先手必勝とばかりにカズマが右手を突き出して、
「『ドレインタッチ』!!」
「─────っ!!」
アズサさんは何かを察知したのか、カズマのドレインタッチが届く瞬間、何かを唱えた。
「今暫く地上より別れを告げる!『ウィング』!!」
突然、アズサさんが空中に飛び上がった。
「飛んだ!?」
「マジかよ、空中浮遊魔法も存在すんのかっ!?」
「そんなの反則だぐへっ!?」
空振りしたカズマは勢い余って円の外手前ギリギリに転んだ。
「不意打ちとは随分ね。リザードマンに変身してちょっとビックリしたけど、貴方は少し頭を冷やしなさい。風よ、今こそ我の下僕となりて、吹き荒れよ!!『トルネード』!!」
リーンの風魔法の数十倍はあるかというような竜巻が発生した。カズマは聖盾イージスを腕に装着させて防御体勢を取った。
「リザードマンじゃねぇ!!ドラゴンだ!!。うごごごごご!?吹き飛ばされる!!」
「へぇ!あのカズマが耐えてるよ!!」
「あれも竜人化の力なのか、凄いな」
暴風が吹き荒れる中、俺とミツルギはカズマとアズサさんを円の外から見ていると、カズマがジリジリと動き始めた。
「まけるかぁぁぁぁっ!!」
カズマはジリジリと近づき始め、アズサさんの斜め下でとまった。
「この距離なら……『クリエイト・ウォーター』!!」
カズマのクリエイト・ウォーターは鉄砲水の様に飛び出し、アズサさんに向かって行くが、ひょいとかわす。
「へぇ、リザードマンになっても魔法が出来るんだ!」
「『クリエイト・ウォーター』!!『クリエイト・ウォーター』!!」
クリエイト・ウォーターを何発も放つがことごとくかわされる。アズサさんは避けるのに疲れたのか、ビショビショに濡れた地面に足をつけた。
「避けてばかりじゃ勝負にならないしね。降りてきたわよ?」
すると、カズマはニヤリと笑った。俺とミツルギは青ざめた。
まさか!?
「かかったな!『フリーズ』!!」
カズマは左手をかざすと吹雪の様なフリーズが放たれた。アズサさんは咄嗟に結界を張って身を守った。
「氷結魔法も使えるの!?あなた便利ね!?けど、残念。当たってないよ〜?」
「それはどうかな?」
「えっ?」
アズサさんはなんの事か分からず首を傾げた。そんな中、カズマは足元を指さす。俺とミツルギはアズサさんの足元を見てみると、
「あっ!凍ってる!?」
「さっきのクリエイト・ウォーターはこのためだったのか!!」
「うっわ!なにこれ!?」
「ふははははっ!どうだ!竜人化した俺の魔法は上級魔法並だ!勝負あったな!高原の魔女!!ふははははっ!俺の勝ちだ!」
カズマが勝利を確信して高笑いをしていると、アズサさんは何食わぬ顔をしながらバキバキと音を立てながら足を動かし始めた。
ですよね、レベルMAXの上にステータスカンストしてんだもん。
「こっちの番ね?全てを凍てつかせよ『クリスタルプリズン』!」
アズサさんは両手を伸ばしてカズマに向けてかざし、唱えた。それによりカズマは体を氷漬けにされた。
「ちくしょうぉぉぉっ!!」
カズマは悔し涙を流しながらもがき苦しんでいた。それを見た俺達は大笑しながら転げ回った。
「どう?頭がキーンときたりした?」
「さみぃぃぃっ!死ぬっ!死ぬって!おいお前ら、爆笑してないで助けろよ!」
俺達が爆笑してる中、アズサさんは氷漬けにされたカズマに近づいて、
「カズマくん。もう降参する?それともまだ続ける?」
アズサさんがそう言うとカズマはヤケを起こして騒ぎ出す。
「アズサさん、俺はまだ奥の手を残してる。今から使うこのスキルはあんたを必ず泣かせる事が出来る。使われる前に降参した方がいいと思いますよ?へたすりゃ嫁に行けなくなりますよ?」
