ミツルギ、アオイ誕生日おめでとう!!
──取り残された俺達は、とりあえず椅子に座り始めるとユニが俺に声を掛け始めた。
「フクヤマ氏、君は何かマザー・ヒルダに説明を受けているのかね?」
「あっ、はぁ…まぁ多少は聞いてますね」
「左様か、という訳で。第1回「奨学金受給を勝ち取るための緊急対策会議」を執り行う。我々に提示された勝利条件は、「君と仲良くなれ」という事だが……どうだろうか?」
どうだろうかと言われても…、この子とチエルって子とは初対面だし
「まぁ、現に俺とユニ…ちゃん?、とチエルちゃんとは初対面。これこそチャンスなのでは?」
「待ちたまえ。ここはあえて確認しておこうフクヤマ氏、君は年上?年下?」
ユニは俺に年齢を尋ねて来た。
本当は500歳なんだけどなぁ……、ユニちゃんは青いリボンを付けてるから3年生、なら俺は年下って事にしておくか。
「俺は──」
「はい議長、チエルはこの人童顔っぽいですけど、年上だと思います。」
突然チエルが手を挙げ、俺が年上と見抜いた。
えっ、ちょっこの子アホそうに見えて実は凄い子なの?そうだとしたら誤魔化しても無駄だろうし、年上って事にするか。
「まぁ、信じては貰えないと思うけど、チエルちゃんの言う通り、皆より年上の20歳だよ。それなのになんで俺が特別編入生に選ばれたのかは知らないけど」
「ふむ、年上であったか。ではフクヤマ氏、質問するが…貴公はクロエ君と顔見知りのようだが?、どうなのかね?」
うおっ、いきなり核心突いて来るな。
俺はクロエの顔をチラッと確認し、ユニの質問に答えた。
「実は、俺が開いた子供食堂・美食殿でボランティアの手伝いをして貰っているんだ。その他にも”クエスト先”の道端でバッタリっていうのもあったけどね?ねぇー?」
「いっいやウチに言われても……ねぇ?」
「えー、リュウジ先輩その若さで冒険者やりながら企業しちゃったんですか?いずれ大失敗しますよ?大丈夫ですか?」
いや、止めてよそんな不吉なフラグ立てるの……。
俺が顔を引き攣らせているとチエルの言葉を遮るように、ユニが話を続ける。
「とは言えだ。本件においては、個体問の結び付きなど問われていない。異文化との融和、とマザーは言っていたな。要するに学院は、群体として『なかよし』を観測する事で、共学後の秩序と安全を担保にしたいのだろう」
「うん、俺もマザー・ヒルダからそんな感じの話を聞かせられたよ」
「ふむ、やはりそうか」
「え?ユニ先輩、つまりどういう事です?」
話についていけないチエルにユニは説明する。
「ふむ、つまりだ。勝利条件を満たすには、我々4人が、一つの『なかよし集団』になる必要があるという事だ。肝要なのは『集団』という点だ。特定の個人が一人突出してフクヤマ氏と親交を深めても意味は無い」
「あーなるほど、だからアンタ選ばれたんだよ。ほらアンタAdventuresとか言う冒険者集団のまとめ役の1人なんでしょ?」
「なるほど、そういう事か!」
シュナイダーとバルターめ、良く見てやがる。
すると、チエルがクロエに言い放つ。
「そうですよクロエ先輩、抜け駆けしてもいい事ないですよ?」
