その後、商業区でカモネギを見付けた俺は店にあるカモネギを買い占め、ご機嫌であるえの家にたどり着いた。俺は両手に持っていた食材をテーブルに置いた。
「いやー、まさかあんなに高いとは思わなかったよ」
「だから言っただろう?、これは腕によりをかけて作らないとね」
「俺も手伝うよ」
「ありがとう、ならカモネギの羽根をむしってくれるかい?」
「あいよ〜」
俺は買ってきたカモネギを外でむしり始める。カモネギの見た目はやはり日本で見たポケ○ンのカモネギと同じような見た目をしており、ぬいぐるみの様な可愛さをしていた。俺は『ごめんなさい』と連呼しながら羽根をむしり続けた。
「終わったかい?」
「あ、うん。終わったよ」
「ん?なんで泣いているの?」
おたまを片手にエプロン姿で現れたあるえは涙を流している俺は涙を拭いながらあるえに羽根をむしったカモネギを手渡した。手渡した後は可愛い姿とは打って変わってとても良い香りを出した鴨鍋に変わっていた。
「さあ、頂こうか」
「うん。可愛い命をありがたくいただきます」
「食べずらいからやめておくれよ……」
カモネギの肉を食べてみると、しっかりとした味がしていてとても美味かった。鍋を堪能しながら俺はあるえにスキルポイントが手に入る方法を聞いて見た。
「ねぇあるえ?レベルアップする方法の他に、スキルポイントを稼ぐ方法とか無いかな?」
「スキルポイントかい?そうだねぇ……。【スキルアップポーション】くらいかな?」
「スキルアップポーション?そんなのあるの?」
「ああ、スキルアップポーションを飲むとポイント1つ上がるんだよ。私達は授業で貰ってたりしていたからね」
「へぇ〜。聖テレサ女学院では貰わなかったからなぁ」
「王都の学校は魔法の授業はあまりないからさ」
言われてみれば、そうかも……。
「そのスキルアップポーションって高いの?」
「うん、一般で買うと高いよ」
「500本くらいないかなぁ……?」
「それは厳しいね、それならレベルアップした方が効率がいいよ」
やっぱり厳しいかぁ、ここはカズマに久しぶりにレベルドレインして貰った方が効率的かな。
俺は箸を置いてあるえに尋ねる。
「ならもし、レベル1だったらどーする?」
「レベル1……なら、【養殖】がオススメだよ」
「また変な言葉が出て来たな」
「この紅魔の里には、紅魔族がモンスターの首から下を石化魔法で固めて、とどめの一撃のみを養殖対象者に取らせる事で経験値を稼ぐというやり方をしているんだよ」
「マジ……?」
「マジだよ?」
コレはいける。
「なら、明日その養殖をさせて貰えると助かるんだけどいい?」
「良いけど、どうしてそんなにスキルポイントにこだわるんだい?」
「実はね?とある冒険者に『竜人化』っていうスキルを教わったんだけど、スキルポイントがえらく高くてさ……」
スキルの名前を聞いた途端あるえは、首を傾げながら本棚を漁り始めた。本を取り出し、ベラベラとめくりながら呟く。
「竜人化……竜人化……聞いた事もないし、本にも記されてないよ」
「あー……多分勇者候補って呼ばれてる人のスキルだったからじゃない?ほら、たまにいるでしょ?俺みたいな変な名前の人達」
「なるほど、それなら記されてる訳がないだろうね」
あっぶねぇ……なんとか誤魔化せたな。
────────────────────────
食事を終えた俺達は、混浴温泉という名のただの銭湯に行き、風呂上がりにぶどう酒を飲みながら様々な魔術書を読んでいた。
「へぇ〜この世界って10代でも酒を飲んでいいんだ」
「10代と言っても18歳からだよ?」
「俺がいた国では20歳からだったんだよね」
「そうなんだ」
あるえは酔って来たのか、頬を赤らめながら立ち上がって奥の部屋に向かって行った。それに気付かずに『ニートでも簡単!魔法の作り方』という本を読んでおり、本を読みながら……。
「ねぇ、あるえ?この『ニートでも簡単!魔法の作り方』の方法本当に……あれ?あるえ?」
気付いた頃にはリビングには居らず、俺は奥の部屋に顔を向けた。
「あるえー?寝ちゃったの〜?」
「…………」
返事がない、眠ったのだろうか?
