その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
感想は(マジな方で)活力源ですので、今後もよろしければお願いします。
雑多。
ヘルシャー帝国の首都はどんなところ? と聞かれて答えるなら、その一言だろう。
徹底的に実用性を突き詰めたような飾り気のない建物が並んでいる一方で、後から継ぎ足し続けたような奇怪な建物の並ぶ場所もある。ストリートは、区画整理? なにそれおいしいの? と言わんばかりに大小入り乱れ、あちこちに裏路地へと続く入口がある。
雰囲気も、宿場町ホルアドのようにどこか張り詰めたような緊張感があり、露店を出している店主達ですら〝お客様〟という考えからは程遠い接客ぶりだ。
だが、決して暗く淀んでいるわけでも荒んでいる訳でもなく、皆それぞれやりたい事をやりたいようにやるという自由さが溢れているような賑やかさがあった。何があっても自己責任、その限りで自由にやれ! という意気が帝都民の信条なのかもしれない。
ヘルシャー帝国は先の大戦で活躍した傭兵団が設立した新興の国で、実力至上主義を掲げる軍事国家だ。帝都民の多くも戦いを生業としており、よく言えば豪気、悪く言えば粗野な気質だ。都内には大陸最大規模の闘技場などもあって、年に何度も種類の違う催しがなされており大いに盛り上がっている。
そんな中、俺たちは特に萎縮する事もなくテクテクと歩いて行く。連れが美女美少女なので結構な頻度でちょっかいを出されるが、即刻俺の右ストレートかハジメのヤクザキックを受けて轟沈している。
例外として、シアは顔を曇らせている。まあそれは仕方のないことだ。この帝都内には多くの檻と、その中に入れられた亜人を見かけるのだから。彼女は最近、とても頼もしくなって性格も多少落ち着いてきた。しかし彼女は、今では数少ない心優しいハウリアの女の子なのだ。奴隷にされた同族を見て、心に傷を負うのも仕方ないことであろう。
ちなみに当のハウリアは、現在帝都外で待機中だ。帝都の警護は異常レベルで厳戒であり、とてもハウリアが侵入する隙はなかった。こんな所にどうやってカムたちが入れたのかが謎だったが……噂話を盗み聞くに、彼らは十数人で数百人の帝都兵に包囲されて捕まってしまったらしい。とはいえ、そこまでの過程で多くの帝都兵を殺害してるらしく、兎人族の根底を覆す行動をしたカムたちはある意味語り草になってるようだ。
「ハジメ、今夜にでも行くか?」
「だな。あいつらは兎人族で、ここは帝都。ハウリアの強さに惹かれて連行したと思うが……まともな待遇でないのは目に見えてるからな」
しかし、真正面から戦争しに行くほど俺たちはバカじゃない。いや、多分それでも行けるが……もっとスマートにやりたいのだ。ハウリアたちが戦争を仕掛けるなら尚更である。
そうなると、考えられる作戦は一つである。帝城の裏口辺りからでも侵入し、見張りの兵士を無力化しながらも牢獄を見つけ、カムたちを転移魔法で移動させて脱出させるという作戦だ。考えつく作戦の中でも一番ありふれている気がする。が、最も確実でもあるので俺たちはこの作戦を決行することにした。
帝城に忍び込むのは俺、雫、ユエだ。夜になるのを待って俺たちは城の裏口から忍び込んだ。見張り番は雫が斬り伏せて行き、俺は耳を使ってハウリアを探し出す。ユエはトラップの解除に勤しんでおり、誰しもが極限まで集中している。と、帝城内を数分進んだところで、俺の耳に声が聞こえてきた。
「おい、今日は何本逝った?」
「指全部と、アバラが二本だな……お前は?」
「へへっ、俺の勝ちだな。指全部とアバラ三本だぜ?」
「はっ、その程度か? 俺はアバラ七本と頬骨……それにウサミミを片方だ」
「マジかよっ? お前一体何言ったんだ? あいつ等俺達が使えるかもってんでウサミミには手を出さなかったのに……」
「な~に、いつものように、背後にいる者は誰だ? なんて、見当違いの質問を延々と繰り返しやがるからさ。……言ってやったんだよ。〝お前の母親だ。俺は息子の様子を見に来ただけの新しい親父だぞ?〟ってな」
