魔道具店からの帰り道。
「あのバニルがアッサリ認めるとはなぁ。何か裏がありそうだけど、それを差っ引いてもデュークさんは良い男ってのは分かるな」
1人でブツブツと呟いていると、俺は一件の飲み屋を通りかかった。
1杯引っ掛けて帰ろうかな〜?
そう思った俺は店の中に入った。中に入るとそこには、デュークが1杯引っ掛けていた。
へぇ、偶然ってあるもんだな、声かけてみるか。
俺は興味本位でデュークに接近する事にした。
「失礼、隣り良いですか?」
「好きにするがいい」
デュークがこちらを向かずにクイッと酒を飲みながら言い放った。俺は黙って隣の席に座ってぶどう酒を注文した。
「貴様、鋼のリュウジだな?」
「へぇ?俺を知ってるのかい?」
「魔王軍と渡り合っていれば嫌でも耳に入る」
魔王軍幹部と戦って来たんだ、そりゃ知ってるわな。
「なら自己紹介は必要ないね。あんたは?」
「…………俺の名はデューク」
「はじめましてデュークさん。1杯奢らせてもらうよ」
俺が店員に言ってデュークの分も注文すると、デュークが。
「噂で聞いた、毎回仲間に指示しているだけで、本人は大した力もなく、コボルトにタコ殴りにされたと」
「ごめんそれ俺じゃない」
「そ、そうなのか?では、エンシェントドラゴンを倒したという」
「それも俺じゃない」
「そ、そうか……」
デュークは申し訳なさそうにしながら俺に酒を奢り返して来た。
俺だって頑張ってるんだよ!?
「知らないなら教えますよ、自分で言うのもなんですが。ベルディアを倒したのは俺っす」
俺が気まずそうに言うと、デュークは興味深げに俺を見る。
「なるほど、貴様がベルディア殿を……よく見るとお前からは妙な気配が感じ取れる。正直見くびっていた」
「喧嘩売ってんのか?」
ピシッとグラスにヒビを入れる。
「……ふむ。俺は、この街にいるある女に勝負を挑みにやって来たのだが……。そうだな、肩慣らしに狩っておくか」
「おいおい、随分な扱いだな。人が紳士的に話してるのに」
俺はバチバチと拳に雷を纏わせると店内はピリピリ重苦しい雰囲気に包まれた。すると、店員が騒ぎ立てる。
「ちょっとお客さん!喧嘩なら外でしてくんなっ!」
「お前に興味が沸いた。見た所お前は手を抜いて戦っているな?用事が済み次第、お互い全力を出し合って勝負して見たいものだ」
「手を抜いてるように見えるか?」
「そうだ、素手で戦う様だが……本来は武器を使ってるな?その手を見れば分かる」
コイツ……俺の手のまめを見て見抜きやがった。
「さぁ?どうだろうな?殺意が芽生えないと本気出せないんだよ。この世界じゃそんな奴とはまだ出会ってないしな」
「そうか……」
デュークは急に考え込み始めると、突然立ち上がった。
「急用を思い出した。俺は先に帰らせてもらう」
「はぁ……。ウィズによろしくねぇ」
それを聞いたデュークの反応は早かった。いつの間に抜かれたのか、片刃の剣が突き付けられたが、俺は栓抜きで防いだ。デュークの目は鋭く細められた。
「貴様、何故それを知っている?ウィズとはどんな関係だ?」
「師弟関係ってとこかな。俺の魔法はウィズのおかげだ」
「ちょっとお客さん!それ以上騒ぐなら警察呼ぶぞっ!」
突如豹変したデュークと戦闘態勢に入った俺に店員が騒ぎ出すと、
「……ウィズの事を一体どこまで知っているのかは知らんが、あまりあの女に関わらない方が身のためだぞ?」
「ご忠告どーも、さっさと剣を収めろ。それに俺はあんたがウィズを狙ってるのは知ってる。応援したくなるほどにな」
「なんだと?」
デュークは戦う気だったのか、驚いた様に目を見開き固まった。
「……お前はウィズの弟子ではなかったのか?」
「弟子だからだよ。正直言って俺は、ウィズには今の仕事は向いてないと思ってる。ウィズだって幸せになる権利はある筈だ。ウィズは引退して幸せな家庭を持ってくれた方が俺は嬉しい」
「……貴様、ウィズの正体を知ってて言っているんだな?」
「おう、知ってるとも」
「これは、お前に対する認識を改めなければならないな」
意味深な事を言いながらデュークは警戒を解いたのか、剣を鞘に収めた。
確信した。コイツならウィズを任せられる。 ウィズが知らない男と波乱万丈な生活をされる方が嫌だし。
「鋼のリュウジ、お前の言う通りだ。俺もあの女は今の仕事に向いていないと思っていた。氷の魔女と呼ばれた頃ならともかく、今の腑抜けた状態ではな」
