聖テレサ女学院から出て俺の前を歩くセレスディナ様は何やら考え込んでいた。
どうしたんだ?何か悩み事か?
俺は心配そうに見つめると、セレスディナ様は足を止め、俺に振り向き言ってきた。
「……なぁ。お前、今は傀儡化してるんだよな?あたしの言う事は絶対だよな?」
そんな当たり前の事を。俺は首を傾げながら答えた。
「何言ってんです?当たり前じゃないっすか。セレスディナ様が命令するなら俺はレジーナ教の鉄砲玉になって戦いますよ!」
「お?、お、おう……そうか、今までの傀儡はレジーナ教に入るとか口走らなかったから、ちょっとな。うん、気にするな……」
セレスディナ様は途端に喜悦に堪えきれないという感じに肩を震わせたセレスディナ様は突然。
「やっと……やっとだ!」
俺に掴みかかり、それはそれは嬉しそうに呟いた。
「あたしがどれだけこの時を待ち焦がれたか分かるか!?レジーナ様が紅魔の里に封印され、あたしが力を失ってからというもの、魔王軍でどれだけ肩身の狭い思いをしたかを!」
「苦労なさったんっスね、けど、もう大丈夫ッスよ!俺がこれから鉄砲玉になってセレスディナ様を守りますから!」
「そうか!頼りにしてるぞ!流石は魔王と呼ばれたことはあるなお前!。数年前に、レジーナ様の封印が何故か解かれた。それで力を取り戻せたと思ったら、あれは……そうだ、最近の事だ。ある日突然、レジーナ様から授けられる力が跳ね上がったんだよ!そう、レジーナ様が、長年頑張ったあたしに加護をくれたんだよ!」
「セレスディナ様、そりゃもしかして、レジーナ教徒が1人になったから加護を独り占めしたに過ぎないんじゃねぇッスか?」
「茶々入れてくんなっ!良い気分なのに!。ほら、お前は街中に仕掛けた映写する魔導具を壊してこいっ!」
「へいっ!行ってきます!」
俺は駆け足で設置された魔導具を破壊しに向かって行った。
────────────────────────
「セレスディナ様、全部ぶっ壊して来やした!」
「おう、早かったな。お前なかなか使える奴だな!せっかく使える奴を手に入れたんだ、思い切って引っ越すか!お前も手伝え!」
「へいっ!」
引っ越すと言い出したセレスディナ様は新しい拠点に引っ越すと言う。手伝っていると、セレスディナ様は突然、念には念を入れて聖テレサ女学院の生徒達の傀儡への支配を弱め、代わりに俺への支配を強めてくれた。聞けばお前が居ればもう必要ないとの事。
引っ越しの片付けをしながら俺はふと気になった事を尋ねてみた。
「そういえばセレスディナ様。俺の傀儡化が解ける条件ってなんスか?」
その言葉に、掃き掃除をしていたセレスディナ様はピタッとホウキを止めてホウキを突き出して来た。
「あん?なんでそんな事を聞く必要がある?」
「いや、万が一セレスディナ様の支配が解けると、鉄砲玉で居られないっスから。なら対策として傀儡化が解けそうな所には行かない方が得策かと」
俺がヘコヘコしながら答えると、セレスディナ様は驚いた様にホウキを落とし、俺の顔を両手で掴み、まじまじと覗き込む。
「なんか怪しいな……頭のキレるお前だから演技じゃないのか?……けど、レジーナ様の力を強く感じる。支配を強め過ぎたか?まぁいい、あたしにとっては好都合だ。これからも頼むぞ?リュウジ」
「へいっ!セレスディナ様!」
俺の返事が余程嬉しかったのか、上機嫌で頷くと。
「よしっ、流石は魔王だった男だな。それじゃあ教えてやろうか、これもお前への借しになるしな。一言で言えば【あたしから受けた借りへの代償の返還】だな。自分が信仰している神に思わず感謝しちまうよーな事は危険だ。お前がどの神を信仰しているかは知らないけど注意しろよ?」
「へいっ!了解しましたっ!。だけど今の俺が信仰してんのはレジーナ様ッス!」
「そっそうか、そんなキラキラした目でこっち見んなよ……ちょ、調子狂うからよ……そういえばお前はレジーナ様を信仰する前は何を信仰していたんだ?」
