※この作品はR-18です。

この元魔王に素晴らしい祝福を!改訂版   作:ボトルキャプテン

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今回はブギーマン視点で行きます。

すいません、2話ずつ書く予定でしたが、思った以上に忙しくなって来て1話しか書けなくなって来ました。なので今後は1話更新に変更します。


159 ブギーマン再び

俺が立ち去った後、キャルはテーブルに用意されたお茶を飲み干し立ち上がった。

 

「あたしはもう戻るわね。あまり遅くなると怪しまれるし」

「そっ、私の爆裂魔法に巻き込まれないようにするのよ?」

 

ウォルバクが鼻で笑いながら言うと、キャルはツンとした態度で、

 

「冗談じゃないわよ!あんたも気を付けて攻撃しなさいよっ!」

「ふふっ、そうね。気を付けるわ」

「んじゃね」

 

キャルは森の中を歩きながら姿を消して再び砦に戻って行った。

 

数時間後。

 

────寒空の満月に雪が積もる大地を照らす中、俺は雪の中を素早く駆け抜け、Adventuresや勇者候補達がいる砦にやって来た。外壁の前をして俺は、黙って見上げて考えた。

 

この無駄に凝っているアートを踏み台にして行けばいいか。

 

俺は高くジャンプして妙なアートに手をかけて行き、砦の中へ侵入に成功した。通路には松明が壁に備え付けられているが、人間の姿は確認出来なかった。

 

防衛に成功したからとはいえ随分余裕だな。

 

懐からダガーを取り出して気配を殺しながら進んで行くと2人の兵士を確認した。俺はそのまま懐から投げナイフを左手で取り出して忍び寄り、1人をダガーで首を切り落とした。

 

「なんだ!?、どうし──」

 

人間の兵士が騒ぐ前に額に目掛けて投げナイフを放った。投げナイフは額に突き刺さり、そのまま倒れ込んだ。投げナイフを抜いて血を拭い、更に先へ進んだ。

 

勇者候補が増えてなければ十数人程度、なら先ずはアークプリーストのアクアという女を先に仕留めるか。

 

アクアという女を探す為に進んで行くと、砦の本陣の入口に差し掛かった。襲撃を想定していないのか、扉には鍵はかかっておらず、俺は静かにドアノブを回した。ゆっくり中へ入ると、遠くから人間の声が聞こえて来た。

 

こんな時間に何をしているんだ?

 

声の方向へ進んで行くとそこは浴場になっていた。先程から聞こえて来た声はここかららしい。ゆっくり進んでいくと、声は脱衣場からの様だった。

 

「アクア様がまさかチート能力として来ると思って無かったな!」

「ああ、前々から思ってたけど、アクア様って胸でけぇよな!」

 

呑気に風呂に入っていた勇者候補が見えた。

 

2人か、1人ずつ始末して行くか。

 

身を潜めていると、2人は別れて1人は脱衣場に、1人は脱衣場から離れた所の鏡を見ながら歯を磨き始めていた。俺はまず、脱衣場の方の人間に狙いを定めた。裸になるまで身を潜め、裸一貫になった時、物音を立てずにダガーを首に刺して仕留めた。

 

先ずは1人。勇者候補は全員黒い髪をしているから分かりやすいな。

 

鏡を見ながら歯を磨いていた勇者候補は異変に気付き、鏡越しに見てみると、血が見えた。もう1人の勇者候補が慌てて後ろを振りい向いたが、俺は直ぐに首を絞めた。

 

「アクアという女を探している。どこだ?」

「て、てめぇ……!!アクア様をどうする……つもりだ!?」

「貴様に関係ない事だ。どこにいる?」

 

ギリギリと絞めるが、勇者候補は。

 

「誰が言うかよ……」

「そうか」

 

俺はそのまま両腕に力を込めて、思い切り捻った。捻った瞬間、鈍い音が鳴り響く。

 

これで2人。ここにはもう用はない、他を探すか。

 

浴場から出て階段を上がると、長い廊下にいくつかの部屋があった。

 

おそらく勇者候補達の部屋だろう。

 

