カズマはソファーに横たわる様に、シルビアの豊かな胸にゆったりと沈め。
「聞こえなかったか?お構いなくと言ったんです。おい、お前ら、特にリュウジ。お前は俺を手助けする為に来たんだよな?最近お前レベルが上がって調子に乗ってるんじゃないのか?手助けしに来た奴がなんで強くなってるんだよ。本来なら俺を強くするんだろ?ええ?聖テレサ女学院に行ってチヤホヤされてよ、調子に乗ってるんじゃないですか!?どうする?このシルビアさんはな、俺の事を気に入ったんだってよ。このまま魔王軍に寝返っちゃおうかなぁーって思うとこだよ?良いのか?俺が寝返ったらお前が困るんじゃないのか?謝って。カズマくんを放置してごめんなさいって謝って!めぐみんなんかはさっき、告白すらしてくれたんだぞ?」
えっ?
俺はめぐみんの方を見ると、ダクネスも同じく事を思ったのか、反対側からめぐみんを見ていた。アクアに関してはなんの事やらと首を傾げる。すると、めぐみんは……。
「今そんな話しは良いですから!とにかく、今は命に賭けても必ずカズマを取り返しますから。それが、例え刺し違えてでも。それが私が今までカズマに助けて貰った事への恩返しです!」
そして、めぐみんは声のトーンを急に落として、ボソボソと、ほんのりと頬を赤くしながら。
「……そして、先ほど言っていた……。その、カズマ……。その……。私と子供を作って、皆で一緒に幸せにって、”あの話”をじっくりと……」
あの話!?どんな話!?
ダクネスと俺は動揺しながらカズマに顔を向けてしばし呆然とし。
「お……おいカズマ。悪い冗談はよせ」
「確かに色々忙しくて扱いが雑だったな、うん、今度からはちゃんとサポートするから、なっ?」
「誠意を見せろよ!今更何!?金や物で釣ろうとしてるんだろ!?、ちゃんと誠意を見せろよ!お前ら良く見ろよこの状態を。魔王さんとこのシルビア嬢は、俺にたわわな実りでアピールしてんだぞ。ダクネス!お前の取り柄なんだ?言ってみろ!ほら、早く言ってみろ!」
カズマはダクネスに不満を全てぶつける。ダクネスが怯みながらも不安そうな顔でオズオズと。
「えっ、えっーっと……ぼ、防御力?」
「違うでしょ!?あなたの取り柄はその無駄に男を誘う、いやらしい体でしょ!?何をすっとぼけた事を言ってカマトトぶってるんですか!?」
「ねぇ、あの男はもうダメよ。変な事を口走るし、このまま魔王軍にあげちゃいましょうよ」
「ダ、ダメですよ、あんなんでもイザという時には頼りになるんですから」
「ちょっとめぐみん、さっきの話って何を話したの?」
「今その話は良いですから!」
カズマの言葉を聞いた俺達はヒソヒソと相談し始める。ダクネスはダクネスで勝手に恥ずかしそうに自分の体を手で隠していた。
「わ、私はべ、別に誘ってなんか……!!」
今にも泣きそうになっているダクネスに。
「誘ってるでしょ!?今夜の俺はなぁっ!幸運が最高潮に高まってんだよ!恐らくこの先ないくらい一番のモテ期が来てるの!ほら謝って!俺がホイホイシルビアさんに付いて行かない様に、ちゃんと謝って!」
荒ぶるカズマがダクネスを泣かせていると、シルビアが、カズマの頭を撫で始める。
「あなたって本当にいいわぁ……。アタシの見込んだ通りよ!でも、あんまり女の子を虐めちゃダメよ?もう少しだけ、女心ってものを分かってあげないとね?」
その言葉にダクネスは、シルビアを睨み付け。
「魔族のクセに、随分と人間の女心が分かるんだな」
「やれやれ、魔性の女ってやつか?」
と、呪われた聖剣を構えて挑発するダクネスと、俺がファイテングポーズを構えると、シルビアが何を当たり前の事をばかりに。
「あら、そりゃもちろん分かるわよ。女心も男心も」
ほう?まぁ見た目が見た目だ、色気を使って今まで冒険者を葬って来たんだろうな。
そう思った矢先、カズマの頭を撫でながら。
「だってアタシ、半分は男ですもの」
……ん?
