※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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しばらくはチョコチョコと小刻みに進みます。エターナルも並行して進めてますのでペースは落ちますが、少しずつでも前に進めるように努力しますので今後もよろしくお願いします。


第九楽章 真実

懐かしい。

 

魔力が分解されてしまうライセン大渓谷へ四輪で突入した俺は、外の景色を見てそんなことを思った。時折現れる魔物ですらも懐かしくて微笑んでしまう。その顔を見て同じくニコニコしている恵里の頭をグリグリしつつ、俺はライセン大迷宮目指して疾駆する。

 

「これって南雲が制作したアーティファクトなのかい?」

「だな。便利な道具は全部ハジメが作った。“無能”と呼ばれていたハジメはもう居ないさ……あの頃から無能ではなかったけど」

 

何故か光輝が「うっ」と呻き声を出す。心当たりがあるらしい。が、わざわざ根深く追求するのは面倒くさくなりそうなので俺は口をつぐんでライセン大迷宮を探した。

 

場所は何となく覚えている。周辺に何があったのかを覚えておけば位置を把握することぐらい簡単である。

 

“遠見”と“瞬光”を同時使用して辺りを見渡すこと数十分。目の隅に映った物を俺は見逃さず、そちらに向かって四輪を走らせる。遠目にあのウザったい〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟という石板を見逃しはしない。

 

「お前ら、付いて来いよ。コウモリモドキ!」

「ガブリッ!!」

「……変身!」

 

闇のキバの鎧を装着。さらにそこから俺は空間魔法を発動させる。魔皇力ならライセン大渓谷の特徴である“魔力の分解”の影響を比較的受けにくいのだ。もちろん、多少は分解されてしまうが、魔力で魔法を発動させるよりは遥かに効率が良い。

 

最近の鍛錬によってほぼノータイムで発動出来るようになった空間魔法の〝界穿〟を使って俺は一気にミレディの住んでいる解放者の住処へと転移した。後から光輝たちがワープゲートに入ってのを見て俺は変身を解除し、住処のドアをガチャリと開ける。

 

「まったく、いったい誰なんだよぉ。ゴーレム倒した感じではなさそうなのに……って君は!?」

「よお、久しぶりだな」

「ちょちょちょ! 流石に想定外すぎるって! まさか魔法が使えないのに外から転移してくるとは思わなかったよ……」

 

金髪蒼眼の少女が俺の姿を見て悲鳴を上げる。今でこそ黙っていれば美少女な目の前の人物は、ミレディ・ライセンその人である。

 

ミレディは暫くの間、俺のことを何度も見直しては悲鳴を上げるを繰り返していたが、やがて落ち着いたらしい。光輝たちを見て首をかしげている。

 

「で、何しに来たのさ? というか他の美少女ちゃんたちや白髪眼帯くんは?」

「訳あって今は別行動中だ。全員ピンピンしているよ。元気が有り余っているぐらいだな」

「それはそれは。君も大変だねえ」

「そりゃどうも。で、今回は聞きたいことがあって来たんだけどな」

 

俺は、母さんの名前を出して知っているか?と尋ねる。ミレディは母さんの名前が出ると目を見開いて「え、知ってるの?!」と声を上げた。どうやらご存じらしい。

 

「何か知ってることはない?」と続けて聞いてみると、ミレディから予想の斜め上をいく回答が返ってきた。

 

「知ってるも何も、フミネは私の大親友で解放者の1人だよ。私たちが大迷宮に逃げ込んだ後に行方不明になっちゃったけど……」

「え、は? 解放者? それ、マジで言ってる? 母さんが解放者って?」

「え、母さん?」

 

お互い混乱しまくる。俺は母さんが解放者だったという事実に、ミレディは母さんが俺のことを産んだという事実に。

 

しかし何時までも混乱するわけにもいかないので、俺はミレディに質問をする。

 

「……なあ、母さんは神代魔法を使えたのか?」

「うん、そうだねえ……使えるどころか、私たちの中では1番の強さだったよ。この世界の人間ではなかったけど、本当に努力家だった」

「はあ?」

 

ミレディが言うには、母さんは自力で神代魔法を扱えるようになるまで努力した他、現在はミレディが隠し持っている“概念魔法を付与したアーティファクト”を多数生み出しているという。

 

そしてそのアーティファクトのうちの一つは母さんが持ち出したらしい。その名は……

 

「イクサだよ」

「……もう一度言ってくれ。俺の聞き間違いじゃないだろうな。確かにイクサと言ったんだよな?」

「イクサだよ、イクサ。フミネはそいつを装着して、私たち解放者が追いやられて慢心していた神共へ立ち向かったんだ」

 

元からそういう作戦だったんだけどね。人間に裏切られるのは目に見えてたから、とミレディは目を伏せながら言葉を紡ぎ終えた。

 

しかし母さんの消息は神へ立ち向かった以降は一切分からないらしく、ミレディは既に死んでしまったと思っているそうだ。

 

「もしかしたら神を一時的に封じ込めて元の世界に帰れたのかもしれないって考えたりもしたよ。でも、あのクソ野郎たちの力量は悔しいけど本物。滅多なことは想像出来なかった。でも……こうして今日、君が来た」

