その後、俺達はぶっころりーさん達のテレポートにより、あっという間に紅魔の里に辿り着く事が出来た。紅魔の里は山々に囲まれた町になっており、山は紅葉が始まっていた。里の入口でぶっころりーさんは振り向くと
「紅魔の里へようこそ、外の人達。めぐみんもゆんゆんも、よく帰って来たね!!。それじゃ俺達は哨戒任務に戻るから」
ぶっころりーさん達はそう言って俺達から距離を取る。そして、何かを唱えて忽然と姿を消した。
お?忍者見たいに消え……あっ、『ライト・オブ・リフレクション』で姿を隠してるだけか。
カズマとミツルギやアオイはカラクリが分からないのか、目をキラキラさせながら驚いていた。
「おおっ!かっこいい消え方したなっ!紅魔の里の特殊部隊かっ!?」
「カッコイイですね!ステキです!」
「それっぽく感じたな。魔王軍が苦戦する訳だ」
「そうですか。それを聞いて、きっとその辺で4人も喜んでますよ」
「「えっ!?」」
カズマ、ミツルギ、アオイが唖然としながら聞き返して来た。
「ハーレイ。さっきの4人はどこにいる?」
《ぽーん!マスターリュウジから15メートル先にいます》
すぐそこじゃん。
アクアが突然、無言で踏み出すと。
「「「「ッ!?」」」」
息を呑む様な音と共に、歩く音が聞こえた。それを聞いた俺はアクアの目線と距離を測って指を指した。
「そこかっ!?そこにいるんだな!?」
「「「「ッ!!!!」」」」
同時に、慌てて逃げて行く音がした。俺はそのままそれを指で追って行く。
「ほらほらほらほら!そこそこ!」
「やめてやれよ、可哀想になって来たよ」
「魔法を見破るリュウジは凄いと思うが、ちょっとは夢を見せてくれ」
「ちょっとガッカリしましたね……」
「あの人達やるわね。ステータスカンストしてる私でも追い付かなかったわ」
「肉体強化魔法でも使ってんだろ?俺も普段使ってるし」
めぐみんが淡々と説明していく。
「リュウジは鋭いですね。普段働きもしないニートにそんな体力ありませんからね。ドーピングしないと動けませんから」
聞き捨てならない言葉を言い放ち、カズマとミツルギの夢を更に砕く。
「ニート?紅魔の里の特殊部隊じゃないのか?哨戒任務があるって行ったじゃないか」
「そーだよめぐみんちゃん。いくらなんでも疑い過ぎじゃないのかい?」
「めぐみんさん嘘ですよね!?彼らは特殊部隊なんですよね!?」
全く信じないカズマ達の質問に、
「いーえ、紛れもないあの人達は仕事にあぶれた暇な人達ですよ。冒険者でもやれば王都やオーエドに行けば引っ張りだこでしょうに、里を出たがらず、親のスネをかじって生きてる人達です。暇を持て余し、近所の人にフラフラしていると見られない様、あーして勝手に特殊部隊と名乗って徘徊してるのですよ」
「聞きたくねぇ情報だったな」
「ニートであの戦闘力かよ」
「チートが手足をつけて歩いてる様なものじゃないか」
そんな感情を読み取ったゆんゆんが。
「紅魔族は大人になれば、全員が上級魔法が覚えられます。里の者の職業は、全員がアークウィザード。上級魔法を覚えたら、後は、ポイントが許す限り色んな魔法を習得していきます。それが常識なのに……」
そう言いながら、めぐみんをチラリと見た。めぐみんはと言うと、どこ吹く風とばかりに無視し、故郷の里をキョロキョロと見回している。
田舎町の様な雰囲気を出した紅魔の里は魔王軍と緊迫した様子でもなく、秋の訪れのせいか、稲刈りをしている者や、落葉焚きをしている者もいる。
あれ?魔王軍と交戦中じゃないの……?
「わぁー!これは立派なグリフォンの石像だべ!」
「確かに立派なグリフォンの石像だな」
「カッコイイですね!エルフの森にもありますが、手彫りですのでここまで立体的に出来ませんよ!?」
マヒル、ダクネス、アオイがそんなことを言って里の入り口前のグリフォンの石像をぺたぺた触り出す。
随分リアルな石像だな、まるで生きてる様だが……。
「それは里に迷い込んで来たグリフォンを、石化魔法で石に変えたんですよ。カッコイイので観光名所として残しておこうという話しになりまして。現在では待ち合わせ場所に使われてますね」
石化したグリフォンかよっ!!