「………今なんて?」
俺とカズマが理解するのに数秒かかった。カズマに関しては、恐る恐る振り向いて滝のように汗を流し始める。
「えーっと……ハ、ハーレイ?奴の性別は?」
《ぽーん!魔王軍幹部シルビアの性別は『男性』です》
holy shit!!
「あら?ボウヤ達、聞こえなかった?アタシ、キメラだから」
「つー事は……突貫工事はしてないと?」
「ええ、してないわよ?するつもりもないけど」
「カズマ?そ、その、気をしっかり持って下さいね?」
「そ、そうだ、落ち着け、な?やんわり言うけど、よく言うだろ?片耳にピアスは……その……」
「でも、あなた本当にいいわぁ……こうして撫でているだけで、こう、胸も下半身もキュンキュン来ちゃうわ」
シルビアは頬を赤らめながら腰を振ってカズマを揺すり始める。カズマはようやく理解出来たのか、シルビアに。
「シルビアさんシルビアさん。お、俺のケ、ケツになんか当たってるんですが?」
「うふっ……当ててんのよ」
シルビアが恥ずかしそうに言った途端、カズマが失神した。
「あら?気を失ったみたいね、丁度いいわ。このまま退散させてもらうわ」
「おい、このまま逃がすと思うのか?」
「そうです、退散するならカズマを離してくれますか?」
「そうよ!返しなさいよっ!」
「逃がす訳にはいかんっ!」
「あ〜ら?良いの?それ以上近付くと、このボロ屋燃やすわよ?」
「上等だよ、やってみ」
「待って下さい!中にはこめっこがいるんです!」
めぐみんの妹か、ちっ……。
俺達が動かないでいると、シルビアはジリジリと後退りしながら逃げて行った。
「あの野郎……ぶっ殺してやる!」
「おい!後を追うぞ!」
「行きましょうっ!」
「カズマさん、心に傷を負ってなければいいけど!」
俺達はカズマを助けるべく、シルビアの後を追った。
────────────────────────
その後、マヒルや紅魔族を集めてシルビアの後を追ってやってきた所は、『謎の巨大施設』という観光名所だった。施設の中に入ると、地下格納庫の様なコンクリートで作られており、その先には、解放されたカズマが扉の前に立っていた。
「カズマ!色んな意味で無事かっ!?」
「無事でしたかっ!?シルビアはどこに!?」
「おー、無事だぞ。シルビアなら俺の華麗な機転により、この中に閉じ込めてやった。中からは開けられないみたいだし、このまま放置しておけば大人しくなるんじゃないか?」
「閉じ込めたんだか!?」
「ま、まぁ、流石に中にある『魔術師殺し』という兵器は動かせないでしょう。起動方法は紅魔族の誰も分かりませんでしたしね。それにしてもシルビアは良くここの封印が解けましたね」
カズマチームが全員揃ってワイワイ騒いでいる中、俺は辺りを見渡すと……。日本語と隠しコマンド的なものが書かれたパネルを見つける。
これは……カズマさん、やっちまった?
