※この作品はR-18です。

その音色は異世界まで響き   作:誰かさん

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今回は神代魔法習得の回ですが結構雑です()
執筆中に評価が久々に届きまして、ハジメが香織LOVEなことを気に入って高評価して頂けたのが最近一番嬉しかったことだったり……()


第十五楽章 昇華・帰還への希望

ゴキブリの大群を駆逐したことによって現れた、新しい枝を渡り歩く。枝通路を登りきると、そこにはいつものように洞が出来ていた。躊躇いなく進むと、案の定、光が溢れ出し転移陣が起動する。

 

光が収まったあと俺たちの目の前に広がっていたのは庭園だ。空が非常に近く感じるほど高所にあるらしい。先ほどまで感じていた、樹海独特の鬱蒼とした雰囲気は微塵も感じられない。深呼吸をすれば、山頂で味わえる美味しい空気を吸い込んだような感覚がした。

 

学校の体育館程度の大きさのその場所にはチョロチョロと流れるいくつもの可愛らしい水路と芝生のような地面、あちこちから突き出すように伸びている比較的小さな樹々、小さな白亜の建物があった。

 

そして一番奥には円形の水路で囲まれた小さな島と、その中央に一際大きな樹、その樹の枝が絡みついている石版があった。

 

「ここが終点だな」

 

俺がポツリと言葉を零す。すると恵里を除く三人が思いっきり脱力したかのように深く息を吐いた。口々に「ここが……」とか「やっと……」などと呟いている。

 

どうやら水路そのものが魔法陣になっているらしいので、俺は今にも寝てしまいそうな光輝たちを引き連れて魔法陣の中に足を踏み入れた。するとすっかり慣れた記憶精査と脳に直接刻まれる神代魔法の知識の感覚が体を奔った。俺は特に声を上げることはなかったが、およそ一名が「うっ」と呻き声を出している。

 

どうやら今回覚えた神代魔法は〝昇華魔法〟という物らしい。こいつはどんな物も一段階グレードアップを施せる、バフ系統の魔法らしい。

 

と、その時である。おもむろに目の前の石版に絡みついた樹がうねり始めた。そのまま警戒を解かずに経過を見ていると、樹が徐々に人の形へと姿を変えていった。どうやらオスカーたちのように映像記録を残したらしい。

 

「まずは、おめでとうと言わせてもらうわ。よく、数々の大迷宮とわたくしの、このリューティリス・ハルツィナの用意した試練を乗り越えたわね。あなた達に最大限の敬意を表し、ひどく辛い試練を仕掛けたことを深くお詫び致します」

 

リューティリス・ハルツィナ。どうやら女らしい。どことなくリリアーナのような王女の気品と威厳を持ち合わせているのが印象的だ。樹の幹から出来ているのではっきりとは分からないが、ストレートの髪を中分けにした美人に見える。

 

リューティリスは何故、ここまで苦しい試練を課したのかを話す。彼女は揺るがぬ絆と揺るぎ得る心を知ってもらいたかったらしい。ここまで来れたのならば、自分の心の強さと弱さを分かることが出来たに違いない。それならば、神の見せる甘い誘惑にだって負けることは決してないと語った。

 

確かに様々なメディアで見る悪い神というのは、悪魔のように甘い誘惑を見せてくることが多い。そう考えればこのハルツィナ樹海の大迷宮の試練は理にかなっていると言えよう。

 

「わたくしの与えた神代の魔法〝昇華〟は、全ての〝力〟を最低でも一段進化させる。与えた知識の通りに。けれど、この魔法の真価はもっと別のところにあるわ」

「なに?」

 

そして昇華魔法の説明を始めたリューティリスだが、俺は最後の言葉に思わず反応して声を出してしまった。もっと別のところに真価があると彼女は言った。そうとなれば反応するのも自然である。

 

「昇華魔法は、文字通り全ての〝力〟を昇華させる。それは神代魔法も例外じゃない。生成魔法、重力魔法、魂魄魔法、変成魔法、空間魔法、再生魔法……これらは理の根幹に作用する強大な力。その全てが一段進化し、更に組み合わさることで神代魔法を超える魔法に至る。神の御業とも言うべき魔法──〝概念魔法〟に」

 

彼女は語る。概念魔法とは、その名の通りありとあらゆる概念をこの世に顕現・作用させる魔法だと。概念魔法を使えこなせた者は、この世を好きに作り替えたり壊したり出来るほどの力を得るとの等しいのだと。

 

しかし概念魔法を発動させるためには〝極限の意思〟という何ともフワッとした物を持たなければならないらしい。分かりやすい話が、極限まで怒り狂えば何かしらの概念魔法が生まれるということだろう。

 

「解放者のメンバーでも七人掛りで何十年かけても、たった三つの概念魔法しか生み出すことが出来なかったわ。たった一人で、幾つもの概念魔法を生み出した異世界人も居たけれど……いえ、この話は止めましょう。兎に角、三つの内の一つを貴方の手に」

 

リューティリスがそう言った直後、石版の中央がスライドし奥から懐中時計のようなものが出てきたのでそれを手に取る。表には半透明の蓋の中に同じ長さの針が一本中央に固定されており、裏側にはリューティリス・ハルツィナの紋様が描かれていた。どうやら攻略の証も兼ねているようだ。

 

「名を〝導越の羅針盤〟。込められた概念は〝望んだ場所を指し示す〟よ。全ての神代魔法を手に入れ、そこに確かな意志があるのなら、あなたたちはどこにでも行ける。そう……フミネのようにね。彼女のように、何時でも自由にどこへでも行けるようになれるわ」

