6月7日、カズマ誕生日おめでとう!
なかよし部が結成された直後鐘が鳴り出した。なかよし部メンバーは一時解散して授業を受ける準備をしようとした時、クロエに腕を掴まれながら近くの空き教室に入った。入った途端クロエは俺に食ってかかって来た。
「色々あって聞くの躊躇ったンだけど、なんでアンタがここにいんの!?来る所間違えてるっしょ!?」
「いやだから頼まれたんだってば、ってかもうちょい早くツッコんで欲しかったな」
「いやあの情報量の多さじゃツッコミし切れンわ」
「まぁそうだよね、いきなりなかよし部とか出来ちゃったし?。あっ忘れない内に渡しておくね?はい、どーぞ」
俺はブレザーの内ポケットから今月分の給料袋を渡した。クロエは想像を遥かに超える金額だったのか、上擦った声を出した。
「うえっ!?こんなに貰って良いの!?料理運んだだけッスよ?」
「いやいや、ペコリーヌから色々聞いてるけど、クロエちゃんは真面目に働いてるって言ってたからね、テスト終わったらまたよろしくね?」
「りょーかいっす。んじゃ有難く頂きます。ってかそれよかアンタはテスト大丈夫なの?どーでもいいけど」
クロエは複雑な顔をしながら俺に尋ねてくる。
そういえばテストっていつからなんだろう?
「なぁクロエちゃん、テストっていつからなの?俺も受けなきゃねぇじゃん?」
「明日から」
pardon?
「今なんて?」
「いやだから明日からだって。アンタもプラプラしてないで勉強してた方がいいんじゃないの?知んないケド」
マジかよ!
俺はクロエから細かい事を聞き始めた。テストの範囲、教科などを聞き漏らすことなくメモ帳に記した。
「うわ〜こんなに範囲あんのかぁ…赤点にならなきゃいいか」
「それな、と言ってもウチもギリギリだから教えるのはキツいし」
「これは放課後ユニちゃんに勉強教えて貰うしかなさそうだなぁ」
「あーあの子、なんでも首席でトップの成績らしいから丁度いいんじゃない?あー見えてパイセン、博士号を取得してて周りから『ユニ博士』って呼ばれてンのよ」
何それ天才じゃん!
「マジでぇ!?なら親交を深める為にユニちゃんと交流してくるわ!ユニちゃんは俺と同じ3年生教室なの?」
俺はクロエに尋ねると、クロエは教室の窓際に近付き、外に向けてちょんちょんと指を指した。
「テスト勉強どこいったし、ほらあそこ、旧校舎に変な塔見えるっしょ?アレ、象牙の塔って言うらしいけど」
「え?あー、あれ?あんな所にユニちゃんいるの?」
「博士だからじゃね?なんでもあそこに引きこもって?授業を全部免除されてて、小難しい論文書きまくってるらしいよ?なんの論文かは知んないけどね」
象牙の塔のユニ……なんか頭の良さそうな二つ名だなぁ。
「まぁ、とりあえず放課後行ってみる」
「ふーん、まぁいいんじゃない?。ほら、そろそろ授業始まるから3年の教室戻れし」
「はいはい、んじゃまたね」
俺はクロエと別れ、クロエは2年の教室に、俺は3年生の教室に向かい授業を始めた。
────────────────────────
数時間後。授業を終えた俺はクロエに教えられた通り、象牙の塔にやって来た。
なんで女の子1人で引きこもってんだろう?まぁ、行けば分かるか……。
中に入り、象牙の塔を登りドアをノックした。すると、中から何やら声が聞こえて来た。
《ぴぴぴ!ぴぴぴ!ドクター・ユニに通告!お目覚め下さい、外部より来訪者です!》
なんだ?ユニちゃんの声とは違うなんと言うか、電子音的な感じのカタコト言葉の様に聞こえたな……。
「ユニちゃん?入るよ? お邪魔しまーす」
俺は中に入ると、部屋の中は本や論文で散らかっており、とても女の子の部屋とは思えない状態だった。その中、ユニは寝ていたのか、目を擦りながら体を起こしていた。
「おはよう世界。相変わらず今日も閉じているねぇ、この嘘つき野郎」
何を言っているんだこの子は?