カズマをチラッと見ると、カズマと目が合った。合った瞬間、カズマは直ぐに目線をズラす。カズマを褒めたたえる中、アクアが言った。
「ねぇカズマ、ここって危ない兵器が保管された所じゃなかったの?そんな所にオカマを閉じ込めちゃって大丈夫なの?」
アクアの言葉に紅魔族の人達が。
「なーに、俺達すら使い方が分からなかった兵器だ、シルビアにそれが出来るはずないさ!」
「ああ、もしシルビアが兵器を起動出来たなら、鼻からスパゲティ食べてやるよ!」
「さーて。帰って一杯やるかぁっ!」
「言っちゃったよ、この人ら言っちゃいけない事を言っちゃったよ」
「ワザとやってんのか?フラグ立てなきゃ気が済まないのか?」
すると……。
「なぁ、地面揺れてねぇだかっ!?」
「む?、確かに……揺れているな」
《ぽーん!地下から巨大物体接近中です!》
ハーレイが叫ぶ中カズマが。
「おいっ!何かヤバいぞ!」
「この流れはアレだよなぁ……」
「ちょっとどうしたのよカズマとリュウジ。せっかく魔王軍幹部を倒したのよ?ねぇねぇ、今回はカズマが1人で倒したもんだけど、私達パーティーの総取りよね?」
浮かれるアクアを引っ張って俺達は慌てて外に逃げ出した。紅魔族の人達はいつの間にかテレポートで外に避難していた。外に逃げ出した途端、地面が盛り上がり、辺りに土砂が飛び散った。土煙が舞う中現れたのは……。
「アハハハハッ!やってくれたわねサトウカズマ!アタシの本当の狙いはこの兵器だったのよ!持ち出すと思った?アタシの名はシルビア!兵器だろうがなんだろうが、身体に取り込んで一体化する力を持つグロウキメラのシルビアよっ!」
下半身を巨大なメタリックカラーの蛇の様な身体にさせ、勝ち誇ったシルビアが現れた。
おいおい……なんてデカさだよ……。
「しまった!『魔術師殺し』が乗っ取られたぞ!」
紅魔族の悲鳴が上がり始める。
「あれはヤバいべ!!」
「あわわわ、ヤバいですカズマ!あれはかなりヤバいです!逃げましょう!」
さっきまでの威勢はどこへやら、青い顔のマヒルとめぐみんが2人がかりでカズマの袖を引っ張り始める。
「落ち着けっ!俺達には紅魔族の人達が───」
「おいまさかの『魔術師殺し』だ!」
「里を捨てよう!これはもうダメだ!家に行って鼻でスパゲティを食べようっ!」
「『テレポート』!!」
蜘蛛の子散らす様に逃げやがった。
「さっきから魔術師殺し魔術師殺しってなんだよ!」
「めぐみん、アレってやばいのか!?アレが例の『世界を滅ぼしかねない兵器』ってヤツか!?」
「分かりません!けど、その可能性はあるかと思いますっ!」
魔術師殺しと合体したシルビアと対峙していると、ミツルギ達がやって来た。シルビアを見た途端、ミツルギは騒ぎ立てる。
「なっなんだアレは!?」
「あっアレは!?」
「ゆんゆん、アレはなんなの!?」
ミツルギとアオイがゆんゆんに聞くと、ゆんゆんが。
「魔法が効かないという特性を持つ、私達紅魔族の天敵、対魔法使い用の兵器です!」
「ホントかゆんゆん!?」
「はいっ!けど、ここに封印してたのになんで!?」
カズマを見ると、いたたまれない顔をしていた。俺達は体制を整える為に、一旦逃げる事にした。
────────────────────────
カップルに御用達という魔人の丘に避難してきた俺達は、燃え盛る紅魔の里を見下ろしていた。
「好き勝手しやがって……」
「リュウジ、無事だったんだね。君のリュックは持って来ていたよ」
後ろを振り返ると、あるえが立っていた。
「あるえ……無事だったんだな」
「里が……燃えていく……」
あるえは火の海と化した里を悲しそうな顔をしながら呟いた。
どうする?このままじゃマジで紅魔の里が燃え尽きちまう……。けど、あんなデカいヤツを倒せるのか……?
