あっさりと返答されたミツルギは再度聞き返して来た。
「い、いや得体の知れないモンスターなんだぞ?ここは「俺達も手伝おうか」とか言う展開じゃないのか!?」
「だって、ねぇ?俺達はシルビアと戦ったし?……ねぇ?」
「そーそー。ちょっと休みたいなぁって……ねぇ?」
意外な答えを聞いたミツルギは歯切れの悪そうな顔をしながら納得した。
「なら、爆殺魔人もぐにんにんはボクらが責任を持って討伐させてもらうよ?後で文句言わないでくれ」
「お好きにどーぞ」
「話しは終わりだろ?んじゃな」
「あっ、カズマ。行く前に俺に『不死王の手』を使ってくれない?」
「またか!?今度は何を覚えるつもりなんだ?」
「カズマが”ドラゴンになれるスキル”を覚えるつもりなんだけ」
「『不死王の手』!!」
早っ!!
カズマは聞いた途端俺に『レベルドレイン』を施し、俺のレベルをまた1にした。カズマはものすごい顔で。
「さっさと、覚えて来いよ!楽しみにしてるからなっ!!」
「あっ、うん」
カズマはそう言い残し、その場を後にした。残った俺はミツルギに。
「リュウジは修行をすると言ったけど、誰と修行するんだい?」
「あるえって子と『養殖』って方法でレベル上げをしてくれるんだ」
「それならボクもゆんゆんから聞いてたよ。頑張って来てくれ」
「おう、ミツルギも気合い入れてゆんゆんを助けてやれよ?んじゃ」
俺はミツルギに激励を飛ばし、あるえの元へと向かって行った。その後、ミツルギは気を引き締め、ゆんゆんの実家に戻って行った。ゆんゆんの実家にいると、ゆんゆんとアオイが何故か緊張していた。
「ゆんゆん、アオイ。どうしたんだい?」
「あっ、ミツルギくん。実は、今から1回目の試練が始まるの」
「遂に始まるんだね。ちなみに試練の内容は?」
「それはまだ分からなくて……」
「そうなのか、けど、頑張ってくれ!ゆんゆん、アオイ!」
ミツルギがアオイに言うと、アオイが顔を真っ赤にさせながら……。
「なんの試練かはまだ聞いてませんが、が、頑張るます」
「えっ…?」
「ごめんね、アオイ。今日は頑張ろうね!」
「うっうん……頑張るます」
アオイもゆんゆんと同様緊張しているのか、言葉がおかしくなっていた。
「ならその間、ボクらは爆殺魔人もぐにんにんの捜索に行こうか」
「別にいいわよ?体が訛って来た所だし」
「良いですね!私も行きますよ!」
「なら話しは決まったね!ゆんゆん、アオイ。試練頑張って来てくれ」
「うんっ!任せといて!」
「ひゃっ、ひゃい!」
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ゆんゆんとアオイと別れたミツルギ達は、森へ赴いた。族長から聞いていた目撃場所を3人で辺りを捜索し始めた。
「ゆんゆんのお父さん。ひろぽんさんが言うには、爆殺魔人もぐにんにんはここら辺で目撃されたって言っていたな……。メリッサ、上から何か見えるか?」
「そーねー。『敵感知』では何も反応はないわよ〜?」
木に登っていたメリッサが辺りを見渡しながらミツルギに答えた。すると突然、セシリーが。
「ミツルギさん!!」
「どうしたんだ!!」
「見てくださいっ!でっかいクワガタが!!」
セシリーの手にはシャカシャカ動くバカでかいクワガタが手にされていた。ミツルギは一瞬目を輝かせたが、すぐに正気を取り戻す。
「そ、そうじゃないだろ!もぐにんにんを探しているんだぞセシリー!」
「けど凄くないですか!?」
「凄いよ!確かに凄いよ!リュウジとカズマに自慢したいよ!、けど今はもぐにんにんが最優先だよっ!」
「きゃーーーー!」
「メリッサ!?どうしたんだ!!」
ミツルギが真上を見上げると、メリッサが。
「きゃわわわわわ!このにゃんこちゃん!!」
「メリッサ!?」
「見てよこの毛並み、ツヤ、尻尾!。可愛いわぁぁぁぁっ!」
「メリッサ!!?」
