その音色は異世界まで響き 作:誰かさん
よく考えるとハジメってやはりチーターなんだなあ……。
雫と覚悟を決めた翌日。俺たちはついに出発することになった。大迷宮入り口付近は所謂祭りのような空気であり、露店が散見している。やはり人が多く集まるところは商人の戦場らしい。どの商人も目の色変えて冒険者を呼び込んでいる。
そんな逞しい商人たちをスルーして俺たちはメルド団長の後から大迷宮へと足を踏み入れた。外とは違って大迷宮内は不気味なぐらい静かである。空気もどこかおどろおどろしいし音楽も感じない。とにかく静かだ。
そのまま進んでいくと広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。少しすると壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。
「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」
まだまだ戦うことはなさそうだ。その間に荷物の確認をする。ヴァイオリンケースは背負っておりファンガイアスレイヤーモドキはポケットに入っている。ベルトは315な人のように肩に掛けてありナックルは手に持っている。一応すぐにでも動ける状態だ。
その間に光輝たちは敵を殲滅してしまっていた。あっという間である。
「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ! ただな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」
魔法攻撃組を見て苦笑いする団長。まあ力加減難しいし仕方ない。とりあえず雫の元へ行く。
「雫。大丈夫か」
「……流石ね」
「見りゃ分かる」
「おい紅。雫はどこもケガをしてないじゃないか」
「見る目がない人間は嫌われるぞ」
「んなっ?!」
「雫、次戦うときは俺と交代だ」
「分かったわ。気遣ってくれてありがとね。でも音也も眠いんじゃ……」
「そのぐらい気にすんな」
俺は雫の表情が引きつっているのに気が付いたのだ。恐らく魔物相手とはいえ初めての殺害にメンタルがやられたのだろう。それでも他にメンタルをやられたクラスメイトのケアに回っているのを見ていたたまれなくなったのである。
代わることぐらいなら俺がいくらでもしてやる。雫を守るためにもそう決意したのだ。
そこからは特に問題もなく交代しながら戦闘を繰り返し、順調よく階層を下げて行った。途中俺も前線に出て鞭とナイフのコラボレーションで魔物を圧倒した。まだまだ大したことはない。
ちなみにハジメは錬成で地面を変形させて魔物を拘束し身動きが取れなくなったところで確実にとどめを刺す戦法をしていた。途中掘削機のようなものを作ってエグい殺し方してたけど。
そして、一流の冒険者か否かを分けると言われている二十階層にたどり着いた。
現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者がなした偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。
イクサ使えば純粋に戦闘能力が10倍以上跳ね上がるので案外単騎でも深い階層まで行けそうではあるが。
「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するなよ! 今日はこの二十階層で訓練して終了だ! 気合入れろ!」
「雫。行けそうか?」
「ええ。もちろんよ」
「んじゃフォローに回ろう。気をつけろよ」
右手にイクサナックル、左手にファンガイアスレイヤー。これでどの距離にも対応可能だ。
「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」
「……そこだ!」
絶対音感が使えるということは耳が非常に敏感だということだ。僅かな物音も逃すことはない。音がした場所に向かってイクサナックルから衝撃波を飛ばして牽制。どうだ?
すると前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。
「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」
ここら一帯は狭い鍾乳洞的をしている。光輝と雫が取り囲もうとしているが思うようにいかないみたいだ。龍太郎という壁がいなかったらあっという間に突破されてただろう。
龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。
直後、
「グゥガガガァァァァアアアア────!!」
部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
「やべえ……前衛組固まってるじゃないか」
後方にいたおかげで奴の固有魔法である“威圧の咆哮”を食らわずに済んだ俺は咄嗟にヴァイオリンケースを地面に置いて飛び上がり、同じく飛んできたロックマウントを殴り飛ばして援護に入った。
『レ・ディ・ー』
「変身!」
『フィ・ス・ト・オ・ン』
「この野郎……消し飛べ!」
『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』
「あ、こら待て!」
「食らええ!!」
ドパアァァァァァァァァァァアアン!
