俺はクリスの言葉に驚きを隠せず、目の見えないのにも関わらず、白くボヤけた視界の状態でクリスに再度確認した。
「ふりふ?ひまなんてへっへ!?」
※訳※クリス?今なんてった!?
「統一神界、あたしやアクア先輩が拠点としている所だよ、確率は低いけど、一かバチかそこに行って眼を治して貰おう!」
いや、そうは言うけど…どうするんだ?アクアでも治せないモノをそこに行けば治せる奴が居るんだろうか?
「ほのはえに、はひにひっへほふへほ、ほへのへははふはひほはおへははっはんはほ?」
※訳※その前に、俺の目はアクアにも治せなかったんだぞ?
「大丈夫心配しないで?あたしにちょっと考えがあるから。その前に、その顔治さなきゃね」
「はひ、ほーへへふはほう。ひゃへりふはいへふ」
※訳※はい、そうしましょう。喋り辛いです
俺とクリスはそのまま、家に戻って行った。腫れぼったい顔をペコリーヌに見せた。コッコロに関しては〇×〇の様な顔をしていた。その後、俺はコッコロの治療により、顔の怪我は完治して元の顔に戻った。
「いやはや喋りづらくて大変だった」
「リュウジくん!?何があったんですか!?聞きましたよ!?何者かに心臓を刺されたって……」
「まぁ色々あってね…マリューは?」
リビングにはマリューの姿はおらず、俺はペコリーヌとコッコロにマリューの事を尋ねた。ペコリーヌとコッコロは顔を見合わせて気まずそうな顔をする。
あー、この雰囲気はマリューから聞いたんだな。
「安心してくれ、ちゃんとマリューと仲直りするから」
「ホントでございますか?」
「うん、ホントだよ。それで?マリューはどこに行ったの?」
俺がマリューの行方を尋ねると、ペコリーヌはマリューの部屋を指さした。
「マリューさんは部屋に閉じこもってます……」
「そっか、後でちゃんと謝って置くよ」
「そうですか……」
「ねぇ?マリューさんとリュウジはなんでケンカしたの?まぁ大半はリュウジが悪いと思うけどね?」
「ああ、実はね…」
俺は天界に行ってる間に起こった俺とマリューのケンカの事情を話した。
────────────────────────
「───という事があったんだよ」
「はぁ…気持ちは分からなくもないけど、リュウジが悪いじゃんか!」
「あはは…そうですねぇ……」
「では、リュウジさま。今すぐ仲直りして下さいまし」
「うん」
俺はクリスに連れられてマリューの部屋に向かおうとした時、クリスが振り返ってペコリーヌとコッコロに言い放った。
「あっそうそう。リュウジはアルカンレティアでアクアさんやダクネスのお風呂を覗いていたらしいよ?」
「あっコイツ!!」
「ありゃ!リュウジくんはエッチですね、やばいですねぇ?」
「事実でしょ?」
「ふむ、それはめっ!でございますね、後でお話しましょう」
ペコリーヌとコッコロに軽蔑されながら俺はクリスと共にマリュー部屋の前にやって来た。俺は意を決してドアをノックした。
コンコン
「マリュー、俺だ……」
「リュウジ様…?帰ってらしたんですか?」
「うん、その…ゴメンな?情けない事言い出しちゃって」
「今更なんですか?鎧屋を営むんですよね?好きになさって下さいよ、もう私は知りません」
マリューは聞く耳を持たずに俺を突き放そうとしていた。見兼ねたクリスは俺を離し、クリスが今後の事を話そうと前に出た。
「マリューさん、上手く行けばリュウジの眼が治るかもしれないんです」
「えっ…?」
「そうなんだ、だからマリュー、ちょっと話だけでも聞いてくれないか?」
希望を感じ取ったのか、マリューはドアの鍵を開けてドアを開いた。俺とクリスは中に入った。
「クリス様、その方法とはどのような方法なのですか?」
「リュウジを『統一神界』という我々神が根城にしている世界です。そこに”とある女神”に尋ねて治療をして貰うと言う案です」
「それはそうですが、女神であるアクア様でも治せないモノを治せる方がいらっしゃるのですか?にわかに信じ難いのですが?」
確かに、アクアですら治せなかった白内障……そんな女神がいるのだろうか?あれ?そう言えば、ネメシスに会った時治療専門の女神と話してた様な…なんだっけ、えーっと……
俺が腕組みをしながら座り込んで思い出そうと考え込んでいると、マリューがクリスに尋ねた。
「それでクリス様?その方のお名前は?」
「はい、治療の女神リスタルテという女神です」
ああっ!!思い...出した!
