※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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昨日は38,7の高熱、のたうちまわるレヴェルの腹痛、一時間おきに嘔吐という最悪な体調だったので遅れました…今も腹痛はアカンですけど()
胃腸炎ホント辛いです…あ、そういえば感想が90件を越え、話数も80に達しました。感想をくださった方、本当にありがとうございます!


第十六楽章 閃紅・傀儡人形如きに

八重樫姉妹がフリードをぶちのめしている頃。

 

「さて……先生を助けないとな」

 

俺は愛子先生が幽閉されているであろう【神山】の頂上付近の高い塔を人力で駆け上る。一応、聖教教会関係者が見張っていたが俺の気配遮断によって気がつく様子は一切なかった。

 

ファンガイアバスターを使用して塔を登ること数分。頂上付近に取り付けられた鉄格子を発見したのでそこから内部を覗き見る。

 

中は部屋であった。部屋の中は酷く簡素な作りになっている。鋼鉄造りの六畳一間、木製のベッドにイス、小さな机、そしてむき出しのトイレ。地球の刑務所の方がまだましな空間を提供してくれそうだ。そんなどう見ても牢獄にしか思えない部屋のベッドの上で壁際に寄りながら三角座りをし、自らの膝に顔を埋めているのは愛子先生その人である。

 

「先生」

「ふぇ!?」

「こっちだ。鉄格子の傍だ」

「え、ちょちょ、え? 紅くんですか? ここ最上階で…本山で…えっ?」

 

取り乱した先生。まあ仕方ない。とりあえず「落ち着け」とだけ伝えて、俺はファンガイアの力の一部を使用することにした。

 

壁を細かい震動が伝わった……と、思うと次の瞬間にはバラバラに砕けて人間一人が通れる大きさの穴が開いた。そこから悠々と部屋内に侵入。先生の手に付けられている魔力封じらしきアーティファクトを破壊した。

 

「行くぞ」

「あ、あの、なぜここに……」

「助けに来たからに決まってるだろ?」

「た、助けに? 私のために? わざわざ助けに来てくれたんですか?」

「まあな」

 

死なれたらこっちも面倒くさくなるとまでは口にしない。一応、その辺りまでは空気を読める。普段は敢えて読んでいないだけだ。

 

「あの、誰に私がここに居ると?」

「姫さんから聞いたんだよ」

「姫さん……リリィさんですか」

「なんでも攫われる所を見てたらしくてな。だが王宮内は警備が厳重で天之河たちに知らせることは不可能。だから単身で城を抜け出して俺たちに助けを求めて来たんだ」

「そう、でしか……」

 

あまり悠長に話している時間はない。現在進行形でこちらにハジメレベルの強さを誇る何かが飛来してきてるのだ。事態は一刻を争う。

 

俺は愛子先生の事をお姫様抱っこし、何かを喚いている先生をサクッと無視して穴から飛び出した。

 

〝ティオ、先生を頼むぞ!〟

〝承知!〟

 

「先生、すまない」

「へ? あ、あの紅く……」

 

項に手刀を落として先生の意識を刈り取り、ティオが飛来してくる方へ向かって先生の事を思いっきり放り投げた。きっとティオが何とかしてくれる。多分。

 

しかし雑ながらも先生を退避させたのにはしっかりとした理由がある。

 

 

カッ!

 

『ラ・イ・ジ・ン・グ』

「……ギリギリセーフ、てか?」

 

「あの不意打ちを、しかも分解作用のある極光を難なく躱す。やはり貴方は危険すぎます、イレギュラー」

 

鈴の鳴るような透き通った声。俺は後ろを振り向いた。そこには、銀髪碧眼の女がいた。まるでドレス甲冑のようなものを纏っており、ノースリーブの膝下まであるワンピースのドレスに腕と足、そして頭に金属製の防具を身に付けている。さらに腰から両サイドに金属プレートを吊るしている。どう見ても戦闘服だ。

 

銀髪の女は、その場で重さを感じさせずに跳び上がった。そして、天頂に輝く月を背後にくるりと一回転すると、その背中から銀色に光り輝く一対の翼を広げた。

 

バサァと音を立てて広がったそれは、銀光だけで出来た魔法の翼のようだ。背後に月を背負い、煌く銀髪を風に流すその姿は神秘的で神々しく、この世のものとは思えない美しさと魅力を放っていた。

 

しかしその瞳は、まるで生気を窺い見ることが出来ない。動きも何処となく機械的だ。全てが揃っているというのに、たった一つ欠けているだけでこうも残念な結果になるらしい。

 

そんなこんなしているうちにガントレットが一瞬輝き、次の瞬間には、その両手に白い鍔なしの大剣が握られていた。銀色の魔力光を纏った二メートル近い大剣を、重さを感じさずに振り払った銀色の女は、俺に対してやはり感情を感じさせない声音で告げた。