静止声が聞こえたが無視。多少ここが崩れてもなんとかする術は考え付いてる。故にすぐ変身解除してヴァイオリンケースを手に取る。
「グウウウオオオ?!」
「ガアアア?!」
流石五億ボルトの電磁波。屈強なロックマウントをいとも簡単に消し炭にしていく。狭めの通路だったのも幸いして避けることは不可能。チェックメイトだ。まあ奥の壁も破壊しつくしてしまったのは想定外だったが……。
「やっべえやりすぎた。天井は崩れてこないか……?」
崩れて来たら演奏で無理やり崩壊を抑え込もうと思っていた。なんか曲によってもたらす効果も違うらしい。例えば「四季」なんかも春夏秋冬で効果が違う。「冬」なんかは拘束した上で対象を凍らせていくし「夏」は対象を焼き尽くしてしまう。
まあ崩れなかったので良しとしよう。
「お前なあ……少しは手加減をしろよな」
「申し訳ないですが崩れた時にどうするかは考えてたんでね」
「抜け目ないなお前……」
団長に苦笑された。いいじゃん上手くいったんだし。文句ないだろ?
「……あれ、何かな? キラキラしてる……」
「どうしたの白崎さん?」
「ハジメくん……ほらあれ。崩れた壁の奥に水晶みたいのが……」
香織の声に全員が崩れた壁の先を見る。そこには確かに青白く発光した水晶のような鉱石が花咲くように壁から生えていた。女子がウットリとした視線で鉱石を見つめている。やっぱり女子は綺麗な物が好きなのだろうか。
「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい」
「なんすかそれ」
「アクセサリーや婚約指輪の装飾なんかに使われる鉱石だな。その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気らしいぞ」
「へえ……」
時間に余裕ができたら雫にアクセサリーを渡してあげるのもありかも……。
「だったら俺らで回収しようぜ!」
「はあ?」
そう言って唐突に動き出したのは檜山だった。グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと崩れた壁を登っていく。それに慌てたのは団長だ。
「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」
しかし、檜山は聞こえないふりをしてズンズンと先へ進む。「うるせえよ。こっちの気も知らないで」という言葉を聞いて思わず顔をしかめた俺を他所に、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。
団長は、止めようと檜山を追いかける。同時に騎士団員の一人がフェアスコープというトラップ発券機で鉱石の辺りを確認する。そして、一気に青褪めた。
「団長! トラップです!」
「ッ!?」
檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法陣が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。
魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり、輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現だ。
「うおっ?!」
体が宙に浮く感覚。どうやら移動しているらしい。上に持ってかれることは考えにくいから……強力な魔物が出現する下の階層へ移動させられている可能性が高い。
ドスン!
「いって……」
やはり転送された。取り敢えず立ち上がって耳を澄ませる。そして即座に顔が青ざめた。
「団長! ここはやばい!」
転送された場所は、巨大な石造りの橋の上だった。ざっと百メートルはありそうだ。天井も高く二十メートルはあるだろう。橋の下は川などなく、全く何も見えない深淵の如き闇が広がっていた。まさに落ちれば奈落の底といった様子だ。
橋の横幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものもなく真っ逆さまだ。ハジメ達はその巨大な橋の中間にいた。橋の両サイドにはそれぞれ、奥へと続く通路と上階への階段が見える。
「みんな急げ! 階段に──」
その指示も遅かった。奥から獣の咆哮が聞こえてきたのである。距離はそこまで離れてない。しかもその魔物であろう奴の近くにも軽く百は超える魔物のカタカタという音が聞こえる。
「ま、まさか……ベヒモスなのか?」
団長の絶望したかのような声が辺りに響き渡るのだった……。
被らないようにかつ原作に似せるって難しいですね()やりすぎると粛清されかねない()
恵里の処遇はどうする?
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勇者バカ之河の被害者だから救おう
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消せ(無慈悲)