「ねぇキョウヤ!!この子飼って良い!?良いわよね!?」
「メリッサァァァァァァァ!!!」
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それから森を捜索したが、爆殺魔人もぐにんにんは発見出来なかった。ミツルギ達はゆんゆんの実家に戻って来ると、ゆんゆんとアオイが戻って来ていた。
「やぁゆんゆん。試練はどうだったんだい?」
「あっミツルギくん……受かったんだけど……アオイが……」
ミツルギがどういう事だろうと思いながらアオイを見ると、アオイはゆんゆん宅の客室で膝を抱えて蹲っていた。
「お疲れ様アオイ。試練の方はどうだったんだい?ゆんゆんからは、クリア出来たって聞いていたけど」
ハイライトオフ状態で蹲っていた、朝は少し緊張していたアオイが。
「……モウヤダ、シレンコワイ、アシタハ、メリッササン、セシリーサンノドチラカウケテクダサイ……」
気の抜けたカタコト言葉でメリッサとセシリーに訴えかけて来た。その後、落ち着きを取り戻したアオイからミツルギは事情を尋ねた。
「試練の内容は、最初は謎かけと聞いていたんです」
アオイがブルブル震えながら語り出した。アオイはゆんゆんに淹れてもらったホットミルク飲み、両手でカップを握って息を吐く。
「ミツルギさん、私もそう内容を聞いてました。ですがアオイさんが、何をされたらここまで追い込まれるのでしょうか?族長の試練というのですから厳しいでしょうけど、ゆんゆんがいればどうにかなると思いますよ?アオイさん?何があったんですか?ハレンチな事をされたんならお姉さんがその紅魔族の新築の家にアクシズ教総出で抗議しに行きますよ?」
セシリーは、蹲ったアオイをなぐさめるように頭を撫でながら闘志を燃やしていた。
「謎かけも飽きたから、もう他の試練にしようと言い出して……」
「そ、それは大変だったね……」
「で?アオイは何をさせられたのよ?」
「『紅魔族に必要なのはセンス力!ポーズと名乗りを見せてみろ!』と言われて、紅魔族の皆さんが満足するまで、ゆんゆんと共にカッコイイポーズと名乗りをあげさせられました……」
「き、気の毒に……」
次の日……。
「今日は私が行きます!アオイさんの仇、とってきますからね!」
「セシリー、大丈夫なのか?」
ミツルギは心配そうにセシリーに尋ねる。
「大丈夫ですよ!ねっ!ゆんゆんさん?」
「そっ、そうですね!セシリーさん。よろしくお願いします!」
「まぁ、確かにこれ以上アオイに頼むとアオイがおかしくなりそうだからね……ボクはセシリーを信じるよ」
「ああいうのはちょっと勘弁して下さい……」
未だに怖がっているアオイが言う。
「それより今日は2つ目の試練なんだよね?」
「う、うん……。今日の試練は、昨日みたいな事はないと思う……」
ゆんゆんはそう言って、困った顔をして俯いた。
「昨日2人が、どんなポーズで何を言わされたのか、お姉さん聞いていいかしら?」
「絶対嫌です」
普段セシリーに怯えていたゆんゆんが、キッパリと強い口調で否定した。
「そ、それではセシリーさん、行きますか!」
「ええ、今日はお姉さんの活躍を見せてあげますよ!。昨夜はずっと決めポーズと名乗りを考えてたから、8時間しか眠れなかったの。その分期待して良いですよ!」
「十分寝てるじゃないですか。それに、2つ目の試練は違う物になると思うので……」
かなりの不安を残しつつ、セシリーとゆんゆんの2人は試練に向かった。
「それじゃボク達は、今日ももぐにんにんの捜索に行こうか」
「またなの?いい加減飽きたわ〜。ワタシ今日は散策したい気分なんだけど?」
「え?散策かい?けど、アオイが……」
「あっ、散策なら私も行きますよ!最近戦い漬けだったので気分転換に行きたいです!」
ミツルギが心配に言うと、アオイがすごい勢いで手を挙げる。