「してねーわ、偶然だわ。アンタじゃないんだから」
「あのう…クロエ先輩の中でチエルどんなキャラなんです?」
「クソモテ八方美人」
いやエグい言われ方したな、チエルちゃん。
「え……やだ……合ってる、どうしよう……ひょっとしてクロエ先輩、私の事ずっと前から見てた説?でも、ごめんちゃい! チエル、今は誰とも付き合えないの!」
おっと、勝手に盛り上がってクロエをフッたんだが?。
ユニはクロエにヒソヒソと囁く。
「クロエ君クロエ君、今君、何やら一方的に失恋したようだぞ?」
「チエルちゃんの頭の中で一体どんなストーリーが繰り広げられたんだろう?」
「リュウジ、ユニ先輩、このピンクに肩パンして良いすか?」
そうつぶやきながら手をゴキゴキと鳴らせると、ユニはクロエを宥める。
「待ちたまえクロエ君、奨学金を勝ち取るまでは耐えるんだ」
「そんなに直ぐにキレないでさ、淑女的に行こうよ」
「うむ、我々はまず『なかよし集団』とならねばならんのだ」
ユニがそう説明すると、チエルがキョトンとした顔をしてユニに言い出した。
「えぇ〜?でもソレって、チエル達もうなってません?」
「いやなってないだろチエル君、ぼくとチエル君はフクヤマ氏とは今日初めてあったばかりじゃあないか」
「言えてる、出会った初日で秒で仲良しとか、素で言えちゃうリア充のメンタル若干びびるんだけど」
「大丈夫ですよ〜、現にクロエ先輩この人に毒舌とか凄いじゃないですか?イジりいじられって仲良くないと出来ませんよ?」
「いや、部下と上司の関係だけだから ねぇ?」
「いらいらいらいらいらいら……」
クロエは何故かイラつき始める。
何か間違ってる事があっただろうか?
そして、ユニは脱線した話を戻す。
「ふむ……だがさりとて、仲良し審査は自己申告制ではないはず。それを判断するのは、我々ではなく学院側だからな」
「うん、そうだね。これ見よがしに学院側に認めてもらわないと俺も帰れないし、奨学金も入って来ないね」
「けど基準フワフワし過ぎでしょ、そもそも何なん仲良しって?何を持って仲が良しとすんの?」
「それな、ハイそれと見せれるもんじゃないからね」
「それをずっと考えている。さながら哲学の迷宮だ」
「知んないけど、そういうのはアレじゃね?、アンタとチエルの担当じゃね?ちょ、どーなん?あんたらの界隈での仲良しって何なの?」
クロエはよりにもよって俺とチエルに答えを求めて来た。
仲良し…ふむ、考えたことなかったな。
「そうだなぁ、一緒にクエストしたり、酒を飲んだり、遊んだり?」
「フクヤマ氏、我々は未成年だ、酒は飲めない」
「いや例えの話だよ……」
「チエルは?」
「そうですねぇ……リュウジ先輩と似てますけど、旅行して魔道具映える風景をバシャバシャ撮ってくるとかですかねぇ?」
「映える旅行か、それは青春だな。よし、行こう」
「いや、旅費は?」
「むぐっ、せっ青春は安くはないのだな」
いや、青春に安いも高いもないと思うんだが……。
そこにチエルが迷案を提示して来た。
「あ、でも、奨学金ってやつ貰えるなら、そのお金で行けば良いんじゃないです?」
何を言ってるんだこの子は?
