けた。仕込み針を飛ばして即席の弾幕を張り、対処に追われている所へ容赦なく炸裂弾を放り込んでいく。

 

さらに間隙を突いて雫がフリードの背中側に回り込んだ。当然フリードは雫を迎撃しようと後ろを振り向くのだが……教科書のお手本通りに戦っては化け物組を倒すことなど到底不可能なことを彼はまだ知らない。

 

「〝跳魚〟」

 

ズドア!

 

「ぐっはあ!?」

 

フリードの脳天を露葉が宙返りからの体重を乗せた踵落としで蹴り飛ばした。さらに蹴った側から跳躍。今度は高い位置から急降下する。

 

「〝海月〟」

「ガア!? き、貴様っ」

「どこを向いているのかしら?」

「んな……しま――」

 

「〝桜乱〟」

 

桜の花びらが飛び散り、雫の剣がフリードに肉薄した。フリードは無理やり障壁で防ぎながらも必死に詠唱しようとしているが、隙を見せた瞬間に即死攻撃が飛んでくる。

 

「〝吹雪の舞〟」

「か、体が……凍って!?」

「余所見する余裕があるのね? 大した者だわ」

「があああ!?」

 

雫の方を向けば露葉にやられる。露葉の方を見れば雫に斬り伏せられる。フリードぐらいの強さではほぼ詰み状態である。特に八重樫姉妹の連携はハジメやティオですら手を焼くのだから当然だ。対応出来るのは動きの癖を知っていて、かつ迅速に脳内でシミュレーションして体を動かせる音也だけである。

 

化け物組ですら対処に困る二人の連携を食らったフリードは、咄嗟に左腕をかざして雫の剣を受けた。当然、左腕は宙を舞って地上に落ちていくが、脳天に剣が刺さらなかっただけ儲け物と言える。

 

そしてここに至るまでフリードは気がついていなかったが、白竜の方も手酷い傷を受けていた。いくらフリードが仕込み針を躱せたとしても、白竜まで躱せるとは限らない。しかも仕込み針だからといって油断していると、空間魔法を付与されている仕込み針が装甲を易々と破って急所にブスブスと突き刺さるのだ。しかも〝爆炎の術〟の余波や〝吹雪の舞〟をモロに食らってしまった白竜は、どうして宙に留まり続けられるのか不思議なぐらいの傷を負っていた。

 

 

「……今の私では……勝利を得られないということか。……かくなる上はっ」

「あら、させないわよ?」

「どの面下げて逃げてくのかしら?」

「フリード様! 一度お引き下さい!」

「我らが時間を稼ぎます!」

「お前たち! ……くっ、すまん!」

 

トドメを刺そうとした八重樫姉妹だが、地上から放たれた怒濤の魔法攻撃によってそれは阻まれることになった。フリードはその隙に、命からがらゲートを開き、その中へ逃げ込んで行った。

 

獲物を逃がした事に不満の表情を浮かべる八重樫姉妹に、防御は一切考えない特攻を敢行する魔人族たち。しかし二人に近寄った直後、彼らは絶望的とも言える情景を目の当たりにする事になった。と、言うのも露葉が片手に扇子を持ち、先ほどまではなかった詠唱を始めたからである。

 

 

「――――常闇に生きる大輪の花よ 人の如く意思を持て 刃の如く獲物を切り裂け 今ここに 咲かせてみせよう 〝乱れ桜吹雪〟」

 

実のところ、露葉は魔法の適性が元々はそこまでな人間だ。随分と前に渡されたステータスプレートに敏捷のみ優れているような表記をされていた。しかし、ここ最近の露葉は黒いイクサの暴走を止めたり、そこまで苦戦することもなく大迷宮を突破している。その理由は彼女のステータスにある。

 

====================================

 

八重樫露葉 18歳 女 レベル:80

 

天職:芸者

 

筋力:11500

 

体力:10530

 

耐性:10100

 

敏捷:41500

 

魔力:9300

 

魔耐:9300

 

技能:投擲術・分身術[+3人]・読心術・解毒術・縮地[+爆縮地][+重縮地][+震脚][+無拍子][+神速]・先読[+投影]・気配感知・熱源感知・気流感知・気配遮断・隠業[+幻撃]・変わり身・変装・声帯操作・呼吸操作[+停止][+水呼吸][+体力回復][+魔力回復][+怪我治癒][+電撃][+焼撃][+解毒]・魔力操作[+魔法効率上昇][+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+体力変換][+身体能力強化][+高速構築]・纏雷・毒耐性・風属性適性[+消費魔力減少][+効果時間増加]・複合魔法・生成魔法・空間魔法・再生魔法・言語理解

 

====================================

 

色々と突っ込みたいステータスになっていたのだ。彼女はその足を使って、皆が寝ている間にオルクス大迷宮の攻略を終わらせていたのである。その過程で魔物の肉を食らっており、新しい技能が増えていたり能力値が急激に上昇している。ちなみに露葉の髪は今でも真っ黒である。彼女の解毒術は魔物の肉に入っている毒ですらも無効化するのだ。なんならヒュドラの放つ極光ですらも無効化してしまうので、敵からしたら厄介極まりない。

 

露葉が発動した〝乱れ桜吹雪〟は、風属性の最上級魔法と忍術を掛け合わせた物である。何処からともなく現れる桜の花びらを暴風によって対象に飛ばし、刃と化した花びらによってズタズタのメタメタに体を引き裂いてしまう大技中の大技である。魔力操作によって詠唱が必要ない今でも詠唱を行わないと上手く魔法と構築が出来ない代物なのだ。その分、破壊力は折り紙付きだが。

 

露葉が扇子を真上にかざすと満開の桜が周囲に花が咲き乱れた。月明かりに照らされた大量の桜は、月見団子と日本酒をお供に空を見上げれば、きっと素晴らしい光景を楽しむことが出来ただろう。

 

しかし、現代を生きる忍者はそれを許さない。扇子をバサッと下に向かって振り下ろすと、露葉と魔人族たちとの間にピンク色の巨大な竜巻が現れた。周囲を巻き込みながらもピンク色の竜巻は、時が経つごとに風力を増して魔人族をこれでもかというぐらいに切り刻んでしまった。

 

「全く……満たされないわ」

 

露葉の苛立ちと侮辱をたっぷりと込めた呟きが、やけに静かになった辺りに木霊するのだった。

 




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