俺はあるえの部屋をノックして見た。
「あるえ?飲み過ぎたのか?」
「起きて……るよ……」
ドアの向こうから返事が返ってきた。安心した俺はあるえに返す。
「大丈夫?飲み過ぎたなら水持ってこうか?」
「すまないね……お願いするよ」
「わかった、ちょっと待ってて」
俺はキッチンに行ってコップに水をくんで明かりの消えているあるえの部屋に入って行った。あるえはナイトウェアに着替えており、月明かりに照らされたベットに横たわっていた。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ、すまないね……ちょっとはしゃぎ過ぎてしまったよ」
「そうなの?起きれる?」
「ちょっと頭が痛いね、悪いが肩を貸してくれるかい?」
「あっうん」
あるえを起こし、そのまま俺の体に寄りかかせた。まだ本調子じゃないのだろうか、あるえはぐったりとしている。
「はい、水」
「ありがとう……ゴクゴク」
水を飲んだあるえは俯きながら……。
「リュウジは優しいね、さぞかしモテるだろう?」
「えっ?そんな事ないよ……」
「謙虚なんだね……彼女とかは……いるのかい?」
あるえの質問に俺はドキッとした。
「なっ、なんで?」
「なんか……君といると楽しくてね……」
「楽しい……?」
「うん……」
「彼女はいないよ?。ってかまだ知り合って1日ちょっとだよ?決めつけちゃダメだよ」
俺がそう言うと、あるえは上目遣いで……。
「恋をするのに日にちなんて……関係ないと思うよ?」
関係ない……?
俺はその言葉を聞いて、顔を逸らした。
「なら聞くけど……俺が、俺がもし、魔王だったらどうする?」
「え?魔王?」
「うん。人々を苦しめて今もこうして紅魔の里に攻め込んで来てる奴らの親玉だったらどうする?それでも同じ事を言える?」
あるえにそう尋ねると、あるえは……俺をグイッと引っ張った。それにより、俺が押し倒したような体勢になってしまう。そしてあるえは口を開いた。
「たとえ君がなんであろうと……この気持ちは変わらないよ……」
「うっ、嘘だ、またからかってるんだろ?」
「嘘じゃないよ……ならこのまま2人で大人になってみるかい?」
おい、マシがこの子。ここまで来たら俺だって歯止めが効かなくなるぞ!?
「……本気で……言ってんの?」
「私はいつも本気だよ……」
「いいんだな……?」
俺はそのままナイトウェアを脱がしにかかる。その間、あるえは抵抗せずに身を委ねている。
良いのか?ホントに良いのか!?俺はクリスが好きなんだろ!?童貞をこのままあるえに渡していいのか!?
俺は一旦脱がすのを止めて、満月を見上げた。
そうだ、これは予行練習だ。本番はクリスなんだ、本番でヘタこかない様にここで経験するのも……良いよね……。
覚悟を決め、キスをする為にあるえの顔に顔を近付けた。あるえは何をしようとしてるのか悟ったのか、目を瞑った。キスをしようとしたその時。
《魔王軍襲来!魔王軍襲来!!既に魔王軍の一部が、里の内部に侵入した模様!!》
アナウンスが聞こえた瞬間、あるえは目をパチッと開けた。
「魔王軍が来たようだね、さっ、そこを退けてくれないか?」
「えっ、えっ!?何その切り替え!?」
「恋愛小説を考えてたら君のおかげでいいネタが浮かんだよ」
「ええ……え、ええ……?さっきの言葉は嘘なの!?」
「嘘ではないけど、演技さ。着替えるから部屋から出てくれるかい?」
「……はい、すんません」
やり切れない気持ちを抑えながら俺はレッドウォーリアを装備して外に出た。
「ハーレイ、魔王軍は今どこにいる?」
《ぽーん!感知魔法によると、魔王軍はめぐみん宅付近にいます》
すぐ近くだな。
「あるえ、俺が時間稼ぎしてくるから、あるえは避難を頼む」
俺はそう言い残し、走り去る。あるえは……制服姿でベットに座って胸を抑えていた。
────────────────────────
めぐみんの家にたどり着くと、カズマがシルビアに向かってちゅんちゅん丸を振り回して騒いでいた。
「あら、こんな所に居たのね?呂布奉───」
「オゥコラッ、しばき回されてーのか!盛り上がってたとこで邪魔しやがって、お前なんだコラ!今何時だと思ってんだコラ、人様の迷惑考えろボケが!!」
なんだなんだ!?あっ、もしかしてカズマも……。
シルビアは俺に気付いたのか、俺に顔を向ける。
「あら、鋼のリュウジも」
「てめぇ何時だと思ってんだよバカヤロウコノヤロウ、てめぇの顔切り刻んで魚の餌にしちまうぞゴラァッ!!」
シルビアに喋らせる隙を与えず2人がかりで魔王軍幹部に向かって怒鳴り散らした。
「ご、ごめんなさい……」
荒ぶる男2人に一瞬怯んだシルビアは、すぐに我に返り言ってくる。
「って、ちょっとあんた達、このアタシに文句言うなんていい度胸ね。そこにいるお嬢ちゃん」
ズドンッ!!