「……エリス教ッス!」
あれ?なんで俺エリス教って言ったんだろ……。
「へぇ〜、至ってシンプルだな。ここでアクシズ教って言われたら困るけど、まぁいい。これからはあたしがあんたの”相棒”だからな?」
「へいっ!」
セレスディナ様が俺を相棒と呼んでくれた。これは頑張らないといけない……アレ?相棒……なんだろう?モヤモヤする。
「よしっ、片付けもこんなもんで良いだろう。リュウジ、行くぞ?」
「へいっ!あっ、その前に『セイクリッド・ブレイクスペル』!!」
俺はセレスディナ様に掛かってた呪いを解いてあげた。セレスディナ様は驚いた様子で……。
「おっお前……」
「サービスッス!」
「そっそうか、お前がそういうなら貸し借りなしだからな?」
「へいっ!」
掘っ建て小屋を後にした俺とセレスディナ様は小綺麗な宿にやって来た。
「よし、今日の宿はここにするか。ちょいと高そうだがたまには良いだろ。よしリュウジ。金払ってこい!」
「へいっ!行ってきます!」
俺はセレスディナ様の命令通りに向かい、宿屋のドアに手を掛けた。だが、俺はふと気になった事をセレスディナ様に尋ねた。
「セレスディナ様、あの、ここで俺が料金払ったらセレスディナ様から受けてる借りを返す事になるんじゃないっスかね?」
「……あっ!!そっか、あぶねー。けど……えぇ?アレ?大丈夫だよな?今は借りとかいいから早く払ってこいっ!」
「了解ッス!払って来ます!」
俺は料金を最高級の部屋を借りてセレスディナ様を迎え入れた。セレスディナ様は余程嬉しかったのか、可愛らしい声を出した。
「うわぁ……綺麗……」
「どうっスか!?俺の力じゃこれが限界ッス!もし、これでお気に召さないなら……俺、指詰めます!」
俺は備えられた果物ナイフを取って小指を切ろうとした瞬間。セレスディナ様は大慌てで俺を止め始めた。
「何やってんだ!やめろよ!べっべつに、嫌とは言ってねぇだろ!?」
「ホントっスか!?なら良かったッス!」
満面な笑みを浮かべる俺を見たセレスディナ様は突然顔を真っ赤にしながらそっぽを向き始めた。
どうしたのだろうか?風邪だろうか?
「じゃ、俺は床で寝るんでセレスディナ様はでっかいベット使って下さい!」
「いや待て、お前なんでここいんの?」
「いや、俺は見張りも兼ねてここにいるんスよ。ほとんどの金この部屋に注ぎ込んだので俺の分の部屋はねえっス!」
「見張り!?えぇ?あー……アレ?うーん……何もしないよな?この前見たいな事しないよな?何もしないってんならいいけどよ?」
この前というのは、性感マッサージの時の事だろうか?あの時は本当に申し訳ない事をしてしまったな……詫びよう。
「あの件でしたら本当に申し訳ごさいませんでした。もし気に入らないのであれば、俺、腹を切って詫びます」
俺は再び果物ナイフを取ってワイシャツを捲って腹を切ろうとすると。
「だからやめろってば!もういいよ!忘れるよ!あたしも忘れるからお前も忘れろ!良いな!?」
「イイんスか?我慢しなくていいって言ったのはセレスディナ様ッスよ?」
「いちいち揚げ足とんじゃねぇよ!もういいってば!面倒くせーやつだな!あーもうっ!」
セレスディナ様がベットで寝転びながら頭を抱えていた。
「腹切らなくて良いんスか?」
「いいって言ってんだろ!もうちょい臨機応変に動けよっ!魔王だったんだろ?しっかりしろよ!」
「すっすんまへん!セレスディナ様!どーしても邪魔であれば、俺は外で寝ますけど?」
「あーもうっ!そうしろ!鬱陶しい!」
「へいっ」
俺は部屋を出て、小雨の降る中宿の隣りの細い路地で色んな物を使い、雨をしのいで横になっていると……。
「何も本当に寝る事ねぇだろ……何やってんだよ」
心配して来てくれたのか、そこにはセレスディナ様が立っていた。俺は聞かれたら事をハッキリと答えた。
