俺の頭はもうダメかも知れません……。
久しぶりにアクア、めぐみん、ダクネス登場。
─────翌日、俺はペコリーヌ達と別れ、貯金を増やすべく冒険者ギルドにやって来た。ギルドの中に入ると、ダストがリーンにボコボコに殴られていた。
「昨日の討伐クエストで手入れたお金もうなくしたの?どこまでバカなのあんたは?」
「げふっ……リーンさん、すいません……」
「ダストくん!大丈夫!?」
「ユイ!甘やかしちゃダメだってば!」
「そうそう、そいつにはこれくらいが丁度いいんだって」
「キースくんまでそこまで言うの!?」
何を揉めてるんだこのメンバーは……。
俺はダストをチラッと見てスルーしてそのままギャーギャーと騒いでいるリーンとキースに手を挙げて軽い挨拶をし、ユイは俺に気付かずに治療を始めた。俺は久しぶりのソロクエストの為にクエストボードを眺め始めた。
さて……今日は俺一人だし、高額賞金首のゴリマッスルの討伐でもしようかな、それとも……雪山に潜んでる白狼の群れでも行こうかなぁ
1人でブツブツ悩んでいると、後ろから声を掛けられた。
「あら?リュウジじゃない、1人でどうしたのよ?」
後ろを振り返ると……俺は何も言わずに立ち去ろうとした。
この流れは不味いっ!
「ちょっと待ちなさいよ!クエストでしょ?クエストに行こうとしたんでしょ!?」
「いっいや、別に?何でもないよ、んじゃねアクア」
「おっと、どこに行こうと言うのですか?」
「めぐみん!?お前まで!?」
「私もいるぞ、何も言わずに逃げる事はないだろ?」
「なんだララティーナか」
「ラッララティーナと呼ぶなぁ!」
そう、俺は……カズマの悩みの種となっている信号カラーの3人に行く手を阻まれた。逃げれないと判断した俺は観念して溜息を吐く。
「はぁ……ってあれ?、カズマとマヒルはどうした?」
「カッ、カズマさんはマヒルの所に行って牧場の手伝いに行ってるわ」
アクアは目を泳がせて何か歯切れの悪い言い方をする。
「ならお前らも手伝えば良いだろ?アクア達も働いた分キッチリ給料払うぞ?牛乳も欲しけりゃあげるし、チーズもやるぞ?」
「リュウジ、実はその事なんですけど……」
「めぐみん、説明は私がしよう」
めぐみんが申し訳なさそうに話そうとすると、ダクネスが前に出て説明しようとしていた。
嫌な予感がする……。
「実は……今日我々はマヒルの手伝いに行っていたのだ」
「あっそうなの?ならなんでここに?」
「最初は我々はマヒルの指示でテキパキと仕事をこなしていたのだが……アクアが途中に牛乳を全て浄化してしまったのだ」
「………………えっもっかい言ってくれる?」
「アクアが手伝いをしてる途中に今日の分の牛乳を全て───」
ダクネスがリピートする瞬間、アクアが堪らず逃げ出そうとした。
逃がすかぁぁぁぁぁ!!
俺はライトニングを放ち、ビリッと感電させた。
「あばばばば!ごめんなさい!ごめんなさい!電撃はやめて!ビリビリして痺れるから!」
「じゃあかぁしいわぁ!よくもマヒルとエリザベスが頑張って蓄えた資源を浄化してくれたな!!弁償しろ!弁償!!」
「落ち着いて下さい!それで私達は考えて、クエストの報酬を弁償に当てようと考えたんですよ!」
右手をバチバチさせてアクア頭を焦がしながらめぐみんの話しを聞いた。
「ほう、で?そのアイデアに関してカズマはなんて?」
「自分のケツは自分で拭けと」
ごもっとも!
「それでカズマは私たちがクエスト行ってる間にマヒルと農場の仕事をしているのだ、すまないが一緒にクエストに行かないか?報酬は弁償に当てるから必要ないぞ?」
ふむ、悪くない話なんだけども……。
俺は不安気な顔をしながらアクアを見つめると……。
「わぁぁぁぁぁ!髪の毛が焦げちゃったじゃないのよ!謝って!ほら早く謝って!髪の毛を焦がしたのに対して謝ってぇ!」
「という訳なので、私達がしっかりサポートしますので大船に乗ったつもりでいて下さいよ」
「大船……?しっかりサポート?」
めぐみんの言葉に俺は疑問が浮かび首を傾げると、めぐみんが食ってかかる。
「おい、その納得のいかない返事の理由を詳しく聞こうじゃないか?」
「いや、まぁ……ないよ、うん、大丈夫大丈夫」
「ならそんな意味深な顔をしないで下さい!」
「それで?クエストどうすんだよ?なんかアテがあるのか?」
「あるわ!コレよ!」
3人に尋ねると、アクアが頭を焦がしながら立ち上がり、1枚のクエスト用紙を見せ付けてきた。
なになに?
