いたずらっ子の様な顔をしながら教えてくれたエリスに対し、俺は念の為にエリスに2度聞きした。
「その『ガルーダ』って神様はムエタイの男神って事でいいんだよな?」
「うん、そうそう!アルクス様に聞いてみたら教えてくれてさ!」
「それで?そのガルーダ様ってのは、どんなキャラしてんの?」
「えー?そうだなぁ、聞く話だと強さを求めてるって感じかな?」
エリスは頬をポリポリかきながら俺にガルーダの詳細を説明してくれた。居てもたってもいられなくなった俺は鎧を着もせずにエリスの手を引っ張り、案内して貰おうとした。
「よし行こうっ!今すぐ行こうっ!」
「あちょっ、引っ張らないでよ!ちゃんと連れて行くから!」
その後、エリスの案内により統一神界の中心地から離れ、ジャングルの様な所を歩き始めた。
「あんな近未来的なとこからすごい場違いな密林だな、こんな所にいるのか?」
「うん。アルクス様曰く、かなり気難しい性格らしいからくれぐれも失礼の無いようにね?」
エリスに釘を刺さされながら奥に進むと、ジャングルの奥は開けており、古代遺跡の様な場所だった。一面に広がる大木には、統一神界のあちこちにある神秘的な神様の銅像とかでは無く、繊細な造りの仏像がいくつも置かれていた。開けた中心は太陽が差し込んでおり、その中心には赤い体で彩やかな翼を付けていた鳥人が一心不乱にカンカンと仏像を彫っていた。それを目の当たりにしたエリスは声を掛け始める。
「ガルーダ様。拳神アルクス様の紹介により馳せ参じました、幸福を司る女神・エリスと申します。今回は折り入ってガルーダ様にお願いがありまして……」
ガルーダ?この鳥人間があの、ガルーダ神なのか?
だが、ガルーダと呼ばれた鳥人間はエリスの言葉を聞いていないのか、そのままカンカンと仏像を彫り続けていた。エリスは頬をポリポリかきながら再びガルーダに声を掛けた。
「あの〜?ガルーダ様?、この人間に”稽古”を──」
稽古と言う言葉を聞いた途端、ガルーダはピタッと作業を止めた。
「稽古……だと?」
「はっはい。ほら、リュウジも挨拶して?」
「あっうん、はじめまして。ガルーダ様、フクヤマリュウジと言います」
「ほう……統一神界に人間がいるなんて珍しい事もあるのだな」
俺が名乗ると、ガルーダが立ち上がり振り返った。ガルーダが立ち上がると身長は2m位の巨体を俺とエリスは巨体を見上げ、ガルーダは赤や青や色鮮やかな翼や羽羽根を生やしていた。
いやオウムじゃん!
俺はガルーダの渋い声とは裏腹に可愛い顔を見た瞬間、思わず、エリスの法衣の袖を引っ張りながらガルーダに指をさしてしまった。
「ねぇ!オウムだよね!?この顔はオウムだよね!?」
「しっー!しっー!、なんて事言うのさ!失礼だよ!?」
「だって!ガルーダって言えば鳥の神様でしょ!?こういう時って鷲とか隼じゃない!?なんでオウムなの!?」
「黙れ小僧!!ワシはオウムではないっ!『ベニコンゴウインコ』だ!」
大して変わんねぇよ!
「同じでしょ!?インコもオウムも!?」
「この戯けっ!オウムは白、黒がベースで、青や緑色の羽は持たん!、インコは赤、青、緑などカラフルな羽を持っておるのだ!」
知らねぇよ!そんな豆知識!!