一番手前の部屋のドアノブに手をかけて中に入ると、そこは暖炉の明かりで照らされた部屋。そこにベッドの近くに見たことの無い形をした槍が立て掛けられていた。持ち主であろう人間がベッドの中で寝息を立てていた。俺はゆっくりと近付き、布団を捲って一気に心臓にダガーを突き刺した。

 

3人。

 

ダガーについた血を布団で拭い、次の部屋を目指した。隣の部屋のドアを開けると、今度は蝋燭の明かりを灯しながら机で本を読んでいる女がいた。机のそばには見た事ない弓が立て掛けられていた。

 

今回の仕事で勇者候補が扱う武器は皆得体の知れない作りをしている。これを作った奴は一体何者なのだろう。

 

そう思いながら気配を殺しながら近付き、ネクタイを外して一気に首を絞めた。

 

「かはっ……!?」

 

勇者候補の女はじたばたともがき苦しみ、近くの人間に気付かれないように絞め続ける。女の勇者候補は顔を真っ赤にさせながら自分の武器に手を伸ばそうとするが、俺は弓をベットの下に向けて蹴り、距離を伸ばした。女の勇者候補は意識を失い、手を伸ばすのを止めて目を閉じた。脈が無いのを確認した俺は呟く。

 

「勇者候補はこんなものなのか?」

 

ネクタイを再び締め直し、更に次の部屋を目指した。部屋を後にすると、廊下の奥から何やら声が聞こえて来た。

 

「ふんふ〜ん♪ふふふ〜ん♪」

 

これは、鼻歌か?

 

俺は慌てて壁に張り付いて様子を伺うと、寝巻き姿で酒瓶を持った青い髪の女がフラフラと歩いていた。

 

青い髪の女……あいつがアークプリーストのアクアという女か。

 

ターゲットの女を見つけた俺は、2本のダガーを持ってゆっくりと気取られない様に近こうとした。その時、

 

「スンスン……スンスン……」

「──────っ!?」

 

突然アクアが立ち止まって辺りの匂いを犬の様に嗅ぎ始めた。一度俺は物陰に隠れた。

 

この俺が気取られたのか!?ありえない、血の匂いが分かるのか!?

 

様子を伺っていると、

 

「変ねぇ〜?この廊下、なんか悪魔の匂いがするんですけどぉ〜?」

「───────!?」

 

なんだと!?なぜ俺の正体が分かった!?

 

俺は冷や汗を流し、冷静を装いながらターゲットを観察し始める。

 

「けどまぁ、悪魔1人でここに乗り込む訳がないわよね」

 

なんだこの独り言は?奴は気付いていないのか!?

 

複雑な気持ちになりながらも、俺は気を取り直してアクアの背後に忍び寄る。ダガーを振りかざしたその時、

 

「けどやっぱり気になるわねぇ?」

 

突然アクアが廊下のど真ん中で立ち止まった。突然に止まった為、俺はアクアにぶつかってしまった。

 

「うわっ!ちょっとちょっと!どこ見て歩い…………」

 

アクアは振り返り、俺の顔を見つめた。アクアは見つめた途端、

 

「うわぁぁぁぁぁっ!何よあんた!こっちに来ないで変態!こんな真夜中に1人で出歩いてるんなんて!!」

 

しまった!だが、まだ俺の正体に気付いていないはず。だったら!!

 

「ま、まて!落ち着け!俺は勇者候補の1人だ。怪しいもんじゃない」

「どの口が言ってんのよ!!こんな悪魔臭い匂いを出しといてよく言えたわね!?」

 

気付かれただと!?コイツ……一体何者なんだ!?

 

俺はバックステップをしてアクアから距離を取り、ダガーを構えた。

 

「バレてしまったなら仕方ない。俺は貴様を殺しに来た!!」

「なぁんですって!?この女神である私を!?」

「貴様がいるとこちらも面倒なんでな?」

 

そう言うと、アクアはファイテングポーズを取り、俺に言い放つ。

 

「悪魔如きが1人でこんな真夜中にカチコミに来たっていうの?」

「その通りだ。お前と会う前に数人始末してきた。残りの仕事は貴様の首とちょむすけという猫の奪還だ」

「ちょむすけですって?まさか、アンタもアイツが可愛いとか言うんじゃないでしょうね!?」

 

何を言い出すんだコイツは。

 