「な、なら今日はゆんゆん達には申し訳ないが、ボク達も休みにしようか」
ミツルギ達はもぐにんにんの捜索を中断し、街の散策に出掛けた。
「今日は天気がいいですね!植物さん達が喜んでいます!」
「ここら辺の天候は、紅魔族が魔法を使っていつも晴れにしてるらしいよ」
「やだっ!にゃんこちゃんが柵の上でお昼寝してるわ!可愛いぃ!!」
「柵の上にいるのはちょむすけの様な使い魔だって聞いたよ。常に里の周囲を監視しているらしいんだ」
ミツルギはテンションの高いアオイとメリッサにゆんゆんから教えて貰った豆知識を教える。
「見てください!あんな所でのんびりと釣りをしているお爺さんがいますよ!」
「ああ、アレは川に潜むモンスターを生き餌で集めてるんだよ。で、垂らした鋼鉄製の糸の先から、電撃魔法を使ってレベルを上げているらしい」
「見てキョウヤ、向こうには高そうなグリフォンの石像があるわよ!」
「それは本物のグリフォンだよ。紅魔の里に迷い込んで来たグリフォンを石化魔法で固めたらしいんだ。今は待ち合わせ場所に使われているんだ」
ミツルギの案内により暴かれていく紅魔の里の豆知識。それにより、メリッサとアオイの笑顔は、徐々に真顔になって行く。
「なんか、思ってたのと違いますね」
「そうね、ワタシも同じ事を思ってたわ」
「紅魔族は武闘派だからね。来た時はボクも同じ顔をしたもんだよ」
「もういいわ。帰りましょ」
「そ、そうですね……それより、ミツルギさんが紅魔の里に詳しくなってるのが一番の驚きです」
「もう戻るのか!?50mも歩いてないじゃないか……なら……今日はゆっくり休もう……」
散策も虚しく、ミツルギ達は来た道を戻る事になった。
その日の夜……。
「なんなのよっ!こんな美人プリーストを泥まみれにするなんて、ここの紅魔族の男達はケダモノよっ!!」
ゆんゆんの家で休ませて貰っていると、セシリーが激昂しながら帰って来た。ミツルギは泥まみれの服を着替えようとしたセシリーに向けて。
「どうしたんだ、またアクシズ教の入信書でも押し付けようとしたのか?今度は一体何があったんだ?」
シャワー室に向かうセシリーが立ち止まって。
「今日の試練は、『紅魔族に必要なのは時の運。2人が正解の扉を選ぶまで、何度でもチャレンジしてもらいます』って言われたんです。そのまま扉に向かって走らされて……」
「き、気の毒に……2つ目の試練は問題形式だったんだね……」
ミツルギは日本に住んでた時に見たテレビ番組を思い出したのか、うんうんと頷いてセシリーをなだめ始めた。
「それでも、一応試練は通ったんだね?よく頑張ったな、セシリーは風呂に入ってくるといい。ひろぽんさんは爆殺魔人もぐにんにんの一件で暫く帰って来ないようだからね。自由に使ってくれていいと言っていたから甘えるといいよ」
「そうさせてもらいます……」
「ならセシリーさん。私も一緒に入ります」
「なら背中洗いっこしましょーか!」
そう盛り上りながらゆんゆんとセシリーは浴室に向かって行った。見送ったミツルギはメリッサに声をかける。
「残りは最後の最終試練なんだけど……メリッ」
「ワタシは嫌よ。キョウヤが行きなさいよ」
即答で拒否された。
「そっ、そんな事を言わずに……」
「第一、最終試練が何かまだ分からないじゃない。女の勘だと、次は戦闘向けだと思うわよ?」
「メリッサがそう言うと実際に起こりそうだよ……」
ミツルギがメリッサと話していると、アオイが手を挙げた。
「あの……次の試練は、メリッサさんがいいと思います」
「アオイ!?アナタまでそんな事を言うの!?」
「アオイ?なんか理由がありそうだね。理由を聞かせて貰えるかい?」
「はい。なんというか……ミツルギさんが試練を手伝ったらゆんゆんの為にならない気がするんです。ミツルギさんはソードマスターですし、『魔法剣』が使えるじゃないですか」
ミツルギはアオイの言葉に気付かされ、うんうんと頷いた。