巨大なインコを目の前にして失言暴言のオンパレードを繰り広げていると、エリスが慌てて仲裁に入った。
「落ち着いて下さい!ガルーダ様!ほらっ!リュウジも謝って!」
「ヤダよ!なんでセイヤとかはセルセウス様見たいないい感じの男神なのに俺は鳥人間なんだよっ!しかもオウム!」
「ベニコンゴウインコだと言うておろうに!この無礼者めっ!そこになおれ!蹴り殺してくれる!」
「やって見ろや!このオウム──」
オウムと言い放った瞬間、ガルーダは目にも留まらぬ速さでハイキックを繰り出して俺の顎を掠めた。掠った瞬間、俺は無意識に両膝を地面に付けていた。
「あ……あれ?」
「あーあ、ちょっと当たっちゃったねぇ……」
「エリス殿、この者は貴殿の眷属か?」
「ええまぁ……そんな感じです。この曲がった根性を叩きのめして下さい、たとえ大怪我をしても治療の女神・リスタルテに治療してもらいますので問題ありません」
「そうか、では遠慮なく叩きのめしてやろう」
ガルーダはゴキゴキと手を鳴らし、先程とは打って変わってムエタイ特有のポーズの構えを繰り出した。その瞬間、何をされたのかも分からないまま、俺はサンドバッグ状態でボコボコに殴る蹴るの攻撃を受け続けていた。
「がっは……」
「ふんっ、誇り高きガルーダ神を気安くオウムオウムと言いよって!」
「あちゃ〜想像以上にやられちゃったねぇ、大丈夫?」
エリスはつんつんとボコボコにされた俺をつっつきながら覗き込む。
物理耐性スキルが付いててこのザマか……。
俺はヨロヨロと起き上がり、ファイティングポーズを取った。ガルーダはニヤリと笑い、ガルーダも構え始めた。
「ふぅ……ふぅ……いくぞ、『魔眼』!!」
「ふんっ、小癪な真似を……ハッ!シェア!アォウア!!」
俺は突進しながらガルーダの攻撃をかわす為に魔眼を発動させた。僅かに見えた右ヒジの攻撃を避けた俺は、カウンターを合わせて左ストレートを繰り出した。
「もらったぁっ!」
「甘いわぁっ!」
ガルーダは突然体を捻り、左膝蹴りを繰り出して来た。だが、俺はその左膝蹴りを更にかわすと、待ってましたと言わんばかりに右ボディブローが脇腹に突き刺さった。
「ぐっはぁっ!!」
ガルーダのボディブローの威力で俺はフワッと浮き上がった。更に、俺を畳み掛ける様に更に蹴り上げて浮かすと、ガルーダは突然、体に”稲妻”の様な模様を浮かべながら高く飛び上がり、そのまま右膝を俺の体に叩き付けた。
「
メキメキと膝がめり込み、地面に叩き付けられた俺は血反吐を吐き、失神してしまった。
「が………は……」
「ふん、少しはやる様だが……まだまだだな」
「やっぱり手も足も出ないかぁ……無理もないね。ガルーダ様、今日はありがとうございました!。これ、お詫びの穀物雑穀です」
「これはこれは、かたじけない!」
「よっこらせと……では、私達は今日は帰りますね?」
「うむ」
ガルーダはエリスに対して合掌し、ボウル一杯の穀物雑穀を受け取ってボリボリと食べ始める。エリスは失神している俺を起こして肩を回してガルーダにお礼を言いながらその場を後にした。
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数時間後……俺は目を覚ますと、俺は飛び上がりながら起き上がった。椅子に座ったままコクコクとうたた寝をしていた。俺は顔や体を触るとリスタルテに治してもらったのか、痣1つ残っていなかった。
リスタが治してくれたのか、しかしあのインコ……図体に似合わずなんつースピードで殴って来やがったんだ、まるで嵐の様だったな……。
ふと、エリスの方を向くと疲れが溜まっていたのか、起きる気配は無かった。俺はエリスに近付いてお姫様抱っこをしてベッドに寝かせてやろうと思い持ち上げようとした。
「んん……」
「おー、結構軽いんだな。よっこらせと」
エリスを抱き抱え、ベッドに寝かせた。すやすやと寝息を立て、可愛いらしい寝顔を目の当たりにした俺は思わず見とれてしまった。
「…………俺も寝ようかな、ボコられて疲れたし……。あと2日くらいいても学校には間に合うし、ちょっと休むか……」
俺はエリスから少し離れてベッドに横になり目を閉じた。
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───少し時間が経つと、エリスは目を覚ました。エリスは「はっ!」っとした様子で頭をボリボリかきながら起き上がった。
「あちゃ〜寝ちゃった……ふわぁ〜、ってまだ寝てるよこの人」
エリスは死んだ様に眠っている俺の顔をつっついた。エリスはまだ眠いのか、大きなあくびをした。
「ふわぁ〜、書類整理や転生の仕事であんまり寝てなかったからなぁ。あたしも寝よっと。うーん、髪の毛が邪魔だな」
2度寝をしようと考えたエリスは、着替え始めてクリスの姿に変えた。身軽になったクリスはベッドに入り込み、顔が近い状態で寝始めようとした瞬間、俺は目を覚ました。
「あっ、起こしちゃった?」
「…………おはようございます」
「あはは……ちょっと眠いからあたしも寝るね?」
そう言ってクリスは横になって目を瞑り始めた。寝起きでボーッとしていた俺は次第に頭が冴えて来て状況を把握し始めた。
クリスが隣で寝てる……えっ、ちょっまって、好きな人が隣で無防備で寝てるんですけど、良いよねこれ、キスしても問題ないよね!?やっちゃうか!?やっちまうか!?1回してるし、良いよね!?
