俺はエリスを連れてアクセルの街の外まで戻って来た。俺とエリスは街の正門に向かって歩き出した。
「さて、デュークはどこにいるかエリス、ちょっと調べ」
「『ゴッドブロー』!!」
「グフェッ!!」
横を向いた途端、エリスが俺の顔を殴って来た。メキメキと音を立てながら俺はそのまま数メートル吹っ飛んだ。
「いっだぁっ!?何すん」
「一体何考えてるの!?バカなの!?魔王に戻らなくたってあたしと組んで戦えば勝てたでしょ!?」
エリスは俺の言い分を聞かずに怒鳴り散らした。俺は頬を摩りながら立ち上がった。
マジで殺す気で殴って来やがったよこの子。
俺は兜を外して歯が折れてないか確認した。
「いったぁ……八重歯が折れちまったじゃねぇかよ!」
「ふんっ!知らないよ!」
「もう治したけどね?」
「腹立つぅ〜!!なら再生が追いつかない程殴ってあげようか!?」
「嫌だよ!そんなに怒る事じゃないでしょ!?たかが4時間程度なのに!?」
「それでもだよ!バカッ!!バカバカバカ!」
再び兜を被って歩き出すと、エリスは俺の脇腹をゴンゴンと殴りながら歩き始める。
「ちょっとカズマ達が心配だから様子みて来てくれるか?」
「キミはどこに行くのさ?」
「俺?ちょっと野暮用だよ。デュークがどこにいるか調べて来る」
「あっそ、勝手にすれば?」
冷たいなぁ……。
そう思いながらふと、夜空を見上げた。夜空には月が赤く輝いてアクセルの街を照らしていた。赤い月を見た俺は何も考えずに呟いた。
「今夜の月は物凄く綺麗だなぁ」
それを聞いたエリスは。
「えっ……えぇっ!?」
「見てみ?ホラ、真っ赤に染まって綺麗じゃね!?なんつーか、禍々しいというか?悪魔に持ってこいの月じゃない!?」
「ま、また言った!?また言った!」
エリスは突然、月のように顔を真っ赤にし始める。
「エリス?どうかしたか?」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
「な、なんだよ急に。さっきまでの威勢はどうしたよ」
「べべべべべべべべべ別に!?」
べ何回言うんだよ。
「変なの、とにかくカズマの方を頼んだよ?」
「う、うん。任せて……」
エリスは俺に視線を合わせず、そそくさとカズマの屋敷に向かおうとしていた。
やっぱりおかしい。
「ねえ、具合でも悪いのか?それともまだ怒ってるのか?」
俺はグイッとエリスの手を引き寄せて顔を近づけると、
「ねぇってば!聞いてんの!?」
「ぴょっ!?」
「どっから出てくんのその声。ホントに大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ!?うん、大丈夫大丈夫」
「ホント?無理してるなら天界に戻る?」
俺が困ったかの様に首を傾げると、どこから出したのか分からないが、エリスはボンッと音を立てた。
「うきゅ〜」
「お、おい……大丈夫か?」
「だ、大丈夫……先に言ってるね」
そう言ってエリスはフラフラとカズマの屋敷の方に向かって歩き出した。
大丈夫かなぁ?
若干心配になりながら、俺はバニルの元を訪れた。
「ウラァッ!バニル!」
「フワッー!ハーッハッハッハッハッハッハ!!ゲホッゲホッゲホッ!」
笑いすぎてむせるバニル。
「何むせてんの?この姿は以前リーンを通して見ただろ?」
「すまん、いきなり極上の悪感情を味わってしまってな」
「……へぇ」
ニヤリと俺は笑い、一瞬でバニルの背後に回ってチョークスリーパーをかけた。
「とったぁっ!!」
「ぐふぇ!?」
俺はギリギリとバニルの首を絞めながら、
「よくも今まで散々コケにしてくれたなぁっ!地獄の公爵様よぉっ!」
「わ、我輩が見通せないだと……!?」
「やっぱり魔王の状態だと見通せないようだな。ならこのまま首をねじ切ってその仮面カチ割ってやろうか!?」
「よ、よさぬか!!このチンピラ魔王めっ!!」
バニルはタップをするが、俺は更に腕に力を入れた。
くくく、愉快愉快!!
「だ、堕天使の事を聞きに来たのだろう?我輩を殺したら明日まで分からぬままになるぞ!?」
「おっと、そうだったな」
俺は力を緩めてバニルを離した。バニルはゼーゼーと息切れをしたあと、
「と見せかけて『バニル式殺人光線』!!」
バニルは変なポーズをとりながら目から光線を出して来た。
何それカッコイイ!?
だが俺は、
「あぶねっ!」
ペシッ!