「おい、どうするフクヤマ氏、クロエ君、どうやら彼女は、奨学金と言うものを臨時ボーナスか何かと勘違いをしている」
「チエルちゃん、奨学金は遊びに行く為の金じゃないから」
「その前に時系列おかしくない?もう貰ってる前提で話してない?」
「あのう……先輩方?チエルの言う事って、大体ただのノリと勢いなんでそんなに真剣に真に受けないで良いですよ?」
「受けてない受けてない」
「ツッコんであげてンだわ」
「だが、魔道具映えか、その発想自体は悪くないと思うぞ。精神論は曖昧だからな、審査に際しては具体性にこそ肝要だ」
俺はユニの言葉に反応し、何かピンと来た。
「それってつまり、何か形にすればいいって事じゃないかな?」
「あーそれならわかりみ、誠意は形で見せろってよく言うじゃん?」
「なら、形から入ってみません?例えば……このメンバーでチームを結成するとか?」
「あー、既成事実になンね、ソレ」
「そうだね、俺がAdventuresを結成したみたいに、チーム名を作っただけでもモチベーション上がるしね?結束力も高まるし」
「そです、そです、チーム名を名乗れば傍目にも仲良さげっぽく見えるんじゃないですか?実際にそうなったらうちらフツーに仲良くなれると思いますし」
それだ!!なんかスケットダ〇ス見たいだな。
ユニも名案と確信したのか、ポンと手を叩いた。
「なるほど、けなし名案だ。チームか、実に青春じゃないか!クロエ君、フクヤマ氏、異論はあるかね?」
「俺は賛成だよ?いい案だと思う」
「はぁ、まぁ、どうでもいーすけど。てか、まぁ……いいですけど」
クロエが賛成すると、チエルはキャピキャピと喜んで行動に移そうと立ち上がった。
「決まりですね!じゃあ今から早速、ちぇる〜ん☆っとチーム名作っちゃいましょう!」
チエルはおもむろにノートとペン取り出した。すると、クロエが俺に尋ねて来る。
「ちなみにさ、アンタが作ったアドベンチャーズとかは正式にギルドとかに申請出してンの?」
「いや、正式の手続きはしてないよ?別に軍隊を作る為に結成した訳じゃ無いからね。地道な宣伝で周りに知れ渡った感じだよ。だから今回も教師達に受けそうなチーム名が良いんじゃない?」
「なるほど、不確定な概念は言語化されることで容易に強度を増す。ふむ、理に適っているな。『ユニちゃんズ』と名付けよう」
ユニちゃんズと提案した途端、チエルとクロエが文句を垂れる。
「ないわ」
「ないですね」
「ちょっとそれは教師達にウケないんじゃないかな?」
「あのなぁ、君達。せめて建設的な議論をしようじゃあないか。否定をするならばそれなりの代案を出したまえ、代案を」
荒ぶるユニを他所にクロエが冷静に言い返す。
「いや、うちら学生なんだから学校名まんまでいいんじゃないの?」
「うん、奨学金が欲しいなら教師達にゴマをすらないとね」
「えぇ〜、チエル、もっと可愛いのがいいですぅ。『何々チェルルン』とか『チェルチェルなんとか』見たいな?」
なんだよ、そのちぇるちぇるなんとかって
同じ事を考えたのか、クロエがツッコむ。
「おまっ……ホント自分好きね」
「その溢れる自信が羨ましいよね」
「はい!っめちゃすこです!、ちぇる〜ん☆」
ちぇる〜ん☆じゃねぇよ、やばいですね☆みたいになってんじゃん。
興奮しまくるちぇる〜んをユニが宥める。
「おいおいチエル君、本来の目的を失ってはいかんよ。チームの結成は、群体としての調和をアピールするためだ。その大看板に一個人の名を冠するのはいかがなものか」
「うんうん、正論……え待って、さっきユニちゃんなんて言った?」
「自分棚に上げといて、どの面下げて言ってんすかそのユニちゃんズが」
「フクヤマ氏、クロエ君、一旦その話は脇に置いておこうか」
「うん、ずっと脇に置いてて良いよホコリかぶるくらい」
「つーか、未来永劫一生置いときますけどね?」
「先程、クロエ君が述べたように、我々が留意すべきは、この集団があくまで聖テレサ女学院に帰属するという点だ。ならば、教育機関の一組織に相応しい命名が求められよう」
「んじゃ色々書いてみようか」
「はい、リュウジ先輩、ペンとノートです」
俺はチエルからノートとペンを渡されてカキカキと書いてると、クロエが案を出してくる。
「そしたら〜ナニナニ研究室とか?ナントカ同好会みたいなカンジで?知んないけど、なんつーか、仲良しを考察する会的な?」
「研究室……同好会……あとは?」
「じゃあ部活っぽく『なかよし部』なんてどうです? やだ、一周回って逆に可愛い!名前の時点でもう仲良さげじゃないです?」
「なかよし……部……うん、語呂もいいし、覚えられやすそうだね」
なかよし部、いい響きじゃないか。
なかよし部と書いていると、ユニとクロエが反対し始めた。
「いや、ないわ」
「うん、ないな。よしっ、ならば再び、『ユニちゃんズ』を復活──」
「えっ!?またそれ出すの!?」
「それはもっとないから」
「ないですよ、大人しく脇に置き去りにしてて下さい」
俺はノートに書き記した文字を消しながら3人に言い放つ。
「ちょ、どんだけかかんのよ、チーム名に1日かける気?」
「それな、この際『聖テレサ女学院』でいいよ」
「え?、んじゃ〜、聖…テレサ…女学院…」
「あっ、リュウジ先輩、末尾に(なかよし部)って入れて下さい!」
なんか増えた
「聖テレサ…女学院…(なかよし部)…でOK?」
「なっなに!?なら更に追加で(ユニちゃんズ)を追加してくれ」
まだ増やすの!?