 

 

「ノイントと申します。〝神の使徒〟として、主の盤上より不要な駒を排除します」

 

神の使徒。以前フリードのアホが名乗っていたが……こいつはフリードと比較にならない強さを感じる。どうやら本当の意味での〝神の使徒〟らしい。そろそろ俺の存在は〝神の遊戯〟からは邪魔、だそうだ。

 

ノイントから溢れだす銀色の魔力が空間を軋ませる。しかしそれを柳に風と受け止め、俺はキバの鎧の中から不敵な笑みを浮かべた。

 

「やってみろ、神の傀儡人形さんよ」

 

軽く首を傾け、指をクイクイッとする。その仕草を見せた刹那、ノイントの翼がバサッと羽ばたいたかと思うと、殺意をたっぷり乗せた銀羽の魔弾を射出してきた。

 

対するは史実でも名を馳せたゲルリッヒ砲とイクサライザー。一射ごとに銀翼を撃ち落とすか消滅させるかして俺の身を守る。

 

業を煮やして近接戦闘を仕掛けてくるものならば、俺はイクサナックルを取り外してノイントの大剣を回避。ゼロ距離から衝撃波を発射してノイントを吹き飛ばした。

 

銀翼を集めて形成した魔法陣を作り出し、「〝劫火浪〟」の一言によって生み出された炎の津波。しかし其れ等はナックルフエッスルを取り出してベルトに読み込ませることで相殺を開始する。

 

『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』

 

「……これも難なく防ぐのですか」

「その程度の炎。露葉さんの忍術やティオのブレスには足下にも及ばない」

 

電磁波によって大火に穴を開けて難なく回避。どこか畏怖したかのようなノイントの声が辺りに響き渡る。とりあえずその隙を見逃すつもりはないので、俺はイクサライザーの引き金を数回引いてからゲルリッヒ砲を発射。一気に距離を詰めようとした、その次の瞬間である。

 

突如、【神山】全体に響くような歌が聞こえ始めた。何事かと思って歌声のする方へ視線を向ければ、そこには、イシュタル率いる聖教教会の司祭達が集まり、手を組んで祈りのポーズを取りながら歌を歌っている光景が目に入った。どこか荘厳さを感じさせる司祭百人からなる合唱は、地球でも見たことのある聖歌というやつだろう。

 

どういう訳か、その聖歌は俺の魔力を露散させていく。更には体に光の粒子のような物が纏わり付いて動きにくくなった。別に魔力は魔皇力で補えるので問題ないが、動きにくいのは少し面倒くさい。

 

「イシュタルですか。……あれは自分の役割というものをよく理解している。よい駒です」

「まあ中身はともかく、あそこまで神を妄信してるんじゃな。確かによい駒だな。俺もそう思うよ」

 

とりあえず恍惚な表情をしているイシュタルたち聖教会の人間が気持ち悪いのでティオに念話を飛ばした。今頃は先生を背中に飛んでいるはずだ。

 

「ティオ、聞こえるか? 聞こえていたら下に居る老害共をぶちのめしてくれ」

 

〝ほお……流石はご主人様じゃ。老害共というのは聖歌を歌っている人間のことかの?〟

 

「そうだ。とりあえず頼んだぞ」

 

〝任せよ。後で折檻……ご褒美を所望する〟

 

「全く調子の良いやつだぜ……」

「雑談とは随分な余裕ですね、イレギュラー」

 

一発がレールガンレベルの銀翼、そしてユエ並みの発動速度の魔法が怒濤の勢いで押し寄せてくる。視界なんてあった物じゃない。目の前に広がっているのは殺意のみ。

 

マシンガンのような発射速度で銀翼を撃墜していくイクサライザーと魔法を難なく打ち消すゲルリッヒ砲のお陰で今のところは無傷。しかしこのままではジリ貧である。と、言うのもノイントの魔力が消費されてる様子がなかったからだ。あれだけの攻撃をノータイムで行えば嫌でも魔力を消費するが、その様子が一切見受けられない。義眼で確認してみると、ノイントの心臓部分には魔力供給源となる場所があるらしく、そこが機能している限りは奴の魔力は尽きないらしい。

 

奴の魔法攻撃と銀翼、そして大剣を掻い潜って魔力供給源を破壊する方法。それを考えるためにも俺はノイントに話しかけた。

 

「なあ、このまま俺に構っても良いのか?」

「……何のことです?」

「下で起きていることさ。このままじゃ王国は滅びるぞ? 次は当然、この【神山】だ。俺なんかに構ってないで、魔人族たちと戦った方がいいんじゃないのか?」

「仮にそうなったとすれば、それがこの時代の結末ということになるのでしょう」

 

