そんな感じで平和な一時を送っていた。あの後土埃だらけになりながらカズマの屋敷に戻って来て女性陣が風呂に入ってる間にカズマはおもむろに新聞に目を通し始めた。
「冒険者ランキング?」
「あ〜それな、なんか冒険者のランキングが発表されたらしいぞ?」
「ほう?魔王軍幹部とやり合ってる俺は上位に決まってるだろ」
「カズマが上位だって?そんな事があるわけないだろ」
ミツルギが鎧を脱いで鎧の汚れをとりながら言い放つ。
「まぁ、でも魔王軍幹部を倒してるのは間違いないからな、トップ10には入ってるんじゃないか?」
俺達がカズマと共に新聞を覗いて見ると、
【冒険者ランキング、第1位アイザワアズサ、第2位フクヤマリュウジ、第3位ミツルギキョウヤ】
「おいふざけんなよ、なんでお前らが上位に入ってんだよ」
「そんな事言ったってねぇ?」
「それより、この『アイザワアズサ』っていうのは僕らと同じ日本人なんじゃないか?」
「誰だよコイツ」
俺達はランキング1位の人物の情報を読んでみた。
【アイザワアズサ、通称『高原の魔女』と呼ばれた伝説のアークウィザード。アクセルの街から北部のフラタ村の高原に住んでいるという。ここ数十年フラタ村は魔王軍の進行がないのは、高原の魔女のおかげという】
うわ、強そう。
「たった1人で村を守り続けてんのかよ、そりゃすげぇな」
「確かに、なにかチート能力でもあるのだろうか?」
「それもなんだけど、カズマは結局何位なんだろうな」
俺とミツルギがランキングをずーっと指で探して行くと……。
【53位サトウカズマ。魔王軍幹部を倒しているが、その功績が霞むほどの様々なトラブルを引き起こしている。報酬が手に入ったら全く働かず、いっちょ前に屋敷に住んでいるという】
「おい、なんだコレは」
「事実じゃん。間違った情報じゃないだろ」
自分のランキングを見た途端、カズマは怒り始めた。
「なんでお前らの名前が上位にあって俺がこんなに低いんだよ!この記事書いた新聞社どこだ、抗議してやる!」
自分の名前が低い事に怒るカズマに、目の前でミツルギが不敵に笑みを浮かべ言ってくる。
「これは活躍している冒険者ランキングだぞ、屋敷に引き篭っているカズマが載るわけがない。上位に入りたいなら僕らより活躍して名を上げるしかないぞ?」
ミツルギは最近最前線の砦が押されているという情報を耳にしていたらしい。近々俺も行こうかと考えていた所だ。
だが、カズマは……。
「タイトルマッチだ」
「は?」
「な、何を言ってるんだ?」
俺とミツルギが首を傾げると、カズマが突然立ち上がって。
「一気に名前を上げるなら、有名な冒険者を倒して名前を上げればいい。俺には竜人化とドレインタッチがある。こんな高原の魔女とかなんかに負ける訳がねぇ」
何を言い出すんだコイツは……。
「まさかお前、この高原の魔女を倒そうってんじゃないよな?」
「貴様はそこまでして楽をしたいのか!?」
「当たり前だ。俺は楽にランキングの上位になりたい。なら、このランキング1位の奴を泣かして俺がランキング1位より強いって証明にもなるだろ?」
本気で言ってんのか、コイツ。
「貴様というヤツは!もっと世界に貢献したらどうだ!?そうすれば少しずつ名前を上げれるだろう!!」
「嫌だね。これ以上活躍して魔王軍に目をつけられたくないからな」
「リュウジ、君からも何か言ってやれ!」
ミツルギが呆れながら俺に言ってくる。俺は腕を組みながら、
「まぁ、俺も聖テレサ女学院にいた時に高原の魔女の噂は聞いていた。同じ日本人見たいだし、1回くらい会ってみたくないか?」
俺の言葉にミツルギは、
「確かに、ランキング1位になった経緯が気になるね。なら、僕らだけで会いに行ってみるかい?」
「そうだな。伝説のアークウィザードって呼ばれてるんだし、魔法の一つでも教われれば儲けもんだし。行ってみるか」
「よーし、なら話は決まったな。タイトルマッチだ!!」
話が決まった俺達はいそいそと荷物をまとめ始めた。それと同時に、風呂に行っていた女性陣が戻って来た。タオルを首にかけたアクアが俺達に声を掛けてきた。
「あら、あんた達そんな荷物持ってどこ行くの?」
アクアに尋ねられた俺達は同時にアクアの方を向いて、
「「「タイトルマッチ」」」
「はぁ?」
アクア達の静止も聞かずに俺は行き先を告げてフラタ村に向かった。
────────────────────────
テレポート屋を捕まえて半日程で俺達はフラタ村に辿り着いた。そこはのどかな村で魔王軍の魔の字もないほど平和だった。一言で言うとよどみがない、そんな感じだった。歩いていても明らかに牧歌的な空気が流れていた。俺達は唖然としながら、
「平和だな」
「平和だな」
「ここは本当にアクセルの街に近い村なのか?」
「ちょっと近くの人に聞いてみるか?」
「なんだろう、ファンタジー感が急に出てこない?ねぇ、来ない?」
「確かに来るが……なんだろうか、これこそファンタジーと言うべきか」
「いや分かるよ?俺達の感覚がおかしくなったのかも知んないけどさ、俺達も異世界生活長いんだからさ、しっかりしようよ!」
「そ、そうだな。せっかく来たんだ、堪能しよう」
ミツルギがうんうんと頷く中、俺は親切そうなおばさんを見つけて、声をかける。
「こんにちは〜、すいません。アクセルの街から来た冒険者なんですけど、この村のことを教えて貰えませんか?」
「ここはフラタ村だよ。村のことなら、ギルドの受付のナタリーちゃんがよく知ってるかねぇ。ほかの土地から来た冒険者に村のことを説明したりするから、説明も手馴れているんだよ」
あれ?なに、このチュートリアル的な感じ?