「まっまぁ、おはよう……ユニちゃん。もう夕方だけどね?」
「んん……?あや、なんだ、夢じゃないのか」
逆にどんな夢見てたんだよ。
「やぁ、フクヤマ氏。また逢えて何よりだ。どうしたのかね?」
ユニは寝ぼけながらも俺を見つめて尋ねてくる。
「あーいや、実はユニちゃんと交流を深めるってのも兼ねて、明日に控えるテストに向けて勉強を教えて貰おうと思ってね?」
「そうか、それは何よりだ。勤勉的で人がいいな貴殿は、いや訂正。いい人だな貴殿は。うん、良く来てくれた。惜しみない足労に感謝しよう。どうもありがとう、ぺこり……」
ユニは小さい身体を起こし、立ち上がって頭を下げて座り直した。だが、落ち着かないのかユニはモジモジしていた。
「ごめんね、急に来ちゃって……まさかテストが明日からとは思わなくてさ」
「構わんさ。しかし、なんだな、少々腰が落ち着かない不思議な心地だ。ああ、思えばこの『塔』を実質占拠して以来、ここに客人を招いたのは初めてかも知れない」
待って、勝手に占拠したの!?
「そっそうなんだ……あはは……」
「……あっ……そだ、確かこう言う時、市井の作法では粗茶を振る舞うのだったな。粗忽で申し訳ない、すぐ用意しよう。適当に座して待ちたまえ」
「これはどうもご丁寧に……お構いなく」
ユニはパタパタと部屋の奥に引っ込んでドタバタと何かを探し、カチャカチャと何かを用意し始め、持って来た。
「待ち遠さま、もてなしの茶とつまみだ、遠慮なく召したまえ」
ユニが持って来たのは、小洒落たティーカップとかではなく。試験管に入った謎の液体と、謎の錠剤だった。
えっ?……何これ……薬?
俺が面食らった様な顔をしたのが分かったのか、ユニは俺に尋ねる。
「うん?どうした、フクヤマ氏。そんな驚いた顔をしてないで、召せ。疾く召せ」
コレ食えってか!?食った途端バターン!ってならないよな?
俺は意を決して、とりあえず謎の液体を少し飲んで見た。
苦っ!何これ!?
「おい、恐れをなしてチビチビと少しずつ飲むんじゃあないよ」
「けっ、けっ、結構なお手前で……」
「うむ。酷い顔をしているな。だろーね、ちょお不味いもんソレ」
仮にも客人だよ!?なんてもん出してんだよ!!
「ユニちゃん……このお茶は?」
「いや、説明が遅れて申し訳ないが、そいつはとある植物系魔物の葉から有害物質だけを取り除いて煎じた茶──まぁ、分類は茶なのだけど、飲料と言うより、嗜好品だ」
モンスターの葉っぱかよっ!、この錠剤はどうだろうか?
恐る恐る錠剤をカリッと噛じると、ユニは話し出した。
「カリカリ……ねぇ?これ、どこで買ったの?」
「これかい?、これは街でとある”怪しげな仮面を付けた商人”からタダで譲って貰った滋養強壮サプリなのだよ。その商人曰く、「フハハハハ!近々貴殿の前に面白い奴が現れるから、その時につまみとして出すがよい!!なーに、料金はそれを食べたお客人から貰うとしよう!!」と言われたのだよ」
怪しげな仮面ってそれバニルじゃねぇか!
余計怖くなり、ビビりながら錠剤を噛じっているとユニは呆れた様な顔をして言い放つ。
「いや、待て、一粒をリスみたいにカリカリとかじってるんじゃあないよ。一掴み掴んでリスの様に口にいっぱいにしてボリボリと行きたまえよ」
「だって怖いんだもん!食った後に突然奇声上げたり、変なモノ見えるようになったりしたら怖いんだもん!」
「なに、問題は無い。商人曰く「ポンコツ店主が勝手に仕入れたこの滋養強壮サプリは、作用量が大雑把だから過剰摂取しても2日程目がギラギラして眠気がなくなる程度だ。安心するがよい♪」との事だ」
いや、それやべぇ症状出てるじゃん
「ちなみになんだけど……ユニちゃんもコレ食べたの?」
「え?食べる訳ないだろ、そんな危ないもの」
「危ないものをもてなすお客さんに出しちゃダメでしょ」
そうユニに突っ込むとユニはグイッと顔を寄せて来た。
