月夜に照らされた紅魔の里の森を歩き続け、広けた場所の中央に二足歩行のロボットを見つけた。隠密行動に特化したようなフォルムに赤く輝くモノアイが周囲をてらしだしていた。物陰にかくれながら様子を伺っていた。
「あれは……忍者か?」
「にんじゃ?ミツルギくん。にんじゃって?」
「えーっと、ざっくり言えば、王都で戦った金獅子見たいなやつだな」
ミツルギが金獅子をイメージさせると、ゆんゆんはポンと手を叩いた。
「それなら分かりやすいね!って事は、もぐにんにんは金獅子って事?」
「いや……見た目は少し似てるけど、どうだろう」
「もぐにんにんが金獅子だったんだよきっと!」
「ふむ……」
「ここは一旦撤退して、メリッサさん達を呼んでこよう?」
ゆんゆんが里に戻ろうとしたその時。
「ゆんゆん。ここはボクらで倒そう」
「えっ!?」
ゆんゆんはミツルギの肩を両手で掴み、ゆさゆさと揺さぶる。
「さっきまでポンコツルギだったのに!もしかして酔いが覚めて来たの!?そうなんでしょ!?」
「すっかり覚めて来たよ。リュウジ達には手を出すなと言ってあるし、今戻ったらまた行方をくらます可能性がある」
「って事は、今戦うの!?」
「もちろんさ、ゆんゆんは最高の魔法使いになるんだろう?」
「そっそうだけど、もぐにんにんは『爆発魔法』を使うんだよ!?」
「爆発魔法……確か爆裂魔法の下位互換に当たる魔法だったね。ゆんゆんは、この前見た爆裂魔法とどちらが脅威に感じた?」
「それはやっぱり……めぐみんの爆裂魔法の方が」
「そうだろう?なら、アイツは怖くないさ」
ミツルギはそう言って剣を抜き、爆殺魔人もぐにんにんの前に立った。
「爆殺魔人もぐにんにんだな?貴様を討伐しに来た」
「あなたを倒して、最高の魔法使いの称号を手に入れるわ!」
「確か、爆殺魔人もぐにんにんは『紅魔族は襲わない』って聞いていたが、本当だったんだね」
───そこまで言ったその時だった。
今まで目の前にいた爆殺魔人もぐにんにんは、一瞬のうちに消え、ミツルギの真上から降りて来た。
「なにっ!?」
「ミツルギくんっ!!」
爆殺魔人は腰から短刀を抜き、忍者の様にミツルギに襲いかかった。ミツルギはティルフィングを抜き、鍔迫り合いになった。
「こっこいつ……日本人が作った物か!?」
「えっ!?ミツルギくんっ、どういう事!?」
「昔の勇者候補が作ったって事さ!!簡単に言えば、ボクやカズマと同じ国から来た人が作ったって事さ」
ガキンと音を立てながらもぐにんにんを振り払うと、もぐにんにんは素早く跳ねてバク宙した。赤いモノアイの残光を残し、闇夜に消える。
「金獅子だっ!やっぱり奴が金獅子だったんだ!」
「ミツルギくんもそう思う!?私も似てるなって思ってたもん!きっとアレが金獅子の正体だったんだよ!!」
「その可能性はあるね、王都で見た姿は仮の姿、あれが本来の姿なのだろうね」
……と、その時。
ミツルギに手を向けるもぐにんにんが、赤いモノアイを無機質に向け言葉を発した。
《タイプ・チートハーレム型リア充日本人とカクニン。改造被検体コウマゾクの個体が離れ次第、爆殺処理をジッコウします》
「チート?ハーレム?何を言ってるんだ?」
「なんの事だろうね?ミツルギくん、はーれむって何?」
「なんというか……モテモテって事だろうね」
ミツルギがそう説明すると、突然ゆんゆんはムッと顔を歪める。
「それなら狙われても仕方ないんじゃないかな?」
「えっ!?ゆんゆん!?」
「だってそうでしょ?アクセルの街ではモテモテだったじゃない」
「どっ、どうしたって言うんだい!?なんかゆんゆん。聖テレサ女学院に行ってからズバズバ言うようになったよね!?」
「ふんっ!知らないっ!」
ゆんゆんがミツルギから離れた瞬間、もぐにんにんが。
《リア充とコウマゾクの距離をカクニン、攻撃をカイシシマス》
「不味いっ!『ルーン・オブ・セイバァァ』!!」
ミツルギは大きく振り払うと、もぐにんにんは咄嗟にバク転をしながら距離をとった。すると、もぐにんにんは腰からもう一本の短刀を取り出し、二刀流の構えをとった。ミツルギもティルフィングを構え直し、ジリジリと距離をとり、睨み合う。
「ふぅ………」
《リア充排除ジッコウ、近接攻撃にイコウシマス》
一瞬で距離を縮めたもぐにんにんはミツルギと激しい攻防戦になった。幾度も刃がぶつかり合って弾ける音と火花が散り続けた。
「はぁぁぁぁっ!!」
ガキーン!!
