ドラゴンゾンビを浄化した俺達は、この際ついでだとばかりにそのまま暗闇の中を歩き続けた。朝日が登ってしばらくしたら、時代劇でよく見る街並みが見えて来た。正門の前には、【オーエド】と記されていた。
「ここが勇者候補達が何年も渡って発展させた温泉街ですか……。皆でアルカンレティアの街に行った時の事を思い出しますね」
懐かしそうに言いながらめぐみんがクスリと笑うと、それに同調するかの様にキャルも。
「そう言えばそうよねぇ、確かあの時は、あたし達が入っている時にそこの3馬鹿が遠くの山から覗いていたのよね」
「カ、カズマ、そんな事してたんだか……」
「ミツルギくん……サイテー」
「リュウジさん、クロエさん達に言いつけます」
「それくらいのやる気をもう少し見せてくれないかしらねぇ?」
おっと、あの時いなかったメリッサ達がゴミを見るかのような目をしてますね。
「ねぇそこの3馬鹿トリオ、こういった温泉街の宿は大概が混浴なの。カズマ達は私達が上がった後に入って欲しいんですけど。だって身の危険を感じるもの」
「お前自意識過剰にもほどがあるぞ。俺にだって選ぶ権利がある」
「お前の裸見て喜ぶのミツルギぐらいだぞ?、なぁ?」
「えっ!?」
ミツルギは突然話を振られてしまったためか、アタフタする。それを見たアクアとセシリーが、
「えっ、気持ち悪いんですけど……」
「ミツルギさん!アクア様の体を拝みたいなら1000万エリスはくだらないですよ!1回見たのなら1000万今すぐ払ってくださいっ!」
「え、ちょ、待ってくれ!そんなすぐには」
「お金もいらないから私に近付かないでくれます?」
アクアが今までにないくらいドン引きしていると、めぐみんが楽しげに。
「それじゃあ行きますか。オーエドの温泉なんて滅多に入れませんからね」
「まずは私が一番風呂よ!それとも皆で一緒に入る?」
「マジすか?」
「マ!?」
「アクア様、今なんて!?」
最後に追従した俺達の言葉にそのままなかったかの様にスルーされ。
「待ってください、アクアはアルカンレティアの温泉をダメにした事があるじゃないですか、アクアが入るのは最後ですよ」
「まぁ、たまには皆で風呂に入るのも悪くないんじゃないか?3人もあの時で懲りたろうしな?」
「皆でお風呂……お風呂かぁ……」
「わ、私死んじゃうんじゃないんでしょうか……こんなシチュエーション有り得ないですし……」
女性陣が口々そんな事を言い合いながらオーエドの街を歩いて行く。すると突然、めぐみんが振り返ってカズマに、
「カズマ、なんなら私と一緒に入りますか?」
「えっ!?」
俺は思わず声に出してしまった。同じくダクネスも便乗するように、
「私も構わないぞ?なんなら、お前が望むなら以前の様に、背中の一つでも流してやろうか?」
「ふぁっ!?」
足を止めたダクネスが、めぐみんとクスクスと笑う。
え、なんなのこの子ら?知らない間に随分と仲良しじゃんか!?
俺は無意識に頬を膨らませていると、ペコリーヌとマリューが。
「リュウジくん、どーしたんですか?何をむくれてるんですか?」
「もしかして羨ましいとか思ってるんじゃないですよね?」
そうですけど何か!?
「べ、別にそんなんじゃないもん」
「リュウジくんも、一緒に入りますか?」
「……マジすか?」
ペコリーヌはめぐみん達とは違って満面な笑顔で言い放った。
「はいはい、どうせ冗談でしょ?はいはい。本気でお願いしますって言ったらどーする気なの?」
「いいですよ?その時は2人で入りますか?」
「上等だよ、やったろう─────」
カンカン!カンカン!
突然、街の警鐘が鳴り響いた。
「なんだ!?」
「ねぇ?ワタシの勘なんだけど、敵が攻め込んで来たんじゃないの?」
「嫌な予感がするな……」
メリッサの勘が的中した。
《魔王軍警報!魔王軍警報!魔王軍が接近しています!。速やかに避難して下さい。繰り返します……》
「俺は先に街の中心部に行ってみる。通信魔石を身に付けとけよ!」
俺はそう言って浮遊マントともに空を飛んで街の中心部に向かった。飛んでる最中に千里眼で確認してみると、砦のある方向からかなりの数の魔王軍が津波のような大群でオーエドに攻め込んで来ていた。
おいおい、1000はくだらないんじゃないか!?
