──マザー・ヒルダと別れた俺はその後、慌てて家に立ち寄り掃除をしていたコッコロとマリューに声を掛けた。
「マリュー!コッコロ!えらいこっちゃ!」
「うわぁっ!帰って来て早々何事ですか騒々しいですねぇ」
「おかえりなさいまし、リュウジさま」
「ぜ〜…ぜ〜……学校行く事になっちゃった」
「はぁ?クエストに出かけてたのになんで学校行く事に繋がるんですか!?意味がわからないんですけど!?」
「リュウジさま?あの後何があったのですか?」
「ああ、実は……」
俺はマザー・ヒルダに依頼された経緯をマリューとコッコロに説明した。その経緯を聞いたコッコロとマリューは唖然とする。
「なんでそんな依頼をポンポン簡単に引き受けるんですか!?女学院に入ってどうするんです!?男の子1人なんですよ!?何を考えてるんですか!?」
「リュウジさま、大丈夫なのですか?お一人で学校に行けますか?」
「だってもう話が決まってたんだもん!引き受けるしかないじゃん!それに、俺は学校生活を途中で死んでるんだもん。だったらこの際、学校だけでも卒業しておきたいんだもん!」
「何が「だもん!」ですか!!また意味の分からない事を言い出しまして!、知りませんよそんな事!、学校行ってる間に魔王軍が攻めてきたらどうするんですか!!」
「フラグ立ててんじゃねぇぞこのくそパンダ!」
「マリューさま、リュウジさまも落ち着いて下さいまし!」
しかし、マリューの言う通りだ、もし万が一アクセルの街に魔王軍が攻めてきたら俺は対処出来ない……。ここは、残ったメンバーで何とかしてもらうしかないな……。
俺は落ち着きを取り戻し、マリューに語りかける。
「カズマ達もいるし、お前やペコリーヌだっているだろ?なんとかなるって、王都に攻めてきたら俺が他のチート持ちと協力して戦うからさ」
「そうですけど……。それより、この件はカズマ様達はご存知なのですか?でなければ今から伝えに行きませんといざと言う時に対処出来ませんよ?」
「そうだな、んじゃちょっとカズマん所に行ってくるわ」
「行ってらっしゃいませ」
そのまま俺は聖テレサ女学院に特別編入する件をカズマに伝えるべく、カズマの屋敷に向かって行った。
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「─────っていう訳なんだよ」
「はぁぁぁ!?お前何一人でオイシイ思いしようとしてんだよ!男なら誰もが憧れる学園ハーレムだぞ!?テメェふざけんなよ!」
カズマに説明した途端カズマがものすごい剣幕で俺に食ってかかって俺に掴みかかる。俺は慌ててカズマをなだめる。
「おっ落ち着けカズマ、引きこもりだからってそんなムキになるなよ」
「ムキになってねぇわ!俺だってお嬢様学校で学園ハーレムしてぇわ!テンプレまみれの青春をよぉ!!年下の妹、可愛い幼なじみ、年上の憧れなお姉さん!!俺も学園ハーレムやりてぇよ!代われ!代われよ!」
「おっ落ち着けカズマ、らしくないぞ?それに、ハーレムなら今まで絶賛継続中じゃん!」
俺はボードゲームをしているめぐみんとマヒル、紅茶を啜っているアクアとダクネスに指を指すとカズマは更に泣きながら激昂した。
「エクスプロージョン!!」
「わぁぁっ!!めぐめぐそれは反則だべ!」
「めぐみん、それはいくら何でも卑怯ではないか?」
「カズマさーん、私お腹すいたんですけど〜?」
「もうっ、こんなんですわ!」
「あっいや、その……うん」
「ほぉら見ろ!分かったら今すぐ特別編入を辞退してこい!お前ばっかりいい思いさせてたまるかぁっ!!」
むっちゃ怒ってますやん……。
激昂するカズマを見兼ねたダクネスが俺とカズマに声をかけて来た。
「おい、カズマ、さっきから何を怒っているのだ?」
「うるせぇ!おっぱい!」
「ひゃっ、おまっ、なんだ急に!?」
「そのパワーワードやめろよ、実はな、俺明日から王都のお嬢様学校に特別編入する事になったんだよ」
「王都のお嬢様学校?それは聖テレサ女学院の事か?」
なんだ?おっぱい、知った口ぶりだな……?。
「おっぱ……ダクネス何か知ってるのか?」
「今お前おっぱいって言おうとしたな!? ああ、私も中等部まで通って居たからな」
「そうなのか、高等部はどうしたんだ?」
「高等部からは屋敷に専属の家庭教師を雇い始めてな、中等部で卒業したぞ?」
途中で卒業って何?、貴族って何でもアリなの?