「随分余裕ね?何を企んでるの?」
俺とミツルギはカズマが何をしようとしたのか直ぐにわかった。
「カズマ!それだけはやめろ!確実に跡形もなく殺されるぞ!?」
「よせっ!今はアクア様がいないんだ!蘇生出来なくなるぞ!」
アズサさんは俺達の慌てようを見て、
「そんなにすごいスキルが使えるの?なんかやだなぁ」
「もう遅いっ!『スティール』!!」
「よせぇぇぇ!カズマァァァァッ!!」
俺の静止も聞かずにカズマはスティールを繰り出した。カズマの右手が光だした。光が収まるとカズマの手には……両端にリボンの付いたピンクのパンツが手にされていた。
「やっちゃった、アイツやっちゃったよ!!」
「僕は知らない。僕は何も見てない!!カズマが勝手にした事だ!」
アズサさんは異変に気付き、違和感を感じたのかスカートを抑え始めた。アズサさんは顔を真っ赤にして、
「そ、それ……私のパンツ!?」
「高原の魔女のパンツとったどぉぉぉっ!!」
「返して!私のパンツ返して!!」
アズサさんは涙目になってスカートを抑えながらカズマの手を掴もうとするが、カズマは器用にアズサさんの手を避ける。俺とミツルギはこの後起こる事を恐れ、声をかけた。
「カズマ〜それ返してやれよ。ホントに殺されるぞ!?」
「悪い事は言わない。めぐみんちゃん達には黙っててやるから返すんだ」
「いやだね。コレは勝負なんだから。言ったろ?泣かすって」
カズマがドヤ顔をかますと、遂にアズサさんは怒りの頂点に達して。
「返せって言ってんじゃん!」
カズマに接近し───
「これはパンツを盗られて汚された女の痛みだっ!!」
ドゴーン!!
アズサさんは魔法ではなく、全力の拳でカズマを殴った。クリスタルプリズンの氷は拳により砕け散り、殴られたカズマは白目を向いてノックアウトされた。
「あ、無理。俺は戦わないからな」
「僕も同じ事を考えていたよ。流石はランキング1位、とてつもない力だ」
「ひとまず、これで私の勝ちなのはいいとして……」
俺達を睨みつけたアズサさんは、
「そこのあんた達もこっちに来て正座しなさい」
「はい」
「はい」
俺達はカズマを叩き起して3人揃って正座した。
「さてと、パンツ返してくれる?それとも3人揃ってあの世に行く?」
「パンツならそこでノビてるバカが持ってます!」
「どうぞ、着替えて来て下さい!」
「言われなくてもそうするわよ」
アズサさんはカズマからパンツを取り返し、物陰に隠れてパンツを履いて戻ってきた。
「まさかとは思うけど、パンツ見に来た訳じゃないわよね?もし、そうだとしたら許しませんからね」
あっ、顔は笑ってるけど、目が笑ってない。
「ち、違います!このバカがランキング1位を倒して1位の座を奪うって言い出したんです!俺はアズサさんの魔法が気になって付いて来ただけです!」
「僕は強さの秘訣を知りたくて付いて来ました!やましい気持ちなんてありませんよ!」
「なので俺達の命だけは取らないで下さい!お願いします!」
「とりませんよ。命とっても私の気持ちは晴れませんしね。普通女のパンツ盗むとかありえないでしょ?」
ごもっとも。
「おっしゃる通りです」
「おっしゃる通りです」
「どう落とし前付けてくれるの?」
どうしよう、このまま生きて返してくれそうにない。
必死に考えた俺は閃いてアズサさんに尋ねる。
「そう言えばアズサさんの収入源はなんですか?」
「え?スライムの素材売ったりとか、山で取れた薬草で薬を作って村の薬屋さんに売ったりして収入を得てるけど?」
薬草?あ、そうだ!!
