ユイちゃん&剣神セルセウス登場させます!
───ダストを粛清したその晩、工房に閉じこもった俺は竜宮院聖哉に教わった『合成スキル』を試すべく統一神界を出る前に部屋をくまなく探して幸福の女神エリスの髪の毛を手に入れていた。長くてスラリとした銀色の髪の毛を試験管の中に入れて合成する物を考えていた。
レポートも書かなきゃないし……。
「さて、レッドウォーリアに合成すべきか…うーん」
俺はアダマンチウムで作成した鎧達を睨みながら頭を悩ませる。すると、ある事に気付いた。
待てよ?根本的に鎧に合成しようとするから悩むんじゃないか?なら、鉱石の状態から合成してしまえば……。
そう考えた俺はアダマンチウムとエリスの髪の毛を合成させて見ようとした。テーブルにアダマンチウムを置いてその上にエリスの髪の毛を乗せ、合成を始めた。アダマンチウムと髪の毛は輝き始め、髪の毛がアダマンチウムの中に吸収されて行く。光がおさまると……銀色に輝いていたアダマンチウムに更に磨き掛り、ピカピカと輝いていた。
こっ…これは……!?
合成された鉱石を手に取ってまじまじと見つめ、俺は声を振るえさせた。
「これ……もしかして『ヴィブラニウム』!?」
MARVELの世界ではアダマンチウムが最高の硬度を誇る鉱石。ヴィブラニウムはその次に硬度を誇る鉱石だったはず……。
「っと、その前に……レポートに記録しなきゃ」
俺はそのまま鉱石をテーブルに置いて重さ、色、合成した鉱石などをきめ細かく書き記した。
「後は耐久性だな……ペコリーヌとマリューに頼んで見るか」
工房から出てリビングに足を運ぶと、ペコリーヌ、マリュー、コッコロが紅茶を飲みながら談話を楽しんでいた。俺はペコリーヌとマリューに声を掛ける。
「ペコリーヌ、マリュー。ちょっといいか?」
「はい?リュウジくんどうしたんですか?」
「工房に閉じこもって何をしてるんですか?」
「2人にちょっと協力して貰いたい事があるんだ」
「「?」」
ペコリーヌとマリューは首を傾げながら俺に連れられて工房にやって来た。俺はそのままテーブルに置かれた鉱石に指を指す。
「2人とも、あの鉱石に思いっきり攻撃して見てくれないか?」
「あれにですか?」
「あれは普段鎧の素材に使っているアダマンチウムでは?」
俺は首を横に振って2人に説明する。
「これは合成されたヴィブラニウム鉱石の可能性があるんだ。それを証明したくて2人にこの鉱石の硬度を確かめて貰いたくてね」
「それじゃ、砕けたり欠けたりしたら違うって事ですか?」
「逆に砕けられなかったら」
「そう、本物って事さ 頼める?」
俺の説明に納得したペコリーヌとマリューは顔を見合わせて頷き、ペコリーヌは剣を取りに戻り、マリューは立てかけてあった大きな金槌を手にした。
「リュウジ様、良いんですね?本気で砕くつもりで叩きますよ?」
「わたしも本気で切っちゃいますよ?」
「どーぞどーぞ」
俺の言葉にペコリーヌは剣を構え、鉱石に向かって『プリンセス・ストライク』を繰り出した。
ガキィィン!!
耳を塞ぎたくなる程の金属音を鳴らした鉱石を覗いてみると、鉱石は欠けることも無く、傷付くことも無かった。ペコリーヌは手をジーンとさせながら驚いていた。
「うひゃ〜手がビリビリしちゃいましたよ!やばいですね!」
「ペコリーヌ様の攻撃でビクともしないなんて凄い鉱石ですね、斬撃が効かないなら打撃攻撃はどうでしょうか───フンッ!」
今度はマリューが大きな金槌を持ち、大きく振りかぶって鉱石に金槌を振り下ろした。
ガギン! バギィ!