「あ、ありがとうございます」
「お兄ちゃん達はアクセルの街の冒険者だろ?。おばさんがギルドまで案内してあげるよ。といっても、小さな村だからそのうち見つかるだろうけどね」
「いえいえ、そんな事ありませんよ!助かります!」
あー、超親切。
本当に親切なおばさんとともに冒険者ギルドに向かった。着いた先には、アクセルの街の冒険者ギルドより小さい建物が目に入った。
「あ、イマルおばさん、こんにちは!」
「ナタリーちゃん、このお兄ちゃん達、アクセルの街からやって来たんだ。村のことを教えてやってくれ」
俺、カズマ、ミツルギは同時に頭を下げた。
「ああ、いいですよ。では、この受付でご説明しましょう」
「んじゃ、おばさんは帰るからね」
「ありがとうございました」
「助かりました」
「また会いましょう」
説明に入る前にイマルおばさんと呼ばれたおばさんと別れ、ナタリーという受付嬢から説明を受け始めた。
「このあたりは小さいスライムぐらいしか出ません。なので、村の外で居眠りしても安全なほどです」
どんだけ平和なんだよ。
それを聞いた途端カズマが、
「ジャイアント・トードは出ないんですか?」
「出ません」
「んじゃ、魔王軍の兵隊とかは?」
「生まれてこの方見た事ありませんね?」
「魔王軍幹部の襲撃とかはないんですか!?」
「魔王軍幹部ってなんですか?」
嘘でしょ!?
ナタリーちゃんのあっけらかんとした言葉を聞いて。
「リュウジ、ミツルギ、ここに引っ越さないか?」
「いや、気持ちは分かるけどダメだろ。屋敷どうすんだよ」
「僕らの拠点ここにしようかな」
「いや、気持ちは分かるけど抜け駆けさせねぇよ?」
俺達の会話を聞いていたナタリーちゃんは苦笑いをしながら、
「あはは……。小さい村ですが、パンや塩といった最低限の生活必需品は買えますからご心配なく。ただ、人口がそんなに多くないですし、商売をする場合は大変かも知れませんが」
ふむ、そうか……なら俺の薬草が出番かも知れないな。
俺が考え事をしていると、カズマが肘でつついて来た。
はいはい、本題に入りましょうかね。
「あの、ナタリーさん。俺らは高原の魔女さんに会いに来たんですけど、どこにいるか分かりませんか?」
「高原の魔女様ですか?魔女様ならこの先をしばらく行った先の高原に住んでらっしゃいますよ?高原の魔女様の名前の由来はそこにあります」
ナタリーちゃんに地図を見せてもらった。
よし、居場所は分かった。
「もしかして、高原の魔女様に挑戦ですか?」
「え?ええ、まぁそうですけど……」
「いえ、無事をお祈り申し上げます」
「おい、なんだその意味深な言葉は?」
カズマがナタリーちゃんに食ってかかるが、俺とミツルギが止めてそのまま村の奥にある高原に向かった。しばらく歩いた先にだだっ広い高原のど真ん中にポツンと一軒家があった。
ここが、高原の魔女の家だろうか?
ドアに近付いた途端カズマが、
「なぁ?かなりヨボヨボのおばあちゃんだったらどうする?」
「やめろよそういう言い方すんの、その時は魔法とか教えて貰って帰ればいいじゃん」
「確かにな、お年寄りに腕試しをするのも人としてどうかとおもうからな」
「とにかくノックするからな?」
俺は身なりを整えて扉をノックした。
ドンドン!
「はい、いったいなんの用でしょうか?」
「「「─────っ!!!」」」
俺達の前にはキラキラと輝く金色の腰までにかかった長い髪に大きなとんがり帽子、トルコ石の様な瞳の女性が現れた。見た目はめぐみんやゆんゆん、あるえと同等くらいの年齢に見えた。
思ってたのと違う!!