【ダンジョンに潜むアンデッドモンスターを駆除しろ 30万エリス】
ふーん、イイじゃん。
クエスト用紙の確認を終えるとアクアは勝算があるのか、自信に満ち溢れておりペラペラと喋り出した。
「私は女神で優秀なアークプリースト、雑魚のアンデッドなんてちょちょいのちょいよ!」
「それが不安なんだよ、いきなりフラグ立てやがって……」
「いざとなればダンジョン外まで引き付けて爆裂魔法を撃つまでですよ!」
「それに私がお前を含め全員守る、安心しろ」
「まぁ全額弁償してくれるってならいい、行くぞ?」
俺は淫夢でお世話になったアクア達に免じてクエストを受注する事にした。
そう言えばここに来て半年が経つがこのメンバーだけでのクエストは初めてだな……新鮮っちゃ新鮮なんだけども……。
【合同クエスト・ダンジョンに潜むアンデッドを駆除しろ!!】
────────────────────────
ダンジョンに辿り着き、ダンジョンの中を数分歩いた途端アンデッドに囲まれ、初っ端からフラグの回収をした。俺はゾンビやモンスター達を殴り倒しながら数を減らし続けた。
「アクアが先陣切った途端コレかよ!お前マジなんなんだよ!」
「知らないわよ!『ターンアンデッド』!『ターンアンデッド』!」
「リュウジ!アンデッドはアクアに任せて私達は他を片付けましょう!」
「あーっくそっ!『ライトニング』!!」
「よしっ!任せろ!」
突然ダクネスが走り出し、射線に飛び出しライトニングに直撃した。
あっあれ?なんか今……自分から飛び出して行ったような……?
誤射の可能性がある為、俺はダクネスに注意する。
「ダクネス!射線に入るな!危ねぇぞ!」
「くっ……これが雷魔法か、いいぞ!もっとくれ!」
今なんて?気の所為か?今度は間違えずに撃とう。
「今度は大丈夫だろう……『ライトニング』!!」
今度はダクネスが射線に入らぬ様に、少し離れて魔法を放った。
すると突然……。
「そっちか!」
「おい!ダクネス!?」
バチィン!
ダクネスは再びライトニングの射線に飛び出してライトニングに直撃した。感電しているダクネスはとても嬉しそうにしていた。
「くぅっ……このビリビリ感…これはいいっ!」
「てめぇ!ワザと当たりに言ってんじゃねぇよ!何が「これはいいっ!」だよっ!、ふざけてんのか!」
「ねぇ〜、もうお腹空いて来ちゃったわ…お昼にしましょうよ〜?」
アクアはアクアで戦闘中なのにも関わらず、呑気に飯の要求を出してくる。
「ちょっ!まだアンデッド共が残ってんでしょうがぁ!うぉぉぉぉぉぉ『ライトニング』!!『ライトニング』!!『カースド・ライトニング』!!」
バチィン!バチィン!バチィンビリビリ!!
両手から放たれる青く輝く雷はことごとくダクネスに当たる。
「ひうっ!、ふぐうっ!、ひゃあっ!、いいぞ!もっとだ!」
「ヤバいヤバいヤバい!この狭さじゃ『魔眼』は使えないし、このままじゃ魔力切れが起こる!!」
「一時撤退しましょうリュウジ!ダンジョン外まで行けば私の爆裂魔法で木っ端微塵にしてしまいましょう!」
「お前ら連れて逃げ切れると思ってんのか!?」
「私に任せろ。逃げる仲間の背中を守るのはクルセイダーの醍醐味だ!」
かっこいい台詞をダクネスは何故か頬を赤らめながら言い放つ。
まぁ、聞くまででもないが……。
「ホントにそれ大丈夫か!?ほらっ!アクア、めぐみん!行くぞ!」
ダクネスを置いて俺、アクア、めぐみんは出口に向かって走り出した。少し走ると、光が見えて来た。
「見えた!外の光よ!」
「ぜーっ、ぜーっ、もうヤダっ!お前らとはもう二度とクエストしない!これならソロクエストで高額賞金首に殺された方がマシだ!。おい、めぐみん!そろそろ爆裂魔法の準備を───」
そう言いかけた途端……。
「もう我慢出来ません!行きます!」
「おいっ!待っ待て!まだ早────」
「『エクスプロージョン(早口)』!!」
ドッカーーーーーーーン!!