「で、フクヤマ氏。適正に評価して貰いたいのだが、如何だっただろうか、同級生であるユニちゃんの初おもてなしは?怪しげな仮面の商人に倣い、招待側の個性をふんだんに盛り込んでみた。貴殿の趣味や嗜好をまだ把握していないので不安もあるが、訪ねてくれた同級生に喜んで貰えたなら幸いだ」
「そっそうなんだ……。そうだなぁ、おもてなしの気持ちはすっごい伝わったから、そーだな。90点位かな?もうちょいお茶とか、お菓子とかを安全に配慮すれば大丈夫だと思うよ?」
色々思うところはあるけど。
「そうかい?えへへ〜。いや、なに、ぼくの出自は人里離れた僻地でね」
「へぇー!そうなの?てっきり街育ちかと思ったよ」
「いや、ぼくは学院に入るまでは『山』に住んで居てな、山から下りたことがなかった。社会を捨てたアークプリーストやアークウィザードの老人達と、彼らの膨大な蔵書を親代わりに、今思えば閉鎖的な成長期を過ごして来たのだ。そのせいか、どうやらぼくには、一般常識というものが少々かけているらしい」
「そうだったんだ……」
通りで小難しい話し方をしたり、訳の分からん薬を食わせるなとは思ってたんだ。
幼少期を話したユニは、しんみりとしている俺に淡々と話し続ける。
「ぼくの言動に関して、万一何か思うところがあれば忌憚なく申し出て欲しい。いや、申せ、疾く申せ」
いや申せと言われてもなぁ……。
悩んだ末、俺はユニの特徴的な”話し方”について指摘した。
「うーん……強いていえば、話し方かな?ちょっと、固いと言うか?」
「ああ、うん、そうだな。固いというか古めかしいというか、口頭会話においては文語的に過ぎるという自覚はある。ぼくは物心付いた時既に、こうした口調のアークウィザード、アークプリーストの老人達と釜の飯を同じくしていた。いわば故郷の方言の様なものでな」
なるほど方言か、マヒルも「だべー」とか使うし、そう思えば気にならないかな。
「方言ねぇ、逆に個性があって良いと思うよ?、それを指摘してしまって申し訳ない」
俺はユニに頭を下げた。
「構わんさ、入学当初は標準的な口調での発話に務めていた時期もある」
「へぇ〜、それなりに気をつかってたんだ」
ユニちゃんなりに苦労したんだろうなぁ……。
すると、ユニは急にスイッチを入れた様に目の色を変えて言い放つ。
「最初はね、なんかフツーっぽく話してたんだけどぉ」
「!?」
「しかしだ。蓋を開けてみれば、この学院は意外とぼくのような準方言話者が多かったのだ」
「急に喋り方変えないでよ、びっくりした〜。準方言?今日一日学院の中をうろついて見たけどそんなにいたかな?」
「いるではないか、『ですわ』とか『ですの』とか『ちぇるん』とかな」
それ方言じゃねぇよ『役割語』だよ!それに『ちぇるん』は方言でも役割語でもねぇよ!
「お嬢様方言がまかり通るなら、魔法使い方言もまかり通っていいはず、そう結論付いて以降、ぼくは自然体でまかり通る事にしたよ」
「そっそうなんだ、うん、いいと思うよ?」
「だが、ぼくの机は入学後間もなく、この『塔』へ移された。以来、学友と会話する機会はほとんどなかったのだが」
「そう言えば博士号を取得したからここにいるってクロエちゃんが言ってたよ、優秀だからって。恐らく学院は授業を受けさせるより、論文作成とか研究とかさせて置いた方が名声も上がるしね」
「うむ。無論、ぼくとて故郷に錦を飾りたいぐらいの野心はある。侘しい老人達に、まだろくな親孝行をしていないのでな」
「そっか〜。もし、短い間になると思うけど、何か手伝う事があったら遠慮なく言ってくれ」
俺がそう言うと、ユニはニコリと微笑んだ。
「うむ、助かる。フクヤマ氏も良ければこの研究室代わりに供出されたこの旧図書館棟、通称『象牙の塔』は知的欲求たくましいぼくと存分にこの宝物庫を使おうじゃないか!ここには様々な魔法の書物が沢山あるぞ!」
熱く語るユニの目はキラキラと輝いていた。
マジか!魔法覚え放題じゃねぇか!