「えっ、だって俺は、相棒ですよね?相棒を守れるのは相棒っスよ?」
「えっ……」
セレスディナ様は言われた事がないのか、ドキッとした様子で俺を見つめる。すると、セレスディナ様は……。
「こ、ここで体壊されたらたまったもんじゃねぇ。明日から忙しくなるんだ早く部屋に戻ってこい!体が冷えてんだからシャワーも使っていいから」
「ありがとうございますっ!セレスディナ様!」
流石はセレスディナ様。飴と鞭をよく使いこなしてる。
その後、風呂で体を温めて戻るとセレスディナ様は眠れないのか、ベットに腰をかけていた。
「セレスディナ様?どーしたんスか?」
「いや、お前見たいなのがなんで魔王になったのか気になってな?教えてくんねーか?」
「まぁ、良いですけど。長くなるんで色々省いて良いッスか?」
俺は色々省いて不死身の魔王になった頃を説明した。相棒と呼べる仲間を目の前で殺されたり、罵られて路地で寝たり、生野菜をかじって飢えをしのいだり、洞窟でゴブリンに八つ裂きにされた事を説明すると、セレスディナ様は急にポロポロと泣き始めた。
情緒不安定の人だなぁ……。
「苦労したんだな、お前も……だから相棒を大事にすんのか…ぐすっ」
「まぁ、そうっスね。相棒は人生の中で一番大事な宝ッスから」
そう言うと、セレスディナ様は何を思ったのか、セレスディナ様はベットをバンバンと叩いてこう言った。
「床で寝なくていい。命令だ、お前は隣で寝ろ」
「えっ、けど、借りが」
「気にしなくて良いって言ってんだろ。何度も言わせんなっ!」
「へっへい……」
とてとてと、歩きながら俺はセレスディナ様の隣に寝始めた。すると、セレスディナ様は急にくっ付いて来た。
「寝込み襲われるかも知れねえからな、お前を盾にするだけだからな」
「へっへい」
「ちょっと腕貸せ」
「ど、どーぞ……」
セレスディナ様は突然俺の腕を背中を通して寝ながら『あすなろ抱き』をし始めた。微かに聞こえた言葉が「なんか安心する……」だった。
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まだ夜も開けない時間帯に起きた俺はスヤスヤと眠っているセレスディナ様を起こさない様に起きて、部屋から出た。俺は冒険者ギルドに行ってチャチャッと手頃なモンスターを討伐して小金を稼いで来た。戻ってくる時には朝日も登っており、宿に戻ると、貧乏ゆすりをしながら座って待っていたセレスディナ様がいた。セレスディナ様は俺を見た途端、突然胸ぐらを掴んで来た。
「てめぇっ!どこ行ってた!?まさか傀儡化を解除したんじゃねぇだろうなっ!?」
俺は慌ててセレスディナ様に説明した。
「落ち着いてください。セレスディナ様、俺は小金を稼いで来ただけッスよ?昨日教えてくれたじゃないっすか、働かせるって。だから俺はセレスディナ様の為に稼いで来たんスよ?」
そう言うと、セレスディナ様は。
「そっ、そうか……そうだったのか、てっきり逃げ出したんじゃねぇかって思ってな。いや、悪かった、うん、すまん」
「そっそうですか?、それで、とりあえず50万エリス稼いで来たんスよ」
「ごっ50万!?高額賞金首並じゃねぇかよ。まぁいい、腹減ったからよ。飯にしよーぜ」
俺とセレスディナ様は冒険者ギルドに行って食堂のテーブルに座った。俺はセレスディナ様に喜んで貰う為に、セレスディナ様に言った。
「セレスディナ様何食べたいッスか?小金入ったんで遠慮なく食って良いっスよ!」
「そっそうか?アレ?これって借りを返す事になんじゃねぇーか?」
「え?ですが昨日は気にしなくていい、臨機応変にしろって言ったのはセレスディナ様ですよね?」
俺がそう言うと、何故かセレスディナ様は急にテーブルに顔をうずめ出した。よく見ると、耳が真っ赤になっている。
どーしたのだろうか?