マリューのフルパワーで振り下ろされた金槌は鉱石を置いていたテーブルごと叩き潰した。工房の床までぶち抜いたが…鉱石は無傷だった。
ほうほう…打撃・斬撃は問題なさそうだな。
「かったぁぁぁ……これ凄いですね!?」
「2人ともありがとう、本物だってのが実証されたよ」
ペコリーヌと同じ様に両手をジーンとさせるマリューを後目に俺はレポートに結果を書き記して行く。きめ細かい説明文1万文字に達したレポートを折り畳んだ。
良し、コレを今から統一神界に持ってけば良いだけだ。まさか統一神界をテレポート先に登録出来たのがびっくりだけど……。
俺はヴィブラニウムと確信した鉱石を拾い上げ、ペコリーヌとマリューに声を掛ける。
「2人ともありがとう、もう遅いからそろそろ風呂入って寝よう」
「そうですね、そろそろ休みましょうか」
「わたしも明日からまたコッコロちゃんと美食殿に行くので先にお風呂頂きますね?」
「うん。食材は明日の朝イチに注文しに行くから」
「了解です☆、では、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ〜」
ペコリーヌは工房から出てコッコロを呼び風呂に向かって行った。俺とマリューは穴の空いた床を修繕して、テーブルの残骸を集めて掃除を始めた。黙々と作業をしていると、マリューが声を掛けて来た。
「そういえば……キャル様がいらっしゃいませんでしたね?」
「そう言われてみれば全然顔出さねぇな……何かあったのかなぁ?」
ほうきを片手に首を傾げていると、マリューは更に言い放つ。
「まさかとは思いますけど……リュウジ様を殺したのは───」
「根も葉もない事を言うな、証拠が無いだろ?」
俺は無意識でほうきの柄をギュッと握りしめていた。
俺もそう思った、けどそう考えたくない……。
それを見たマリューは慌てて謝り出す。
「そっそうですね、申し訳ございません」
「今はこうして生きてるんだ、別にもう気にしてねぇよ」
マリューにそう吐き捨てた俺はヴィブラニウムを片手に自分の部屋に戻って行った。
────────────────────────
真夜中になり、マリュー達も寝静まった時間帯に俺はベットから起き上がり、レッドウォーリアを装備してまとめたレポートを持ち、統一神界にテレポートした。
エリスは未だ統一神界か持ち場にいる可能性がある、見つかったらボコられるから見付からない様にしよう……。
統一神界に辿り着き、エリスの部屋を覗いてみるとエリスの姿は無くホッと胸をなで下ろした。
「ふぅ〜、居たらどうしようかと思ったけどいない見たいだな、このまま見付からない様にセイヤを探そうかな」
統一神界の時間帯を計算すればあれから約半日、まだ恐らく剣神セルセウスって男神に稽古を付けてもらってる筈だ。
エリスがセイヤとリスタに教えた場所を歩いて向かっていると、何やら声が聞こえて来た。
やっぱり居た!
「おーい、セイヤ〜?レポート届けに……え?」
「あっ!リュウジ!!いい所に!止めて!アイツを止めて!」
リスタに促された俺は硬直した。何故かと言うと、そこには恐ろしい光景が目の前に広がっていたからだ。
もしかしてあの筋骨隆々の体格で髭を生やした奴が『剣神セルセウス』なのだろうか?
セイヤが剣神セルセウスに馬乗りになって、両拳で剣神セルセウスを打ち付けていた。
「うぎゃっ!ぎゃっ!オフッ!オゥッ!」
唸りながら剣神セルセウスは手で頭部をガードしている。
えっ何これ?どういう状況!?
「ち、ちょっと!?もういい加減にしなよ!?コラ!やめなさいっ!!」
「マウント取ってタコ殴りしてんぞ!?オイッ!セイヤ!」
俺が駆け寄るとセイヤはようやく殴るのを止め、リスタはセイヤに食ってかかる。
「もうセイヤ!!アンタ、どうしてこんな酷いことするのよ!!」
「泣いてんじゃん!何も泣くとこまでボコらなくてもいいじゃん!」
リスタが怒っても、セイヤは悪びれる訳でもなく何処吹く風だ。
「お前達は一体何を言っているのだ? これも訓練の一環だぞ?」
「あ……そ、そうなんだ……」
「逆に聞くけどマウント取ってタコ殴りしてる訓練って一体どんな状況設定してんだよ」
どこからどう見ても神を虐める暴君の様な光景だったけど……?