俺はアクアと目が合うと……。
「もしかして同じ事考えてる?」
「偶然ね、同じ事を考えてたわ」
「石化を解除するには【金の針】が効果的。アクア持ってる?」
「持ってないわよ。この程度の状態異常なら私が治せるわよ」
「やめろ!お前ら!何をする気だ!?」
カズマとミツルギに取り押さえられた俺とアクアは、そのままカズマ達と共に手紙の事情を聞くべく、ゆんゆんの実家に向かう事にした。
その時……。
パキン!
突然、俺のレッドウォーリアの足甲の金具が取れてしまった。
「くおっ!?金具壊れた!!」
「あっ、大丈夫ですか?先に鎧直しましょうか?紅魔の里にも鍛冶屋がありますし」
「いいよいいよ、1人で行くから。ここからは別行動にしようぜ、次いでにめぐみんのローブも今のうち仕立てて貰うか?」
俺の言葉にめぐみんが言った。
「それは有難いですね。ローブは時間がかかりますから今私のサインとサイズをメモしますのでこの先にある服屋があるのでそこの店主に渡して下さい」
めぐみんが俺にメモを渡し、急遽別行動をとる事になった。ローブの注文と鎧の修理をする俺とゆんゆんの実家に向かう残りのメンバーと別れる形になった。
急に金具が壊れるなんてついてねぇなぁ……。
「えーっと、めぐみんが言う鍛冶屋は……お、あったあった!」
俺の目の前には小さい鍛冶屋があり、店の中には海賊の様に眼帯をしたおじさんが忙しそうに武器を生成していた。俺は店に入り、声をかけた。
「こんにちは〜」
「おうらっしゃい。おや?あんた、外の人かい?」
「ええ、仲間のめぐみんとゆんゆんの用事で来たんですけど。さっきこの鎧の金具が取れちゃいまして……自分で修理するので炉を貸して貰えませんか?」
「ほぉ、族長のところの変わり者の娘のゆんゆんと変わり者のひょいさぶろーのところの娘のめぐみんの仲間か!あの2人の仲間とはねぇ……貸しても良いが、客も久しぶりだからよ、出来れば売上に貢献してくれると助かるんだが……?勿論、腕は確かだぜ?俺だってアークウィザードのはしくれだ。魔力をふんだんに使い、普通の鍛冶屋じゃ扱えない程のモノだぜ?」
マジか、是非とも勉強したいな。
「んじゃ、是非とも見せてもらいたいので、最初にめぐみんのローブを注文しに行って来て良いですか?」
そう言うと、鍛冶屋の店主は。
「紅魔の里随一の服屋のちぇけらの店に行きてぇのか?ならこの先にあるぜ?先に注文してくればいい」
「はい、分かりました!行ってきます!ちょっと待ってて下さいね!」
俺はレッドウォーリアの足甲を置いてそのまま紅魔の里随一という服屋に向かって行った。古めかしい服のマークの看板が下がっており、ドアのガラス越しに、黒いローブを着た厳しい顔の店主が見えた。
俺は意を決して中に入る……。
「こ、こんにちは〜」
「いらっしゃい、外の人の様だが……?」
そんな事を尋ねながら、鋭い視線で俺を睨みつける。俺はめぐみんから渡されたメモを店主に見せた。
「実は、めぐみんから頼まれまして……」
メモを読んだ店主は突然、ローブに付いたマントを狭い店内で、器用にバサリと翻した。
「我が名はちぇけら!アークウィザードにして上級魔法を操る者。紅魔族随一の服屋の店主!」
何歳になっても紅魔族ってこれしなきゃダメなんだ……。
真剣な表情で名乗った服屋の店主が、満足そうに笑みを浮かべ。
「あらためていらっしゃい!いや、外の人間なんて久しぶりだよ!名乗り上げるなんていつ以来だろうか!おかげでスッキリしたよ」
スッキリするもんなの!?
