皆に個室が与えられ、早速部屋に装備品を置いた俺は、ミツルギと共に隊長敷地内を案内された。話によると砦には門が東、北、南、西、補給物資用の5つに分けられていた。魔王軍の拠点は砦から離れた森に囲まれた廃村に陣を張っており、勇者候補はその森の中で何者かによって殺されたそうだ。勇者候補の遺体は既に王都に戻っているという。そして、魔王軍幹部の総大将は女という事を教えてもらった。
魔王軍幹部は女だったのか……まさかっ!?いや、それはない。あのお姉さんが邪神な訳がないよな。
すると、隊長が困った顔をしながら口を開いた。
「鋼のリュウジ殿と魔剣のミツルギ殿に見せたいものがあるのですが」
「見せたい物?」
「なんですか?見せたい物って」
「こちらです」
────隊長の案内されて砦の外部に出た俺とミツルギは、そこでとある光景を目にしてしまった。それは砦の生命線とも言える外壁の一部で頑丈なはずの外壁は、ある一面だけが、何度も強烈な攻撃に晒されたのか崩壊寸前に陥っていた。
「嘘だろ……!?」
「なぁ、リュウジ。これ程の威力を出せる魔法って……」
間違いない、爆裂魔法だ……。
「隊長さん、相手は爆裂魔法を使うんですね」
「はい。魔王軍幹部ウォルバクは、爆裂魔法を使います」
俺は懐から通信魔石を取り出して、
「カズマ、今すぐAdventuresを全員集めてくれ」
隊長と別れた俺とミツルギは、皆を部屋に呼び寄せた。
「皆集まったな?今後の事を話し合おう」
集まったAdventuresを見回して、俺は口を開いた。
「今後の予定とはどういう事ですか?私は先程この砦の司令官にお会いしたのですが、魔王軍幹部を何度も撃退した経験がありますと伝えたら、私達に指揮権を預けたいと言われたのですが……」
「おいマジかよ!?」
カズマは予想をしていなかったのか、頭を抱え込む。
「しかも、ウォルバクは爆裂魔法を使うらしい」
「っ!?」
追い討ちをかけるように言うと、めぐみんが椅子を蹴って立ち上がる。
「爆裂魔法ですか!?そ、それは想定してませんでしたね……。私はめぐみんのおかげでアレの威力はよく知ってますから」
「あたしも、正直言ってどう対抗したらいいか分からないわ……」
ゆんゆんとキャルが困った顔をしながら項垂れる。
「ならば私が囮を引き受けよう。皆は、魔法を放った後で隙だらけになった相手を討ち取ってくれればいい」
「お前、ドラゴンゾンビに鎧壊されたばっかりじゃねぇかよ。アクアや俺の支援魔法を受けたって無事じゃ済まねぇぞ?それに、ウォルバクの他に魔王軍幹部がいる可能性が高い」
「んじゃ、爆裂魔法の隙がなくなったじゃねぇか!?」
狼狽えるカズマを見たアクアがうんうんと頷く。
「まぁ、つまりそういう事なのよ。せっかくここまで来たわけだけど、今回のところは邪神を名乗る事くらい見逃してあげようかと思うの」
「流石ですアクア様!寛大なお心をお持ちです!」
爆裂魔法を使うと聞いて真っ先にビビった自称女神が、聞いてもいないのに帰ろうと持ち掛ける。と、動かなくなっためぐみんが、突然。
「我が名はめぐみん!Adventures随一の魔法使いにして爆裂魔法を極めし者!魔王軍幹部にして邪神を名乗り、しかも爆裂魔法の使い手とは………!その者こそ私が求め続けていた宿命のライバルでしょう!」
「ええっ!?」
「ちょっとあんためぐみん!?何言ってんの!?」
めぐみんのライバル宣言になぜかゆんゆんとキャルが声を上げる。
「ええっ!?でもあんた ではありませんよ、爆裂魔法の使い手とは、相手にとって不足はないです。もし万が一私が敗れるとしても、それが爆裂死ならば本望です!ええ、そんな壮絶な最期なら、我が人生に悔いなどありませんとも!!」
どうしようもない事を言い出しためぐみんに、ゆんゆんが涙目で縋り付き、キャルは掴みかかって騒ぎ出す。
「あんた何言ってんの!?あたしのアビスバーストとの決着はどうすんのよ!?」
「キャルさんの言う通りよ!なんで会った事もない魔王軍幹部が勝手にライバルに昇格するのよ!」
「な、なんですか急に!?我がライバルとして認められたいなら爆裂魔法を覚えてくるといいです。そうしたら毎日散歩に連れて行ってあげますから」
「ふっざけんじゃないわよっ!そんなネタ魔法誰が覚えるかっての!」