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その後、俺達はなんだかんだでなんとかクエストを達成し、ダクネスはススだらけの状態でめぐみんをおぶり、えぐえぐ泣くアクアの手を引きながらカズマの待つ冒険者ギルドに戻って来た。冒険者ギルドには、カズマとマヒルがお喋りをしており、俺達を見るやいなや騒ぎ出した。
「おぅ、おかえ──なんだその格好は!?」
「なしてススだらけなんだべか!?」
「たっただいま……へへっ……へへへへへへへへ」
「おいっ!リュウジ!しっかりしろ!大体察するけども!!」
カズマは死んだ魚のような目をした俺をゆさゆさと揺らして話しかけて来る。俺はハッ!と目を覚まし、カズマに答えた。
「いやぁ……カズマはホントに大変なんだな」
「分かってくれる?うぅ……」
「そこまでじゃないだろうと最初は思ってたんだけど、うん…ごめん。それとアクア『ターンアンデッド』と『セイクリッド・エクソシズム』を教えてくれ、今後の為に」
アクアにそう頼み込むとアクアはムッとした顔をしてプイッとそっぽを向いた。
「嫌よ!私の浄化魔法を覚えてどーするのよ、アンタも私の存在意義を奪う気!?嫌よ!絶対に嫌!謝って!早く謝ってよ!」
「そうじゃないよ、ほらっ!アレだよアクア1人じゃ今後大変だろ?酒飲む暇も無くなっちゃうだろ?」
「嫌よ!私一人で良いじゃない!何よっ!みんなして私のアイデンティティを奪おうとするなんて酷いじゃない!謝ってよ!そしてお詫びに高級シュワシュワを奢りなさいよ!」
わーわーと泣きじゃくり始めてどさくさに紛れて酒をたかり始めるアクア。
仕方ない、ってかめんどくさい。コッコロかセシリーに頼むか……。
「分かった、分かった、そこまで言うならいいよ」
「グスッ……分かってくれるならいいわよ……グスッ……」
「コッコロかセシリーに頼むから」
そう言い捨てて立ち上がり帰ろうとするとアクアがしがみついて来た。
「うわぁぁぁん!ごめんなさい!調子に乗ったのは謝るから!あの2人には頼らないで!諦めないでもっと私に頼んでよ!」
何言ってんだコイツ!?
「教えるの嫌なんでしょ!?何言ってんの!?」
「あーリュウジ、それは『教えるのを渋る師匠』のマネ事をしたんだよ」
カズマが近付いて来て説明してくれた。めぐみん、ダクネス、マヒルも「また始まった」と言わんばかりに呆れ始める。
「いや意味がわからない」
「リュウジ、後が大変なのでコッコロ達には頼らずにもう少し付き合って貰えませんか?」
「ああ、グズると暫く部屋から出て来なくなるのでな?すまないがもう少し付き合ってやってくれ」
「ごめんな?鋼のあんちゃん……もう少し堪えてけろ?」
「えぇ……?」
チラッとしがみついて来たアクアを見ると、様子を伺う様にチラチラと俺を見ていた。それに気付いたアクアは「やべっ」と言わんばかりにまた泣き始める。
コイツ泣き真似してやがった!!
「はぁ……なぁアクア、頼むよ……俺に退魔魔法を教えてくれ。お前はコッコロやセシリーよりも優秀なんだろ?」
ほぼ根負けした俺はアクアにもう一度頼み込むと……。
「仕方ないわねぇ!女神の私が伝授してあげるわ!今日のクエストで魔法は見てるから分かるわよね?『ターンアンデッド』はアンデッドに効く魔法で『セイクリッド・エクソシズム』は悪魔に効く魔法よ?仮面の悪魔に何度か使ってるからもう見てるわよね?」
いや見てるけども……
「そうは言うけどその場で教わりたい魔法を使って貰わないと覚えられないんじゃないの?」
「そっそれは……」
「今までだってその場で見てスキルを習得してる訳だろ?。今日はそれどころじゃなかったじゃん」
「まっまた今度で───」
「結局頼み損じゃねぇかよ!」
付き合いきれん!帰る!
───────────────────────
翌日、俺は美食殿を休ませたコッコロとたまたま腹を空かせいたセシリーに頼み込み、2人を連れてクエストをこなし、なんとか退魔魔法と回復魔法を習得した。冒険者ギルドに戻って来た俺達は2人にお礼をした。
「いや〜セシリーとコッコロには助かったよ、遠慮せずに食ってくれ」
「いえ、リュウジさまと久しぶりのクエストでしたので楽しかったです」
「コッコロちゃん、これからは私をお姉ちゃんって呼んでね?」
「はっはい、畏まりました……」
「子供にへんな教育すんじゃねぇぞセシリー」
「だっ大丈夫よ!ねっ?コッコロちゃん?」
セシリーは目をギラギラさせながらヨダレを垂らし始める。
折角の美人が台無しだわ……夢では世話になったけども……。
「あっ、リュウジさん!いい所に!!」
「ん?」
後ろを振り返ると、ルナさんが立っており何やら慌てていた。
何事だろう?トラブルだろうか?