「めぐみんのローブだろ?このタイプなら今染色が終わったばかりのやつがあるよ」
「そうなんですか、なら良かったです。同じやつを3つ下さい」
「3つも?めぐみんもブルジョアになったもんだなぁ」
違います、スペアのスペアです。
ローブはめぐみんの実家に配達すると言うので、お釣りとレシートを受け取った俺は再び鍛冶屋に戻った。
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「おやっさん。戻りました〜」
「おうよ、んじゃ早速修理しちまうか ん?あんちゃん、背中に何を背負ってんだ?」
鍛冶屋の店主は俺の背中の荷物を指差すと俺は答えた。
「あー、これはブラッドファングとか安楽少女の素材とかですね。ちょっと新しい鎧とか仲間に防具とか作ろうかと」
「ほう、ブラッドファングは興味があるな。どうだ?修理も兼ねて新しい鎧作って見ねぇか?」
「良いですね!ならさっさと修理しちゃいましょっ!俺も鍛冶スキルを習得してるんで」
紅魔の里の鍛冶屋の店主と意気投合した俺は店主の技術を習いながらレッドウォーリアの足甲を修理し始める。本職は技術は素晴らしく、溶接にムラがなく前より良くなっていた。
そして新作の鎧の作業に取り掛かろうとしたその時……。
《魔王軍警報、魔王軍警報。手の空いている者は、里の入り口グリフォン像前に集合。敵の数は1000匹程度と見られます》
カンカンと鐘の警鐘と共に、里に流れるアナウンス。
せっ、1000匹!?
「おっと、もうそんな時間か、あんちゃん。悪ぃがちょっと待っててくれや」
「いやそんな昼休憩に入るみたいな感じで言われても……俺も手伝いますよ!これでも冒険者ですから」
「そうかい?なら俺と一緒に行くかい?いい勉強になるだろうよ」
俺はそのまま鍛冶屋のおじさん共に、グリフォン像前に向かって行くと、先程の自称特殊部隊の4人や老若男女の紅魔族が集まっていた。そして、魔王軍の元へ掛けていくと……。
それはそれは凄かった。
「うおぉぉりやっ!!」
俺がマイキーキックで1匹を蹴り倒している時に起こった。
「うわあああっ!」
「シルビア様!鋼の、鋼のリュウジと紅魔族が手を組んでおります!撤退を!貴方様だけでも撤退を!」
「畜生!せめて鋼のリュウジだけでも殺して……!!」
「だから紅魔の里に総攻撃をかけるのは反対したんだ!、俺は行きたくなかったのに……!!」
俺が1匹倒している間に紅魔族の人々は100匹を一気に倒していた。1000を超える相手に対して、こちらは俺を含めて50人弱ほど。その僅かな人数で。
「『ライトニング・ストライク』!」
「『エナジー・イグニッション』!」
「『フリーズガスト』!」
魔王軍の先鋒に対して、情け容赦なく上級魔法の雨あられ。俺はまったく活躍する事が出来なかった。悪魔もどきにローキックを繰り出した時にふと、崖の上を見てみると、カズマ達が驚きながら戦闘を見物していた。
恐らく、さっきの警鐘を聞いて見に来たんだろうな。あれはゆんゆんの知り合いかな?なんか嬉しそうにカズマ達に説明しているけど?
「死ねぇっ!鋼のリュウジ!」
「やべっ、よそ見してた!!」
悪魔もどきの1匹が俺の背中を狙って切りかかろうとしていた。
「『カースド・ライトニング』!!」
振り向いた瞬間。悪魔もどきの頭に黒い稲妻が突き抜けた。
今のはカースド・ライトニング!?
「やれやれ、戦闘中によそ見をするなんて。随分余裕だねぇ?」
俺から少し離れた場所には、ゆんゆんやめぐみんと同じくらいで髪が長くスラリとした体に豊満な胸を強調した紅魔族の女の子が左手をかざしていた。その子は何故か、変な眼帯を付けていた。
あれ、見えにくくないのかな……。
「君は……?」
俺は直ぐに構え直し、その紅魔族の女の子と背中を合わせながら悪魔もどき達と戦闘を続けながら話し始めた。
「話は後だよ、外の人。手を貸してくれるかい?」
「あっうん。さっきのカースド・ライトニングは凄いね。俺も君と同じカースド・ライトニングを使うけど、そこまで強力なのは出せないよ」
「おや?奇遇だねぇ。君とは気が合いそうだよ」
謎の紅魔族の女の子と話していると、魔王軍の群れのど真ん中が割れ、赤いドレスを身に纏い、肌が褐色した美女が前に出てきた。
見るからに……魔王軍幹部か?