首を傾げて見てると、セレスディナ様は言った。
「何食べても良いの?」
「良いっスよ!じゃんじゃん食べて下さい!」
「おうっ!」
セレスディナ様はリスみたいに口いっぱいにしながら料理を食べ始めた。聞けば聖テレサ女学院では無理に水だけで凌いで居たらしく、久しぶりのご馳走だったそうだ。
セレスディナ様、なんか嬉しそうに食べるなぁ。
「もぐもぐ……お前、ホントに傀儡化してんだよな?」
「はいっ、傀儡化してますっ!」
「おかしいなぁ……もぐもぐ……」
首を傾げるセレスディナ様を見て俺も首を傾げる。俺は何がおかしいのか尋ねてみた。
「いやな、お前みたいにペラペラ喋るのがおかしいんだよ。以前に紅魔の里で”へんな魔導ゴーレム”を傀儡化したんだけどよ?そいつ言う事聞かなくてな?その時とダブって見えてよ」
「そうなんすか、それで?その魔導ゴーレムはどうしたんすか?」
「面倒くさくなったから放置して来た」
「なるほど、妥当な判断ッスね!」
「だろう?、いやぁお前ホントに使えるな、言う事聞くし、忠実だし文句ねぇわ」
口いっぱいにして食べるセレスディナ様は愛らしかった。その後、セレスディナ様は俺を王都の墓地に連れて来た。
「セレスディナ様?こんな所で何をするんスか?」
「死体を掘り起こして傀儡化させて兵隊にするんだよ。学院で見せたろ?ほら、お前は向こうをやれ、あたしはここから先をやるから」
「セレスディナ様、ちょっと思ったんスけど、モンスターも傀儡化出来るんスか?」
シャベルで死体を掘り起こしながらセレスディナ様に尋ねると、セレスディナ様はせっせと掘り起こしながら答えてくれた。
「出来ねぇ事はねぇけど、モンスター殺して傀儡化させるって効率悪ぃだろ?ここなら掘って出せば人間の死体がわんさかあるしな?」
「なるほど……」
ようやく掘り起こして棺を開けると死体が出て来た。俺はセレスディナ様に報告すると。
「セレスディナ様〜。掘り起こしましたよ〜傀儡化ってどうやるんスか?」
「あー?ちょっと待ってろ」
セレスディナ様は汗を拭いながらこっちに向かって来た。
「いいか、見てろよ?傀儡化ってのは傀儡化の支配力を使って操るんだよ。死体をコイツに掘らせればいい……『マリオネット』!!」
セレスディナ様が唱えると、死体がカタカタを動き出し、シャベルを掴んで他の墓を掘り始めた。墓に座りながら一服を始めるセレスディナ様を見てた俺は懐から冒険者カードを取り出した。すると、『傀儡』というスキルが習得可能となっており、俺はセレスディナ様に役に立ちたいと思い、傀儡のスキルを習得した。そして……。
「よっこらせと……セレスディナ様。見て下さい!」
「あん?、どうした?」
「『マリオネット』!!」
傀儡を発動させた瞬間、セレスディナ様はキセルをポロッと落とした。余程びっくりしたのだろう。
「おっお前……習得したのか!?」
「はいっ!これなら効率良くなりますよねっ!?けど、俺はセレスディナ様見たいに強く出せる訳じゃないみたいッス」
冒険者の俺は本家のセレスディナ様の様に出せる訳もなく、冒険者の傀儡は【一体】が限界だった。その後、セレスディナ様の傀儡と俺の傀儡を使って墓を掘り起こし始める。セレスディナ様と俺はお茶を飲みながら傀儡を見守った。夕方になり出した頃、俺はセレスディナ様に声をかけた。
「あっ、セレスディナ様、もうそろそろ暗くなるんでどーしますか?宿に向かいますか?」