中にはゴーレムの様なモンスターもいて、家屋を破壊して暴れている。俺は通信魔石でカズマ達に応答を求めた。
「おい、カズマ。やべぇのがいるよ」
《やべぇってなんだよ!?邪神か!?》
「いや、ゴーレムだな。マリューに今日は本気出していいって伝えてくれ」
俺はゴーレムを引き付けながら街の中心部に戻ると、
「リュウジ様!?なんでゴーレム連れて来たんですか!?」
マリューが騒ぎ出すと、メンバーは武器をとって身構えた。マリューは溜息を吐きながらドスドスと向かってくるゴーレムに向かって歩き出した。
「マリュー、狂戦士の力を見せてくれ!」
カズマの言葉に、マリューは振り返り、肩越しに言った。
「私の秘密を教えましょうか。実は、私もステータスカンストしているんですよ」
マリューは拳に力を込めながら、
ドゴォォーーーン!
ゴーレムの顔面に渾身のマリューのパンチが炸裂。ゴーレムの動きが止まったところへ、俺がカースド・ライトニングを撃ち込んだ。轟音と共に、ゴーレムは地面に大の字になりながら倒れた。
「ゴーレムが倒された!?なんだアイツは!?」
紅魔の里で見かけた鬼みたいな魔物達が一斉に怒りの叫びを上げると、
「かかって来なさい雑魚ども!!」
マリューも、声をかぎりに雄叫びを上げた。カズマ、俺、ミツルギ、メリッサ、めぐみん、ダクネス、ペコリーヌ、マヒル、キャル、ゆんゆん、アオイ、アクア、セシリー、13人は敵に備え、背中合わせで円陣を組んだ。魔王軍はぞろぞろと集まり出してくる。
「カズマ、作戦は?」
「んなもん、チームワークに決まってんだろ!」
「カズマ、それでどうするんだ!?」
ミツルギの言葉に、カズマは開き直ったのかヤケクソ気味に指示を出す。
「いいか、みんな。街の住民が避難を終えるまでなんとか耐えるぞ。アオイ、あの火の見櫓へ行って見張ってくれ。千里眼スキルを使って敵の様子を知らせてくれ!」
「分かりました!」
「リュウジ、お前は街の外側だ。街の外に押し戻すか、灰にしちまえ!」
「あいよ」
俺とアオイはカズマの指示に従ってその場を離れた。
「ゆんゆんとキャルは、めぐみんと一緒に持ち前の魔法で飛行系の魔物を倒せ!」
「分かりました!頑張って来ますね!」
「爆裂魔法で吹っ飛ばしてやりますよ!」
「バカ!避難が済んでないんだからゆんゆんに指示でも出してろ!」
ゆんゆんとめぐみんは走って飛行系の魔物を追いかけ始める。
「ミツルギ、メリッサ、ペコリーヌは俺とここで魔王軍を食い止める!」
「カズマカズマ!私は!?私達は何をすれば良いの!?」
アクアがカズマの袖を引っ張りながら目を輝かせる。残りのメンバーを見たカズマは。
「マヒルとアクア、ダクネスとセシリーで組んで住民を避難させろ!怪我をしている人がいたら直ぐに治療してやるんだ!」
「分かったわ!行くわよ、マヒル!」
「分かった!カズマも気をつけるんだど!」
マヒルとアクアが駆け出すと、ダクネスも剣を抜きながらセシリーに声をかける。
「なら私達は向こうの方に行こう!」
「分かりました!行きましょう、ダクネスさん!一緒にアクシズ教の素晴らしさを広めましょう!」
セシリーが張り切りながらダクネスを置き去りにして走り出した。
「そして、マリュー」
「はい。何でしょう?カズマ様」
「思いっきり暴れろ!」
「お任せを」
マリューはニコリと笑うと、宙にジャンプして悪魔もどきの魔王軍に襲いかかり、片っ端から叩きのめして行った。ゆんゆんはその頃、めぐみんをおんぶして、めぐみんの指を指す方向に向かって中級魔法を連発させてコウモリのモンスターを次々と撃ち落としていた。キャルは併走しながら魔法を放つ。
「ほら、キャル何をしてるんです!?向こうにもいますよ!?」
「ネタ魔法のクセに偉そうにしないでよ!『サンダーボール』!」
「キャルさんごめんなさいっ!『ファイヤーボール』!」
アオイは火の見櫓を植物のツタやツルで補強しながら更に高く上り、飛行系の魔物の乗っている魔王軍に矢で仕留めながら、敵の状況を皆に伝えていた。
「リュウジさん!、後ろについて行ってます!このタイプのモンスターは小回りが効きません。隅に誘い込んで下さいっ!」
《了解、アオイ。》