ゴクリと生唾を飲み込んでクリスに顔を近づけると……。
「………何してるの?」
「!!!!!!!!!」
顔を近付けようとした瞬間、クリスは目を開けた。クリスは起き上がり、ダガーに手をしながら俺に声を掛けた。
「おはよう」
「おっ、おっ、おはようございます」
「キミは今一体何をしようとしてたのかな?」
「……………………黙秘権を行使します」
「ダ〜メ」
ですよねぇ!!
「怒らないから正直にいってごらんよ」
「もう怒ってますやん!」
「怒ってないよ〜?キミが何を企んでたか気になるだけだよ?」
クリスはニコニコしながらも、既にダガーを抜刀出来る状態にしておりそれを確認した俺は冷や汗をダラダラとかき始める。だが、俺は観念して正直に言おうと口を開いた。
「キッ……キキキキキキキ」
「キ?」
アメジスト色の瞳を輝かせ、可愛い顔をしながら首を傾げるクリスを見た途端、思考が停止してしまった。
可愛い!!顔が近いぃ!!
「ウキィィィ!!」
「なっ何!?どうしたの!?」
「ウキィィィーーーーーーーー!!」
「あっ!ちょっと!リュウジ!?どこ行くの!?」
あまりの恥ずかしさに耐えられなくなった俺は、顔を真っ赤にさせながら猛スピードでガルーダのいる所まで走って行き、ガルーダに言い放った。
「ガルーダ様!!」
「なっなんだ!?突然やって来て、まだワシに何か用──」
「俺を殴って下さい!」
「は!?なんだ貴様、ワシに殴られ過ぎて頭に深刻なダメージが!?」
「良いから!早く!」
何が何だか訳も分からず、ガルーダは気を利かせたつもりなのか、あえて俺の頭を狙わずに『ローキック』を俺の足に目掛けて攻撃して来た。べキッ!っと音を響かせると俺はあまりの痛さに失神した。
殴ってって言ったじゃん……。
「あっ、手加減を誤ってしまった!おい、小僧!?おいっ!」
ガルーダは俺の顔をひっぱたたいて起こそうとするが意識が戻る事は無かった。すると、俺の居場所を探し当てたエリスに戻ったクリスが古代遺跡にやって来た。
「やっぱりここに……ってえぇ!?」
「あっいや、エリス殿。こやつが急にやって来て殴れと言うのでな!?」
「すいません!ガルーダ様!!このバカ連れて帰りますから!」
「あーすまん、エリス殿。さっきうっかり殴れと言われたのに蹴ってしまってな?足を折ってしまったのだ」
ガルーダがエリスに先程の経緯を説明すると、事情を聞いた途端エリスは唖然としていた。
「まっまぁ、よく分かりませんが……また治療してもらうので大丈夫です。では、失礼します!」
エリスはペコペコしながら俺を引きずって古代遺跡を後にした。
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その後、俺は暇をもて余していたリスタルテに再び治療してもらい、蹴り折られた足を完治させた。気が付いたのは2日後の事だった。あの後エリスは再び仕事に戻って行き、再び俺一人になった。
「いや〜あの時は焦ったわ〜。って言うかガルーダ様も殴れって言ったのに本気でローキックしてきやがって……けど、あの鋭い攻撃……習いてぇなぁ……」
俺はベッドに座りながら足を摩りながらそんなことを呟いていた。
失神する直前に見たあの蹴り……学びたい……習得したい!色呆けなんかしてる場合じゃねぇ。例え怒鳴られたっていい、どんなに嫌われたっていい、強くならなければ
俺は立ち上がって古代遺跡に再び向かって行った。仏像を彫っていたガルーダに俺は声を掛けた。
「ガルーダ様!!」
「また来たのか、貴様……また殴れとか言うんじゃ──」
「お願いします!俺に、俺にこの前の蹴りを教えて下さい!!」
「はぁっ!?今度は教えろだと!?」
「お願いします!!お願いします!!」