「そうだ!リスタルテだ!思い出した!」
「えっ!?なんでリュウジがリスタルテを知ってるの!?」
「実際には会った事は無いんだけど、前に意識不明の重体だった時ネメシスと会ってさ?その時会話に出てきたんだよ!ほら、マリュー!冬将軍の時だよ!」
「確かにあの時、リュウジ様は意識ありませんでしたね?私が運んだ時そんな事になってたんですね、今回はネメシス様に感謝しなきゃありませんね?」
「だよな、統一神界に行ったらお礼してくるよ」
「まったく!ネメシスったら余計な事をペラペラと……」
「まぁそう言うなよ、昔の担当女神なんだからさ?共に戦った仲でもあんだし」
「それで?クリス様、どうやってその統一神界に行くつもりなのですか?」
「そうだよ、俺とクリスが長々と留守にしてたらペコリーヌ達に怪しまれちまうぞ?」
治るまでどれくらい掛かるか分からない、誤魔化す事を考えなきゃ
そう俺とマリューは考えていると、クリスは自信満々に俺とマリューの質問に答えた。
「大丈夫大丈夫、統一神界の時間はゆっくりなの、地上の時間の100分の1の時差があるからすぐ戻って来れるよ?」
「………フシギナセカイダナ〜」
「ちょっと!考えるの諦めないでよっ! あーえーっと、今ここに10分居たとしても向こうじゃ16時間経ってるの」
ややこしい…頭いてぇ
「よく分かんらんけど、それだけ時間がズレてればバレずに戻って来れるって事だな?」
「そういう事、そこで!マリューさんはペコリーヌ達に悟られないように協力してもらうと言う事!」
「なるほど、では夕食を済ませて寝静まった時にしませんか?夜中に出て朝までに戻れば何事も無かった事になりますよ?」
確かに、下手に嘘つくよりその方がペコリーヌ達との信用も傷つかずに済むかも知れないな。
「んじゃ、その作戦で行こうか?」
「承知しました」
「うん、さっ!皆でご飯食べよ!」
俺とクリス、そしてマリューはペコリーヌとコッコロに元に向かって行った。すると、ペコリーヌはニコニコとしながら料理を運んでいた。俺がマリューに誘導されて椅子に座ると、ペコリーヌが俺の目の前に料理を置いてくれた。俺は出された料理を見て青筋を立てた。
「あっあの、ペコリーヌ?これは?」
「さぁさぁ!ご飯が出来ましたよ〜♪食べましょう♪」
えっ!?無視されたんだけど、そしてなんで皆の前には肉やら野菜やらが並んで居るのに……何故俺だけ煮豆3つだけ!?
「あの〜ペコリーヌさん?ペコリーヌさ〜ん?」
「どうしたんですかぁ?サビ鉄のリュウジくん、食べないんですか?」
サビ鉄?
「石ころのリュウジさま、お残しはめっ!でございますよ?」
石ころ!?
「あっあの、クリ───」
「自業自得でしょ?早く食べなよへんたいふしんしゃ」
もはや鉱物として呼ばれてない……
「ちょっとマリュー?お前からもちょっと───」
「知りませんよ、この雰囲気を感じとったらどうですか?ご自分の胸に聞いてみてはいかがです?」
あー、なるほど…覗きですか。
俺は椅子から降りて土下座を繰り出した。
「覗きして、すいませんでした」
────────────────────────
その後、煮豆3つを食べ終えた俺は……正座を指示されてコッコロに説教される事になった。コッコロは淡々と母親のさながら俺に語りかけて来た
「リュウジさま、いくらわたくしの主さまでもやっていい事と悪い事があります」
「はい」
「女の子のお風呂を覗くのはいい事ですか?」
「いいえ、悪い事です」
「そうですね、めっ!でございますね」
いやキツイ、何がキツいって500歳の元魔王が11歳の女の子に説教されてるんですけど、精神的にキツいんですけど。鋼のリュウジと呼ばれてる男が子供に説教されてるなんて正直いたたまれないんですけど。段々とたまらない気持ちになるんですけど!?