俺はふと、あるえの家で読んだ本を思い出した。
「なぁ、あるえ?あるえの家にあった『ニートでも簡単!魔法の作り方』って本を読んだんだけど、アレって本当なのか?」
「あの本かい?まぁ、初心者向けに売られてる本だけど……聞いてどうするんだい?」
なるほど、ならあの本の通りにやれば……。
すると、カズマが責任を感じ始めたのか、めぐみんに打開策がないのか聞き始めた。
「な、なぁめぐみん。あの魔術師殺しってのは、本当にどうにかならないのか!?」
「何度も言いますがアレは対魔法使い用の兵器です。アレに魔法がほとんど効きません。ですが、その昔、暴走した魔術師殺しを先程の地下格納庫に封印されていた武器を使い、破壊したと伝えられています」
なるほど、緊急事態用の兵器も備わってたのか。
俺は燃え盛る紅魔の里を見ながらカズマに言い放つ。
「カズマ、俺が時間を稼ぐ。お前らでその対抗できる兵器を探してこい」
「おっお前……マジで言ってんのか!?」
「サポートして欲しいんだろ?これがそうじゃないのか?」
「うっ……」
俺に感化されたのか、ダクネスとミツルギが。
「リュウジが行くと言うなら私も行こう」
「オラも一緒に行くべ!」
「リュウジ達も行くと言うなら、ボクも行くっ!」
「いいですね。やってみましょうか」
「お前らまでっ!?」
「話は決まったな、Adventures!行くぞっ!」
Adventuresで接近戦の得意な俺達が戦闘態勢に入ると。
「一か八か、みたいなこんな展開嫌いじゃないわ!」
「むしろ大好物だ!あんた達、外の人なのに分かってるな!」
遂には、紅魔族の人々までもがいきり立っていた。
「カズマ、兵器の方は頼んだぞっ!」
「分かった!行くぞアクアっ!」
「ちょっと待ってよぉぉっ!私支援専門なんですけどぉ!?」
カズマはアクアを引っ張りながら謎の巨大施設に戻って行った。その間、他のAdventuresと紅魔族はシルビアに攻撃を仕掛け始める。
「よぉ、随分カッコよくなったじゃねぇかシルビア」
「あ〜ら?鋼のリュウジじゃない?どう?貴方もアタシの一部になる?」
「へっ、そいつは御免だな」
「リュウジ、コイツが魔王軍幹部の……」
「そうだ、シルビアだ。奴は男だ、遠慮なくぶった斬れ!」
「分かった!任せてくれ!」
「リュウジから貰ったこの呪われた聖剣のサビにしてやる!」
ミツルギとダクネスは俺の左右に立って剣を構える。すると、シルビアは。
「いい度胸ね、流石はAdventures……容赦しないわよっ!!」
シルビアは蛇の様にグネグネと動きながら俺達に襲いかかって来た。アオイは地面に話しかけ始めた途端。巨大な根っこがシルビアを縛り始めた。
「なっ!?、何よこの根っこ!?」
「マヒルさん!ミツルギくん!ダクネスさん!リュウジさん!」
「でかしたアオイッ!!」
4人同時にメタリックな部分に攻撃すると、ガキィンと金属音が鳴り響く。だが、シルビアは今の攻撃で少し顔を歪ませた。
「ちいっ、やるじゃない……!!」
「クソッ……硬ぇなぁ……」
「こんなの勝てるのか!?」
「手がビリビリするべ……」
「おいっ、今見たか!?私の攻撃が当たったぞ!?見てたか!?」
ダクネスの攻撃が当たったのを目の当たりにしていたシルビアはダクネスに向かって。
「あら?あんたホントは攻撃当たるんじゃないのよ、甘く見てたわ」
「ふんっ、私を侮るなよ!」
ちなみに攻撃が当たった理由は、ダクネスが手にしている聖剣はカースド・ダークネスにより、『攻撃が絶対当たる呪い』が掛けられている為である。
「さぁ、もっと楽しみましょう!!」
シルビアは魔術師殺しを尻尾の様に振り回し、俺達を弾き飛ばした。俺達は家屋、地面、魔人の丘、神社、四方に飛ばされた。
「ぐはっ!」
「うぐっ!!」
「うわぁっ!!」
「ぐおっ!!」
「アハハハハッ!なによ、Adventuresも大した事ないわねぇっ!!」
偶然、魔神の丘に弾き飛ばされた俺は、ヒビの入ったレッドウォーリアを脱ぎながらシルビアを見つめた。
ちょっとパワーアップしてこの力かよ……。
体の痣をヒールで治療しながらシルビアを千里眼を使って監視していると、シルビアがどこかを見つめていた。
なんだ?誰か居たのか?
シルビアの視線を追って見ると……。
「ゆんゆん!?アイツ何やってんだ!?」
俺の視線の先には、ゆんゆんが瓦礫の上に立ち、シルビアを睨み付けていた。