※この作品はR-18です。

この元魔王に素晴らしい祝福を!改訂版   作:ボトルキャプテン

169 / 232
141 特別なケーキ

魔剣ストームブリンガーを構えた瞬間、思い切り地面を蹴ってデュークに斬りかかった。

 

「はぁぁっ!!」

「うおおっ!!」

 

ガキーン!

 

刃と刃が激しくぶつかり合い、火花を散らす。2度3度と刃を交え、鍔迫り合いになった。

 

「やはり剣術が得意だったのだな」

「この世界に来て俺の剣ダコを見破ったのはアンタが初めてだよ」

「なるほど、俺も満更捨てたものじゃなかったな」

 

そう言い放つと、デュークは俺から離れて右手をかざした。

 

「この距離なら魔法も撃てまい、『クリムゾン・レーザー』!!」

 

デュークはおびただしい数の熱線を放つ。俺は魔剣ストームブリンガーをギュッと握り、

 

「『暗黒剣』!!オラァァァッ!!」

 

俺は熱線を走りながら魔剣で弾きながらデュークに近付き、デュークの間合いに入った。

 

もらった!!

 

デュークを袈裟斬りしようとした瞬間、デュークはニヤリと笑った。

 

「かかったな!『セイクリッド・エクソシズム』!!」

 

デュークの足元の周りに魔法陣が突如現れた。

 

しまった!!

 

「ぐぁぁぁぁっ!!」

《きゃぁぁぁぁっ!!》

「リュウジ!?マリューさん!?」

 

神聖魔法を食らった俺は魔剣を落とし、ぶすぶすと焦げた様な煙を上げながら大の字になって倒れた。デュークは勝利を確信し、剣を鞘に収めた。

 

「やはり所詮は魔族。神聖魔法の効果は抜群の様だな。さぁ、幸福の女神エリス、次は貴様の番だ」

「構いませんが、随分余裕なんですね」

 

エリスは勝ち誇っているデュークに言い放つと、デュークは勝ち誇ったかのように高笑いをした。

 

「はーっはっはっは!俺の神聖魔法をモロに食らったんだぞ?生き延びている訳がない。そうだな、念には念を入れておくか」

 

デュークは剣を抜いて俺に近づいて俺の胸に剣を刺した。刺してもピクリとも動かない俺を見て勝利を確信しのか。うんうんと頷いていた。

 

「やはり死んでいる。俺の勝ちだな」

「それはどうですかね」

 

デュークの後ろでスっと立ち上がった俺はみるみるうちに体を再生させていた。首をゴキゴキと鳴らし、

 

「さすがは神聖魔法、効いた効いた」

《染みる感じの痛覚でしたね、でも所詮は堕天使ってところでしょうか》

 

デュークが後ろを振り向いた瞬間、

 

「オラァァァッ!!」

 

俺が殴ろうとするが、デュークはすかさず剣を抜いて俺の拳を受けた。

 

「なにっ!?生き返っただと!?」

「残念だったな。俺は不死身の呪いにかかってるんだよ。だからお前がどんなに強かろうが何度でも力を付けて生き返る」

「ち、力だと!?」

「そうだな、例えば……」

 

俺は防がれた右手の傍に左手を開いてかざし、呟いた。

 

「『クリムゾン・レーザー』!!」

 

俺が放った熱線はデュークの左胸を貫いた。貫かれたデュークは大きな風穴を開けた胸を抑えてうずくまった。

 

「うぐうっ!?俺の魔法を使えるだと!?」

「なんで!?冒険者カードなんて使ってなかったのに!?」

 

エリスもカラクリが分からなかったのか、驚いた声を出した。

 

「あー、エリスも知らなかったんだもんな。俺は死ねば死ぬほど強くなるんだよ。この世界だと、レベルアップと相手が使った魔法を覚えられる様だな」

「何それ!?反則じゃん!」

「魔王はずるいんです、絶望的にずるくて卑怯なんです」

「きぃーー!ムカつく!!」

 

俺とエリスが話し込んでいると、デュークは魔法陣を作り始め、その上でなぜかデュークは自らの胸に、剣を突き立てていた。

 

「油断したなバカどもめ!!」

 

グサッ!