「そうよそうよ!そんな爆裂魔法なんて覚えたくないし!それよりも、相手は爆裂魔法を使うのよ!?」
「2人揃って爆裂魔法を覚えたくもないとはよくも言ってくれましたね!いいでしょう、それは私への挑戦と受け取りました!さぁ、2人まとめて相手しましょうか、どちらも負けたらスキルポイントを溜めに溜め、爆裂魔法を覚えてもらいます」
「あ、あんた、本気で言ってんの!?」
「い、いやよそんなの!人生を左右するような勝負だなんて絶対……」
「ねぇ?なんで目を紅くさせてんのよ!?」
「本気で言ってるわけじゃないでしょ!?」
取っ組み合いを始めた3人を放っておき、俺は話し始めた。
「ここからは強制しない。先にアクセルの街に戻っても構わないぞ?そこのアークウィザード達が揉めてるが、今回はかなりヤバい。一撃で俺達を全滅も有り得るからな。消し飛んだらアクアの蘇生だって効かない」
「リュウジは何をバカな事を言っているのですか!これほどの相手を前に逃げてどうするんです!これはもう運命な相手ですよ、ええ、間違いありませんとも!」
なんでこんなにこだわるんだ!?めぐみんの様子が明らかにおかしい。
ヒートアップして来たのか、目を紅く輝かせためぐみんかは椅子に片足を掛けてパンツがチラッと見えながらもポーズを取る。
「我が使い魔ちょむすけを狙う相手が、爆裂魔法を操りし者にして魔王軍幹部で邪神を自称するだとか、これはもうウォルバクを倒して、そっくりそのままこの私が、魔王軍幹部と邪神の称号を頂くしかありませんね!レベルが上がり各種爆裂魔法系の威力向上スキルを覚えてウィズに挑戦して勝利を勝ち取りました。アクセルの街で一番の爆裂魔法使いはこの私です」
ウィズに勝った!?嘘だろ!?
「お前、知らない間にそんな事してたのか!?」
ど、カズマがめぐみんに言い放ったその時だった。
ドッカーーーーーーン!
耳をつんざく轟音と共に、砦が激しく揺れた。天井からパラパラと土埃が降り注ぎ、めぐみん以外の俺達は、咄嗟に身構えた。
「すげぇ威力だな」
「俺の評価だと90点はいってるな」
「なんの評価してんだよ」
その時、ペコリーヌが手を挙げながら口を開いた。
「あの〜。もしかして今がチャンスじゃないですか?」
「へ?ど、どうしたんですかペコリーヌ?」
突然、ペコリーヌが剣と鎧を装着させて立ち上がった。そんなペコリーヌの行動に呆気に取られている皆に向けて。
「爆裂魔法は1回撃ったらもうその日は撃てないんですよね?って事は、今日はもう爆裂魔法は使えないって事じゃないですか?やばいですね☆」
「「「「あっ!」」」」
そうだった!魔力切れを起こしてるなら大丈夫じゃん。
各自装備を整えた俺達は隊長が案内してくれた、しょっちゅう爆裂魔法を撃ち込まれている外壁に向かった。息を切らせた俺達が現場に着いて見たものは。
「なっ!?」
破壊跡の上から更に爆裂魔法を撃ち込まれたらしく、瓦礫の山と化した一部の外壁と、地面に残された巨大なクレーターのみだった。現場には、同じく駆け付けた勇者候補や騎士がたむろしている。
「ウォルバクはどこ行った!?魔力切れなら今がチャンスなんじゃないか?」
破壊の跡を前に呆然と佇んでいた隊長に、実行犯の場所を聞いた。だが、返ってきたのは。
「残念ながらウォルバクは先程逃げました………」
隊長が悔しそうにしていると、突然、西の門が開いた。
「またやられたぞ!救護班、急いでくれ!!」
門が開かれると大勢の怪我人が仲間と共に戻って来た。それを見たアクアとセシリーが急いで駆け寄る。
「これが我々が苦戦してる理由です。邪神ウォルバクが突然現れて遠くから爆裂魔法を放った後、テレポートして引き。後を追った兵士達が何者かによって襲われるのです。廃村の陣には魔王軍の精鋭部隊が待ち構えており、おそらくそこへ逃げ帰り、魔力を蓄えてまたやって来るのです。相手の兵力はおよそ2万、こちらは2千弱なのです……せめて、もう1人の魔王軍幹部の詳細が分かれば策が練られるのですが……」
隊長が剣の柄を握り締め、悔しそうに目を閉じた。
仕方ない、行くか。
俺が瓦礫を登り始めると、察したのか、ペコリーヌとマリューも登り始めた。隊長やカズマは俺達に向かって、
「鋼のリュウジ殿!?」
「お、おい!?お前ら何処に行く気だ!?」
「何処って、敵の本陣に殴り込みに行くんだよ」