「あんた達!アタシが壁になってあげるから後に続きなさいな!上級魔法は次弾を放つまでに時間がかかるわ!。その隙に!!ちっ、この先に【魔術師殺し】があるっていうのに!!」
赤いドレスを着た魔王軍幹部らしき美女は紅魔族の攻撃を受けながら部下達を逃がし、自らも撤退して行った。
────────────────────────
魔王軍を退け、倒した魔王軍の兵隊を片付けていると、先程の眼帯をした紅魔族の女の子がまた声をかけて来た。
「おや?まだここにいたのかい?」
「先程は助かりました。えーっと、あなたは?」
俺が眼帯をした紅魔族の女の子に尋ねると……。
「我が名はあるえ。紅魔族随一の発育にして、やがて作家を目指す者!」
何回も聞いてたら慣れてきたな、確かに発育は凄いけど……。ちょっと面白そうだし、俺も返してみるか。
俺は魔王の時にやっていた構え方しながらあるえに名乗り返した。
「我が名はフクヤマリュウジ。冒険者随一の実力にして、やがて最強の冒険者を目指すもの!」
「っ!?」
あるえは返されてびっくりしたのか、目を赤くキラキラさせながら少し喜んでいた。
「まさか外の人がそんな風に返してくれるなんてね。気に入ったよ」
「あはは……よろしくね?あるえちゃん」
「あるえでいいよ。私もリュウジと呼ばせて貰うよ?」
「うん、いいよ?……ん?」
あるえ……あるえ……なんか聞いたような気が……まいっか。
「あー、疲れた。めぐみんやゆんゆん達と合流しなきゃなぁ〜」
俺は体をうーんと背伸びさせながら呟くと、あるえが耳をピクっとさせた。
「めぐみん?ゆんゆん?君は2人の仲間なのかい?」
「えっ?あー、同じパーティーではないけど。今日紅魔の里に着いたばかりなんだよね。めぐみんのローブを注文しに来たり、ゆんゆんの手紙を読んできたりして」
「ゆんゆんの手紙?あー、私が書いた『紅魔族英雄伝』の事かい?」
「えっ?なんでそれ……ああっ!!」
俺はゆんゆんの手紙を思い出した。
「もしかして、ゆんゆんのお父さんがこの世にいないだろうってやつも!?」
「それは紅魔族がよく使う挨拶だよ。まさか、本気にしてたのかい?」
クスクスと笑うあるえを見た瞬間、俺はあるえの左目に付けてた眼帯を引っ張り始めた。
「ああっ!やめて!引っ張らないでくれ!!やめ、やめろぉぉっ!」
「キミのおかげで散々な目にあったんだぞ!?このっ!」
「分かった!謝る!謝るからゆっくり、ゆっくり離してくれ!左目のふ、封印が封印が解けてしまう!!」
なにっ!?封印だと!?
俺はゆっくり手を離してあるえの話を聞いた。
「えっ?なに!?その左目の眼帯の奥に何が封印されてんの!?」
「えっ?冗談に決まっているだろ?単にお洒落で付けているだけさ」
……。
俺は再び左目の眼帯を引っ張り始めた。
「ふんっ!」
「やぁぁっ!やめ、やめろぉぉっ!すまない、悪かった!ちょっとからかっただからゆっくり、ゆっくり!!」
俺はそのままバチンと眼帯を離した。あるえは激痛に悶える。
「イッタイメガァァァ!!」
「まったく。まともな奴がいねぇのか!!この里には!!」
「それは心外だね……。私はこれでも常識人だよ?」
「どの口が言ってんだよ。まったく!それに、これからは眼帯を付けるならこれくらいしなよ?『魔眼』!!」
俺は魔眼を発動させて左目を爬虫類の目にさせた。それを見た瞬間、あるえはものすごく興味を示したのか、グイグイ近寄って来た。
「なっ!?なんだいそれは!?凄いじゃないか!!君は外から来た人なのにも関わらず、紅魔族の琴線を熟知してるじゃないか!是非ともその眼を取材させて欲しいっ!」
「近いっ!近いっ!クールな感じだと思ったのに急にテンション上げてくるね!?」
「小説のネタになりそうだからね」
「小説のネタねぇ……あっ!やべ!鍛冶屋のおじさんと約束があるんだった!鍛冶屋に戻らなきゃ!ごめんね!」
俺はそそくさと鍛冶屋の元に駆けていくのをあるえはボソリと呟きながら見送った。
「ふーん。めぐみんとゆんゆんは面白い人と仲良くしているねぇ……」
あるえは妖艶な笑みを浮かべていた。