刀と剣がぶつかり合った結果、ミツルギが競り勝ち、もぐにんにんの短刀二本を弾き飛ばした。
「ゆんゆんっ!トドメだっ!!」
「うん!ミツルギくん、行くよっ!『ライトオブセイバー』!!」
ミツルギが空に向かってティルフィングを掲げると、ライトオブセイバーがティルフィングに吸収されて行った。すると、金色に輝き始めたティルフィングは巨大な光の大剣に形を変えて行った。
そして……決着の時が来た。
「くらえ、金獅子。これがボクとゆんゆんの必殺技『シャイニング・ソード・ブレイカー』だっ!!」
ミツルギが光の大剣を振り下ろした瞬間、もぐにんにんは逃げようと下が、足元が既に凍っており、動けなかった。
《リア充からコウマゾクの最大魔力ヲ感知。予想サレタ魔力を超えた個体が現れた事で、改造計画は成功と判断、コレを最終データとして【ノイズ王国本部】へ送信シマス。本部、応答をネガウ……本部、本部!?マスター、アトをタノミマス》
シャイニング・ソード・ブレイカーにより爆殺魔人もぐにんにんは一刀両断された。
───────────────────────
「族長のあなたは一体なにをしているのですか?」
「あっあのね、めぐみん。もぐにんにんを倒したんだよ!?」
「だからなんで倒したんですか?私が狙っていたのに」
「すっ、すまないめぐみんちゃん。どうしてもボクらで倒したくて」
紅魔の里の自警団の詰所の中、ミツルギとゆんゆんはめぐみんに説教をされていた。そこには自称特殊部隊のぶっころりーの姿もあった。
「まさか、外の人が爆殺魔人もぐにんにんを倒すなんてな……けど、辺り一体の木々を切り倒したのは話は別だよ?生態系が崩れるじゃないか。カッコイイ剣を持ってるから友達になれると思ったのに……」
ぶっころりーは牢に入れられているミツルギに寂しそうな視線を向ける。
「ぶっころりーさん本当にすいません。ボクもあなたとは仲良くやれそうだと思ったんですけど……お詫びに、今度カッコイイ剣を見付けたらプレゼントしますよ」
「ホントか!?そりゃ嬉しいやっ!出来れば赤と黒の」
「ニートがなにを生意気に強請ってるんですか?これだからニートは」
「ニートニートうるさいよっ!ニートじゃなくて特殊部隊!そこら辺を間違えないでくれっ!」
「特殊部隊なんてないじゃない。勝手に作ってるだけでしょ?」
「っ!?」
ゆんゆんの思わぬ毒舌に、ぶっころりーは唖然とした。
「あっ、あのウジウジしてたゆんゆんがキツい一言を……」
「ゆんゆんもまだまだですね。私なら、好意をよせている【そけっと】にぶっころりーからセクハラされたと泣きつきますよ?」
「止めてくれよ!なんなんだよ2人して、ちょっと外に出たら随分変わっちゃってさ!」
「あなたはちょっと黙ってて下さい。そして牢屋の鍵を置いてとっととそけっとのストーキングでもしてくればいいです」
「ストーキングなんてしてないよっ!いいよ、行くからっ!」
ぶっころりーはめぐみんに鍵を渡し、外へ出て行った。
すると、ゆんゆんが。
「なんのつもり?もしかして、助けたと思ってる?」
「いいえ?確かに爆殺魔人はゆんゆんと魔剣が倒した見たいなので今回くらいはゆんゆんに勝ちを譲りますよ」
「えっ!?こんな決着でいいの!?」
「良いですよ別に。私はカズマと小さな幸せを築き上げて行きますから、ゆんゆんは族長の仕事を頑張って下さいね?Adventuresも辞めなくてはいけませんし、後はリュウジとカズマにも伝えておきますよ。魔剣もそれで良いですね?」
めぐみんは無邪気な笑顔でミツルギに告げた。2人の小競り合いに巻き込まれたミツルギは。
「えっ!?いっいや、困るよ!今辞められたらボクのチームに穴が開くじゃないか!!」
「恋バナは色ボケの何だの言ってたくせにっ!!」
───────────────────────
その後、めぐみんはカズマの元へ戻ってからしばらくの後。牢から出されたミツルギとゆんゆんは……。
「まったく2人して逢い引きしておきながらなんで捕まるんですか!?お姉さんも捕まった事あるから人のことは言えませんけど、少しは自重して下さいっ!!」
「セシリーの言う通りよ?夜な夜な抜け出してモンスターを狩ってたなんて、随分卑しいのね」
よりにもよってセシリーとメリッサに説教をされていた。
「抜け駆けしてしまってすまない。今度、埋め合わせさせてもらうよ」