俺は仰向けで寝ころんだままの剣神セルセウスに声をかけ、リスタは笑顔を向ける。
「ビックリしちゃいましたよ! 訓練だったんですね!あっ、紹介が遅れましたね、この方は幸福の女神の担当の方の福山龍二さんです」
「こんな形の挨拶ですいません、初めまして、別世界を担当してます福山龍二………」
「……」
剣神セルセウスは顔を手で覆ったまま、一言も喋らなかった。
「あの〜?」
「いやセルセウス様、黙ってんじゃん!!ホントに訓練だったの!?」
「それで……リュウジだったか?、貴様は何の用だ?」
「おい私を無視すんなっ!」
リスタを無視しながらタオルで顔を拭きながらセイヤは俺に顔を向ける。俺はヴィブラニウムのレポートをセイヤに手渡した。
「前に合成スキルの条件だったレポートを渡しに来たんだよ」
「ほぅ、流石は別世界を担当する勇者だな、仕事が早いな」
そう言いながらセイヤは受け取ってレポート用紙に目を向け、ベラベラと捲りながら読み始めた。
「ふむ、まぁまぁな出来だな。だが、合成スキルの可能性が増えた」
「そっそうか、なら良かった」
「そんな事よりセイヤ!今からゲアブランデに行くのよ!」
リスタは慌てながらセイヤの腕を掴んで連れて行こうとしていた。
随分慌ててんな、担当している世界で何かあったのだろうか?
「なぁリスタ、なんかあったのか?」
「大アリよ!次の街にアンデッドの軍勢が向かってるらしいのよ!」
ほぅ、アンデッドか……。
リスタの言葉を聞いた途端、セイヤはレポート用紙をポケットにしまって剣を腰に装備し始めた。
「いいだろう。こちらも、この男から得るものは何も無くなったところだ」
「ようやく次の街に行くんだな、油断せずに行けよ?アンデッドの軍勢が来てるという事は、スパイがいる可能性があるぞ」
「その可能性はある、警戒しておこう」
体育座りして膝に顔うずめたまま、何にも喋らない剣神セルセウスと対照的に、聖哉は颯爽と鋼の鎧を装着し、艶やかな黒髪をサッとかき上げる。
「レディ・パーフェクトリー準備は完全に整った。次の町へ出発だ」
「うん……でも……その前に一回ちゃんと謝りなさい!」
「そうだ謝れ!俺も一緒にごめんなさいしてやるから!」
リスタはその場でゲートを創り出し、ゲアブランデに向かって行った。取り残された俺は剣神セルセウスに声を掛ける。
「帰ろ?今日はもう帰ろ?」
「……ぐすっ……うん……」
セルセウスに涙を拭ぐわせながら立ち上がらせ、帰ろうとしたその時…。
「福山龍二さん?セルセウス様?こんな所で何をしてるんですか?」
ニッコリと微笑み、尚且つ殺気を醸し出してるエリス様が立っていた。
ギャァァァッ!
「質問してるのですが?答えてくれませんか?」
「これはこれは上位女神のエリス殿……」
「エッエリス、聞いてくれ怒らずに聞いてくれ!!」
「聞きましょう聞きましょう、まずどうやってこの統一神界に来たのかを」
「いっいやあの、その……」
「エリス殿、まさかとは思うが……この男が?」
「ええ、私の担当の”勇者(仮)”の福山龍二さんです」
間違ってないけど……(仮)はなんかキッついわぁ……。
その後、セルセウスは帰り、俺はエリスの部屋に連れて行かれて正座を強要された。
「───で?どうやって統一神界に来たの?」
「どうやってって……普通に『テレポート』で」
テレポートと聞いた途端エリスは驚いていた。
「えぇ!?テレポートって!?統一神界を登録出来たの!?」
「俺もびっくりしたよ、おかげで全ての登録先が埋まったよ」
エリスは頭を抱えて唸り出した。
「もぉ〜、なんで最後の1ヶ所を
「いやぁ〜どうしてもやらなきゃならない依頼がありまして」
俺の言葉にエリスは首を傾げる。
「依頼?イシスター様の依頼の他にもまだ受けてたの?」
ヴィブラニウムの件は伏せておこう……絶対殺られる!!