俺は一瞬でシルビアの間合いに入り、渾身の右ストレートをお見舞する。
「ぐぶぇっ!?」
「じゃかあしいわボケが、俺は魔王軍の女だろうと殺すぞゴラァ!!」
「あ、あの……リュウジ……?」
「なんじゃいっ!?」
目をギラギラさせた俺は後ろを振り返ると。そこには、カズマの隣に杖を持ったパジャマ姿のめぐみんがいた。
おっと、これはもしかして……取り込み中でしたか!?
殴られたシルビアは口から血を流し、拭いながら言ってくる。
「凄まじいパンチね……あなた気に入ったわ……思わずつまみ食いしたくなるわ!」
「おいおい、素敵な口説き文句だなクソビッチ。てめぇ見てぇな女はお断りだよ」
バチバチと右手に雷を纏わせていると。
「よっしゃ!俺だって負けてられねぇっ!美女だからって手加減してもらえると思うなよ!俺だって相手がクソ女ならドロップキックだってかませる男だぁぁぁっ!!」
カズマはちゅんちゅん丸を振り上げてシルビアに切りかかろうとするが、片手で止められてしまった。シルビアは不思議そうな表情を浮かべて。
「これが呂布奉先の実力なのかしら?なんだか拍子抜けね」
「サトウカズマです」
「……は?」
めぐみんが突然カズマの本名を言い出した。
「サトウカズマと言いました。呂布奉先だとかよく分からない名前ではありません」
「アハハハッ!!あなた、偽名を使ってたのね?なぜ偽名を使ったのか理由を教えてくれないかしら?」
バラされて観念したのか、カズマはシルビアに言い放つ。
「俺の本当の名前は佐藤和真だよ。偽名を使った理由は、お前らに名前を知られたら、指名手配されると思ったからだよ」
「アハッ!!アハハハハハッ!!あなたっては最高ねっ!鋼のリュウジより気に入ったわ!」
何故気に入ったのか分からないが、シルビアは笑い出す。俺は魔力を高めて右手をシルビアに向けた。
「うるせぇぞクソビッチ。1日に何度も来やがって、今度こそぶち殺してやるライトニン……」
唱えようとした瞬間。シルビアはカズマを引き寄せて人質にし始めた。
「いやねぇ、乱暴な男はモテないわよ?」
「人質をとる奴に言われたくねぇな」
「なんとでも言いなさいな」
シルビアはそう言い放つと、ちゅんちゅん丸を投げ捨て、カズマを胸の中へ抱きしめる。
「この男は人質として貰っていくわ。鋼のリュウジとそこの紅魔族のお嬢ちゃんは優しいのね。なんだかんだ言って魔法撃たないんですもの」
「そんな事ねぇさ、カズマ諸共」
「待って下さいっ!撃ってはいけませんっ!」
めぐみんが右手を両手で抑え始める。
「めぐみん、離せっ!」
「撃たないで下さいっ!カズマに当たってしまいます!」
「当たったってちょっとビリッとするだけだよっ!」
「そーですけど、ダメですっ!」
めぐみんと争っていると……。
「ねぇ!ちょっとうるさいんですけどぉ!」
今までの騒ぎでアクアが起きてきたらしく、玄関口から顔を出した。
「アクア!魔王軍がカチコミに来やがった!めぐみんの親御さん達とダクネスとマヒルを起こして来いっ!」
「なんですって!?分かったわ!!」
そう言ってアクアが引っ込んで行った。
「さて、もうじき紅魔族が集まってくるぞ?逃げきれんのか?」
「ええ、逃げ切れるわよ?ねぇ?」
シルビアはカズマの頭を撫でる。
「カッカズマ……大丈夫……そうですね。というか妙に幸せそうな顔をしてますね」
「なっ?だから言ったろ?」
「そうですね、リュウジ、やっちゃって下さい」
「よしっ、許可が出た。セイクリッド・ライトニング……」
「ねぇっ!ダクネスを起こしてた奥さんに、すぐ来てくださいって言ってきたわよ!」
絶妙なタイミングで玄関口をバンッと開けてアクアも参戦して来た。
「何よこいつ、なんか悪魔っぽいわね!逃がさないわよっ!、胸に顔を埋めて嬉しそうな顔をしてるのは……ウチの大事な……大事な……。ねぇ、カズマ!私とカズマってどんな関係なの!?こんな時、どんな決めゼリフを言えばいいの!?」
今言うとこ!?