「んー、そうだな……そういえばお前、別荘持ってたよな?今後はそこを拠点にしようかと思うんだが?」
「俺の別荘ですか?そりゃ構いませんけど?セレスディナ様こそいいんですか?男の家にホイホイ来るんなんて?」
俺が首を傾げて尋ねると、セレスディナ様はモジモジしながら答えた。
「傀儡のクセに生意気いうんじゃねぇよ……あ、あくまで身を隠す為だ、そうだ!身を隠す為だからな!べ、別にお前の部屋がどんなのか気になるとかじゃねぇからなっ!?勘違いすんじゃねぇぞ!!」
素直にお前の家に行きたいって言えばいいのに。
「では、行きましょうか。あっこの傀儡はどうしますか?」
「ほっとけ!今は別荘が最優先だ!ほらっ!早く!」
セレスディナ様はウキウキしながら俺の腕を掴んで引っ張り、俺の別荘を目指した。別荘に着くと、パッと手を離したセレスディナ様は俺に向かって突然言い放って来た。
「リュウジ、魔王軍や冒険者なんかもうほっといてあたしと一緒に逃げないか!?」
急に何を言い出すんだこのお方は……。
「セレスディナ様!?何を言い出すんスか!?まさか、それって駆け落ちってやつじゃないッスか!?本気で言ってるんスか!?」
「あたしは本気だよ、もう魔王軍なんかどーでもいい。あたしはあんたが欲しい。世界なんて滅ぼうが救われようがどっちでもいい!あんたさえいればあたしは……!!」
セレスディナ様に突然告白された俺は戸惑った。
セレスディナ様は疲れてるんだろうか、ここは一旦別荘に入って落ち着いてからまた話せばいい、俺も命令には逆らえないし。
「とにかく、ここではなんですし、別荘に入りませんか?」
「そっそうだな、お前は傀儡なんだ。あたしの命令は絶対だからな!焦ることは無いんだ!あはははは!!」
顔を真っ赤にしながらカチコチと歩くセレスディナ様より先に、俺は別荘のドアに手をかけて開いた。その時。
バッシャーン!!
俺は何やら緑色の液体を頭からかぶった。セレスディナ様はびっくりして上擦った声を出しながら駆け寄って来た。
「リュウジ!?大丈夫か!?なんだ!?トラップか!?」
「……………」
「おい、どうしたんだ!?何とか言え!」
セレスディナは慌てて俺をハンカチで拭こうとしたその時、玄関から聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「ようやく帰って来たなフクヤマ氏」
「わかりみ、こんなに帰って来ないとかありえないっしょ」
「ですよねー、けど、クロエ先輩が受け取った”メモ”が役に立ちましたね!ちぇるーん♪」
「なっ!?お前ら!?」
セレスディナの前には、なかよし部のメンバーがバケツを片手に立っていた。セレスディナはメイスを抜いて戦闘態勢に入る。
「てめぇらっ!リュウジに何をかけた!?」
「そっちこそ、リュウジに何してくれたワケ?2〜3日も連れ回して」
「そーですよー!せんせーは魔王軍幹部なんですよね?大方リュウジ先輩を仲間に引き込もうとしたんですよね?けど残念でしたー!」
「このバケツの中身はぼくが開発した『傀儡化を解除するポーション』だ。魔王軍幹部セレスディナ、君の負けだ。投降したまえ」
づぶ濡れの俺を一旦放置して、セレスディナはなかよし部と揉め始めた。
「どうしてあたしの名前を!?」
