※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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火傷して一日スマホ触れなかった()
ここから先に控えている氷雪洞窟さえ乗り越えれば構想がある程度固まってるんですが……中々難しいですね。


第十四楽章 黒い悪魔

再び転移した場所はやはり洞の中だった。しかし、いつもと違うのは正面に光が見えること。外へと通じる出入り口が最初から開いているのだ。

 

洞の奥は巨大な木の枝によって道が開かれており、フェアベルゲンの空中回廊のような様子を見ることが出来る。ちなみに背後には大樹が鎮座しており、これまで大樹の中を通ってきたと考えると樹海で見た大樹は氷山の一角だということが分かるだろう。

 

改めて大樹の巨大さに脱帽しながらも先へ進もうとすると、俺の耳に生理的に受け付けない音が入ってきた。ガサガサ、ザワザワと微かに聞こえるそれは何となく生理的嫌悪感を覚えるもので、ずっと下の方から響いてくる。

 

まさか神の耳とも呼ばれる俺の聴力がここで仇になるとは思わなかった。聴力が良すぎるが上に、目で見ることなく音の正体を察してしまったのである。

 

「……嘘だろ?」

「あれ、どうしたの?」

「急ぐぞ」

 

質問に答えることなく先行する。下から這いずり寄ってくる音の正体は何か。多分一度その名前を聞けば、俺がここまで焦っていることも納得がいくであろう。

 

一匹見つけたら三十匹はいると思え! という言葉と共に恐れられてきた黒い悪魔の名を冠する頭文字Gのあんちくしょう。いつもカサカサ這いよる混沌、陰から陰へ縮地並みの高速で移動し、途轍もない生命力でしぶとく生き足掻く。宙を飛べば、地球であっても混乱と恐慌の状態異常をもたらす固有魔法まで使える強者、お母さんたちと飲食店の仇敵。一番やりたくないけど人間換算したら最強になれるあの野郎。

 

その名を……ゴキブリ。

 

そのゴキブリが、この地下空間の底辺に、数百万、数千万、否、もはや測定不能なほど蠢いているのだ。例えるならゴキブリの海。波の如く寄せては返すのはゴキブリの波だ。ガサガサ、ザワザワという音は、おびただしい数のゴキブリが奏でる活動音である。

 

しかも刻一刻とこちらに近寄っている。俺は目の前に見えている大きな足場目指して一気に飛翔した。後から恵里たちが慌てて付いてくる。俺は着地するまでの間に九九艦爆を数十機単位で取り出して周囲に展開させた。ゴキブリ相手なら容赦はしていられない。俺は更にイクサキャノンとゲルリッヒ砲をも取り出して装備した。

 

「コウモリモドキ。全力攻撃を頼むぞ。恵里たちもだ。少しでも手を抜いたら精神から死んでいくからな」

「お、おう」

「良い加減教えてくれよ。一体どうしたって言うんだい?」

「恵理、悠長に構えてる暇はないぞ。すぐに心拍数を上げろ。これから相対する敵は……俺たちがよく知る悪魔だ」

 

ウ゛ゥ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛!!!

 

俺の言葉に合わせたかのように、下側から不快な、それはもう不快な音が辺りに響き渡った。このタイミングでこんな音を出す奴など一つしかない。音の正体、それは直下に待機していた大量のゴキブリたちが羽ばたいている音である。直下から直上へと一気に駆け上った黒い津波を見て、キバット以外の四人が顔を青ざめさせる。特に鈴が今にも気絶しそうだ。

 

「ひいい!?」

「す、鈴! ……くっ、やるしかないね」

 

こめかみに拳銃を当てて目を見開く恵理。どうやら心を決めたらしい。まるで過呼吸のような息の荒さになった恵理を守るために俺は重力魔法を使ってゴキブリの大群を引き止め、九九艦爆を操って爆弾を投下。爆発させて少しでも時間を稼ぐ。さらに立ち直ったキバットが〝紅壊〟を発動。全身の細胞が壊死したゴキブリがボロボロと下へ崩れ落ちていく。

 

それでもまだ、相当数のゴキブリが存在している。というか減っている気がしない。むしろ増えている気がする。流石ゴキブリさんである。

 

と、その時である。

 

ドパアン! バリイイイン!!

 

発砲音とガラスが砕け散るような音が鳴り響いたのだ。この状況で発砲音を鳴らせる道具を持っているのは俺以外で恵里しかいない。何事かと思って俺はイクサキャノンとゲルリッヒ砲を連射しながら振り向き……思わず息を呑んだ。

 

恵里の瞳は爛々と紅く輝いており、口元はまるで三日月のように裂けている。彼女の周りには飛び散ったガラスの破片がグルグルと円を描いて浮かび上がっている。煙がモクモクと立ち上る拳銃を手にし、軽く首を傾げている恵里の姿は別ベクトルで“悪魔”と断言出来るほどに悍ましい姿であった。

 

その姿を見た俺は勿論、光輝たちですらも一歩無意識に後退る。そんなこと知って知らずなのか、恵里はより一層悪魔的な笑顔を深めて更に俺の度肝を抜く発言をした。

 