この時代の結末。あくまでも人間と魔人族との戦いは神の遊戯でしかなく、暇つぶしの駒でしかないということか。ミレディの言う通り、本当にクソ野郎である。

 

「なるほどな。結局のところお前を傀儡人形として操っているバカ神は、どこまでも子供らしくアホ野郎って事か。よく分かった」

「……私を怒らせようというのなら、無駄です」

「は? 何を言ってる。紛うことなき本心に決まっているじゃないか」

 

ククッと嫌らしい笑い声を上げながらノイントに蔑みと、若干の哀れみの感情を送る。ノイントは少しだけ眉をしかめたが……すぐに無表情に戻った。主の事を、そして自らのことを馬鹿にされて多少は苛立ったのだろうか。

 

「やはり貴方は、主の駒に相応しくない」

「そりゃ嬉しい。ニートこじらせた挙句、構ってくれないと駄々こねる迷惑なクソ野郎に相応しくないなんて最高の評価だな。どうもありがとう」

 

「消えなさい。神への反逆者」

 

勝った。この瞬間、俺は勝利を確信した。傀儡人形は傀儡人形らしく無表情で淡々と任務をこなせば良い物を……生の感情を剥き出しにして戦うなど、笑わせてくれる。

 

俺はライザーフエッスルをベルトに差し込み、ゲルリッヒ砲とイクサライザーを改めて手にすると、天歩と縮地を使って一気に宙を駆けだした。

 

ノイントはと言うと、体全体が銀色の魔力で覆われており感じる威圧感が跳ね上がっていた。まるで〝限界突破〟である。しかもついさっき話したように、魔力の消費を見受けられないので持続時間は無限だろう。更にはおびただしい銀翼の弾幕と一発が最上級レベルの魔法が辺りを覆い尽くし、先ほどまでとは格が違う。まるでノイントの怒りを表しているかのようだ。

 

しかも動く速度がかなり速くなっており、自らが放つ弾幕を追い越す勢いで進撃してくる。余りの速度に残像が発生し、常にその姿を二重三重にブレさせているので少し厄介だ。

 

「はぁああッ!!」

「ちっ!」

 

ノイントが接近してきたのでゲルリッヒ砲を一度宙に投げ、イクサカリバーを取り出して二振りの大剣を受け止める。その間に〝瞬光〟と〝風爪〟を発動させてほんの少しだけ距離を取り、イクサライザーで射撃しながら風爪を振るう。

 

多少被弾はしたらしいノイントは風爪を大剣で弾き返し、顔を歪めながらも突撃を止めない。より一層、速く鋭く大剣を振り回し、一瞬油断をすれば最上級魔法を飛ばしてくる。筋一本、神経一筋、扱いを間違えただけで、次の瞬間には死が確定する。そんな勢いだ。どんな手を使ってでも俺の命を削り取ろうとしてくる。

 

しかし……ヴァイオリンを扱っていれば分かることがある。張り詰めすぎた弦はとても切れやすい、と。

 

 

『イ・ク・サ・ラ・イ・ザ・ー・ラ・イ・ズ・アッ・プ』

 

「こけおどしをっ」

「お前には遊び心がないんだよ。張り詰めた弦はすぐに切れるぞ?」

 

イクサカリバーを投げつけながらベルトを内に押し込む。それを「こけおどし」と評するノイントだが……頭が固いとこの世界では生きていけない事ぐらい知らないのか?

 

俺は宙から落ちてきたゲルリッヒ砲を手にし、空間転移リロードで装填した〝空間固定弾〟を発射した。〝空間固定弾〟は、ハジメが制作した弾に空間固定を付与した弾薬である。命中の瞬間に空間固定が発動し、対象をその場に拘束するというかなりのチート弾薬だ。

 

「ッ! これはっ、動けない!?」

「チェックメイト」

 

ノイントの分解能力を持ってしても神代魔法の力はそう簡単には逃がしてくれないらしく、殆ど分解が出来ていない。そしてこの短い時間の間に晒された僅かな隙。見逃すつもりはない!

 

 

ドゴォオオオオオオオオオオッ!!!

 

 

ファイナルライジングブラスト。後方へ吹き飛ばされながらも、俺はノイントの心臓部分を狙って引き金を引いた。ついでに俺は真後ろに向かってゲルリッヒ砲を発射した。別に撃発で方向転換しようとは一切考えていない。反動を抑えるぐらいなら重力魔法で事足りる。

 

なら何故?それは簡単。遊び心だ。遊び心も分からないんじゃ、異世界ではやっていけないぞ?

 




遊び心。これで分かる人居ますよね?()
次回辺りから恵里と絡みに行きます。お楽しみに!

※今さっき確認したらUAも12000になってました…感謝感激です!

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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