セレスディナがメイスを構えながらなかよし部に尋ねると、クロエがククリナイフを抜きながら答えた。
「あーそれ?これのお陰だから」
クロエはポケットからメモを取り出してセレスディナに見せ付けた。
「おい、なんだその紙!?」
「リュウジはあんたに操られる前にうちに渡して来たのよ。【もし、俺が操られたら傀儡化を解除するポーションを持って別荘で待て。コイツは魔王軍幹部幹部セレスディナ。危険人物】ってね?」
「そっそんな!?いつの間に!?」
「これで形勢逆転だな、さぁ。大人しくしたまえ、ぼくらも手荒な真似はしたくない」
ユニとクロエがセレスディナと対峙している最中、チエルはづぶ濡れの俺を激しく揺さぶって頬を引っぱたいていた。
「ほら!リュウジ先輩いつまでぼーっとしてるんですか!?ちぇるってる場合じゃありませんよ!?」
「あ……え?アレ?俺なんでここに居るの?アレ?チエル?」
「ようやく、気付きましたか!?もぅっ!心配したんですよ!」
一体俺は何をしていたんだろうか、全く記憶がない。だが、俺はこれだけは理解した。
「クロエ!そいつを取り抑えろ!」
「りょー」
「あっちよまて!リュウジ!おい!嘘だろリュウジ!傀儡化が解けてるのか!?おい!」
クロエとチエルに馬乗りになられたままジタバタするセレスディナ。
さて、コイツをどうしてやろうか。
「やれやれ、どーしようかな。始末に困る」
「なぁリュウジ、このまま見逃してくれよっ!しばらく暮らした仲だろ!?そうすりゃお互い、幸せになるって!」
「さっき玄関前で『あたしはお前が欲しい!』とか言ってましたよね?」
「それ言うなっ!やめろ!それは言うなっ!アレは、アレは気の迷いだ!なっ!?リュウジ、逃がしてくれよっ!」
え?俺、こいつに告白されたの!?
「情報量半端ないんだけど、え?どういう事?」
「フクヤマ氏、無理に知る必要は無い。世の中知らなくてもいい事があるのだよ」
「そーそー、無理に知らなくていいから」
「そーです!そーです!リュウジ先輩を口説こうなんて100年早いですよ!顔を洗って出直して来てください!」
ユニ達に反撃されたセレスディナは何故か涙を流し始めた。
「ちくしょう!本気だったのに!あたしは本気だったのに!!」
「何を1人で騒いでんだ?傀儡化した俺がなにかしたのか?」
「うるせぇっ!お前はしゃべんな!こっち見んな!」
ゴンッ!
チエルが騒ぎ出したセレスディナにゲンコツをした。だが、ダメージが返ってきてしまったのでチエルも頭を抑え始めた。
「いったぁ!?なんです!?チエルも痛いんですけど!?」
「やめとけ、チエル。こいつの能力はダメージを返すんだ。格闘タイプの俺らじゃ不利だぞ?」
「っぶなぁっ、危うく切り刻む所だったわ」
「うむ。全てのダメージを返すとは……危険な能力だな。フクヤマ氏はそれを誰よりも早く気付き、ぼく達を守ってくれてたんだな。感謝するペコり」
セレスディナが引きつった顔で自らの取り抑えるチエルの手を掴み。
「あんたなんかもう嫌いだっ!大っ嫌いだ!ぶっ殺してやる!」
「何をそんなにキレてんだよ。あー、もう面倒くさっ!」
俺は疲れた様に言い放つと、セレスディナは吹っ切れた様な顔をし、こちらに指を向けて来た。
「やっぱりお前は生かしちゃおけない。計画なんかどーでもよくしてお前と駆け落ちしようとしたけどもういいっ!お前なんかもうどうにでもなれっ!」
なんだ!?この殺気は!?