「どうしたんですか?また何かトラブルですか?」
「実は、先程リュウジさんにお客さんがいらしてるんですよ」
客?誰だろう?
首を傾げながら俺はルナさんに尋ねる。
「客ですか?どんな人でしょう?」
「私も初めてお会いするので説明し難いですね…奥の部屋でお待ちになってるのでコチラに来て貰えますか?」
「はっ……はぁ…、ごめん2人とも、飯代は俺が払っておくから適当に食べて解散していいからね?お疲れ様」
「畏まりました」
「ありがとうございます、鋼のリュウジ。遠慮なく頂きます!」
2人に挨拶をしてルナさんに連れられて奥の部屋に通された。俺は兜を脱ぎ、脇に抱えながら部屋のドアをノックして入った。
「失礼します、お待たせしてすいませんでした」
「ごきげんよう。そしてはじめまして、フクヤマリュウジさん」
ごきげんよう!?
俺の前には眼鏡をかけた老婦人が座っており、俺に挨拶を交わし、礼儀正しくお辞儀をした。俺は慌てて頭を下げる。
「えーっと……はじめまして、どちら様でしょうか?」
「私は王都の聖テレサ女学院の教師をしております、”マザー・ヒルダ”と申します。この度は折り入って貴方様にお願いがあって王都からはるばるやって参りました」
お願い事……女学院の教師がなんの用だよ。
「はぁ、お願い事…ですか?」
マザー・ヒルダは俺に事情を話し始めた。
「実は、当学はこれまで、良家の子女を安全に預かる学び舎として、永らく閉鎖的な歴史と文化を築いて参りました。」
「はぁ…それは大変でしたね」
「はい。しかし時代は移ろい、情勢は日々変遷しています。我々も門戸を開かねばならない時が来たのです」
ふーん、異世界の学校も入学する生徒が減ってるのか、大変だなぁ……。
「はぁ……それで?俺にどうしろと?」
「はい。まだ決定事項ではないのですが、そこで、当学──聖テレサ女学院は来る男女共学化の計画を立てているのですよ」
はぁ、男女共学化ねぇ……、少しでも入学率を上げるために男女共学化を考案したって訳か、学校経営も危ないんだなぁ。
「そこで、試験的に男子生徒一名を当学院に『特別編入』させたいと思いまして、”とある出資者のお2人”に尋ねたところ、ここアクセルの街に『品行方正で紳士的な冒険者』が一人いるとお聞きしまして、フクヤマリュウジさんこと、鋼のリュウジさんをお呼びした所存です」
まさか……!?
俺は生唾をゴクリと飲み込み、冷や汗を描きながらマザー・ヒルダに尋ねる。
「その……まさか特別編入する男子生徒一名っていうのは……」
「ええ、フクヤマリュウジさん、貴方にお願いしたいのです」
ですよねぇぇぇぇ!!この流れはそうですよねぇぇぇ!!
「あの、ちなみになんですけど……その出資者の2人というのは?」
その質問にマザー・ヒルダはあっけらかんとした顔をしながら答えた。
「ああ、出資者方と言うのは、時期領主と言われているバルター様と警備会社・八咫烏の社長のシュナイダー様ですよ?どちらもフクヤマリュウジさんと面識があり、とても好評価で話して下さいました」
あいつらか!!余計なマネしやがって!!
俺は怒りを通り越して顔を引き攣らせながらマザー・ヒルダに細かい事を尋ねる。
「入学準備や通学してる間の学費はどうすれば?」
「学費に関しては問題ありません、既に必要な教科書などはバルター様がご用意して下さいました、学費はシュナイダー様がお支払いして下さいましたのでご安心を」
準備のよろしい事で……。
逃げ場は無いと判断した俺はマザー・ヒルダに返答する。
「分かりました。仲間にしばらく留守にすると言う事を伝えたいので、これで失礼します」
「えぇ、よろしいですよ?、あっ、言い忘れましたが特別編入する間は試験的に、とある”3人の女子生徒”と仲良くして貰いますので」
マザー・ヒルダの言葉に首を傾げる。
「女子生徒?手助けしてくれる人でしょうか?」
「そうですね、授業前に彼女らと顔合わせを致しますので明日登校したら職員室にいらして下さいな。でわ、ごきげんよう」
いや、ごきげんようじゃねぇよ!てめぇが校門まで迎えに来いよ!!
マザー・ヒルダは話がまとまった為、こっちの気も知らずそそくさと帰って行った。俺はその足で家に帰って行った。