「よろしいですね?もう覗きはしてはいけませんよ?」
「はい、すいませんでした」
「ペコリーヌさまにもちゃんとごめんなさいをして下さいまし」
「はい、ペコリーヌ…期待を裏切ってすいませんでした」
俺は床に頭を擦り付けて心からペコリーヌに謝罪した。すると、ペコリーヌはクスクスと笑った。
「もう怒ってませんよ?だけど、もうしちゃダメですからね!?」
慈悲深いっ!流石は王女!!
「ペコリーヌ、甘やかしちゃダメだよ?」
「そうですよ?ペコリーヌ様、しばらくは煮豆3つの食事にすべきです!」
クリスとマリューはペコリーヌに注意を促す。
ちくしょう!どんだけ豆3つにこだわるんだよ!
「分かった、しばらく煮豆3つで生活するよ。蘇生したてだから今夜はもう休む…まだちょっと眼の調子が悪いんだ」
「そうですか…ゆっくり休んで下さいね?」
「リュウジさま、目の具合が悪くなったのですか?」
先程とは打って変わって2人は心配そうに俺を見つめ始める。俺はそのままマリューに誘導されながら部屋に戻って行った。
これで2人は大丈夫だろう。
そしてその晩、ペコリーヌとコッコロが寝静まったの確認した俺はマリューにレッドルークの装着を手伝ってもらいながらクリスがやって来るのを待った。
コンコン
「準備は出来た?入るよ?」
「ああ、出来てるぞ」
俺の部屋のドアが開かれるとそこには、盗賊クリスではなく、幸福の女神エリスが立っていた。
「それじゃ、マリューさん、ほんの少しだけの間ですがリュウジを連れて天界に戻ります」
「はい。必ずリュウジ様の眼を治して下さいね?約束ですよ?」
「んじゃ、ちょっと行っくるな」
「行ってらっしゃいませ、エリス様に迷惑かけてはいけませんよ?良いですね?治療の女神様にも迷惑かけないで下さいよ?」
「分かった分かった」
そして、俺とエリスに手を引かれ、エリスが指パッチンをすると魔法陣が現れた。その魔法陣の光に包まれた俺は目を瞑った。
「目を開けていいよ?」
「良いのか?」
俺はゆっくりと目を開くと、ありとあらゆる物が白で統一されている街に立っていた。
「ここが私達神が住まう世界…統一神界だよ」
「ここが統一神界なのか?ボヤけて良く見えないけど……」
ボヤけた視界で辺りを見渡してみる限り、建造物の第一印象はなんというか近未来な造りをしており、近くには巨大な神殿がそびえ立っていた。エリスは俺の手を引いて歩き始める。
「まずはキミには会ってもらいたいお人がいるの」
会ってもらいたい人?誰だろう……。
「その人ってネメシスとか?そんな感じの人?」
「違うよ!そのお方はあたしやネメシス、アクア先輩の上司でもあり、女神になる為の教えを受けた恩師でもあるの、今からそのお方に会ってもらうからね?いい?とても偉い人だから変な事言わないでよ?」
エリスやアクアの先生か、こりゃ凄そうな神様が出てきそうだなぁ…。ロキみたいな奴だったらどーしよ…ヤダなぁ……。
「分かった、とりあえず黙ってるよ」
「その言葉信じるからね?んじゃ、こっちだよ」
エリスに手を引かれて神殿内に入って行くと、大きな扉にたどり着いた。エリスは立ち止まって俺に念入りに釘を刺してきた。
「いい? ホントにすっっっっごい女神様なんだからね? 絶対くれぐれも粗相のないようにね?」
「了解」
「本当に大丈夫? 事情はあたしから説明するから、リュウジはとりあえず黙っていてよ?」
「大丈夫だってば」
エリスは咳払いした後、豪奢な装飾の施された扉を開く。そこには老婆が1人で暖炉に暖まりなが椅子に腰掛け、編み物をしていた。
なにこのおばあちゃん、もしかしてこのおばあちゃんがエリス達の恩師?