「アズサさん、実は俺アクセルの街で農場を営んでいて様々な薬草を栽培してるんですよ」
「へぇ〜、凄いね。で?何が言いたいの?」
「そこでなんですけど、その薬草を馬車1台分タダでお譲りします。薬草の品質には自信があるんです。どうでしょう?これで勘弁して貰えませんか?」
俺がそう持ちかけると、アズサさんは考え込んだ。
「まぁいいけど、もし逃げたらミツルギくんを討伐するからね?」
「えっ!?アズサさん!?」
「今から直ぐにアクセルの街に行って用意します!『テレポート』!」
俺は大慌てでアクセルの街に戻って行った。
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「ぜーぜー……お待たせしてしまって大変申し訳ありませんでした!!。これを、お納め下さい!!」
1時間も経たずに俺は馬車に大量の薬草を積み込んで戻って来た。馬車の荷台を見たアズサさんは、
「確かに、品質は良いわね。いいよ?これで許してあげる」
「あざーす!」
「んじゃ、ミツルギくんも許してあげる。待ってる間に薪割りして貰ってたから」
「ありがとうございます!!」
俺とミツルギはペコペコと頭を下げると、アズサさんは未だに白目を向いて気を失ってるカズマを見て、
「さて、問題はこの子なんだけど?」
「アズサさん、どうしますコイツ?」
「アクセルの街に捨ててきましょうか?」
手のひらを返すように裏切った俺達はコバンザメの如くゴマをする。
「んじゃ、ちょっと服めくってくれる?」
「了解っす。ミツルギ、手伝え」
「ああ、分かった!」
俺はカズマの体を起こし、ミツルギはカズマの上着をめくった。すると、アズサさんはペンを取り出してカズマの腹に何かを書き始めた。文字を確認すると、【俺は高原の魔女のパンツを盗った変態です】と書かれていた。
うん、間違ってはいない。
「うん、これで勘弁してやるか」
「すいません、お慈悲まで掛けてもらってなんと言っていいやら」
「もういいよ済んだ事だし。この子をアクセルの街に送ってくれる?」
「分かりました。『テレポート』!!」
俺は気絶したままのカズマをアクセルの街に転送させた。
「さて、君達はこれからどうするの?ちょっと観光してく?」
「いえ、俺とミツルギはあくまでも遊びで来た訳じゃないですから」
「それでなんですけどぉ〜。アズサさん、お願いがありまして……」
俺が申し訳なさそうに言うと、
「何?言うだけダダなんだし、言ってみたら?パンツくれとか言ったらこっちにも考えがあるけど」
「いえ!それは関係ないです!。単刀直入に言いますと、俺達に魔法を教えて貰えませんか?」
俺とミツルギが土下座をして頼み込むと、アズサさんはキョトンとした。
「魔法?あなた達も魔法は使えるんでしょ?必要ある?」
「必要です!確かに俺は魔法は使えますけど、ほんの少しだけで」
「そうなの?ちなみにリュウジくんは何の魔法が使えるの?」
「雷魔法、火炎魔法、支援魔法、神聖魔法、闇魔法が使えます」
「ちなみに僕は魔法を利用した剣、魔法剣が使えます」
「2人共十分使えてるじゃん!それ以上私に何を教わろうっての!?」
アズサさんはそう言うと、俺達は正座をしながら。
「はい。アズサさんの戦いを見て俺達はまだまだヒヨっ子であると痛感しました。冒険者ランキング2、3位という思い上がりを捨てて、また一から勉強したいなと思っている次第です」
「あのね?隠したままなのはまずい気がするから言うけどね、この辺にいるスライムを倒して長らく続けてたら、経験値がたまりまくってこうなったんだよ?とくに魔法に強いとかじゃないよ?」
「いえ、そこです!普通生活とは言え、飽きるじゃないですか毎日コツコツスライム倒すなんて?アクセルの街の人間なら飽きて普通に働くか、クエストを受注するかどちらかです。ですがアズサさんは飽きもせずにレベルMAXまでやり遂げた。俺はそこが素晴らしいと思います。しかも、空を飛ぶ魔法はアクセルの街では見た事がありませんでしたし、差し支えなければ空中浮遊魔法を学ばせて貰いたいなと」
俺がそう言うと、アズサさんは。
「まぁ、そこまで言うなら教えるけど……」
「ホントですか!?」
「まぁ、パンツ一つで馬車1台分の薬草は貰いすぎだしね、これでチャラになるならお易い御用だよ」
優しいっ!!