「うわぁ~、そりゃあキレるわ……」
「でも、あいつら、ウサミミ落とすなって、たぶん命令受けてるだろ? それに背いたってことは……」
「ああ、確実に処分が下るな。ケケケ、ざまぁ~ねぇぜ!」
聞き間違い……ではなさそうだ。皮肉なことに、俺の耳は狂うことなく一言一句聞き取っている。誠に残念ながら、ハウリアは非常に悪い方向に進んでいるようだ。目の前の敵よりも、道端にある花や虫を気にしていた、心優しい種族は一体どこへ消えてしまったのだろうか。あと数年も経てば、優しい兎人族は絶滅するかもしれない。
「いや、最近の族長、ますます言動がボスに似てきたからなぁ。……特に新兵の訓練してる時なんか」
「今頃は、族長も盛大に煽ってんだろうな……」
「そうだな。……なぁ、せっかくだし族長の怪我の具合で勝負しねぇか?」
「お? いいねぇ。じゃあ、俺はウサミミ全損で」
「いや、お前、大穴すぎるだろ?」
「いや、最近の族長、ますます言動が訓練中のボスに似てきたからなぁ。……特に新兵の訓練している時とか……」
「まぁ、ボスならそもそも捕まらねぇし、捕まっても今度は内部から何もかも破壊して普通に出てきそうだけどな!」
「むしろ、帝都涙目って感じだろ? きっと、地図から消えるぜ」
「それよりも音也殿の方が恐ろしいだろ。あの人ならボスよりも先に帝国ともののついでに他の国も消しとばしそうだよな」
「あの人は鬼や悪魔では言い表せないよな。どんな呼び名が良いんだ?」
「冗談や比喩表現抜きに破壊神だろ?」
「「「「「「「「「それだ!」」」」」」」」」
これは酷い。雫のことに関しても中々酷いのだが、なんだ破壊神って。もう頭にきたので俺はユエに光球を取り出すようにお願いした。途端に周囲が明るくなり、腕だの足だのをあらぬ方向に折られて血を吐きながらも軽口を叩き合っていたハウリアの姿が露わになった。俺たちの姿を見て叫びそうになっているハウリアを黙らせてユエにトラップを解除してもらい、雫にはカムを助けに行かせる。俺は檻の鉄格子をファンガイアの力で消滅させた。最後にユエが再生魔法を施し、空間魔法でハウリアたちを転移させてミッションコンプリートである。
そのまま俺たちも風のように空間転移し、帝城から脱出した。ここまでの所要時間はおよそ三分。カップ麺が完成するまでにハウリアが救出完了している計算だ。カムも雫に助けられたらしく、服はボロボロながらも比較的元気そうである。
「よおカム。久しぶりだな」
「これは音也殿。ご無沙汰しています。折角の再会でしたのにこの様な姿で申し訳ないです」
「いや、むしろ逞しくなっていて感動しているよ。どんどん雫に近づいているよな」
「もったいないお言葉です。あ、そういえば装備を取られたままなのですが……」
「ん? そんなこと心配するな。ハジメが錬成の鍛錬の過程で生まれた、もっと良い装備があるからな」
「新装備を頂けるので? そいつぁ、テンションが上がりますな、ククク」
すっかり戦闘狂に変わり果てているカム。しかし今更どうのこうの言うつもりはないので、俺もニヤリと笑い返しておく。心強い仲間ができたと思えば軽いもんだろう。この際、厨二病っぽくなっているのには目を瞑る。誰しもが経験することだもの。無理やり治すよりは、自然治癒を待った方が良い。
もののついでに俺は、カムに今後どうするのかを尋ねる。するとカムは獰猛な笑みを浮かべながらこう告げた。
「仲間も揃ってる事ですし、これから帝国に戦争を仕掛けますよ」
「ほう?」
「我々の得意分野は暗殺です。近々大きなパーティーをやるとも聞いてますし、そこを狙おうと思いまして」
「つまり、暗殺か?」
「肯定です。我等に牙を剥けば、気を抜いた瞬間、闇から刃が翻り首が飛ぶ……それを実践し奴らに恐怖と危機感を植え付けます。いつ、どこから襲われるかわからない、兎人族はそれが出来る種族なのだと力を示します。弱者でも格下でもなく、敵に回すには死を覚悟する必要がある脅威だと認識させさます」
