※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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ミレディちゃんの(無茶ぶり)試練です。書いててかなり楽しかったです()


第十楽章 想定外の模擬戦

「さあ、かかってこい」

「思いっきりやっていいからねえ。ここなら魔力が拡散することないし、万が一に備えて私が結界を張っておくから」

 

イクサに変身して指をクイクイ。主に光輝と龍太郎に対しての挑発を行う。単純思考の人間を相手取るなら挑発を使うのは当たり前だ。

 

当然の如く、光輝が怒り狂って突撃してくる。その後をやはり激昂した龍太郎が続いた。俺はミレディから頼まれた、カウンタースタイルでの戦闘を試みる。

 

「馬鹿にしたこと、後悔させてやる!〝神威〟!」

「相変わらずだが慢心は禁物だぜえ!」

「慢心? バカ言うなよ。俺はこれっぽっちも慢心してはいないさ」

 

飛来してきた〝神威〟を部分強化の〝金剛〟で弾き返し、踏み込んできた龍太郎の空手のような正拳を両腕で挟み込んで相殺。そのまま後方に投げ飛ばす。

 

さらに間隙を突いて飛来してきた鈴と恵里の攻撃魔法をとくに見ることなく蹴り飛ばすことで消滅させる。間隙の間隙を突いた光輝の一撃もやはりノールックの裏拳で弾き返し、逆に反撃を入れて浅く吹き飛ばす。光輝の陰から今度は龍太郎が現れるも、軽く躱して光輝の元へ〝縮地〟で急接近。懐へ潜り込んだ。

 

「んなっ!?」

「吹き飛べ」

 

八極拳のような肘鉄によって空気の層を突き破りながらミレディの張る結界まで吹き飛ばされた光輝。そこそこダメージを負ったらしい。鈴が回復魔法をかけたことで事なきことを得たらしいが。

 

死角から飛んでくる大火球を重力魔法で軌道を変えてから真っ直ぐに向かってくる龍太郎の一撃を今度は正面から受け止め、背負い投げして距離を取る。跳ね上がった龍太郎の体にイクサナックルからの空気砲で追撃を入れ、撃発を使ってそのまま後方から攻撃してくる鈴と恵里の元へ向かう。

 

「うわっ!? こっちきた!」

「落ち着きなよ。――〝邪纏〟」

「う、なに?」

 

黒い明滅する球体が突然眼前に現れ、それが視界に入った瞬間、俺の体が数瞬だが動かなくなった。どうやら脳から体へ発される命令を阻害する魔法らしい。

 

考えて動くことは不可能だと悟った俺は、ここ半年の間に培った“野生の感”に頼ることにする。脳から命令が届かないのを逆手に使って無意識を作りだし、ぼやける視界の中をクルクルと独楽のように回転しながら魔法を躱していく。そして俺の体は確実に相手を仕留めるために勝手に動き出す。

 

『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ』

 

通常ならまず狙えない回転速度だが、“野生の感”に頼っている俺の体には関係ない。僅かな隙間を見つけて五億ボルトの電磁波を鈴と恵里に向かって発射した。

 

当然回避に専念する二人だが、その拍子に俺にかけていたデバフが解けてしまったらしい。そのことに気がついた恵里が歯がみしている。

 

地上へそのまま降り立った俺は勢いをそのままにイクサナックルを地面に叩き付ける。すると、回復して突っ込んできた光輝と龍太郎がブロウクン・ファングの残り火によって発生した電流床を踏んだ。ちょっとやそっとの電流で死ぬ訳ではない光輝たちだが、軽く纏雷は超える電撃によって数瞬の間己の動きを止めたのには違いない。

 

なんとか聖剣を振り回す光輝に延髄切り、フックカットを狙ってきた龍太郎に浴びせ蹴りを食らわせてダウンさせる。浴びせ蹴りの後隙を狩ろうとする魔法は咄嗟に作り出した電磁波フィールドで相殺した。

 

近距離アタッカーが一気に二人も戦闘不能になったことに焦ったのか、鈴は攻防一体のバリアバーストを連発してくる。闇雲に撃たれる魔法を躱すことは簡単なので難なく回避しているのだが……一つ、気になることがある。

 

(恵里は何を考えているんだ?)

 

相方の鈴が焦っているのに対し、恵里は小刻みに位置を変えながら中級魔法を撃ち込んでくる。鈴とは違って狙いはかなり的確であり、中には俺の未来位置を予測した攻撃まである。ボサッとしていれば普通に当たってしまうだろう。

 

しかし一つ一つの魔法は明らかに俺を仕留めようとする物ではない。確かに当てには来ているが、本命の攻撃ではなさそうだ。それが逆に不気味に感じるのである。まるで嵐の前の静けさだなと俺は勝手に思った。

 

が、止まるわけにもいかない。俺は地面を踏み込んで鈴の元へ突撃する。何故か恵里が鈴の近くから離れたのが気になるが、気にせず突貫。鈴の張った結界を手刀の一撃で割って突破し、恵里の援護射撃を空間魔法で躱して鈴の項に一撃入れて気絶させた。

 

あと一人。そう思って最後に恵里の元へ向かおうとする。しかし耳に届いた“音”に、思わず動きを止めることになった。

 

「ヴァイオリン!?」

 

そう、恵里がヴァイオリンを取り出して演奏を始めたのである。まさか実戦で、しかもいきなり使用してくるとは思わなかった俺は間抜けな声を上げてしまった。

 