「昔のウィズを知らない。昔の俺だったらあんたと同じ様に手合わせしたくなる欲求に駆られていただろうな。だけど、ウィズに勝負を挑むのは止めてやれ、普通に話し合った方が丸く収まるだろ?」
「……?何を言っている、それでは意味がないだろう。あの女の仕事を引き継ぐには俺の力を示さねばならない」
仕事……力を示す……あっ、墓地の仕事の事を言ってんのか。コイツも浄化魔法を使える、だから示したいのか。
「1つ聞いていいか?あんた、ウィズの仕事を全て引き継ぐって事だよな?」
「無論だ、あの仕事は俺以上に相応しい者などいない!そして、破綻寸前にまで追い込まれた現状を絶対に打破してみる!」
どんだけ自信家なんだよ、ルシファー見てぇなヤツだな。
「その自信はかうけど、まだ問題はあるぞ?ウィズの店には他にもいるんだ」
「何!?それは誰だ」
「バニルだよ。まさかウィズの事を調べて置いて、バニルの事が知らなかったとは言わねぇよな?」
「ぐっ、バニル殿か……確かにあの方は厄介だ。だがらこれは俺とウィズの問題だ。たとれ誰であろうといえども退くわけにはいかぬ!」
バニル相手に退かないだと!?なんて野郎だ!!
「その心意気や良し、だがそう言ってもあいつは必ず邪魔をして来るぞ。だが……仕方ない」
俺は酒の入ったコップをデュークに見せ付け。
「あんたが気に入った。俺で良ければ手を貸すぜ」
───────────────────────
「つーわけだ、俺は全力でデュークを応援する」
「確かに、俺もその熱意に感動したっ!」
「デューク、なんてデカイ漢なんだ!!」
「ちょっとあんたら3バカトリオが何言ってるか分からないんですけど」
翌日の夕方。
俺はウィズを除いたAdventuresを招集し、デュークの事を報告した。
「デュークは頑固だけど、漢気のあるヤツだなと思ってな?応援したくなってさ」
「同じ男として応援したくなる展開だな」
「ああ、まったくその通りだっ!」
俺やカズマ、ミツルギがデュークの熱意に感動しているとめぐみんが、
「まぁ、私としてはカズマの周りの女友達が恋人をえてくれるというのは歓迎すべき事なので、好きにしたらいいと思いますが……」
「ふっ、俺を人の男とか言っときながら、まだ心配なんてしてるのか。まったく、かわいいやつめ」
「「「気持ち悪っ」」」
カズマの言葉に青ざめていると、アクアが頷く。
「けど、師匠のウィズがどこの馬の骨とも分からない男に持ってかれて良いの?リュウジは弟子なんでしょ?プレイボーイのリュウジならウィズもゆんゆんもペコリーヌもダクネスもアオイもマヒルもクリスもキャルもこめっこも、みんな俺のもんだって言い出しそうじゃない」
「魔王かよ、つーかこめっこもってなんだよコラ!俺はロリコンじゃねぇよ!」
いや元魔王だけども!ロリコンじゃないもんっ!
すると、ダクネスが突如バンとテーブルを叩くとクリスと共に立ち上がった。
「カズマ、私もお前に協力するぞ!要はその2人を邪魔されない様に守れば良いのだろう!?」
「あたしもダクネスと一緒に協力するよ!ウィズさんも幸せになる権利はあるんだから!」
そう言って、キラキラと青春したくてたまらない女子高生の様なテンションの2人が目を向けて来た。
協力はありがたいんだが……。
ダクネスとクリスの熱意にやられたのか次々と、
「わ、私もウィズさんにはお世話になってるから応援します!」
「なら、私も応援します!」
「な、みんなどうしたんだか!?だったらオラも手伝うべ!」
ゆんゆん、アオイ、マヒルもノってきた。そんな中、アクアがポツリと言った。
「やっぱり認めないわ」
盛り上がってる中その呟きに振り向くと、
「私は、どこの馬の骨とも分からない人なんてやっぱり認めないわ!おかしいじゃない。相手はウィズなのよ?どうしてそこまで惚れ込むの?何か企んでるに決まってるわ!これはそう、女神の勘よ!」
突如強情に言い張りだしたアクアの言葉に、
「そうね、ワタシもそう思うわ」
「わたしもちょっと気になりますねぇ」
「アクア様の勘は当たりますからね!」
メリッサ、ペコリーヌ、セシリーが名乗り出す。それを聞いたカズマは、
「お前ら、茶飲み友達とか金絡みの関係で嫌なだけだろ」
「そうだけど!でもなんかこう、嫌な予感がするの!うまく言えないんだけど、私の大嫌いなヤツが大暴れしそうな結末が待ってそうで……」
「そうは言っても私達が邪魔をするのも無粋ですよ。彼女の幸せを願うなら、そっとしておくべきでは……」
めぐみんの言葉を聞いたアクアは心の内に固い決意を秘めた目で、
「そのデュークという男、試すわ」
試す!?