俺はバニルの光線をペシッと叩き落とした。バニルはギリギリ歯を見せながら口元を引きつらせていた。
「きぃーーーっ!我輩の技をボールの如く簡単に弾きおって!!」
「舐めんじゃねぇよ。そんな光線で俺が殺せると思うなよ」
「何をっ!?だったら表に出るがいいっ!キツイのをお見舞いしてやる」
「はいはい。で?デュークはどこよ」
バニルを適当にあしらいながらデュークの行方を尋ねると、バニルは歯を食いしばりながら、
「我輩をその辺の酔っ払いの様に扱いおって!!我輩が見通さなくても恐らく貴様を待つ為にメンヘラ店主が待ち合わせた荒野にでも行ってみるがいい!!」
「なるほどね、情報ありがと。んじゃ、仇とってくるわ」
「ふんっ!さっさと叩き潰してくるがいいっ!」
俺が店から出ると、バニルはニヤリと笑った。
「堕天使め、眠れる獅子を叩き起しよったわ」
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その後。家でエリスを待っているとマリューと一緒に戻って来た。マリューは俺を見た途端、
「お久しぶりです、我が魔王・リュウジ様」
「マリューさん!?どうしたんですか!?」
マリューは俺の前にひざまついて頭を下げた。俺はマリューの頭を撫でながら、
「マリュー、いや、竜帝・魔竜。今一度俺の元へ戻って来い」
「はい。今しばらくお待ちを」
そう言ってマリューは家の中に入ると、魂のみで俺の元に戻って来た。
《お待たせしました》
「よし。纏え魔竜」
《はいっ!》
マリューは俺の体に解けるように入ると、背中から薄紫色のドラゴンの翼脚を出し始めた。
うん、しっくりくる。
エリスは本来の姿を目の当たりにすると、複雑な顔をしだす。
「初めて会った時はそんな翼出してなかったよね?それがキミらの本当の姿なの?」
「ああ、そうだよ?」
《これが正義を司る魔王アンドロマリウス様の姿です》
「後は魔剣ストームブリンガーがあれば─────」
ズドーン!
突然、俺の鼻先スレスレに何かが空から降って来た。地面を見てみると、魔剣ストームブリンガーが深く刺さっていた。
「びっくりしたぁっ!!ネメシス仕事雑すぎるだろぉっ!!」
「もう復活させたんだね」
「ったく、人の武器を……よっと!」
深く刺さった魔剣ストームブリンガーを引き抜き、背中に背負った。
「よしっ!魔剣も魔竜も戻って来た。後はデュークを潰すだけ」
《そう言えば手合わせしたいと言ってましたよね?好都合じゃないですか》
「準備出来たね?んじゃ、行こっか」
「おう」
《参りましょう。リュウジ様、エリス様》
俺達はデュークがいると言う荒野に足を運んだ。真っ赤な満月に雪がチラつく中、俺はこちらに背を向けて焚き火をしているデュークに声を掛けた。
「よぉ、また会ったな」
「貴様か、フクヤマリュウジ。仲間やウィズの敵討ちにでも来たか?」
「だとしたらどうする?」
俺が魔剣ストームブリンガーに手をかけると、デュークは立ち上がった。
「酒場で貴様と出会った時、確かお前はこう言ったな。『応援したくなる』と。思えばあの時、俺の力量を測りに来たのだろう?ベルディア殿、ハンス殿、バニル殿、セレスディナ殿、シルビア殿をことごとく退いた。やはり貴様は油断ならん男だったな」
いや、偶然なんだけど。
「既に今回の事は魔王様の下へ報告書を送った。準備が整い次第この街は、魔王軍の最重要攻略拠点となるだろう」
デュークが勘違いをしながら不敵に笑い肩を動かしていると。
「いま、なんて言った?この街が最重要攻略拠点に?ここが襲われる?」
「お、おいエリス?エリス〜?」
突然、エリスが俺の言葉に聞く耳を持たずにワナワナと震え出した。デュークはエリスと聞いた途端、こっちを振り向いた。
「エリス?今エリスと」
「『ゴッドブロー』!!」
────いつの間にかエリスが一瞬で距離を詰めてデュークを思い切りぶん殴った。デュークは吹っ飛ばされて岩山にめり込んで苦しがっていた。
「ぐはぁっ!!」
「堕天使デューク。私が誰か分かりますね?」
「はぁっ、はぁっ、幸運の女神エリスだと!?なぜ貴様がここに!?」
「何故かって?それは天に使える身でありながら人間に危害を加えた上に堕天使に成り下がったからですよ」
「う、うるさい、俺達天使は散々神々にこき使われてきたんだ!なら、その代価として多少力を使ったっていいだろうが!言ってみれば、未払い分の給料の回収だ!」
「へぇ、代価が欲しいんですね?良いでしょう。お支払いします」
エリスはそう言って俺の後ろに回った。
え?俺?
