※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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九月中にお気に入り数600行きますかねえ。相対的には増えていっているのが本当に嬉しいです。お蔭様でこうして書いて行けてます()


第三楽章 帝城

ヘルシャー帝国を象徴する帝城は、帝都の中にありながら周囲を幅二十メートル近くある深い水路と、魔法的な防衛措置が施された堅固な城壁で囲まれている。水路の中には水生の魔物すら放たれていて城壁の上にも常に見張りが巡回しており、入口は巨大な跳ね橋で通じている正門ただ一つだ。

 

帝城に入れる者も限られており、原則として魔法を併用した入城許可証を提示しなけばならない。跳ね橋の前にはフランスの凱旋門に酷似した巨大な詰所があり、ここで入城検査をクリアしないと、そもそも跳ね橋を渡ることすら出来ないのだ。が、そんなことは俺たちの問題ではない。

 

俺たちには「神の使徒」という肩書きがあり、リリアーナの知り合いという事も使えば基本どこでも顔パスで通れる。ましてや、俺たちは金ランクの冒険者だ。一も二もなく通される。

 

それは帝城でも変わりなく、俺たちは特に怪しまれる事もなく中へ通された。一応、急なお客さんなため上に取り次ぐらしいので、俺たちは詰所のような場所にある待合室に通された。

 

待つこと数分。ユエを膝の上に座らせて両隣に八重樫姉妹、ティオとは帝城を落とす手順の確認をしていると、跳ね橋からドタドタと足音が聞こえ始めた。

 

「貴方たちですね? リリアーナ姫に用事があってお越し頂いたのは」

「だな。急な訪問で申し訳ない」

「いえ、問題ありません。自分は、第三連隊隊長のグリッド・ハーフ。貴方たちが来られた事はリリアーナ姫も把握済みです。ところで……そちらの兎人族は? それは奴隷の首輪ではないでしょう?」

 

突然、俺から目を離してシアのことをジロジロと見るグリッド。何やら嫌な予感がしたので、俺はハジメに丸投げしようとしたところで……爆弾が落とされた。

 

「よぉ、ウサギの嬢ちゃん。ちょっと聞きてぇんだけどよ。……俺の部下はどうしたんだ?」

「部下? ……っ…あなたは……」

「おかしいよな? 俺の部下は誰一人戻って来なかったってぇのに、何で、お前は生きていて、こんな場所にいるんだ? あぁ?」

 

この時点で俺は察した。こいつは、以前シアたちを捕らえては奴隷に落とし、役立たずは処刑していった帝国兵の指揮をしていた者だ。シアにとっては、数多くの家族を殺したり捕らえたりした帝国兵のまとめ役であり、全ての元凶はこいつである。

 

普段のシアからは有り得ないほどの殺気が巻き上がり、静かに、しかし激烈な勢いでシアの内包する魔力が溢れだす。

 

「貴方たちの部下なんて知ったことではありませんよ。興味ないですし、何より頭が悪そうな連中でしたからね。ライセン大渓谷で魔物に四肢を食われて死んでいったんじゃないんですか?」

「……随分と調子に乗ったこと言うじゃねぇか。あぁ? 金ランクの冒険者と一緒にいるから大丈夫だとでも思ってんのか? 奴隷ですらないなら、どうせその体で媚でも売ってんだろ? 売女如きが、舐めた口を利いてんじゃねぇぞ」

 

その言葉に対してシアは殆ど堪えていない。が、他の女性陣から凄まじい殺気が巻き起こった。しかしそれすらも霞む勢いで紅い魔力を迸らせる人物が一人。それは、ハジメだ。

 

ハジメは黙ってグリッドに近寄ると、訝しげなグリッドを無視して頭を義手で鷲掴み。化け物のような腕力でグリッドを持ち上げると、そのままの状態で右足を思いっきり振り上げた。

 

絶妙は力加減をしたのか、グリッドの男の象徴が一瞬で潰れ去り、骨盤も歪ませる。悲鳴を上げようとするグリッド。しかし、その悲鳴は能面のような表情をしたハジメによって止められてしまった。その瞳は一切の光を放っておらず、見つめられたが最後、石になってしまうゴルゴーンの首の様に見るものを圧倒している。

 

ユエが再生魔法をかけてグリッドの骨盤だけを治したことを確認したハジメは、興味を失ったと言わんばかりの表情でグリッドのことを投げ捨てた。そして完全に萎縮している部下の兵士に案内する様に命令し、ようやく俺たちはこの場を動くことができたのだった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

通された部屋は、三十人くらいは座れる縦長のテーブルが置かれた、ほとんど装飾のない簡素な部屋だった。そのテーブルの上座の位置に、頬杖をついて不敵な笑みを浮かべる男――ヘルシャー帝国皇帝ガハルド・D・ヘルシャーがいた。彼の背後には二人、見るからに〝できる〟とわかる研ぎ澄まされた空気を纏った男が控えている。リリアーナは俺の斜め右前に座り、皇帝は俺と対面になる形で踏ん反り返っている。

 

ガハルドの様子は一般人からすると凄まじい威圧感を放っている。しかし、俺たちからすれば特に思うところもないのでドッカと腰を下ろして紅茶をゴクゴク飲み干す。

 

「お前が、紅音也だな?」

「いかにも」

 

皇帝を前にしても、俺は態度を変えることはない。不適な笑みには不適な笑みで返すのが俺のポリシーである。

 

俺の不遜な態度に家臣が憤るが、それをガハルドは笑いながら止める。

 