「すっすいません、このコートを着て散歩したくなって……」
「で?どーするの?アクセルの街に帰るの?」
「アクア様達もそろそろ帰ると言っていましたよ?」
「リュウジさんはもう少し紅魔の里に残るって言ってました!」
「ゆんゆんはどうするんだい?やっぱり……残るのかい?」
ミツルギが悲しそうな顔をしながらゆんゆんに聞くと……。
「私も、アクセルの街に帰る!」
感情を昂らせたゆんゆは、瞳の色を鮮やかな真紅に輝かせながら宣言する。
「魔王を倒して、最高の功績を手にしてからちゃんと族長になりたいから!」
「ゆんゆん……」
「だから、これからもよろしくお願いします!!」
ゆんゆんは、満面の笑みを浮かべて見せた。
───────────────────────
その頃、俺はカズマに『竜人化』のスキルを覚えさせる為にカズマを呼び出していた。カズマは今か今かとソワソワして落ち着きがなかった。
「なぁっ!もったいぶらないで早く教えてくれよっ!」
「わかったわかった、その前に、スキルポイントに余裕はあるのか?『竜人化』を習得するのに500ポイントは使うぞ?」
「問題ない。最近コツコツ貯めてたし、安楽少女やシルビアを倒してレベルが上がってポイント増えたからな!」
ほう、少しはやる気が見えて来たな。
「良し、なら良く見とけよ?『竜人化』を発動させる」
俺は一気に魔力を高めて竜人化スキルを発動させた。俺の体は人肌から鱗に変わり、頭からは角が2本生え、尻からは尻尾が生えてきた。鱗は肌色から黒く変わり、体格を大きくさせて行った。
「これが『竜人化』だ。竜人化を発動させてる間は、全ステータスが5倍に膨れ上がる。そこらの魔王軍ならワンパンで倒せるぞ?」
竜の様な顔をしながら俺はボディビルダーのようにポーズを決めた。カズマはいても立ってもいられないのか、直ぐに冒険者カードを取り出して『竜人化』を習得した。
「とまぁ、こんな感じだ。やってみ?」
「おおっ!竜人化をするには魔力を高めるんだったな、ふんんんんんんんんんっ!!」
竜人になった俺はカズマに教えた通りに促すと……。
カズマの構え方、なんかウン〇我慢してるように見える……。
すると、カズマの体は少しずつ変化して行き、人肌から緑色の鱗に変化していった。だが、レベルが低いせいか……頭には髪の毛が残り、体格も変わらず、ちょっと身長が伸びたくらいにしかならなかった。
「出来……てるのか?それは?それが限界か?」
「なんかシルビアと戦った後からどうもステータスが上がってないような気がして……どうだ?立派なドラゴンに見えるか?」
「カンストが近いのか?そのせいなのかな?……どちらかというと、リザードマンだな」
「何言ってんだよ、立派なドラゴ」
竜人化したカズマは鏡を取り出して自分の顔を見てみると……突然。
「思ってたのと違うっ!!」
鏡を地面に叩きつけた。
コイツは一体どんなドラゴンを想像していたんだ?
「まぁ、ちょっとずつ『竜人化』のレベルを上げていけばそのうち立派なドラゴンになれるさ」
「なんでだょっ!ステータスも上がって来たのにまともなドラゴンにすらなれねぇのかよっ!このままじゃアクアにバカにされちまう!!」
「またまたぁ、そんなフラグ立てたら」
「あははははっ!カズマさんがリザードマンになってるわぁ!あはははははは服装とか全然合ってないーー!お腹痛いあはははは!」
いつからそこに居たのか、アクアが物陰から覗いていてゲラゲラと笑い転げていた。
「アクア!?いつからそこに居たんだ!?」
「え?あははは!リュウジがドラゴンになった辺りよ?けどカズマがリザードマンにあはははは!」
「笑うなっ!笑うなって言ってんだろ!グヘッ!!」
生えてきた尻尾に慣れてない状態で走り出した為、カズマは尻尾に足を引っ掛けて盛大に転んだ。それを見たアクアは更に爆笑する。
「自分の尻尾でコケてるんですけどぉっ!!プークスクス!!」
「やめろっ!笑うなっ!笑うなって!!お前調子にのんなよ!?」
「やめとけやめとけ、もう1つ補足なんだけど、慣れてくれば”一部分”だけ『竜人化』が出来るようになるらしいぞ?手足や体とかな?」
「待てこの駄女神!!噛みちぎってやる!!リュウジ、ありがとな」
聞いちゃいねぇし。
カズマは俺にお礼をしてアクアを追いかけて行った。
カズマのリザードマンなんてまるでガビ……おっと誰か来たようだ。