俺は念の為に、
「え、えーっと、あなたが高原の魔女さんですか?」
「はい、そうですが。残念ですけど、このあたり、冒険には不向きな土地ですよ。モンスターも弱いですし、ダンジョンもないし」
「あ、いえ、そういった目的ではないです!」
ミツルギがそう答えると、高原の魔女は首を傾げた。
「じゃあどんな御用でしょうか?」
「高原の魔女さん、俺と腕試しをさせて下さい」
「…………えっ?」
高原の魔女は上ずった声を出した。
「腕試し?腕相撲でもするんですか?」
「腕相撲っすか?それでも構いませんよ。俺は女の子相手にも手加減をしない主義で」
「すいません、ちょっと待ってて下さい!」
俺とミツルギは慌ててカズマを引きずって高原の魔女から離れた。俺はトーンを落としながらカズマに注意する。
「お前何やってんの?その話出すのまだ早いから」
「なんでだよ!腕相撲だぞ!?竜人化すれば一発じゃん」
「貴様というヤツは、プライドはないのか!?」
「ないですぅ〜!勝てば良いんですぅ〜!!」
腹立つわぁ〜。
俺達がヒソヒソと話していると、
「あの〜?どうしました〜?」
高原の魔女が気まずそうに声をかけてくる。俺達は溜め息を吐いて、
「実は、高原の魔女さんが冒険者ランキング1位というのを耳にしたんです。それに、俺達は高原の魔女、アイザワアズサさんと同じ日本人なんですよ」
俺が事情を説明すると、高原の魔女が食いついて来た。
「え、えっ!?日本人!?ホントに!?」
「はい。そうなんですよ、申し遅れました。俺はフクヤマリュウジ、巷では鋼のリュウジと呼ばれています」
「へぇ〜。という事は、隣の人達も?」
「はい。こっちはサトウカズマ、こっちがミツルギキョウヤと言います」
一通り俺達は自己紹介を終えると、
「まぁ同じ日本人なら話だけでも聞こうかな。中へどうぞ?」
「すいません、お邪魔します」
「お邪魔します」
「男だらけで申し訳ございません」
俺達はアズサさんに中へ通され、お茶をもてなされた。アズサさんの話を聞くとアズサさんは生前は27歳のOLでブラック企業に就職し休むこと無く働き続け過労死してしまったそうだ。それでアクアに転生特典として【不老不死】のチート能力を貰い17歳まで若返ったという。それでかれこれ100年近く異世界生活をしているそうだ。そして、俺達が会いに来た経緯を説明すると、
「そんなに私の話、拡散してるんですか?」
「ええ、まぁ。新聞に乗るくらいですからね、それに俺達より前にこの世界に転生してる訳ですし、レベルも99でステータスもカンストしてるって噂ですよ?」
「すいませんね、ウチの駄女神がご迷惑かけて」
カズマが申し訳なさそうに頭を下げると、アズサさんは手をぶんぶん振って。
「いえいえ、アクア様が転生させてくれなかったらこんなスローライフ送れなかったからね。むしろ私が感謝したいくらいだよ」
「これだけ有名なのにどうして魔王軍が攻めて来ないんですか?」
ミツルギの質問にアズサさんは頬を指で擦りながら、
「あー、それは私が結界を張ったからだよ。聞く話じゃ魔族は入れない見たい」
アクアの結界と同じレベルじゃね!?
「通りで攻めてこない訳だ」
「もうなにも言う言葉が出ない」
俺達が感服していると、アズサさんが突然。
「まぁ、ランキング1位になんか興味無いけど、分かった。あなたたちとだけ一度手合わせしましょう」
思わぬ展開来た!!。
「良いんですか!?追い返される覚悟で来ましたけど?」
「ただし!、交換条件があるから」
俺達が首を傾げると、
「君達が負けたら、「高原の魔女超弱え、まじ萎えたわ」って言って回りなさい。私は出来ることなら戦いたくないの」
噂通り、戦いに興味が無いんだな。
重苦しい空気の中、カズマが突然口を開いた。
「もし、俺達が勝てば?」
「へ?」
「俺達が勝てば何をしてくれんですか?」
いや、空気読めよ。
「えー考えてなかったな。ランキング1位の座もあげるし、なんでもしてあげるよ」
「ランキング1位をくれ今なんて?」
「なんでもしてあげるよ。同じ日本人、協力してあげないとね?んじゃ、外に行こうか?」
俺達はアズサさんに連れられて外に行くと、アズサさんは畑使っているクワで地面に大きな円を描き始めた。
「ここからはみ出た方が負け、ということにします。それでいい?」
「構いません。ですが、俺達も名の知れた冒険者。3対1で戦いたくありませんので1対1でお願いします」
「良いわよ。誰から来る?」
「よーし分かった行くぞー!」
カズマが突然竜人化してアズサさんに襲いかかった。