カズマがめぐみんの頼みを聞き入れたその翌日。俺は家に戻って最前線の砦に向かう事を話し合っていた。
「って事で、今回はペコリーヌとマリューには付いてきて貰うぞ?」
「かしこまりました。では、わたくしはクロエさまと美食殿をやりくりしたいと思います」
「良いの?コッコロ、無理しなくていいんだよ?」
俺が心配そうにコッコロ尋ねると、コッコロは自信満々に答えた。
「問題ありません。調理場も人手が増えましたのでなんとかなります」
「コッコロちゃん、なるべく早く帰って来ますからね!」
「出発は明日だ。各自準備を怠るなよ?」
「心得ております。それとなんですけど、リュウジ様?最近浮遊マントが何やら騒がしくなって─────」
ドッカーーーーーン!
俺達は突然の轟音に驚いた。
なんだ!?
「まためぐみんか!?」
「おそらくめぐみん様かと思われます。一旦見に行きましょうか?また器物破損で逮捕されては敵いませんからね」
「あはは……やばいですね」
「んじゃ、あのキノコ雲の近くに行ってみますかね」
街を出てキノコ雲を目指していると、近くにカズマ一行が何やら集まっていた。
何してんだ?あんな所で?
俺はカズマ達に声をかけた。
「おーい、カズマ、アクア、めぐみん、ララティーナ、マヒル、キャル?こんな所で何してんだぁ?」
「皆さんおいっす〜☆」
「おー!リュウジじゃないか」
「雁首そろえて爆裂魔法か?」
「それもなんだけどな?」
カズマがゴソゴソと懐を漁り始めた。
「ふう、満足です。では帰りましょ……?カズマ、それはなんです?」
「あんた、何よそれ?」
「変な筒の様なものをもって何するだ?」
そんな中、カズマが2本の筒状の物を取り出すと、それにめぐみん、キャル、マヒルが興味を抱いた。
あれは……ダイナマイトか!?
マリューもカズマが持っている物に気が付いたのか、俺にヒソヒソと声を掛けてきた。
「リュウジ様、アレはリュウジ様が作った煙幕と同じ要領の物ですか?」
「まぁ、そんなもんだな。けど、アレは殺傷能力がある部類だ」
「えっ!?」
マリューと俺がヒソヒソ話していると、カズマ得意気に説明を始める。
「これはな、財力という武器を手にした俺が、金に物をいわせて簡単に敵を葬れないかと試作した第1号だ。まぁ、見とけ?」
カズマはダイナマイトを岩の陰に差し込むと、導火線をよく見える様にこちらに向けた。
「ペコリーヌ、マリュー。俺の陰に隠れてろ」
「え?何でですか?」
「ペコリーヌ様。危ないですよ?」
「なによ、岩に変なもの差し込んで何する気?」
「なんだべ〜?」
「……待ってください。カズマが作ったというそれに、何だか見覚えがあるのですが……」
めぐみん達が何かを言いかけたが、カズマはそれに答えず一定の距離を取ると。
「『ティンダー』!!」
導火線へと、離れた所から着火魔法をで火を付けた。それがジリジリと火花を散らし……。ふと、何かを思い付いたのかカズマは片手を突き出して叫んだ。
「エクスプロージョン!!」
「「えっ!?」」
それに反応したキャルとめぐみんが声を上げ。
ドッカーーーン!
そんな声をかき消す爆音と共に、簡易ダイナマイトは見事に破裂し、岩にヒビを入れた。カズマは手応えを感じたのか、
「いよしっ!成功だっ!」
「あ……ああ……」
「なに……よ……それ……」
隣ではめぐみんとキャルが呆然としながら小さく震え、ダクネスとマヒルは顔を赤くして拳を握った。
「凄いぞカズマ!お前、いつの間に爆裂魔法を習得したんだ!?」
「凄いべカズマ!あんなでっかい岩にヒビを入れただど!?」
「ふっ……努力家な俺は、お前が寝ている間にひっそりとレベルアップを重ねていたのさ。どうだリュウジ?お前にこんな真似が出来る」
「『セイクリッド・ライトニングブレア』!!」
突然白く輝く稲妻が岩に突き刺さって先程の岩を砕いた。
「おー!リュウジくんやばいですね☆」
「更に威力が増したんじゃないですか?」
「よせやい照れるじゃねぇーか(棒読み)」
チラッとカズマを見ると悔しそうに唇を噛んでいた。だが、直ぐに気を持ち直して、
「我が名はカズマ!アクセル随一の冒険者にして、爆裂魔法を操りし」
「ああ……ああああああああぁぁぁ!!」
「わああああああああぁぁぁ!!」
紅魔族の名乗りをした瞬間、めぐみんとキャルが左右からカズマに掴みかかった。
「あんなものは!あんなものは、爆裂魔法じゃありません!あんなもの!、あんなもの!」