 

デュークの言葉を聞いた俺とエリスはデュークを見た。エリスは何をしているのか分かったのか、指をさして騒ぎ出す。

 

「あっー!見て!アイツ、リッチーになる儀式をやったよ!!天使のくせにアンデッドに成り下がったよ!」

「あーあ、降伏して俺達と天界に戻ればなんとかなったのにね」

「ごはっ……!見ろ、この湧き上がる強大な魔力を……。ああ、黒い剣に刺された箇所から、徐々に力が湧き出してくる……!体一つ一つの細胞から命が失われていく傍から、不死の肉体に変わって行く様が分かる!俺は堕ちたとはいえ元は天使の身、この手だけは使いたくなかったが相手が魔王と女神なら仕方ない。さぁ、共に不死者同士の終わりなき戦いをしようではないかっ!」

 

俺は不死身ではあるけど、リッチーでは無いけどね。

 

「エリス、どうする?」

「どうするって?そんなの決まってるじゃん」

 

エリスは腕を捲ってブンブンを腕を回し出した。

 

なるほど、ゴッドブローで吹っ飛ばすつもりか。なら俺は……。

 

「ちょっとエリス、独り占めはダメだよ。俺もやる」

「ええ?もう、仕方ないなぁ……」

 

俺とエリスは同時に飛び出し、拳を振り上げた。デュークは、余裕の表れなのか、両手を広げて叫び出す。

 

「不死になった俺にどんな攻撃も通用しない!さぁかかって来いっ!」

「『ゴッド』」

「『悪魔(デビル)』」

 

俺の拳は黒い炎を纏いエリスの拳は光を帯びて、

 

「「『ブロォォォォォ』」!!」

 

デュークの胸に直撃し、

 

「な、なんだ!?こ、この攻撃は!?う、うぎゃぁぁぁぁああああ!!」

 

黒い炎に焼かれながら、浄化作用のあるエリスの攻撃を受けたデュークは数百メートル殴り飛ばされた。悲鳴を上げながら薄くなったデュークの傍に、包帯を巻いたウィズが、そっと歩みより手を添えた。

 

「ゲホッゲホッ、有り得ない!!闇魔法と神聖魔法はけっして混じり合う事がない筈なのに、なんだ!?あの闇と光の攻撃は……!」

「私と関わったばっかりに、こんな姿になってしまって……。せめて最後は私の手で逝かせてあげます……。『ドレインタッチ』!!」

 

ウィズに触れられた部分からゴッソリと魔力を吸われ、デュークが更に薄くなった。

 

「やめろ、やめてくれ!待ってくれ、誤解だ!誤解なんだ!」

「誤解?私やAdventuresの皆さんに傷を追わせておいて、挙句の果てにはリッチーにまで成っておいて、一体何が誤解なんですか?」

 

険しい声でウィズが問う。

 

「脅されたんだ、お前達を攻撃しないと家族を殺すって!Adventuresの情報を手に入れなければ家族全員皆殺しにすると脅されたんだ!だから仕方なく俺は魔王軍に入って」

 

今思いついたかのような嘘を吐くデュークの言葉を聞いたウィズは。

 

「そ、そんな……。だ、騙されませんよっ!?そんな事言ったって……」

 

デュークは意外と騙せそうとポカンとするが、ハタと気を取り直し、

 

「す、済まなかった。本当に悪かった。俺はお前と本当に付き合いたい!ようやく真なる愛に目覚めたんだ!。今すぐ信じてくれとは言わない。だから……信頼を取り戻す為に、まずはお友達からお願いしたいっ!」

「ま、まずはお友達から……」

 

ウィズは少しの間悩み、答えを出した。

 

「分かりました。お友達からよろしく────」

 

「「「どぉりゃぁぁぁぁ!!」」」

 

ウィズが手を差し伸べようとした瞬間。魔竜の翼脚で飛んで来た俺とエリスがトドメの一発を薄くなったデュークに食らわせた。

 

「よっしゃー!はいっ!トドメの一撃は俺でしたー!」

「何言ってんのさ!あたしの攻撃がトドメを刺したんだよ!」

「違いますぅ、俺ですぅ!」

「違いますぅ、あたしですぅ!」

 

突然現れたと思えばケンカをする魔王と女神。そして目の前で友達を殺された不死王。

 

「あっ、ウィズ!!大丈夫!?怪我してない!?」

「あ、えーっと。不死王ウィズさんですね?私は幸福の女神エリスです」

 

ウィズの存在に気付いた俺とエリスは声を掛けた。

 

「わぁぁぁぁぁぁっ!酷いです!あんまりですぅぅぅ!!」

「えぇっ!?何!?どうしたんですか!?」

「ウィズ!?なんで泣くの!?」

 

ウィズはさめざめと泣きながら俺達に訴えかけて来た。

 

「デュークさんは騙されて私達を攻撃して来たんです!どうして殺しちゃったんですかぁぁぁっ!!」

 

えっ?