「来て……“ナイズ・グリューエン”!」

「はあ!?」

 

引かれた魔法のトリガー。そこまでは良かったのだが……彼女が叫んだ人物の名前に再度、俺は驚くことになった。何故彼女が解放者の一人であるナイズ・グリューエンを知っているのかということではない。彼女の背後に幽霊のような人型の何かが現れたからだ。

 

そういえば恵里は降霊術が使えるとステータスプレートで見た。だとしたら、現在恵里の背後に現れた人型の何かはナイズ・グリューエンの魂的な何かなのだろう。見た感じ、普通に現実に干渉出来てる辺りがどこかおかしいのはこの際置いておくことにする。

 

「フフフフ……アッハハハハハハ!!」

「無詠唱で空間魔法を連発だと!? 規格外にも程があるだろうが……!」

「それ、紅が言えることかな?」

 

鈴からのジト目はさておき、恵里が無詠唱で空間魔法の〝界穿〟と〝斬羅〟をほぼ同時に、ノータイムで発動させたことに驚きながらも俺は跳び上がった。

 

イクサキャノンの弾をクラスター弾にチェンジし、一射毎に数百匹単位のゴキブリを地へと墜としていく。所々で纏まって合体しようとしているゴキブリは執拗に狙っているので、ゴキブリへの恐怖によって動けないところで合体して巨大化するゴキブリの目論見をことごとく打ち破っていく。虫ながらも焦りを見せている所が間違いないだろう。実はさり気なく光輝たちが間隙を縫って攻撃しているか、というのもあるが。

 

「末恐ろしいな……習得していない神代魔法でも降霊術使えば使用可能なんだろ? チートにも程があるっての」

『イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ・フ・ル・パ・ワ・ー』

「だが、俺も負けてられねえなあ! 行くぜ、〝界穿〟!」

 

イクサ内に貯蓄されている電力を一気にイクサナックルに集め、変身解除の代わりに連射を可能としたブロウクン・ファングを多数作り出したワープゲートを使って多方向にぶち込んでいく。

 

撃発の反動で体の向きを変えることで隙なく電磁波を発射しきった俺は、イクサベルトを宝物庫に収納しながら降下してキバットのことを呼ぶ。彼はすぐに意図を悟ったらしく、一発〝紅壊〟を発射してから俺の腰にいつの間にか出現した止まり木に落ち着く。

 

ぶっつけ本番ではあったが、すっかり体質がファンガイアになってしまったことで魔皇力を注入することなく俺の姿は仮面ライダーダークキバへと変身した。地面に降り立つついでに紋章を召喚して火属性と重力魔法を付与。そのままゴキブリの大群へと向かわせる。

 

「ほう……同時付与か。先代は使わなかった戦法だな、興味深い」

「加えて紋章の拡張性があるからな。何やっても強力な合体魔法になるさ」

「恐ろしい男だ」

 

多数のゴキブリを駆除したことによって多少の精神的余裕が生まれた俺は、キバットと雑談をしながらも残党のゴキブリを蹴散らしていく。紋章に吸い寄せられたゴキブリは飛んで火には入る虫の如く焼け落ちていった。

 

恵里は勿論、光輝たちも徐々に慣れてきたのか剣筋や拳打、そして魔法が鋭くなっている。殲滅速度が上がった今、ゴキブリの大群に出来ることは万に一つもない。

 

「ウェイクアップ!」

「ウェイクアップ・ザンバット!」

「アッハハ……〝斬羅・散〟!」

「万翔羽ばたき、天へと至れ 〝天翔閃〟!」

 

トドメに広範囲攻撃で一斉駆除してフィニッシュだ。剣が空を舞い、空間がズルリと抜け落ち白磁の閃光が辺りを駆け巡る。念には念を入れて切り裂いてから再度反復して攻撃することで確実にゴキブリの息の根を止めにかかる。

 

全てのゴキブリがバラバラになった、と確信としたところで俺は火属性を付与した紋章と艦爆を飛ばして焼き払えば完成だ。

 

「ふう……良い仕事したな」

 

戻ってきたザンバットを手にしてからため息を付く。実は途中所々でゴキブリが大がかりな魔法陣を形成しており、さらにその裏で本命攻撃の魔法陣が展開されていたのだ。俺の耳がいち早く捉えてくれたおかげで発動する前に殲滅することが出来たが、仮に失敗してたとすれば……少し危なかったかもしれない。

 

対処に失敗してゴキブリの津波にでも呑み込まれたら今後の大迷宮攻略も危うかった。主に精神的な面で、だが。しかし攻略出来た今はその心配をする必要もなさそうである。

 

「全く、趣味の悪い大迷宮だな……」

 

俺の呟きは、大樹が新たに道を作り出す音にかき消されるのだった。

 




感情逆転がなかったのは、音也が特に同行している四人に強い感情を持っていなかったからです。恵里に対してほんのす少し疑心が生まれたぐらいでしょう。ゴキブリに対しても一瞬で立ち直っているので問題ゼロ()

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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