確かにヴァイオリンを使って魔法を発動せせる方法は教えたが、それもつい二日前に軽く教えただけだ。ましてや実戦で使わせたことは一度もない。それを一日で実戦投入できるレベルまで持って行けたとしたなら……恵里こそ正真正銘の天才だ。俺なんか足下にも及ばない。

 

「それもわざとなのか、“月光”の第三楽章を選んでくるなんてな。規格外過ぎるだろ……」

 

悪態をつきながらも空中に跳び上がりながら自分のヴァイオリンを取り出す。雫が初めて生成魔法で作り出せたアーティファクト製作用の素材を使用して作った思い出のヴァイオリン。確かにハジメや俺が最初から作ればより質の良いヴァイオリンが出来たかもしれない。しかし……愛の前にその言葉は些か無粋と言えるだろう。

 

恵里が“月光第三楽章”の主旋律を弾いているのを確認した俺は、重力魔法を使って結界の天井に逆さまになって立ちながらも副旋律を奏で始める。

 

主旋律と副旋律。二つが揃い完璧に調和した一曲が辺りを包む。その際に生まれてお互いの元へ飛来していく魔法弾も傍から見れば“綺麗”と感想を残せるかもしれない。実際に第三者として見ているミレディが「綺麗だねえ」と零している。

 

光弾、火球、水流。様々な属性の魔法がぶつかり合っては弾け飛んでいく。その様子はまるで花火のようだ。それにしても恵里の魔法の勢いが凄まじい。俺の生み出す魔法とほぼ互角であり、下手したら光輝のことを軽く封殺してしまうほどの破壊力である。

 

だがそれと同時に粗も見つけた。やはり慣れてないからか、攻撃に集中しすぎだ。俺は魔皇力での演奏にシフト。曲の終盤に合わせて盛り上がる部分を利用して嘘と冗談を総動員したかのような、“月の女神”を具現化させた。蒼白く神々しい“月の女神”が翼をはためかせ、恵里の飛ばす魔法を全て打ち消す。

 

目を見開いた恵里を見逃さず、俺は“月の女神”を恵里に攻撃するように命じる。硬直して動けない恵里を嘲笑うかのように“月の女神”はその手に持つ巨大な弓を引いて、一撃必殺の矢を発射した。

 

矢は狙い違うことなく恵里の魔法陣を叩き落とし、オマケ程度に彼女の体内にある魔力の流れを絶ってしまった。

 

「あ、はは……こりゃ無理だ。降参だよ」

 

苦笑いしながら両手を上げる恵里。俺はそれを見て地上に降り立ち、変身を解除。ミレディに現在は気絶している三人を回復するように頼んだ。

 

あっという間に回復して意識を取り戻した三人は、すぐに俺に立ち向かおうとするも……ミレディの重力魔法によって強制的に押さえつけられ、戦いは終わったのだと告げられて意気消沈した表情になった。

 

しかし恵里の表情は明るい。俺は何故なのかを尋ねてみる。それと合わせて、いきなりヴァイオリンを実戦投入出来た理由も聞いてみた。

 

「それはね、最近覚えた技能による物なんだよ。心拍数を上げれば上げるほど僕の魔力が上昇していくっていう物なんだ」

「なんだそりゃ……つまりあれか? お前の心拍数を上げる要因さえあればお前の力はどんどん上昇していくってことだろう?」

「限界突破の上位互換とも言えるよ。時間制限はないからね。落ち着いたら比例して僕の戦闘力も下がってしまうけど」

「なるほど。ヴァイオリンをいきなり実戦投入出来たのにも納得がいく」

 

俺との戦闘によって急激に上がった恵里の心拍数によってあれほどの戦闘力が発揮できたのだと知り、俺は一人納得した。つまりハイになればなるほど強くなる、ということだ。

 

全てを理解した俺は、恵里から視線を外してミレディの方を向く。そして恵里たちが仰天しかねない言葉を口にした。

 

「ミレディ、中村に神代魔法を授けてやってはくれないか?」

「ふーん……その心は?」

「こいつは化ける。戦闘訓練を積めばハジメレベルにはな」

「あの白髪くんレベルに? 君の目は本当に正しいのかな?」

 

試すかのような物言いのミレディに苦笑しながらも俺は続けた。既に仰天している恵里たちがさらに驚くことになるような事実を。

 

「戦ってみて分かった。中村……いや、恵里の攻撃は普通に俺に届きかねなかった。迎撃で最初は必死だったよ」

「ふむ……完全に化け物、そしてフミネの息子である君が必死になる、か。なるほどね」

 

少しの間、黙考するミレディ。しかしそれもすぐに終わった。ミレディは人懐っこい笑みを浮かべると、何時もの口調で口を開く。

 

「なら、決まりだね! ミレディちゃんの力の一端をそこのメガネちゃんに授けてあげよう!」

「え……ええ!?」

 

住処に恵里の悲鳴が響き渡り、光輝や龍太郎の「そんなバカな」という声。素直に喜ぶ鈴の声も同時に響き渡るのだった。

 




“心拍数に比例して戦闘力が上下する”の技能名を募集します感想かDMで送ってくれると嬉しいです。中々良いのが思いつかないんですよ()
恵里が音也を多少は追い詰める原因を一つ作ろうと思ったのですが、結構こじつけみたいな部分があります……ちなみに元となったのはペルソナ3ですよ()

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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