そんな話をしていると、騒ぎを聞き付けためぐみん達が会話に入って来た。
「カズマはさっきから一体何を騒いでるんですか?」
「ああ、実はリュウジが王都のお嬢様学校に特別編入する事になったらしいんだ」
「王都のお嬢様学校?それは聖テレサ女学院の事ですね?『王都の聖テレサ女学院』『紅魔の里の魔法学校レッドプリズン』が有名です、リュウジは良い機会を得ましたね」
「はぁ!?めぐみん!何言ってんだ!俺がリュウジの代わりに行くんだよ!」
荒ぶるカズマを見ためぐみんは、ため息を吐いてカズマに説明した。
「ヒキニートやロリニートと言われたカズマがリュウジに代わって王都のお嬢様学校に特別編入なんてまずありえませんよ。女の子のパンツをスティールはする、小金が入れば働かない、オマケにあなたは最弱職の冒険者、我々がいなかったら何が出来ます?もし何かあったらカズマ一人でクエスト行けますか?」
「うっ……」
畳み掛けるようにアクアとマヒルがカズマに言い放つ。
「そうよそうよ!、カズマさんにはお嬢様学校だなんて似合わないわよ、私達とのんびり生活してた方がお似合いよ?」
「んだんだ、カズマはオラとのんびり牧場の仕事をしてればいいべや?硬っ苦しい仕事は鋼のあんちゃんに任せるべ」
「そう?そうかなぁ……」
あれ?もう少しゴネると思ったんだがな、聞き分けのいい子になったじゃないか。
「それにカズマ、お前の知力で聖テレサ女学院の学業についていけるのか?向こうは貴族が蔓延るお嬢様学校、それなりの知識がないと行っても恥をかくだけだぞ?」
「そっそれは……」
「まさかとは思うが、カズマ、貴様王都だから行きたいと言い出したのでは無いか?長い付き合いだ、アイリス様の城が目的だろう?」
「そっそんな事は無い……よぉ?」
「嘘をつくな!、現に目が泳いでるではないか!。これ以上騒ぎを大きくすると私の家にも響いて来るのだ!、尚更行かせる訳には行かないぞ!」
カズマはダクネスに虚をつかれたかのような顔をした。見抜かれたカズマは諦めたのか、頭をボリボリかき始める。
「しゃねぇなぁ……”今回”はリュウジに譲ってやるよ、今度特別編入の依頼が来たら俺が行くからな!」
「そうだな、次回はカズマに行ってもらうようにマザー・ヒルダに言っておくよ。その間こっちの事は任せるぞ?、マヒル?もし、農場で何か問題があったらカズマに相談してくれ」
「了解だべ!鋼のあんちゃん!」
「おいっ!農場はお前がオーナーだろ!なんで俺がしなきゃいけないんだよ!これ以上面倒は御免──」
カズマが嫌そうな顔をした途端、ドン!と俺は札束と”まともな魔道具店”で買い揃えた最新式の通信魔石をテーブルに置いた。
「通信魔石と500万エリス、前金で渡しておくよ。何かトラブルがあったら使ってくれ」
「おいおい、今じゃ小金持ちのカズマさんだぜ?そんなはした金で動かない──」
「これならどうだ?」
俺はテーブルの下から女性陣達に見えない様に、カズマの足元へサキュバス喫茶店のクーポン券を渡した。
「こっこれは……例の店のプレミアムクーポン券!?」
「俺の唯一無二のお宝だ、大事に使えよ?」
「俺に任せとけ、相棒」
カズマは顔をキリッとさせて俺と硬い握手を交わした。
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──その後、俺は再び家に戻り、金獅子、レッドウォーリアの鎧を持ってマリューとコッコロに見送られながら家の前に立っていた。
「それじゃ、ちょっとお嬢様学校に行ってちゃちゃっと学校卒業してくるわ」
「くれぐれも気を付けて下さいね?」
「何かあったらカズマに渡して置いた通信魔石で連絡してくれ」
「かしこまりました、リュウジさまもしっかり学んで来て下さいませ」
「ペコリーヌにも伝えて置いてくれ、1ヶ月くらい留守にするって」
「了解しました」
そして、俺は手をかざして『テレポート』を唱え、旧アルダープの別荘元い俺の別荘に向かった。別荘に辿り着いた俺は荷物を置こうとした時、リビングのテーブルにトランクケースと置き手紙を見つけた。
はて?なんだろうか、この置き手紙とトランクケースは?。バルターが置いていったのか?