「失礼します。幸福の女神エリスです。本日は”大女神イシスター様”に直接お話しを聞いて頂きたく参上致しました。」
大女神イシスター…それがこのおばあちゃんの名前なのか
「ご苦労さまです、エリス。おや?そこに居るのは…いつぞやの正義を司る魔王・福山龍二ですね?」
「!?」
イシスターは編み物しなが俺を見ると、一瞬で俺の正体を言い当てて来た。思わず俺はビクッと体を震えさせると、エリスが俺に耳打ちする。
「イシスター様はありとあらゆる事を見通す事が出来るんだよ」
「あぁ、なるほど…」
統一神界のバニルってとこかな
「ほっほっほっ 確かにエリスの担当する世界の大悪魔バニルと同じですね。ですけど私は悪感情は頂きませんがね?」
「!?」
心まで読めるのか!?
「福山龍二、悪女神メディア、悪男神ロキの一件の時は苦労を掛けましたね」
「いえ、そんな……」
俺は慌ててペコペコと頭を下げる。イシスターはほっほっほっと微笑みながら編み物を続ける。
「本来ならば過度に人間を助けることは神界の法で禁止されているのですが……貴方には”大きな貸し”がありますので今回は特例中の特例で許可しましょう」
「イシスター様!?よろしいのですか!?」
エリスは驚いて大声を出してイシスターに再度確認する。
「構いませんよ。それに、水の女神アクアを連れて行った佐藤和真に比べれば可愛いものです」
「それはまぁ…あはは……」
エリスは困ったのか、苦笑いしながら頬をポリポリかき始める。
「エリス?貴方も彼に借りがありますよね?持ち主を失った神器探しを協力させるなど」
「あっはい…」
「えーっと、イシスター様、それに関しては俺に非があるんです。勝手に変装して協力しただけですから」
そうイシスターに伝えると、イシスターは編み物をピタッと止めた。
「そうなのですか?理由はあえて聞きませんが」
「お察しの通りです、それしか考えられず居ても立ってもいられなくなり、協力しました」
「リュウジ………」
「ほっほっほっ、あの”悪魔嫌いのエリス”と”神嫌いの魔王”がここまで信頼し合うとは」
イシスターに意味深な事を言われた俺とエリスは互いに顔を見合わせて首を傾げた。
((普通の事なんだけどなぁ?))
「それで、リスタルテは統一神界にいますか?」
「いえ、リスタは今担当の勇者と『ゲアブランデ』という世界に行っています。しばらくすれば戻って来るでしょう」
「分かりました。ではリスタが戻って来るまで暫くここにいてよろしいでしょうか?」
「ええ、構いませんよ?」
「ありがとうございます、では、失礼します」
「失礼します」
俺とエリスが部屋の扉を開けようとしたその瞬間、
「……福山龍二」
イシスター様が急に俺の名前を呼んだ。
「はい、なんですか?」
「成長しましたね、以前とは比べ物にならないくらいに」
えっ?どういう事!?
「それはどういう事─────」
「もういいから!イシスター様も忙しいんだから行くよ!、イシスター様、失礼します」
そのまま俺はエリスに連れられて真っ白なドーム型の家に連れてこられた。
「良く見えないんだけど、ここ何?」
「あたしの部屋だよ、この前キミが来た空間で蘇生や神器探し以外の仕事はこの部屋で仕事してるの」
「うん、それで?なんでここ?」
「リスタルテが現場に出ちゃってるんだもん、帰って来るまでここに居るしかないよ」
「え?なら1回地上に戻った方が良くない?」
「行き違いになるかも知れないでしょ?あの子も慌ただしい子だからいつ帰ってくるか分からないよ?」
まぁ確かにそうだけども……
モヤモヤ考えていると、エリスはカツカツと進んで部屋の鍵を開けた。
「ほら、何してんの?入りなよ」
「あっ、うん…お邪魔します……」
俺は部屋の中に入ると、シンプルな造りになっていた。ベット、シャワールーム、簡単なキッチン、そして書類の山のデスクがあった。エリスは部屋に入った途端頭の飾りを取ってバサッと銀色に輝く長い髪をなびかせた。
「ふわぁ〜…夜中に出て来たから眠くなって来たね」
「でっけぇあくびだな、明るいからかな?全然眠くねぇんだよなぁ、これが時差ボケってヤツ?」
「そうかもね、ちょっとだけでも横になったら?」
エリスはベットに座ってポンポンと隣を促した。