「そうよそうよ!ふざけんじゃないわよっ!あたし達アークウィザードをバカにしてんでしょ!?なによあんなもん!、あんなもん!」
「ちょ、分かった落ち着け、待ってくれ!アレはただのアイテムだ、ちょっとした冗談だよ冗談!」
カズマは慌てて説明するが、2人は喚き散らす。
「まぁカズマには丁度いい武器だと思うよ?」
「そうですよ、キャルちゃん。カズマさんは弱っちいですから」
「そうですね、カズマ様には丁度いいと思いますよ?護身用として持っておけば良いのでは?所詮本家本元には及びませんよ」
「何言ってんのよ!これはアークウィザードに対して冒涜なのよ!?」
「そうです!この私がいるのですから、こんなもんは必要ありません!なんですか、こんなもんっ!キャル、ぶん投げますから水ぶっかけて下さい!」
「任せなさいっ!『クリエイトウォーター』!!」
叫ぶと同時、めぐみんとキャルがカズマが作った全てのダイナマイトを放り投げ、水をかけた。
あーあ、もったいねぇ。
「今度アレを見つけたら捨てますからね!あんなもんは邪道です!認めませんよあんなまがい物!」
「めぐみんの言う通りよ、次見つけたらぶっ殺すわよ!?」
めぐみんとキャルは鼻息を荒らげながら帰る途中一言もカズマと口を聞かなかった。
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翌日。俺は紅魔の里で手に入れた魔術師殺しのパーツを使った新型の鎧【チェストブレイク】に身を包んだ。
「武器よし、鎧よし、アイテムよし!それと───」
ガタガタ!
突然、クローゼットから物音が聞こえた。
「なんだ!?」
クローゼットを開けると、浮遊マントがジタバタとまた暴れていた。いかにも「俺も連れて行け」と言わんばかりに暴れる。
「どうしたの?マント君も行きたいのか?」
俺が浮遊マントに尋ねると、頷くように動いた。
良く分からないが、連れて行って見るか。
「分かった、分かったから!俺の鎧にくっついときな?」
俺がそう言うと、浮遊マントは俺の背中にくっついた。これから向かうのは王都近くの温泉街オーエドを過ぎたその先の砦だ。勇者候補が数名殺された所だ、油断は出来ない……。
「マリュー、ペコリーヌ。準備は出来たか?」
「はいっ!完了です!」
「薬草、鍛道具なども準備万端です!皆様と合流しましょう」
俺達が家から出ると共に、コッコロが見送ってくれた。
「皆さまのご無事をお祈りしております。行ってらっしゃいませ」
「コッコロ、留守を頼んだよ。行ってきます」
「なるべく早く帰って来ますからね!」
「知らない人が来ても中に入れてはいけませんからね!」
そうコッコロに言い残し、俺達はカズマ、ミツルギ達の待つ集合場所に向かった。
「全員揃ったか?」
「ああ、今回はお頭以外全員参加だ」
「医療班としてセシリーも行く。これなら安心だろう?」
「大勢で移動だ、テレポートの使える俺とゆんゆんで行くぞ」
そう言って、俺はアオイの隣で荷物のチェックをしているゆんゆんを見た。俺以外で王都にテレポートが使えるのはゆんゆんしかいない。
「が、頑張ります!お菓子もいっぱい持って来ましたし、食事の支度に夜の見張りも何でもやりますから!」
「わ、私も頑張ります!荷物持ちだってしますよ!」
「そこまで頑張らなくていいから!」
アオイとゆんゆんは皆で遠出する事が嬉しくて仕方ないらしい。2人揃って先程からソワソワして落ち着きがない。
「皆さん準備は良いですか?忘れ物はないですか?」
「ハンカチちり紙は私達が持ってますから、必要な時は言ってください!」
「お願いですからちょっとは落ち着いて下さい、遠足前の子供じゃないんですから」
ゆんゆんとアオイがめぐみんになだめられるという珍しい光景を見ながら、俺は準備が出来たらしい皆を見回し頷いた。
「よし、俺とゆんゆんでテレポートするぞ。まずは王都に飛んで、そこから砦に向かう。途中に温泉街オーエドがあるらしいから、まずはそこを目指そう」
「はい、ではリュウジさん!一緒に唱えましょう!」
俺とゆんゆんでテレポートを唱えた。
「『テレポート』!」
───あっという間に、俺達Adventuresは聖テレサ女学院ぶりの王都の正門に立っていた。カズマが前に出て振り向き口を開いた。
「よし。俺達は既に旅支度を終えているから最前線の砦に向かってもいいんだが、まずはあの連中から情報収集をしよう」
「情報収集?」
「一体何をするんだ?」
「俺に考えがあるんだ」
はぁ。