俺は置き手紙を手に取り、その内容を読み始めた。
【拝啓、フクヤマ様。この度はこの様な形でお手紙をお出しして申し訳ございません。リュウジさんには今日から1ヶ月間聖テレサ女学院に特別編入する事になります。なので、特別編入生用の制服と、教科書、そして、僕のヌードデッサンを送ります。 親愛なる友人シュナイダー】
俺は暖炉にシュナイダーのヌードデッサンを手裏剣を投げる様に投げ捨て、用意されていた制服に着替えた。
「よしっ、こんなもんだろ……。さてと、テレ女に行くか」
地図を片手に聖テレサ女学院に歩いて行くと、巨大な校門が目に入って来た。校門には様々な馬車が路駐しており、生徒達が次々と降りて登校して行く。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
うわ〜、挨拶の最高峰『ごきげんよう』が飛び交ってるよ、俺みたいなありふれた学校に通ってた人間が来る所じゃねぇよ……。
少々面を食らったが、気を持ち直して校内に入り、マザー・ヒルダが待つ職員室のドアをノックし、マザー・ヒルダを尋ねた。すると、女性教師が対応してくれた。
「ごきげんよう、当学院に何か御用でしょうか?」
「ごっごきげんよう……です。あの、特別編入の件でマザー・ヒルダ教諭にお会いしたいのですが?」
特別編入の話を切り出すと、女性教師は「はいはい!」と言う様な相槌を打った。
「特別編入?……あっ!貴方様が特別編入生の?」
「はい、今日マザー・ヒルダ教諭に尋ねるようにと言われたのですが?」
「マザーは丁度今”奨学金受給希望”の生徒達と特別編入生との試験内容の説明をなさっておりますわ。ご案内致しましょう、こちらです。」
女性教師に案内されて、とある教室に案内された。女性教師が教室のドアをノックして、中に入って行った。
マザー、特別編入生の方が……
おや?もうそんな時間ですか?
すると、女性教師が戻って来た。
「これから試験的に交流してもらう奨学金受給希望の生徒と顔合わせをするそうです。マザーが合図をしたら中へ」
「分かりました」
「でわ、ごきげんよう」
そう言い残し、女性教師は去って行った。数分後、マザー・ヒルダの声が聞こえて来た。
君、入ってらっしゃい
お?呼ばれたな。
俺は意を決し、教室のドアを開けて中に入るとそこには、ピンクの髪の毛で、キャピキャピした女の子。帽子を被り、めぐみんと同じくらいの大きさの女の子と、めちゃくちゃ見覚えのあるエルフの女の子が座っていた。めちゃくちゃ見覚えのあるエルフの女の子元い、我が美食殿で絶賛アルバイト中のクロエが俺の顔を見た途端、顔を引き攣らせていた。
「あ゛……え゛ぇ……?」
「なんだねクロエ君、知り合いかね?」
「クロエ先輩、知り合いなんですか?」
「あら?突然どうなさったんですか?クロエさん。まるで転校生が顔見知りだった時のような声を出して」
いやその気持ち分かるよ、こっちは転校して来たテンプレヒロインが教室に入った途端登校前の朝にバッタリ会った様な気持ちなんだから!。隣の2人はともかく、何故クロエがこんなお嬢様学校にいるんだっ!?
そんなことは露知らず、マザー・ヒルダは淡々と話を続ける。
「それでは改めて、試験編入生に自己紹介をしてもらいましょう」
様々な疑問が頭を過ぎり、顔を引き攣らせながら俺は自己紹介を始めた。
「始め…まして、フクヤマリュウジと言います……」
「彼はですね、当学院が今回の試みに相応しい品行方正な青年男子をとある貴族から──「ならば適任の方がいる」と推薦して頂きました。その貴族の方曰く、フクヤマさんはいかなる時も冷静沈着で女性相手にも浮つく事の無い物腰柔らかな冒険者だと言う事です。──が、クロエさんとは少なからず面識がある様なので説明は不要でしたようで」
俺はチラッとクロエを見てみると、「いや、なんでアンタここに居んのよ来る所間違えてんでしょ」と言わんばかりに睨み付けてくる。すると、それを見ていたマザー・ヒルダが言い放つ。
「なんです?クロエさん、もしもフクヤマさんに不服があるなら他の方を推薦してもらますが?」
いやチェンジ出来んのかよ
「いや、不服はないっすけど……べっ別に、どーでも」
「チエルさん、ユニさんはどうですか?」
「いや、不服はない、不服は無いが……」
「チエルも、この人は……まぁギリOKです」
ユニと呼ばれた小さい女の子と、チエルと呼ばれた全身ピンクの女の子は複雑な顔をしながら了承した。
おっと、思ってた学園ハーレムは出来そうにないぞ?
互いに了承した俺、ユニ、クロエ、チエルは微妙な空気を漂わせていると、マザー・ヒルダはそんな事をお構いなしに話を続ける。
「そうですか。それでは皆さんよろしくお願いしますね。あと、ちなみに、特別編入生フクヤマさんの学ぶ学年は”3年生”という事にして置きましたのであしからすご了承ください。汝らに主の祝福にあらんことを」
マザー・ヒルダは言いたい事を言うだけ言って教室を後にした。