「そっそういうのは、後にしてくれないか?逃げちゃうから」
「ダメよ!こういうのはちゃんとハッキリしておかなきゃ!!ねぇ、カズマ、どうなの!?」
「…………」
その肝心な男は……。
「ちょっとボウヤ、そんなに熱い息を吐き付けないでよ、体が火照っちゃうでしょ?いい子にしてれば後でご褒美あげるから」
コイツ!!
セイクリッド・ライトニングブレアを放とうとした瞬間。
「『セイクリッド・エクソシズム』!!」
よそ見をしていたシルビアに向け、不意打ちのアクアの魔法が炸裂した。その声と同時にカズマとシルビアの真下から青白い光の柱が迸る。
「ッ!?ああああっ!!」
「チャンス!! オラァッ!!」
シルビアがカズマを手離した瞬間、俺はガルーダ直伝のタイキックをクリーンヒットさせてカズマから遠ざけた。
「ぐあっ!?」
アクアの魔法を受け、遠ざけられたシルビアは赤いドレスをボロボロにさせていた。
「やってくれたわね……。下級悪魔の皮でこしらえたドレスが台無しじゃないの……!!でも残念ね、アタシは純粋の悪魔じゃないわ。打撃も魔法も痛かったけど、致命傷にはならないわ」
半裸のシルビアは叫び出した。
「我が名はシルビア!強化モンスター開発局局長にして、自らの体に合成と改造を繰り返して来た者!そう、アタシはグロウキメラのシルビアよ!さぁ、ボウヤ、もう一度1つになりましょ?」
名乗りと同時にシルビアは触手の様な物を出してカズマを拘束しようとしていた。カズマは逃げると思ったのだが、カズマは何故か身を任せるように手を広げ、そのままシルビアに拘束された。
「カズマ!?……カズマを返し……今なんか自ら行きませんでした?」
「うん、俺もそう見えたんだけど……?」
「ま、まさか……カズマ?ワザとでは無いですよね?」
「違うよ〜?」
捕まったカズマはシルビアの胸に挟まりながらキッパリ答える。カズマとシルビアの身長差がすごく、カズマがブランとぶら下がった状態になっていた。カズマは妙な安心感に満ちた顔をしている。俺やめぐみんが冷めた視線を送っていると……。
「すまないっ!遅れてしまった!」
玄関から鎧を外したラフな格好をしたダクネスが、荒い息で現れた。薄手の黒シャツにタイトスカート姿、手には呪われた聖剣を持っていた。よほど慌てていたのか、寝癖が付いていた。
「魔王軍幹部!この家の者とウチのランサーが、既に他の紅魔族を呼びに行っている。援軍が来るのも時間の問題だろう。そこで貴様の胸に後頭部を埋め、幸せそうにしている男を置いて立ち去るがいいっ!どうしても人質が必要だというなら私が、私がその男の代わりになるからっ!頼むっ!カズマの代わりにこの私を人質にしてくれっ!」
「うん、うん、最後の方無かったらとってもかっこよかったよ?」
「リュウジ、ダクネスはもう普段からこんな感じなので気にしないで下さい」
「あっうん……そう、だな……」
ダクネスの要望も虚しく、シルビアが楽しそうに笑みを浮かべる。
「あらあら、随分と罪作りなボウヤだこと!あなた、良い人が2人もいるの?でもダメよ?アタシはこの子が気に入っちゃったの」
そう言いながらシルビアはカズマの頭を撫で回す。
「ねぇ?なんだか知らないけど、カズマが敵と仲良くなってるんですけど。頭撫で回されてるんですけど」
「知らないよ、アイツが勝手に両手広げて捕まったんだよ」
「はい。アイツ助ける価値ありますかね?」
「無さそうだよね?、カズマ諸共攻撃しても良くない?」
「そうね、ほとぼり冷めたら蘇生すればいいんですものね」
呆れた顔をしながら俺達は攻撃を仕掛けようとすると、ダクネスが。
「まっまて!気持ちは分かるが今はやめとけ!カズマ、今助けてやるから大人しく」
「お構いなく」
…………………。
「「「「「えっ」」」」」
ダクネスへの即答に、その場の5人が思わずハモった。