「本気を出した鋼のリュウジと戦いたいと言ったそうですね?」
「あ、ああ。言ったが?」
「代価として本気を出したリュウジと戦わせましょう。この姿がリュウジの本当の姿です」
「何っ!?」
デュークは咄嗟に身構えると、俺は軽く会釈をした。エリスはグイグイと俺の背中を突き飛ばした。俺は振り向いてエリスに尋ねる。
「俺が先にやって良いのか?」
「良いよ?キミがやった方が早いしね?」
「まぁ、お前が良いって言うならやらせて貰うよ」
俺はデュークの方を向いて思い切り魔力を解放した。解放したと同時に地面にクレーターが出来た。それを見たデュークは冷や汗を流し始める。
「これが……本来の姿か……」
「望み通り、本気でやってやるよ」
《Adventuresの仇取らせてもらいます!!》
マリューは翼脚を拳のようにしてゴキゴキと鳴らし、翼を広げた。
「面白い、望む所だ!『インフェルノ』!!」
「『ドライファ・ダークネスインフェルノ』!!」
デュークが放った紅い炎と俺が放った黒い炎がぶつかり合う。
「くっ、黒い炎だと!?」
「残念だったな。炎を扱えるのはお前だけじゃない」
「『クリムゾン・レーザー』ッッ!!」
デュークが紅い熱線が俺に向かってくる。
「参れ!魔竜!」
《『プロミネンス・ダークノヴァ』!!》
魔竜は左右の翼脚の爪を広げて黒い太陽の様な形を作り出した。そして、巨大な光線になってデュークに向かって突き進み、デュークの魔法を飲み込んだ。
何その技!?かっけぇ!!
「お、俺の魔法がかき消されただとっ!?」
デュークがギリギリ飛び上がってかわして唖然と見ている中、
《堕天使と言ってもこの程度の様ですね。ルシファー様の方がよっぽど強いですよ?》
「お前こんな技隠し持ってたのかよ」
《ええまぁ。この技は呪付きですよ?》
しかもハイスペック!!
「厄介な使い魔が潜んでる様だな。なら動きを封じるまで!!『ラーヴァ・スワンプ』!!」
デュークが俺の足元に手をかざした瞬間、俺の足元が溶岩の様にドロドロと溶岩の沼と化した。
「あっつっ!ちょ、魔竜なんとかして!!」
《お任せ下さい!『魔竜・爆裂衝撃』!!》
魔竜が翼脚を広げると、足元から広範囲に地面を爆発させて溶岩の沼を吹き飛ばした。
「ば、爆発で溶岩の沼を吹き飛ばしただと!?」
「あー、熱かった。今度はこっちの番だな?『カースド・ライトニング』!!」
いつもの様に手をかざして放つと、普段とまったく違う巨大な黒い稲妻が嵐のようにデュークに降り注いだ。デュークは猛スピードで稲妻をかわし続けるが、爆風に揉まれて岩石にぶつかった。
「ぐおぉ……なんという威力だ……」
「もうおしまいか?」
上空から見下ろす様に眺めているとデュークは、
「まだだ!まだ負けていないっ!『ファイアボール』!!」
デュークは諦めずにファイアボールの弾幕を俺に向けて放って来た。だがが俺は溜息を吐きながら、
「やれやれ……魔竜!」
《はいっ!顕現せよ。我は世界を統べる竜帝。彼の者を阻む障壁を生み出せ『魔竜・八面鏡』!!》
ズドドドドーン!!
ファイアボールの弾幕は、魔竜が作り出した障壁により防がれた。
「もう、お前は勝てない。大人しく降伏しろ」
「魔法で勝てないなら仕方ない。剣だ!剣で勝負しろ!!『パワード』!『スピードゲイン』!『プロテクション』!」
性懲りも無くデュークは剣を抜いて構えだした。
もうやめとけばいいのに。
《リュウジ様、まだやる気の様ですよ?ここはもう一気に終わらせましょう。時間もありませんしね》
「そうだな。魔竜、ストームブリンガーを取ってくれ」
《はい》
魔竜は翼脚で背中に背負っていた魔剣ストームブリンガーを引き抜いた。
《リュウジ様。どうぞ》
「おう。魔竜、こっからは手を出すなよ?」
《別に構いませんけど?支援魔法をかけておきますか?》
「え?お前、そんなのも使えんの!?」
《ええ、一応使えますよ?》
竜帝、マジで凄いっ!!
「かけてかけて!見て見たい!!」
《分かりました。『魔竜・歌鳥の加護』!!》
今まで無いくらいの加護を受けた。
なんというか、エレクトロの倍以上の支援魔法を感じる。そう言えばセレスディナが信仰が違えば重ねがけが出来るとか言ってたな。
という事は……。
俺はエリスの方を向いて、
「エリス、支援魔法を濃いめに掛けてくれる?」
「えっ!?あたしの支援魔法いる!?魔竜さんだけで良くない!?」
「まぁまぁ、そこは気にすんなよ。ちょっと試したいだけ」
俺がそう言うと、エリスは半ば諦め気味に。
「もう、仕方ないなぁ……。『パワード』!『スピードゲイン』!『プロテクション』!『フレッシング』!!」
「いや幸運値は上げなくていいから」
「オマケだよ。それにフレッシングならアクア先輩より自信があるんだよねぇ」
「ほう、それは凄いな。さてと、準備も出来たことだし」
俺は更にエリスから支援魔法を受け、さらに強化された状態で魔剣ストームブリンガーをデュークに突きつけた。
「さぁ、第2ラウンドと行こうか?」
魔竜の技は盾の勇者の成り上がり12巻。デュークの魔法はこの素晴らしい世界に祝福を!13巻を参考にしています。