「(なかよし部)…(ユニ…)いや、なげぇよ」
「長い」
「長いですよ、かっこ2つもいらなくないです?」
「ぐぬぬぬ……」
「んじゃ、これで良いな?」
俺は納得行かない顔をするユニを他所に、完成した名前を記したノートを見せた。
【聖テレサ女学院(なかよし部)】
「良いですね!仲良しになる為のチーム名にはピッタリですよ!ってな訳で、チーム・なかよし部デビュー!」
「わー、どんどんぱふぱふ〜」
「ぱふー」
3人はパチパチ拍手し、チーム結成を喜んだ。
ようやくスタートラインに立った気がするが、まぁいいだろう。
「ようやくチーム名が決まって良かったね」
「フクヤマ氏、このチームは一応、聖テレサ女学院の一組織だ。故に仮編入という立場の貴殿は申し訳ないが正式なメンバーではない」
「えっ!?」
いやここでハブられんのかよっ!
初っ端から仲間はずれにされた事に落ち込んでいると、ユニが付け加えた。
「だが、まぁ、そんなものは建前だ。我々が今後チーム名を名乗ってゆく上で、仮に貴殿をメンバーの一員として語ろうとも、第三者がいちいち調べる事はあるまい。つまりは、言った者勝ちなのだ。宣言しよう、我々は4人でユニちゃんズだ!」
ユニちゃんズまだ根に持ってる!!
「いや、チーム名。いい事言ってる風にまとめながら、しれっとボツ案復活させんのやめてくんない?」
「活動内容はどうします?ちゃんと決めないとアレですよね?」
「だよね、チームの活動内容は「仲良くなる」これだけでOKなの?」
「いや、万が一、学院の大人達に活動内容を説明しろと言われる事を考慮して、「教育的見地における社会的構造に準じる共存的融和の意義向上」とでも加えておこう」
うっわ、なげぇ……。
「カキカキ……まぁ、警戒するに越したことはないからね」
「ってか”的”って字多くね?」
「断定を忌避するメソッドは、ぼくの奥ゆかしさの表れだよ。言語的バッファだ。柔軟性と言ってもいい。」
「なんかフワッとしてますね」
「ソレをテキトーって言うんだよな〜」
「まぁ、形だけだから」
「元来、適当は適切の類語だ。学院の大人達が言う『仲良くなれ』というオーダーを、ぼくは適切に換言したまでさ」
ユニは淡々と腑に落ちないクロエに説明していると、チエルがキャハハと言い放つ。
「そうですよ、クロエ先輩。目的なんてそんなどーだっていいじゃないですか!」
「いや自分で言い始めたくせに、何しれっとそっち側に付いてんの?」
「とにかく!これでチエル達は同じ釜のご飯をシェアする仲間です!さぁ!さぁ!ちぇるっと仲良くなっていきますよー!」
「「おー!」」
「ま、良いけど……」
こうして、俺(仮入部)を含めた仲良し集団。『聖テレサ女学院(なかよし部)』が結成された。故に、俺は今後はAdventuresと掛け持ちする形になる。
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