「ええまぁ……けど、もう終わったよ。その道中に剣神様がボコられてたから助けたんだよ、そこにエリスがやって来たって訳だ」
「なるほどねぇ、ならもう帰るんだね?」
「うん。帰るよ」
その言葉を聞いた途端安心したのか、エリスはホッと胸をなで下ろした。
「はぁ〜、セイヤさんと同じく稽古でもするんじゃないかって思ったんだよ、もう帰るなら安心したよ」
「帰りますよ、そんなに俺に強くなられるのが嫌なの?」
「そうじゃないよ!前にも言ったでしょ!世界観が違うって!」
世界を守ろうとしてんのにお堅い人達だなぁ……これだから神々は
「んじゃ、そろそろ俺も帰るわ……イシスター様によろしくな?」
「はいはい、リュウジもみんなによろしくね?」
「おぅ、んじゃな」
エリスに見送られながら俺は再びテレポートでアクセルの街に戻った。自分の部屋に戻ると、まだ朝日も登って居なかった。
「まだ夜中か、そりゃこっちの時間では数分しか経ってないんだもんな、俺も寝るか」
────────────────────────
朝日が登り、小鳥のさえずりが聞こえて来た。それと同時にフライパンを叩く音が聞こえて来た。
カンカンカーン
「おはようございまーす☆あーさですよー!」
ペコリーヌが1番に起きたのか、ペコリーヌの声が聞こえた。俺は布団にうずくまった。
「ん〜もう朝か……もうちょい寝た……い……グ〜……」
俺が2度寝を繰り出すとドアが勝手に開いた、鍵をかける事を忘れており、ペコリーヌが入って来た。
「おはようございま〜す、リュウジくーん?ありゃ、まだ寝てるんですねぇ」
ペコリーヌは俺の顔を覗き始めた。ペコリーヌはしゃがみ込み、俺の頬っぺを突っつき始めた。
「ツンツン……ツンツンツンツン……寝てますね」
「起きて下さいよぉキスしちゃいますよぉ?」
ペコリーヌがとんでもない事を口走っていても俺は寝息を立てていた。コレをチャンスと見たペコリーヌはおもむろに顔を近づけて来た……だが、ギリギリの所で止まった。
「やっぱり寝込みを襲うのは良くないですよね……正々堂々とリュウジくんを振り向かせないと……」
リュウジさま〜?
リュウジ様〜?起きたんですか〜?
リビングからはコッコロとマリューの声が聞こえて来た。ペコリーヌは即座に反応して俺から離れると、今度は普通に起こしにかかった。
「リュウジくん!リュウジくん!起きて下さい!」
「ん……ペコリーヌ……ふわぁぁ〜……」
なんだろう、ものすっごいチャンスを逃した様な気がする……。
「オイッス〜☆おはようございます☆、朝ごはん食べちゃいましょう♪」
「うん、そうする……そうだ、今日は美食殿の食材仕入れるんだった」
「はい♪よろしくお願いいたしますね!オーナーさん!」
その後、着替えた俺はペコリーヌと共にリビングに向かい朝食を取り始めた。今日の予定をペコリーヌ、コッコロ、マリューに報告した。
「さて、今日は美食殿に食材を仕入れに行くから、マリューは俺に付いてきて来れよ?」
「分かりました」
「コッコロちゃんとペコリーヌはそのまま美食殿の開店準備をしててくれ、開店時間までには荷車を運んで来るから」
「畏まりました」
「了解しました♪」
コンコン
突然、朝早くから玄関のドアがノックされた。それに気付いた俺達は揃ってドアを見つめていると声が聞こえて来た。
「あっあの、おはようございます。朝早くすいません、鋼のリュウジさんのお宅でしょうか?」
声からすると女の子だな?アルバイトの募集を見て来たのだろうか?
「誰だろう……はーい」
俺がドアを開けてみるとそこには……桜の様な美しいピンク色のショートカットの髪の毛、清楚な女の子が立っていた。女の子の手には花の様な形をした装飾の杖を持っていた。
「えーっと……どちら様ですか?」
俺が尋ねてみると、ピンク色の髪をした女の子は緊張しながら答えた。
「あっはい……初めまして、わたしの名前は”ユイ”と言います」
ユイと名乗った女の子は深々と頭を下げた。