「母さんは……紅文音は、確かに生きてるよ。なんならこいつを聴けばいい」

 

イクサライザーを取り出し、自宅の電話番号を入力して着信をかける。すると、電子音ながらも母さんの声が流れ始めた。ミレディは目を見開き、続いて涙をポロポロと流し始める。

 

慌てて慰めようとしたが止められた。ミレディはただ首を横に振り、ゆっくりと言葉を口にする。

 

「ありがとう」

 

と。

 

「何千年、何万年もの間も行方が分からなかった親友の声が聴けて、本当に嬉しいよ」

「別に……お礼なら母さんに直接言ってやれよ。いつか必ず、お前も俺の世界へ連れて行くから」

「もう……ツンツンしているように見えて優しいところまでそっくりだよ」

 

涙を流しながらも微笑むミレディ。まさか泣かせてしまうとは……最低だ、俺。どんなにウザったい人でも女を泣かせてしまうなんて。

 

しかし、聞きたい事はちゃんと聞き出せた。母さんが何者なのかはハッキリしたし、イクサたちが微調整だけでこの世界で戦っていける理由も判明した。短い時間ではあったが、得る物はあった。俺は満足である。

 

そう、俺は満足した。しかしこういった所で余計に口を出してくるのが勇者(笑)クオリティ。

 

「おい紅。彼女が解放者とやらなら……彼女に勝てば神代魔法が手に入るのか?」

「ああ? いきなり何を言い出すのかと思えば……なにアホなこと言ってやがる。大迷宮にはそれぞれコンセプトがあって、そいつをクリアして認められないと手に入らねえよ」

 

元より神代魔法をお前らが習得するためにここへ来たわけじゃない。聞きたい事を聞けたから今すぐにでも出発したい。そう伝える。そもそも勇者程度の力ではこの迷宮をクリアすることは不可能だろう。

 

その事も包み隠さず伝えれば当然の如くというか、光輝が怒りを露わにする。しかしそこへ待ったをかける意外な人物が現れた。

 

「うーん、なら特別に今から出す試練をクリアしたら君たちにも神代魔法を授けようか?」

「おいミレディ。いくら何でもそれは……」

 

そう、ミレディさんである。意外にも彼女は、これから出す試練をクリアすれば無条件で神代魔法を授けようと言うのである。

 

いくら何でも甘やかしすぎだと思った俺は、すぐに詰め寄った……が、ミレディに小声で作戦を告げられて納得した。

 

「んじゃ、サッサと始めようか。試練って言うのはねえ……」

 

わざとらしい態度で間を開けるミレディ。シアをブッチさせたミレディちゃんは健在である。と言うかむしろ前より元気になっている気がする。人間態が馴染んできたのだろうか。

 

「おい、勿体ぶらないで試練を言ってくれ」

「そう急かすもんじゃないぞお。そんなことばかりすると、折角のイケメンなのに女の子たちから嫌われてしまうぞお!」

「……既に一部からは嫌われてるけど」

「え、恵里? なんか言った?」

 

ビキビキと青筋が立っていく光輝。さり気なく貶していく恵里。俺の腹筋がどうにかなりそうである。自分に対してミレディのような態度で接されると当然イライラするが、三人称視点から眺めてみると中々に面白い。ミレディが人をおちょくってニコニコ、それはもう素晴らしい笑みを浮かべているのも分かる気がする。

 

と、煽るのはここまでらしい。ようやくミレディが真面目モード(らしい)になった。

 

「その試練っていうのはね……彼、紅音也くんの変身したイクサに傷を一つでもつけられたら君たちの勝ちっていう試練だよお!」

「「「「は?」」」」

「ククッ……いい顔してんなあ」

 

間抜け面を晒した四人にそれはもう素晴らしい笑みを送る。光輝には青筋がさらに浮かび上がり、龍太郎は分かりやすく落ち込んだ表情を、恵里はため息を、鈴は「やれやれだぜ」とでも言いたいのか肩をすくめる。

 

「いやいや無理だろ。相手はあの紅だぜ? しかも変身するんだろ? 俺たちここで死ぬのか?」

「物騒なこと言わないでよ! もう……シズシズやカオリンが居ないからストッパー居なくて全部私に来るんだけどお!」

「ご愁傷様」

「恵里も手伝ってよ~!」

「大丈夫だ皆。あいつに傷一つさえ付ければ神代魔法が手に入るんだぞ。世界を救える、巨大な力が!

 

「ふふ、随分と賑やかそうな連れだね?」

「気苦労でしかねえよ。ったく……早いところ彼奴らと合流したい。んで雫たちに癒してもらいたいわ」

「ミレディちゃんが相手をしようか? これでも知識はそれなりに……」

「お前ぶちのめされるぞ。てか彼奴らキレたら俺でも手を付けられないから勘弁してくれ」

 

結局、光輝がトリップしたせいで戦闘準備が完了したのは数十分が経過してからだった。

 




次回は前半に勇者パーティーVS音也。後半に樹海突入です。ちなみに音也は本気では戦いません。当然といえば当然ですけどね(本気出したら瞬殺だし)

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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