 

ウィズの言葉を聞いた俺とエリスは目を点にする。

 

「えっ?アイツ、堕天使だったんだよ?それなのにアイツの話を信じるの?」

「ウィズさん、貴女は優しい方です。デュークの話を信じるのも無理もありません。ですが、あの堕天使は貴女を殺そうとしたのですよ?ウィズさんはとってもいい人なんですからきっとデュークなんかよりもっと良い人が出来ますよ?」

「うっうっ……エリス様、なんですよね?それは本当ですか?私はリュウジさんにもデュークさんにもフラれちゃったんですよ?チャンスを一気に2回も無駄にしたんですよ!?」

 

岩石に突っ伏して泣いていたウィズがエリスの言葉に一瞬だけチラリと顔を上げる。

 

「えっちょっと、それは今言わないでよ!」

「へぇ〜告白されたんだ。そしてこんな可愛いウィズさんをフッたんだ」

「エリス様はそれでも私にも祝福が来るんでしょうか!?」

「ええ、勿論来ますよ。こんなくそ魔王なんかより、もっと家庭的で働き者の冒険者が必ず現れますよ!幸福の女神が自信を持って言います!」

《リュウジ様凄い言われようですね》

 

エリスのトゲのある慰めに、ウィズの顔が明るくなる。

 

「そ、そうですよね!出会いなんてもっとありますよね!焦る必要なんて無かったんですね!」

「そうですよ!元気だして下さい!」

《そうですよ!ウィズ様、愚痴なら私が聞きますから!ねっ!》

「さて、デュークも倒したし帰──」

 

帰ろうとしたその時、時間切れが訪れて魔王の姿が消え始めた。

 

「おお、戻った戻った」

「戻りましたか。では、私は天界に戻ります」

「エリス様、有難うございました」

「マリュー、ウィズを慰めてやってくれ」

《かしこまりました。ではウィズ様、今夜は騒ぎましょう!》

「そうですねマリューさん!行きましょう!」

 

マリューはそのままウィズ共に街へ帰って行った。一人取り残された俺は空を見上げた。

 

「さぁて、色々考えたけどプレゼントはアレでいいかぁ……」

 

────────────────────────

 

翌朝。俺はマリューの体を担いでウィズの店に行くと、バニルの姿はなくウィズが自室で酒瓶を何本も空にして眠っていた。俺はマリューの体を部屋に置き、ウィズの机に魔力と幸運値が上がるペンダントを置いてその場を後にした。

 

向かった先は、

 

「あー疲れたぁ……」

「よっ、戻ってそうそう書類整理か?」

 

俺は天界に行ってエリスの家に来ていた。書類の山から顔を出したエリスは慌てて顔を隠す。

 

「お、お疲れ様!」

「なんだよ、昨日からなんか変だぞお前?」

「べ、別に!?あっ、あ〜間違えちゃった〜」

「ちょっとは休めよ。ほら、差し入れ持って来たから」

 

俺はケーキボックスを見せると、エリスは自ら頬を叩いて気を取り直して立ち上がる。

 

「ありがとう、そうさせてもらうよ。けどその前に、冒険者カード出してくれる?」

「えっ?なんで?」

「良いから早く出して」

 

なんだろう?

 

俺は不思議に思いながら懐から冒険者カードを取り出してエリスに渡した。エリスは俺の取得したスキル欄をマジマジと見つめると、

 

「やっぱりね!キミ、統一神界で他の人からスキル教わったでしょ?」

「な、なんの事?」

「とぼけたって無駄だよ?昨日天界に戻ってから調べたんだけどやっぱりこの世界の勇者候補の中には『竜人化』のスキルを持ってる人なんていなかった。正直に言いなさい。誰から教わったの?」

 

オー、ジーザス。

 

逃げても無駄と判断した俺は溜息を吐きながら……。

 

「セイヤの仲間、マッシュくんから教えて貰ったんだよ。あの子竜人族の末裔だろ?しかも完璧に竜人になれるし、性能も抜群。だから教わった」

 

俺がそう言うと、

 