「って事は、ユニちゃんはクラスはアークウィザードかアークプリーストなのかな?」
「あー、まだ教えてなかったな。ぼくは老人達に育てられた故に、ぼくは”アークウィザードとアークプリーストを超越した者”になった。端的に換言すれば、クラスはアークウィザードではあるが、アークプリーストの支援魔法も使えると言うことだ」
何それチートじゃん……。
「マジで!?んじゃ、回復魔法も使えるの?」
「いや、ぼくは野蛮な攻撃魔法や回復魔法は使えない、『ペンは剣よりも強し』を体現させる立場なのでな。そうさな、老人達が独自に開発した魔法が主だな。例えば、『感知魔法』から『魔力を回復する魔法』や『攻撃魔法から防ぐ結界を張る魔法』などだな」
うわぁ……アークウィザードなのにアークプリースト見たいな魔法を使うのか。恐らく、ユニちゃんはウィズと同等か、それ以上の魔法知識があるんだろうな。ユニちゃんが使う魔法を教えて貰っても習得ポイントもものすごく高いだろうな……。
「ユニ博士の名は伊達じゃないねぇ、俺なんか鼻くそ以下じゃん…」
「そう言えばフクヤマ氏のクラスを聞いていなかったな。差し支えがなければ教えて欲しい」
えぇ〜……言いづらいなぁ……。
俺は気まずそうに俯き、ユニに答えた。
「ぼっ冒険者……です」
「冒険者か、最弱の職と呼ばれてはいるが”魔法やスキルを教われば習得出来る”という便利性がある。落ち込むことは無い」
「まぁそうなんだけどね……ポイント消費がエグくて……あははは」
「そこは努力次第だろう、頑張れ。さて、分かってもらえただろうか、同級生。今後とも二人三脚で頑張って行けると助かる」
俺を励ましながらユニは俺に言い放った。言葉の意味を理解出来ずに首を傾げた。
「え?それはつまり?」
「つまりはだね、端的に換言すると、是非また来て欲しい」
あっそういう事!?言いづらいけど、分かりづらいなぁ……。
ユニの言葉を理解した俺は大きく頷いた。
「あっそう言う事ね、ハイハイ!俺も勉強教えて貰いたいしね!」
「そうかね。ふむ、それは良かった。うん」
「それじゃ早速勉強を──」
《ぽーん!ロゼッタよりドクター・ユニに通告!》
俺が教科書を取り出そうとした時、さっき部屋に入る前にも聞こえた電子音的な声が聞こえた。すると、ユニはどこかに話し始めた。
「む?どうした『ロゼッタ』」
「ロゼッタ?」
《動体反応を感知、こちらへ微速接近中!歩容解析の結果、マザー・ヒルダと推測されます!》
「マザーか、やれやれまた論文の催促だろう。フクヤマ氏、すまないが一旦隠れてはくれまいか?」
「え?なんで?」
なんで隠れなきゃいけないの?
俺は首を傾げながらユニに尋ねた。すると、ユニは呆れた顔をして俺に言い放つ。
「君ね、ここは女学院だぞ?年寄りの言う事を予測するとすれば『不純異性交遊』と騒ぎ出すだろう。そうなれば面倒だ」
「あーなるほどね、そう言う事なら分かった」
俺はクローゼットの陰に隠れて『潜伏スキル』を発動させ、その時を待った。
────────────────────────
数十分後、マザー・ヒルダはユニの部屋から出て行った。マザー・ヒルダが出て行った瞬間にホッと胸を撫で下ろしたユニを確認した俺は潜伏スキルを解除した。
「いや〜話し長かったねぇ」
「全くだ。しかし、同級生。貴殿は潜伏スキルを習得していたのか」
「まぁね、これは色々と便利だよ?。それはそうと、俺も部屋に入って来た時聞こえたんだけど、さっきの声は誰?」
「ああ、さっきの声かね?紹介しよう。ぼくの愛玩鉱物。”即席簡易擬似ゴーレム”の『ロゼッタ』だ」
ユニはローブのポケットから小石を取り出して俺に見せた。
ただの石じゃん……。
「へぇ〜、ごく普通の石っころにしか見えないんだけど?」
「ときとして孤独は人を狂気にいざなう。永きに亘る引き籠もり生活中、話し相手の必要性を感じたぼくが、道端の石ころに仮想自我を付与したものだ。見た目通りのカチカチのお堅いやつだが、ぼくに似てお茶目の一面も隠し持っている。魔力切れまでの短い命だが、仲良くしてやってほしい」
《初めてだから優しくしてね!》
なにそれ凄い!そんな魔法も使えんの!?それになんかMARVELのジャーヴィスっぽい!
「けどさ、なんかユニちゃんの声に似てない?」
「良い耳をしている。然り、実はゴーレムも仮想自我も専門外なのでな、種を明かせば、事前に吹き込んだぼくの台詞を設定条件に応じて適宜再生させているに過ぎない」
ユニにそう説明されても尚、俺はロゼッタをじーっと見つめた。
「マジか……すげぇ……、いいなぁ、いいなぁ」
「なんだね、貴殿も話し相手が欲しいのか?吹き込む台詞と鉱物を持ってくれば作ってやらん事もないぞ?」
「ホントに!?んじゃテスト終わってから持って来るね!」
「うむ。」
「それじゃ、申し訳ないけど、勉強教えて下さい!」
「良かろう、フクヤマ氏。学びの時間だ」
その後、ユニの指導を受けながらテスト勉強に励んだ。
運営さん!お願いします!今年こそクリスの水着とあるえ水着お願いします!!