俺は、浮遊マントをなびかせて猛スピードで飛び回る。飛行する魔王軍は、その素早い動きについていけず、家屋に激突して自滅して行った。カズマは竜人化スキルを発動させている中、魔王軍と格闘していたメリッサが、ミツルギに言った。
「いくら倒してもキリがないわね。この軍勢の指揮をとっている親玉を倒さないと進軍は止まらないわよ?」
「そうだけど、ここからじゃ見えないぞ!?」
メリッサは、コウモリ型のモンスターを見上げて、
「あれに乗るわ。キョウヤ手伝ってくれる?」
「メリッサ!?本気なのか!?」
「わぁ、やばいですね☆」
そう言いながら、ミツルギは剣をしまって踏み台になる様に体勢をとる。
「ええ、なんだか楽しそう」
メリッサは、ミツルギに向かって走って行くと、ミツルギの両手を踏み台にしてジャンプし、コウモリ型のモンスターに飛び乗った。オーエドの市民を避難させていたダクネスが常駐していた兵士に声を掛けていた。
「そこの兵士!私はダスティネス・フォード・ララティーナだ。そこの大きな宿に逃げ遅れた市民がいる!お前たちが引率して避難させろ!」
ダクネスに言われた兵士は唖然としている。
「この通りからも、人々を避難させるんだ!直ぐに応援を呼べ!」
「ほ、ホントにあのダスティネス卿のララティーナお嬢様ですか?」
本物のダクネスと分からず、怪しんだ途端。
ドォーン!
魔法で荷車が爆発して燃え上がり、悪魔もどきが襲いかかって来た。ダクネスは呪われた聖剣を抜いて3匹同時に斬り倒した。それを見た兵士は、本物と判断したのか慌てて他の兵士に指示を出す。
「そこの宿に人を送れ!。市民の安全が最優先だ!詰め所から応援を呼ぶんだ!」
マヒルが周囲を警戒していると、住民がマヒルに助けを求めた。
「すいません!向こうの郵便局に大勢の人が閉じ込められてるんです!」
「ホントだか!?アクア!オラちょっと郵便局に行ってくるど!」
「分かったわ!支援魔法かけてあげる!『パワード』!!」
支援魔法を受けたマヒルは、郵便局に駆け付けた。悪魔もどきの魔王軍が、閉じ込めた人々を殺そうとしているところへ、窓ガラスを突き破って飛び込んで来た。
「みんな!、逃げてけろ!」
マヒルは魔王軍と戦い始めて気を引き付けると、マヒルは見事な槍さばきでなぎ払い、郵便局にいた魔王軍を倒した。
コウモリ型のモンスターで飛びながら、メリッサは後ろを振り向いた。重装備の鎧に身を包んだ魔物が、剣を抜きながら追ってくる。メリッサは、火の見櫓の上にアオイの姿を見付けて、通信魔石に声をかける。
「アオイ!」
「メリッサさん!?何やってるんですか!?」
「あー、ちょっと助けてくれるかしら?」
アオイは矢に爆発するポーションを垂らして弓を構えると、
「任せて下さいっ!『狙撃』!!」
コウモリ型のモンスターで猛スピードで飛んでいる重装備の魔物の頭を狙って、矢を放った。当たった!……と思った時、魔物が顔の横で、その矢を受け止めた。
「こんな矢尻で俺様が倒せると思ったのか?」
魔物が矢尻をべキッ!とへし折って、余裕の笑みを浮かべた途端。
ボォーン!
衝撃でポーションが着火して矢が爆発した。魔物はコウモリ型のモンスターから投げ出されて、地面に叩き付けられた。魔物が起き上がり、顔を上げた時、
「あら?その雰囲気だと、この軍勢の大将でしょうか?」
暴れていたマリューの前に偶然先程の魔物と出会した。魔物は起き上がって、
「だったらなんだ?人間共め、よく聞け、我々の総大将は邪神ウォルバク様だぞ!?このケダモノめっ!お前らごときに、邪神────」
言い終わる前に、マリューはその魔物を掴んだかと思うと、
ガンッ!ガンッ!ガンッ!
繰り返し地面に叩き付けた。マリューは、ボロ雑巾のようになった魔物を放り投げると、吐き捨てる様に呟いた。
「何が邪神ですか。こっちは竜帝ですよ」
「ば、馬鹿な……」
魔物は意識を失うと、マリューは再び掴んで外に飛び出した。
「敵の大将……討ち取りました!」
マリューが叫ぶと、辺りにいた悪魔もどき達がざわめき出した。
「そ、そんな!?馬鹿な!?」
「撤退だっ!撤退しろぉっ!!」
うわぁぁぁぁっ!
魔王軍達は、我先にと蜘蛛の子を散らす様に逃げ出して行った。