「試すってどうやって?」
「まさか、お前……ハニートラップでも仕掛ける気か?」
「アクア様自らやるというのですか!?」
「マジかよ、キャルもなんか言ってやれよ!……ってあれ?キャルは?」
キャルに助け舟を求めたが、メンバーの中にキャルが見当たらなかった。
「カズマさま。キャルさまがお見えになりませんが?」
「そう言えば先程から見掛けませんね、どうしたのですか?」
コッコロとマリューが見渡しているとカズマが言い放つ。
「ああ、キャルは家賃を稼ぐと言って夜勤のアルバイトしてるんだとよ。だから今は部屋で寝てる」
夜勤か、大変だな。
「そうなのか。で?アクア、どうするつもりなんだ?」
俺が尋ねると、アクアは自信ありげな表情で。
「本当に一途で真面目なのか確かめるのよ。そう、逆ナンよ。逆ナンをするの」
ん?
「何言ってんだお前」
「お前、正気か?恋愛のれの字も知らないクセに」
「あんたら2人こそ、私を誰だと思ってんの?アクシズ教徒を信者に持つアクア様よ?私やメリッサ、ペコリーヌ、ダクネス、セシリーがいればイチコロよ」
「嫌よ!なんでワタシがしなきゃいけないのよ!?」
「なんだか楽しそうですね!やばいですね☆」
「同じパーティーなのに日に日に扱いが悪くなってないか!?」
「アクア様!お手伝いしますよ!」
アクアは4人の言葉をスルーしながら、
「見てなさいよ、私の言う事が間違ってなかったって証明してみせるから!」
───────────────────────
その日の晩、俺は心配になった為、金獅子に姿を変えてアクアの様子を伺う。あの後カズマは心配だと言って直接例の酒場の店に潜入するらしい。
「なにもハニートラップを仕掛けなくてもいいと思うんだけどなぁ」
「アクア先輩の勘はなんでか当たるんだよねぇ、昔から」
何故かクリスも銀髪盗賊団の時のコスチュームだった黒い忍装束で俺の隣で双眼鏡を片手に様子を屋根から伺っていた。そこへ、場違いな美女達がゾロゾロと中へと入っていった。
「入ったな。ハーレイ、音声拡大を頼む」
《ぽーん!店内の音声を拡大します》
俺は窓から見える様子とハーレイの音声を頼りに伺うと、店に妖艶という言葉が似合う美女達は安酒場には不似合いなドレスや服を身に纏い、独り寡黙に酒を飲むローブの男に近付いた。
「そこのお方、お隣宜しいでしょうか?」
「あらユースティティアナ、逆ナンなんて珍しいわね?」
「やだ、イケメンじゃない!私、セシリーって言うの」
「3人とも、騒ぎ立ててはい、いけませんよ?」
「……娼婦か?商売女なら必要としていないぞ?」
様々なタイプの女性を演じた4人は精一杯の媚びを湛えた笑顔のまま固まっていた。
そう声を掛けたのは、アクアが特訓したペコリーヌ、メリッサ、セシリー、ダクネスである。
「くくくくくっ!一国の姫や領主の娘が娼婦って呼ばれてんぞ!!」
「笑っちゃダメだよ!ダクネスやペコリーヌだって頑張ってるんだから」
ペコリーヌとダクネスは恥ずかしくなったのか、2人の顔が赤くなる。
「ペコリーヌ、籠絡術も学んでますから!って言ってたのに」
「メリッサさん凄い顔してない?絶対プライドズタボロになってるよ」
怒りを堪えながらダクネス達は演技を続ける。
「あの、宜しければ1杯いかがですか?奢らせて下さい」
「あっ!ユースティアナ、ぬ、抜け駆けは許さないですわよ!」
「こんなチンチクリンより、ワタシと飲まない?」
「それともアクシズ教に入信する?」
負けじとデュークに仕掛けるポンコツ四人衆。
「あれ?お前ら、リュウジとカズマの所にいるダクネスとペコリーヌ、それに忌々しい女盗賊とセシリーじゃねぇか。ここはお前らみたいなAdventuresが来る所じゃねぇぞ?せっかくだし、1杯奢ってくれよ」
何っ!?
ペコリーヌ達は突如として現れたダストに絡まれた。