中々に面白い。パーティーで浮かれているときに襲撃するのは正しいと言えよう。それに、こいつらが戦争を仕掛ける理由は同族の兎人族たちのためだ。このまま放置しては何時、フェアベルゲンに侵入されて同族を汚されるか分からない。それなら先にやっちまおう。そういうことだ。
しかし、こいつらだけで帝国に戦争を仕掛けるのは分が悪い。なにより、こいつらは他ならぬシアの家族だ。万が一失敗して、死んでしまったら……俺たちのパーティーの元気印であるシアが塞ぎ込んでしまうかもしれない。それはなんとしても避けたい。
「皇帝の一族が、暗殺者に対する対策をしていないと思うか? そんなことも考えつかないぐらいにお前らはバカじゃないよな?」
「もちろんしているでしょうな。しかし、我等が狙うのは皇帝一族ではなく、彼等の周囲の人間です。流石に周囲の人間全てにまで厳重な守りなどないでしょう。昨日、今日、親しくしていた人間が、一人、また一人と消えていく。我等に出来るのは、今のところこれくらいですが、十分効果的かと思います。最終的に、我等に対する不干渉の方針を取らせることが出来れば十全ですな」
「そうか。却下だ」
やけに俺の声が響き渡る。軽い調子で、しかし絶大なる威圧感を持って放たれた否定の言葉。困惑し、呆然としているハウリアたちに向かって俺は続ける。
「良いか、よく聞け。シアを泣かせてしまうような作戦は全て却下だ。そんなチンケな真似をするつもりなのか?」
「し、しかし音也殿。我等には……」
「お前らは、直接皇帝の首に刃を突きつけろ」
「……は!?」
「聞こえなかったのか? お前らは皇帝の首に刃を突きつけろと言ったんだ。それだけじゃない。皇帝の妻、子供、愛人、親友、側近。全てをねじ伏せて地を舐めさせろ。ハウリアに逆らえば、どこに逃げようと、立ち向かおうと、首刈りの蹂躙劇が必ず始まるのだと骨の髄まで染みこませてやれ!」
気迫に飲まれたのか、ハウリアたちは黙りこくる。ゴクリッと生唾を飲み込む音がやけに明瞭に響いた。
それを見て、俺は一度大きく息を吸うと……これまでにないぐらい、それこそ雷が落ちたと錯覚するぐらいに声を張り上げた。
「返事はどうしたぁ! このクソ野郎共がぁ!」
「「「「「「「「「ッ!? サッ、Sir,Yes,Sir!!」」」」」」」」」
「聞こえねぇぞ! 貴様等それでよく戦争なんぞとほざけたなぁ! 所詮は口から糞を出す無能の集まりかぁ!?」
「「「「「「「「「「Sir,No,Sir!!!」」」」」」」」」」
「違うと言うなら、証明しろ! 雑魚ではなく、キングをやれ!!」
「「「「「「「「「「ガンホー! ガンホー! ガンホー!」」」」」」」」」」
「貴様等の研ぎ澄ました復讐と意地の刃で、邪魔する者の尽くを斬り伏せろ!」
「「「「「「「「「「ビヘッド! ビヘッド! ビヘッド!」」」」」」」」」」
「膳立てはしてやる。お前らが通る道は、必ずや俺たちが作ろう。だがな! やるのはお前たちだ! 半端は許さん! わかってるな!」
「「「「「「「「「「Aye,aye,Sir!!!」」」」」」」」」」
「宜しい! 気合を入れろ! 新生ハウリア族、百二十二名で……帝城を落とすぞ!」
「「「「「「「「「「YAHAAAAAAAAAAAAAA!!!!」」」」」」」」」」
ハートマン軍曹の口調をお借りしてハウリアたちを鼓舞する。膳立てならいくらでもしてやる。扉の鍵は俺が開けてやる。だが、その先にある障碍ぐらいは、己の手で斬り裂いてこい。暗にほのめかしながらも叫んだ言葉は、確かにハウリアたちに届いたらしい。
目的を帝城落としにアッサリ変えた俺は、熱が冷めないハウリアたちやハジメと協力しながらどうやって帝城を落としてやるか考えるのだった。結局、眠りにつけたのは夜遅くであった。
明後日はこっちではなく仮面ライダーエターナルの方を出すかもです。完成すれば明日辺りにでも投稿します。あっちの方もよろしければ閲覧してくれると嬉しいです。
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