「くく、それでいい。俺は素のお前に興味があるんだ」

「そうかい。ならこのままで行かせてもらうぞ」

「まあお前には聞きたいことが山ほどあるんだが……まず、これだけ聞かせろ」

「なんだよ?」

「お前は雫のことを抱いたのか?」

 

ブフーッとリリアーナ含め、家臣たちが飲み物を吹き出す。話を聞くに、こいつは雫のことを俺が奈落の底へ落ちた日から口説きに口説こうとしたらしい。結果は言うまでもないが、諦めきれないのが見え見えである。

 

が、「誠に残念ながら」雫は俺の物である。もちろん、身も心もだ。側室が十人近くはいる汚れた皇帝の元へ渡すなど言語道断である。

 

故に、俺は口角をニイッと上げて悪びれもせずに答えた。

 

「とっくのとうに抱いたぞ? 逆に抱いていないとでも思っているのか?」

「……なんだと? おい雫。お前、裏切ったのか?」

「裏切るも何も、貴方のことは最初から眼中にありません。私の心は永遠に音也の物ですから」

 

俺がガハルドを鼻で笑い、雫が澄まし顔でガハルドのことを見つめる。それを見たガハルドは少しだけこめかみを動かしたが……すぐに苦笑いを浮かべ、「仕方がねえなあ」という表情を浮かべた。

 

「で、話は終わりか? 随分な無駄話なんだが」

「無駄話とは心外だな。まぁ、話したかったのは確かに雫のことではない。わかっているだろう? お前の異常性についてだ」

「ほう?」

「リリアーナ姫からある程度は聞いている。お前が大迷宮攻略者であり、そこで得た力でアーティファクトを創り出せると……魔人族の軍を一蹴し、二ヶ月かかる道程を僅か二日足らずで走破する、そんなアーティファクトを。真か?」

「厳密に言うと違うな。アーティファクトを作れるのは俺じゃない。南雲ハジメだ。俺はあくまでも多くの敵を蹴散らす力を保持しているだけだ。まあ、その力を貸せってならお断りだぜ。そんな巨大な力を独占するのが悪いとでも? 逆に聞くが、誰の許可を得る必要があるんだ。ええ?」

 

ガハルドが目を細める。合わせて周囲に控えていた家臣が殺気を放ち始めた。部屋の陰に隠れている家臣たちの気配も薄くなり、一触即発の状態だ。

 

それに対する答えは一つだ。俺は出されている高そうなお菓子を手に取りながら、ほんの少しだけ目を細めながらポツリと答える。

 

「全てバレてるぞ? 俺を殺ろうとしている姿がな。だが甘い。お前らは既に俺のキルゾーンに入っている」

「はっはっは、止めだ止め。ばっちりバレてやがる。こいつは正真正銘の化け物だ。今やり合えば皆殺しにされちまうな!」

 

豪快に笑いながら殺気を消す帝王。どうやら俺のことを試していたらしい。その事に気がついた俺も喉をクックックッと鳴らして笑い返す。その笑いには、「やってくれるな?」という賞賛の意味が込められている。

 

「それにしても、お前が侍らしている女たちもとんでもないな。おい、どこで見つけてきた? こんな女共がいるとわかってりゃあ、俺が直接口説きに行ったってぇのに……一人ぐらい寄越せよ、紅音也」

「あまり余計な事を口走っていると、俺ではなく彼女たちに股間を潰されるぞ?」

「お、おう。善処しよう。それにしてもその兎人族。一番気になるな……最近捕まえた玩具たちと面構えがそっくりだ」

「もう一度言う。あまり余計な事を口走るな。まだ女共を愛したいなら今すぐその口を閉じろ」

 

微かに巻き上がったシアの殺意を感じ取った俺は、すぐにガハルドに釘を刺す。これ以上は冗談抜きで対処しきれない。ここで死ぬのは勝手だが、それだけの覚悟が出来てるのか?というニュアンスを込めて本気の二割程度の威圧を発動させながら睨みつける。

 

ガハルドもシアの恐ろしさを察したのか、すぐに首を振って今の話は忘れろという仕草を見せた。ちなみにシアのステータスは身体能力強化によって魔力以外を余裕でオール20000を超える。無強化のハジメでは少し危ないレベルだ。流石に強化したハジメには勝てないらしいが。

 

「まあ最低限知りたいことは知れたから良しとしよう。ああ、そうだ。今夜リリアーナ姫の歓迎パーティーを開く。息子と姫の婚約パーティーも兼ねてるからな。金ランクで神の使徒から祝福して貰うというのは外聞は良い。よければ参加してくれ」

「そうか。まあ美味そうな飯が出るみたいだし、俺のヴァイオリン演奏を披露する機会にもなるだろう。参加させてもらうさ」

「ククッ……楽しみにしてるぞ?」

 

時間が来たらしく、ガハルドは立ち上がって事を告げると、俺のことを不敵な笑みを浮かべながら挑発的に睨み、そのまま部屋を颯爽と出て行った。

 

バタンと扉の締まる音が響いた部屋の中、俺は一人呟いた。

 

「ああ。俺も楽しみだ……お前たち王族が造り上げたこの国が、滅亡するのを見るのがな」

 




次回か次々回はハウリアたちが主役です。折角だしペルソナ5要素入れてみようかな…いや、厳しいか()
※質問があったのでこちらに記載をしますが、リリアーナは音也のヒロインのつもりで書いています

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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