「確かに、今ボクが試練に行ったらゆんゆんの為にならないね。やはりここはメリッサに頼むしかないよ」
「やっぱりワタシなの?……やれやれ、しょうがないわねぇ……」
メリッサは根負けしたように試練の参加を承諾した。
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翌朝。最終試練の内容が明らかになった。試練内容は、危険のモンスターが蔓延る紅魔の森で、一晩を無事に過ごす事だった。
「ねぇ、ゆんゆん?思い付いたんだけど。アナタのテレポートでアクセルの街に戻らない?それで一晩ゆっくり過ごし、朝になったらまたここにテレポートして「怖かったぁ……」って言えばバレないんじゃないかしら?」
「流石にそれはちょっと……私はズルをしないで、実力で族長になりたいから」
「アナタもキョウヤと同じ堅物ねぇ。ワタシならそうするけど?アナタ、あまり友達いないでしょ?」
「いっ、いますよ!紅魔の里にだって、聖テレサ女学院にだっています!どうしてそんな事を言い出すんですか!?」
ゆんゆんとメリッサは紅魔の森の奥地へと、進んで行く。
「そんなムキになって言う事じゃないわよ。友達が少ないってバレバレよ?友達は選ばないと、利用されるだけよ?」
「そ、それは……ないと思いますけど……」
「アナタ、見知らぬ他人に「財布落としたからお金貸して」って言われたらどうする?」
「勿論、貸しますよ?」
「バカね。アナタ、完全だまされるタイプよ。詐欺には気を付けなさい」
「そんなっ!ふにふらさんや、どどんこさんは知り合いですよ!」
「既に貸してるんじゃない!。付け込まれるわよ?」
「そっ、そんな事ないと思いますけど……」
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辺りは暗くなり、いつモンスター達に奇襲を受けてもいいように、メリッサは『潜伏スキル』と『ライトオブリフレクション』を使ってゆんゆんと共に身を潜めていた。
「メリッサさん。前から気になってたんですけど、メリッサさんは王都とかでトレジャーハンターをしていたって聞いてましたが、どうしてミツルギくんの仲間になったんですか?」
「そう言えば言ってなかったわね。マリューちゃん目当てよ?」
「えっ、ならリュウジさんのチームに入った方が良かったんじゃ?」
「入ろうとしたんだけど、鋼のリュウジに断られたのよ。どーもアイツとは合わなくて」
「そうなんですか……」
夜風に揺られながら今度はメリッサがゆんゆんに質問を始めた。
「ゆんゆんは、族長になったら何するの?紅魔族派遣会社でも作るの?あちこちで名乗りをしたら大儲けじゃない?」
「作りません。色んな意味で就任1ヶ月で倒産しちゃいますよ!」
「なら何をしたいのよ、キョウヤ達には秘密にしてあげるから言ってご覧なさい?それとも、紅魔族の秘密でもあるのかしら?」
メリッサが尋ねると、ゆんゆんが俯き黙り込んだ。そして、少し沈黙が続くとゆんゆんが口を開いた。
「族長じゃないと出来ない事なんてありません、それに、やりたい事だって………」
「ホントかしら?ならこんなに頑張る必要あるの?アナタはもっと楽しく人生を楽しみなさい?魔王を倒したら女だけの冒険者集団でも作る?」
「いいですね!良いんですけど、お友達になれますかね……」
「きっとなれるわよ……しっ!!静かに!!」
ゆんゆんが片手で口を塞ぐと、目の前に一撃熊が歩いていた。話し声を聞き付けて来たのか、クンクンと辺りを匂いを嗅いでいた。ゆんゆんと手を繋いでいたメリッサはもう片方の手で腰からダガーをゆっくりと引き抜き、身をかがめていた。メリッサがゆんゆんに「何もするな」というジェスチャーをした後、ゆんゆんが大きく頷いた。
「ライトオブセイバーーー!」
ゆんゆんは一撃熊に魔法を撃ち始めた。