そう言い返すと、アクアが慌てて引き留めようとする。
「わざわざ殴り込みに行くの!?もう、放っておきなさいよ!アクセルの街に返ってゼル帝のお家を建てましょうよ!」
「大丈夫ですよアクア様。ちょっとやり返して来るだけですから」
「ミツルギは襲撃に備えててくれ」
「わかった、気を付けて行くんだぞ!」
ミツルギや隊長達に見送られた俺、ペコリーヌ、マリューは数キロ離れた森の廃村に向かって歩き始めた。
時間的に今は夕方、冬だから暗くなるのも早い。ぱっと行ってぱっと帰って来よう。
俺達は潜伏スキルを駆使して森を抜けた。抜けた途端に俺は、
「ペコリーヌ、マリュー。こっからは別れて行くぞ、1人辺り100匹の魔王軍の兵隊を倒したらまた砦に戻る。それでいいな?」
「承知しました」
「頑張っちゃいますよ〜☆」
作戦を立てた俺達は、そのまま別れた。俺は左に走って行き、マリューは右を走って行く。そしてペコリーヌは剣を抜いて真ん中の道を走り始めた。
「なんだ貴様は!?」
「やぁぁぁっ!!」
ペコリーヌは魔王軍の3匹精鋭部隊に見つかると、そのまま突っ込んで一気に斬り捨てた。すると騒ぎを聞き付けた精鋭部隊が騒ぎ出し、魔法を放って来る。ペコリーヌは爆風で吹き飛ばされて壁にめり込んだが、そのまま廃村の家屋の窓に突っ込んだ。
ガシャーン!
窓を突き破るとそこには、10匹の精鋭部隊が休んでいた。
「なんだコイツは!?」
「何者だ!?」
精鋭部隊は突然の襲撃に驚いたが、ペコリーヌは何も言わずにテーブルを蹴っ飛ばして数匹を倒す。すると、精鋭部隊は剣を抜いてペコリーヌに襲いかかる。ペコリーヌは1匹の剣を受け流しながら斬り捨て、狭い部屋の中で素早く動きながら1匹ずつ倒していく。
「おいっ!そいつを取り抑えろ!!」
「コノヤロウ!大人しくしろ!」
精鋭部隊は刺股の様な槍を使ってペコリーヌを取り抑えようとするが、ペコリーヌは。
「こんなもの!へっちゃらです!」
ペコリーヌはバキッと槍をへし折って更に暴れ始める。そして、最後の1匹を窓から突き飛ばした。そして精鋭部隊の盾を拾い、更に進んで行くと更に精鋭部隊が待ち受けていた。ファイヤーボールを放たれたが、ペコリーヌは上手く盾を使って弾き、部屋の柱を切り倒す。それによって屋根が崩れそうになると、ペコリーヌは再び窓を突き破って外に出て来たのが見えた。
「ペコリーヌ!この先に広場がある!そこで落ち合うぞ!」
「わかりました!でやぁぁぁっ!」
そのまま駆け抜けると村の中心なのか、広くなっていた。既にマリューが暴れ回っており、俺とペコリーヌはマリューに背中合わせで声を掛ける。
「おいおい、マリュー。俺達の分も残しててくれよ」
「マリューさん、おいっす〜☆」
「壁をぶち抜いて来たので早かっただけです。ここで作戦を決行しましょう!」
精鋭部隊に囲まれた俺達はお互いカバーしながら戦っていると、魔王軍が使っていると思われる馬車が現れた。その馬車からはゾロゾロと増援が降りて現れる。それを確認した俺はペコリーヌに、
「ペコリーヌ!あの馬車ひっくり返してやれ!」
「わかりました!」
ペコリーヌは走って馬車に体当たりをしてグラッと揺らした。そのまま剣をしまって両手で。
「うぅぅん、よっこいしょー!」
馬車をひっくり返しして、精鋭部隊を押しつぶした。
そろそろ良いだろう。
俺は精鋭部隊の1匹を殴り倒し、マリューとペコリーヌに声を掛けた。
「もういいだろ、撤退すんぞ!」
「わかりました!マリューさん、行きましょう!」
「ええ、分かりま────」
ボォーーーン!
俺達周りが突然爆発し始めた。魔術師殺しのパーツを使ってるおかげで防御しながら敵感知スキルを発動させると、教会の屋根に魔法使いを発見した。
「ペコリーヌ、マリュー!そこの教会の上だ!」
そう言い放つと、マリューが先程ペコリーヌがひっくり返した馬車を持ち上げて、ペコリーヌに言い放つ。
「ペコリーヌ様!これを!」
「ありがとうございます!マリューさん!!」
ペコリーヌが馬車に乗っかった瞬間、マリューは馬車を押し上げてペコリーヌを高く飛ばした。ペコリーヌはそのまま剣を抜いて、
「『プリンセス・ストライィィク』!!」
巨大なティアラな様なエフェクトを出しながら、潜んでいた精鋭部隊ごと教会を真っ二つに切り倒した。