「チエル!!早く口を塞げ!!」
「えっ……」
俺はチエルに口を塞がせるように指示したが、セレスディナが呟く方が早かった。
「『デス』!!」
────────────────────────
「久しぶり」
そこは、お馴染みの白い部屋。ふと目を開けた俺は、不貞腐れているエリスが見つめていた。
「あーっくそ!殺られたか……もぅ……」
「随分楽しそうな事してるねぇ、キミ。でも良かったじゃん、新しい相棒が出来て」
頬を膨らませるエリス。俺は頭をボリボリとかきながら。
「なんで怒ってんだよ?なんの話しをしてるんだ?」
「別に、怒ってないもん」
「怒ってるだろ、それより、なんで奴はキレ始めたんだ?全く覚えていないんだけど?」
俺は椅子に座ってエリスから事情を聞くと、顔をヒクヒクとさせながらエリスは説明してくれた。
「ざっくり説明すればキミはレジーナ教徒のダークプリーストに傀儡化されたの。だけど、君はポーションで正気に戻ったから彼女は怒ってキミをデスで殺したってこと」
「あっそうだったの?通りで記憶が一部ない訳だわ」
「ふんっ!なーにが『相棒を守れるのは相棒だけッスから!』だよ、そんなにあの人がいいならそっちに行けばいいさ!」
ぷいっとそっぽを向くエリス。俺は困った様子で言い放った。
「そんな傀儡化した俺に言われても……あの時はどーしようもなかったんだよ。アイツ頭いいし、なにぶん能力が厄介だろ?戦うにしたって見てた通りの結果。なんとかなかよし部の皆と協力してようやくここまで来たってのに、そんな事を言うのかよ……」
しゅんと落ち込む俺を見たエリスはクスクスと笑いだし、手招きした。
「あはははは!冗談だよ。今回ばっかりは頑張ったね。ちょっと気になる所もあるけど、大目に見て許してあげるよ。ほら、こっちおいで?」
「うっうん……」
エリスは俺を軽くハグしてくれた。俺も思わず腕を回して長い銀色の髪を撫でた。
「あれからどうなった?クロエや、チエル、ユニは無事?」
「激昂したチエルさんに思い切り殴られて2人一緒に気を失ってますよ。ユニさんはチエルさんを介抱して、クロエさんはキミの通信魔石でアクア先輩を呼んでいる所だね。大丈夫、みんな無事だよ?」
エリスの言葉に俺はホッと胸を撫で下ろした。って事はアクア達がここに来るまで時間がかかるという事だ。俺はエリスから離れると、エリスに変化が起きていた。エリスは顔だけをクリスに変えていたのだった。
「うおわっ!?お前!?」
「あはははは!キミはこっちが好みなんだねぇ!カズマさんはエリスの方が好み見たいだけど?」
可愛ええ……ちょっと待て、コレはチャンスじゃないか?ここには俺とエリスしかいない、今なら告白出来るんじゃねぇか!?
「なっなぁ、エリス?」
「ん?なぁに?」
エリスは首を傾げながら俺を向いた。その瞬間、心臓の鼓動が早くなるのが分かった。
「あ、あのさ……」
「うん、どーしたの?」
「俺、俺は……お前の事がっ!!」
《ちょっとリュウジ〜?私サムイドー帰りで疲れてるんですけどー?》
「あっ、先輩来たみたいだね。ほら、早く行きなよ」
こんなもんっすよ!
「あーうん。疲れてる時にごめんなー、お土産に高い酒買って帰るからよ」
久しぶりに相棒との会話もままならない状況になり、俺はため息を吐きながら上を見上げる。
《ほんとー!?流石リュウジさんねぇ!蘇生終わったから私は先に帰るわよー》
アクアの合図が来てしまった為、俺は慌ててセレスディナが言っていた事を尋ねてみた。
「なぁ、エリス。ネメシスにも聞きたいんだけど、アクアの後釜はどうなっている!?転生者が来ていないってホントか!?」
「え?うん、来てないよ?天使さんじゃそんな力は管轄外だからね。ほら、行った行った!あたしも後で行くから!」
サラッと雑な事言い出しやがったぞ!
「あーもうっ!後ででいいや!んじゃ、後でな!?」
俺は白い扉を体当たりして開き、意識を取り戻し始めた。
やっぱりセレスディナは可哀想なオチになっちゃいました。セレスディナは今後も登場しますので、安心して下さい。
新たな取得スキル……傀儡