「どこへでも……」

「この大迷宮を最初に攻略した者には〝神殺しの矢〟を授けているわ。果たして同胞なのかは分からない。けど、ここまでの大迷宮を全て攻略しているなら目的は同じはずよ。自由な意志のもと、あなた達の進む未来に幸多からんことを祈っているわ」

 

彼女のように。これは俺の母さんのことを示しているのだろう。母さんは生み出すのが難しい概念魔法を幾つも生み出したとんでもない人物ということになるのだが……やはり日本に帰ったら、第一に母さんを質問攻めにしなければならない。聞きたいことが多すぎる。

 

しかしそれ以上に、帰還のための一手が手に入ったことによると歓喜の気持ちが大きかった。流石にこの場から空間魔法を使って元の世界へ帰ることは出来ないが、残る神代魔法もラスト一つだ。この攻略ペースなら、半年以内に帰ることは可能だろう。

 

必要なことは伝えたからなのか、リューティリスの姿は既になく、辺りにはこの場に居る五人の心音だけが響き渡っている。しかしそんなことお構いなしだ。俺は今後どうするかハッキリと決まったことにより、恵里がむくれ顔になって頬をペチペチしてくるまで思案をひたすら練るのだった。

 

──────────────────

 

「音也ぁ!」

「どわっ!? いきなり飛び込んでくるんじゃねえよ……ったく」

「仕方ないでしょう? 雫は寂しがり屋なんだからね」

「ん……夜は寂しそうだった。私も……」

「うむ。妾も寂しかったのじゃ。ご主人様よ、大迷宮攻略で疲れてるんじゃし妾の体で思いっきり発散してもよいんじゃへぶらっ!?」

「やかましいぞ変態」

 

フェアベルゲンの入り口に辿り着いて早々、この騒ぎである。雫は雷顔負けの速度で俺の胸に飛び込み、それを微笑みながら見る露葉さん。さり気なくアピールしてきて愛らしいユエ。相変わらず変態なティオ。

 

俺は思わず顔をしかめながらも、しかし実際は心の底から安心してその光景を見つめている。ちなみにハジメや香織にシアは後方から苦笑いしつつも見守っている。

 

「よお。どうだった?」

「ハジメか……いや、どうもこうもない。そこまで苦労せずに攻略出来たさ。あの悪魔の大群には流石に度肝を抜かれたけどな」

「ああ、あれか……確かに凄かったからな。俺も少しトラウマになってる」

「だろ? 二度と見たくねえよあんな光景」

 

わざとらしく体を震わせて同意してくるハジメ。よほど心に残っているらしい。話を聞けば雫たちも夜な夜なゴキブリの大群に飲み込まれる夢を見ていたらしく、顔には極力出さなかったものの目つきだけは鋭かったらしく、ハジメは本当に生きた心地がしなかったらしい。訓練の一環で模擬戦をやったらしいのだが、雫相手の時は特に死ぬと思ったそうな。

 

「改めて心のケアの大切さを学んだ気がする」

「結構大変なんだぞ。特に雫はこう見えて心に闇を抱えているようなもんだからな」

「あら、もしかして私は貴方にとってお荷物だったかしら……」

「おいおい、誰がそんなこと言った? 人間に欠点の一つや二つあるのは当たり前だし、むしろ欠点があった方が可愛げがあるじゃないか。そうネガティブになるんじゃねえよ、綺麗な顔に皺が増えるぞ?」

 

さり気なく雫のことを抱きしめて耳元で呟く。そのまま顔を真っ赤にした雫の白い髪の毛を撫でていると、すっかり存在を忘れていた恵里が俺の服の裾をクイクイッと引っ張ってきた。

 

そういえば、魔法陣に入って話を聞いていたときに大きな反応を示していたのは恵里だけだったよなあ……なんて思いながら何事かと問う。

 

「いや、帰ってきて早々イチャつくのは良いけどさ。そらそろ休みたいんだ。寝る場所ない?」

「良くも悪くも遠慮ないなお前」

「あら……貴女も甘えられる存在を見つけたのね?」

「そんな睨まないでよ。別に取ろうだなんて思ってないからさ。とても敵わないし、最初から危ない橋を渡りたくはないよ」

 

雫の無言の追求を軽く躱していく恵里。ユエやティオは勿論のこと、露葉さんですら無言の追求を躱すのは苦しいというのに恵里はどこ吹く風である。やはり彼女も常人離れしている。

 

とはいえ何時までもこの場でイチャついていると勇者(笑)からの口撃が飛んできそうだ。相手をするつもりは毛頭ないものの、単に聞くのが面倒くさいので俺は雫に一度離れるように頼んだ。そして滞在先はどこだ?とも問う。

 

すると滞在先は、フェアベルゲンのVIPルーム的な場所であるらしい。どうやらハウリアたちが長老たちに詰め寄ったらしいのだが……この際気にしないでおこう。大方、「ボスとそのお連れが普通の部屋で言いわけねえだろ? ああ?」とでも脅したに違いない。

 

何が起こったのかを把握し、その際に生まれたであろう長老衆の胃の穴をのことを思って俺はため息を付くのだった。

 




少しずつですが、過去に書いた回も訂正を加えて地の文を増やしたり行間を削って読みやすくなるように改良しています。余力があるなら見てくれると嬉しいです()

恵里の処遇はどうする?

  • 勇者バカ之河の被害者だから救おう
  • 消せ(無慈悲)
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