「ありがとうございます!」
「ミツルギくんはどうする?私剣は使えないんだけど?」
「いえ、僕も少し魔法を学ばせて貰えば大丈夫です」
「んじゃ、ちょっと考えておくからまた明日ここに来てくれる?」
「分かりました」
この日はお開きとなり、次の日に持ち越された。
翌日。
村の宿で一夜を過ごした俺とミツルギは再びアズサさんの家に足を運んだ。アズサさんは既に起きており、姿が見えた俺は挨拶をした。
「おはようございます。アズサさん」
「おはようございます。今日はよろしくお願いいたします」
挨拶すると、アズサさんは大きなとんがり帽子をグイッと直して俺達に顔を向けた。
「おはよう、リュウジくん、ミツルギくん。さっそくやろうか?」
「はいっ!」
アズサさんは切り株の上に普段から使っているのか、分厚い魔導書をベラベラと開きながら俺に言い放つ。
「浮遊魔法を教える前に聞きたい事があるんだけど、リュウジくんは魔法を作った事はある?」
「あります。支援魔法と雷魔法を融合させた肉体強化魔法『エレクトロ』を作った事があります」
「んじゃ基本的な事は出来る見たいだね。昨日寝る前に考えたんだけど、私の魔法を教えるより、創作した方がコスト的にいいんじゃないかな?」
俺はアズサさんの言葉にウンウンと頷いた。
そうだ、アズサさんも勇者候補なんだスキルポイントはエグいだろうな。
「確かにそうですよね。俺もカンストが近いのでこれ以上レベル上げをしても効率悪いですね」
「そこでなんだけど、リュウジくんは雷魔法が使えるんだから雷魔法を使って空を飛んだらいいんじゃないかな?」
「と言いますと?」
「科学的な事を言えば、電磁石や電磁浮遊の要領を上手く使えばいいんじゃないかな?」
アズサさんの言葉を聞いた俺は何かを悟ったかの様にハッとした顔をする。
その手があったか!!
「なるほど!そうですね!ちょっとやって見ます!」
俺はアズサさんとミツルギから離れて紅魔の里の時のように、魔法を作り始めた。ブツブツと呟きながら、俺は魔法を唱えた。
「『ライトニングフィールド』!!」
魔法を唱えた途端青いドームのような空間が広がり、地面がバチバチと迸っていた。
そして更に、
「我、鋼の使者が碧き稲妻の力を借りて天に命じ、地に命じ、稲妻の力よ、我が魔力と共に力を成せ。 力の根源たる鋼のリュウジが命ずる。森羅万象を今一度読み解き、我の全てを支えよ!『エレクトロ』!!」
エレクトロを唱えると、俺の体がフワリと浮き始めた。俺はそのままライトニングフィールドの空間を縦横無尽に飛び回ることに成功した。
「出来た!電磁浮遊の反発を使った魔法!!」
空中に浮いている俺を見たアズサさんはパチパチと手を叩いた。
「おー!凄い凄い!いい感じに出来たじゃん!」
「はいっ!ありがとうございます!」
俺はライトニングフィールドとエレクトロを解除して地上に降りた。
「次はミツルギくんだね。ミツルギくんの場合は私の『魔法反射』とかをその魔法剣に付与してあげるよ。それを、上手く使えばいいと思うよ」
「なるほど、魔法を弾く事が出来るんですね!ありがとうございます」
「私全然力になってないけど、大丈夫?」
「そんな事ありませんよ!とても参考になりました!」
俺がそう言うとアズサさんは嬉しそうに微笑んだ。
「私がいなくても君達なら魔王を倒せると思うよ。頑張ってね!」
「はいっ、ありがとうございました!」
「アズサさんからもらった力、大事にさせて貰います!」
「んじゃ、2人共元気でね!」
「はい!魔王を倒したら遊びに来ます!」
俺とミツルギは頭を下げてテレポートでアクセルの街に戻って行った。