「何バカな事言ってんのさぁっ!ダメに決まってるでしょ!いい?他所の異世界の技を転生特典以外で習得するのは重罪なんだよ!?」

 

あーそう言えば……前の世界もそれで魔王になったんだっけな。

 

「分かった分かった。悪かったよ。消してくれ」

「あ、あれ?もうちょい駄々こねると思ったけど素直だね」

「前も似たような事でヘマしたからな。ネメシスに迷惑かかる前に消しとけばいいだろ」

「まぁね、後でネメシスが今回の件で話があるんだって」

「ふーん、なんだろうな」

 

エリスは俺の冒険者カードから『竜人化』を消去して俺に返して来た。

 

「はい、どーぞ」

「はい、どーも」

「ちなみになんだけど、誰にも教えてないよね?」

 

あっ……。

 

「い、いや……?教えてないよ?」

「冒険者の人はもう一人しかいないよね?カズマさんに教えたの?」

「はい……あまりにも死ぬし、弱いから竜人化で補強しようと」

 

白状すると、エリスは頭を抱え込んだ。

 

「もぉ〜何やってんだよぉ〜。けどまぁ、カズマさんなら大丈夫かな?」

「はぁ!?カズマなら良いってなにそのエコヒイキ!?」

「しょうがないじゃん。カズマさん弱いんだもん」

 

ズルくない!?

 

「もういいや、神々の尻拭いは金輪際しないからな」

「今回はごめんね、あたしのミスだよ」

「別にいいよ。久しぶりに魔王にも戻れたしな。ほら、食べよ?」

「差し入れ何を持ってきてくれたの?」

 

エリスがワクワクしながらケーキボックスを見つめると、俺は机に箱を置いて開けた。

 

「まぁ、あんまり自信がないけど……こんなの作ってみた」

 

箱の中には、Happybirthday&Merry Christmasと綴られたケーキが入っていた。

 

「わぁ……」

「いやぁ、上手く出来なくてごめん」

「そんな事ないよ!すっごく嬉しい!!早く食べよ!」

「奮発して高いシャンパンも買ってきたんだ。飲もう」

 

その後。

 

「おいエリス」

「ん?何?」

 

エリスがワイグラスをクイクイと回しながらシャンパンを飲んでいる時に俺は、

 

「俺のどこが好きなんだ?言ってみろ」

「飲みすぎだよ!何バカな事言ってんのさぁ!普段だってそんなに飲めないクセに飲むからだよ!!」

 

俺は買ってきたシャンパンを全て飲み干し、酔っていた。

 

「俺はお前が好きな所は太陽の数だけ言えるぞ?」

「ねぇ、1個じゃん。あたしの好きな所1個しかないの!?」

「ばれたかぁ」

「キミは酔っ払うとどんだけポンコツに成り下がるの?」

「好き」

「はいはい、酔っ払いの言葉なんて聞かないよ〜」

 

エリスがべーっと舌を出して俺に言うと、俺は……。

 

「なんでそんな事いうの?俺の事嫌いか!?」

「はいはい、ちょっと寝たらまた聞いてあげるからね」

「嫌いか……そうか……俺の事嫌いか!!魔王だもんな!!」

 

ガシャンと音を立てて俺は項垂れる。

 

「ちょっと寝てからまた話そうね。酔ってるから自分で何言ってるか分かってないでしょ?」

「俺はお前がすち!!」

「すち?なにすちって?」

「すち!!なんども言わすんじゃねぇよ馬鹿野郎!!」

「はいはい、こんな所で寝たらまた風邪ひくよ?はいはい」

 

エリスに宥めなれながら酔った俺はベッドに寝かせられた。だが、俺は頭だけを動かして。

 

「やだ!なんなの!?男心をなんだと思ってるの!?あーもう、泣きたくなる!お前なんか魔王泣かせるクソ女神だ!呪いのポイント1億点優勝だ馬鹿野郎!!もうダメだ俺はぁぁぁっうわぁぁぁっ!!」

 

情緒不安定になった俺はわーわーと泣き始める。エリスもめんどくさくなったのか、はいはいと言って。

 

「分かった分かった。おやすみ」

 

俺を赤子のように寝かし付ける様に添い寝をしながら俺の頭を撫でると、俺は疲れたのか眠りについた。

 

「やれやれ、ムードもへったくれもないなぁ……」

 

エリスも隣で眠り始めた。

 

 

しばらく眠っていた俺が目を開けると、そこは知らない天井が映り出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。