俺は土下座をしながらゴンゴンと地面に頭をこすりつけた。この前とは雰囲気を感じ取ったガルーダは真剣に受け取り、俺にこう問いかけた。
「ふむ……ならお前に問おう。お前に、戦う理由があるのか?」
戦う理由……か。
ガルーダに問に俺はこう答えた。
「もうこれ以上……大切な人を、大切な仲間を失いたくないから」
そう答えると、ガルーダはニヤッと笑いだし、ムエタイの構えを取り出した。
「ワシの武術にはスキルはない。だが、この前見せた技は見た目は地味だが相手の機動力を確実に無くす威力がある。それを教えてやろう」
「はいっ!お願いします!」
「お前は『近接格闘』のスキルを習得しているから簡単にポイントだけ話そう。まず、①蹴る前に肩を入れろ。②その手を引くと同時に脚を前に放り出しせ。③できれば一直線に相手の
ガルーダは俺を体を使って実際に大事なポイントの所を教えながら手取り足取り教えてくれた。それらの事を踏まえ数時間の特訓が始まった。そして、ようやく様になったのを目の当たりにしたガルーダは彫ったばかりの仏像に差し出して来た。
「これで最後だ。この仏像を己の拳と脚で砕いてみろ」
「なっ!?」
「これを砕いた時、お前は更に上を目指せるだろう」
そう言われた俺は呼吸を整え、ペコリーヌから教わった『呼吸法』を行った。呼吸をした途端、以前のように蒸気の様に息を吐いた。
「シュウ……はぁぁぁぁっ!」
仏像に今までとは段違いのスピードで拳の連打を繰り出した。拳は幾重にも増えたように飛び出していき、俺は無意識に叫んだ。
「『
拳は弾丸の雨あられの様に仏像に降り注ぎ、次々と拳はめり込んで行く。仏像は次第にひび割れして行き、トドメを指すように最後はガルーダに繰り出されたローキックを炸裂させた。
「オラァァァ!!」
ビキビキ!!バキィーーーン!!
砕け散った仏像を見たガルーダは豆鉄砲を食らった様な顔をしていた。
「コイツは驚いたな、まさか本当に砕くとはな……」
「やりましたよ……ガルーダ様」
「まぁいい、これで気が済んだろ」
「ありがとうございました!これで、更に上を目指せます!」
「ふんっ、礼をするなら世界を救ってからにするんだな」
「はいっ!その時は必ず!!」
「ならば、さっさと地上に降りるんだな」
「忘れない様に地上で練習します!失礼します!『テレポート』!!」
そう言って俺はテレポートを唱え、王都に戻って行った。それを見送ったガルーダは突然辺りを見渡し、呟いた。
「やれやれ、慌ただしい奴だな……。そこに居るのは分かっておりますぞエリス殿、これで良かったのですかな?」
「あはは…バレてましたか……」
何時から居たのか、物陰からエリスが現れた。ガルーダはやれやれと言わんばかりにため息を吐いてエリスに言い放った。
「まったく、回りくどい修行をさせるものですな」
「申し訳ございません、色々事情がありまして」
「その事情とはなんなのだ?なぜ修行を許可させぬ?我々神は人間を過度に助けねばいいだけの事なのだぞ?」
「私も本当は協力してあげたいです。ですが、彼はいつも”頑張り過ぎ”なんです。夢中になり過ぎて体をボロボロにさせる恐れがあります。なので私は今まで彼が統一神界に来るのを理由を付けて拒んでいました」
エリスなりの優しさなのか、今までリュウジを統一神界に長く滞在させたくない理由を話した。
「その様な理由があったとはな……」
「はい……」
エリスとガルーダはリュウジが飛び去って行った空を見上げた。
ファーカムラムのタイ語のセリフが見つからないのでぶっ潰すというセリフを辞書で調べました。
リュウジが新たに習得した技
鉄の暴風……マシンガンの様に繰り出す連続パンチ
タイキック……相手の動きを一撃で封じるローキック