それを聞いて不思議そうな顔をしている女性陣を残し、俺達3人で正門の前の兵士に近付いて行った。
「どーもーお仕事ご苦労様です。いやぁ、寒い中大変ですね」
「ああ、旅の冒険者か?聞いているかもしれんが王都は現在魔王軍による襲撃を警戒中だ。そんな所にいないで王都に入るならさっさとしてくれ」
フレンドリーなカズマに向け、未だ周囲を警戒しながら兵士が言った。
「いえ、王都に用はないんですよ。俺達はこの国がピンチだと聞いて駆け付けてきたんです。王都近くにある最前線の砦に援軍に向かおうかと」
「何、援軍だと?……それは有り難いが……大丈夫なのか?」
「おいおい、俺を舐めてもらっちゃ困るな。俺達はAdventuresってもんなんだが、聞いた事はないか?」
「はぁ!?バカも休み休み言え、お前のような男が……」
過去の戦果を誇るカズマに1人の兵士が俺とミツルギに目を向けた。
「お、おい!あんた、鋼のリュウジじゃないか!?」
カズマの後ろに立っていた俺とミツルギを見て、別の兵士が声を上げる。
「本当だ、そして隣にいるのは魔剣のミツルギ!?」
「待て、ダスティネス様とユースティアナ様もいるぞ!?」
「奥にいる青髪のプリーストも覚えてるぞ!以前の魔王軍が襲撃してきた際、支援魔法を掛けまくり怪我人を治療して回ってた人だ!それにトレジャーハンターのメリッサや爆裂魔法を使うアークウィザードまで!?」
カズマではなく、俺やミツルギ、アクア達を差し口々に言う兵士達。カズマの事は微妙に覚えてないらしい。
「理解が早くて助かるよ。そう、俺達が……」
「あっ、お前の事も覚えてるぞ!確かコボルトに殺された男だな!」
「ああ、いたなそういえば。金獅子が助けようとしたが調子に乗ってコボルトに袋叩きにされていたヤツだ」
「鋼のリュウジさんや、魔剣のミツルギさんならともかく。あんたは弱いんだからこんな所に来ちゃダメだぞ。王都から大分離れているが、アクセルの街っていう駆け出しの街がある。まずはそこで力をつけるんだ」
「この辺のモンスターは強いのが多いからな。ていうか、鋼のリュウジさんの従者ですか?荷物持ちでも多少は強さを持たせた方がいいかと……」
カズマの顔を伺うと、今にもカズマが泣きそうになっていた。
泣いちゃう!ウチのカズマさんが泣いちゃう!
「み、見ての通り俺達はAdventuresだ。で、今から俺達Adventuresは砦の援護に向かう。だが俺達は立つものの道に詳しくない。そこで、これから向かう冒険者や兵士がいたら、同行させて貰えないかと思ってな。ああ、道案内をしてもらうんだからもちろん援護料なんて取らないし、安心してくれ」
あ、これがカズマの作戦だったのか。
だが、カズマの完璧な作戦は、
「残念だけどそりゃあ無理だな。敵の幹部の攻撃が凄まじすぎて、今は次々と怪我をした冒険者や兵士を後退させ、オーエドまで行くキャラバンも引き返している状況だ。既に最前線で頑張っておられた陛下や王子も避難された。そんな中、わざわざ危険な最前線まで向かう物好きなんていないさ」
「えっ」
目の前の兵士の予想外の言葉に崩れ去った。
どうやら戦況は芳しくないようだな。
更に固まるカズマに兵士は続ける。
「道案内は出来ないが、代わりに砦までの地図とモンスターの分布図をやるよ。並の冒険者なら行くのを止めるとこなんだが、魔剣のミツルギや鋼のリュウジさんがいるなら大丈夫そうだ。頑張ってくれよ!城の連中や、冒険者ギルドにちゃんとつたえておくよ」
「えっ……」
カズマはそれを聞いた途端、顔を引き攣らせる。
あっ、帰ろうとしてましたか?
「鋼のリュウジさん、魔剣のミツルギさん!仲間の仇をとって下さい!」
「ああ、俺のダチや同期が幹部に殺されたんだ。頼む!」
「よし、俺は王都の住民達やテレ女の学生達に大々的に伝えてやる!」
「あっちょ」
カズマが何も言えない間に話が勝手に進んでいき、カズマは地図とモンスター分布図を渡された。
「「「お願いします!」」」
「あっはい」
────地図を受け取ったカズマは女性陣の下へトボトボと戻って行った。あえて、俺とミツルギは黙ってカズマの様子を伺うと、
「見ろ。俺の交渉により砦の地図とモンスターの分布図を手に入れたぞ」
「へぇ、アンタやるじゃない」
「ワタシもちょっと見直したわ」
「流石カズマだな!オラも見直したど!」
「カズマが予想外にやる気で驚きましたよ。では参りましょうか!」
「……うん」
カズマは余程帰りたかったのか、ポロリと涙を流した。
カズマ、もう諦めろよ。