「そんな事はどうでもいい。奴はどこにいる?」

「あんたなんかに誰が教えるもんですか!!1人で乗り込んで来たボッチ悪魔さんっ!プークスクス」

「そうか…………なら。先に死んでもらう」

 

俺がダガーを握ってアクアに向かって走りだした瞬間。

 

「曲者よぉーー!出会えっー!出会えっー!カズマさーん!めぐみーん!ダクネスー!マヒルー!リュウジー!ゆんゆーん!アオイー!早く来てぇ!!」

 

怖くなったのか、突然アクアが泣き喚く子供のように叫び出した。それと同時に砦中に明かりが灯り、周辺が明るくなった。

 

人間が集まってくる。これ以上はもう無理だっ!

 

「ウォルバクが言う通り、面倒な奴だな。仕事は仕事だ。貴様を殺してから身を隠してやり過ご─────」

「『セイクリッド・エクソシズム』!!」

「───────っ!!!!」

 

突然アクアが変なポーズをしながら退魔魔法を繰り出して来た。俺は咄嗟に避けてゴロゴロと転がる。

 

「すばしっこいわね!動くんじゃないわよ!」

「やかましいっ!相手が話してる途中に攻撃をしてくるとはやってくれるじゃないか」

「悪魔の癖に生意気言うんじゃないわよっ!あー、臭い臭いっ!」

 

お、の、れ、ぇっ!!

 

「言わせておけば子供のような文句ばかり言いやがって。ぶっ殺して」

「いたぞっ!あそこだっ!!」

 

俺の後ろからは、数名の人間が武器を片手にやって来た。

 

「っち……一旦退くか」

 

俺は人間の方を向いてダガーを構え、迎え撃った。1人の腕に関節技を仕掛け、もう1人には蹴りを繰り出した。そのままダガーを胸に刺してダウンさせ、投げ飛ばとそうとした。その時、

 

「『セイクリッド・エクソシズム』!!」

 

背後からアクアが俺に向けて魔法を放って来た。投げ飛ばすのを中断させて俺はアクアの魔法を避けた。

 

 

「このアマァッ!!邪魔をするなっ!!」

「何よっ!敵に背中を向ける方が間違ってると思うんですけどぉー?」

「なんだと!?」

 

言い争っているとさらに増援が増え、アクアの方向や俺の後ろからも兵士達がゾロゾロと集まり出す。

 

「Adventuresの皆さんにも伝えました。もうすぐこちらに来ます!」

「さぁ、観念なさい。女神である私に刃物を突きつけた事を後悔するがいいわっ!」

「抜かせハッタリプリーストがっ!貴様が女神だと?笑わせるなっ!」

 

前後を警戒しながらアクアに対して言い返すと、

 

「ハッタリプリーストですって!?謝って!今すぐ謝って!ハッタリプリーストとか言ってごめんなさいって謝ってちょうだいっ!!」

「誰が貴様なんかに謝るかっ!!もう、付き合ってられんな」

 

再び来た道を戻ろうと人間達に襲いかかった。背負い投げをして1人目をダガーで刺殺し、2人目の腕をへし折って動きを封じ、3人目を回し蹴りで倒した。退路を見出した俺はそのまま走り出した。階段を駆け下りるとそこには、槍を構えた兵士達が待ち構えていた。

 

「止まれぇぇっ!!」

 

誰が止まるものかっ!!

 

俺はそのまま階段をジャンプして飛び越えて幾重の槍に向かって行った。そのまま槍を掴んで奪い、振り回し薙ぎ払った。窓を蹴破って突き進んで砦の広場に降り立った。だが、そこには青い鎧を身に付け、剣を持った男が立っていた。

 

「貴様は……」

「ここから先は通さないよ。魔剣の勇者と言われたボクが相手だからね」

「魔剣のミツルギ」

 

ダガーを構えると魔剣のミツルギも剣を構えた。お互いにジリジリと距離を取っていたが、魔剣のミツルギが動いた。

 

「『魔法剣・炎龍』!!はぁっ!」

 

突然魔剣のミツルギの剣が上段から下段へ、あたかも炎が降り注ぐかのように振り下ろされた。咄嗟にバックステップで避けたが、ネクタイが切り落とされた。俺は微笑を浮かべたまま、

 

「魔剣のミツルギ……噂通りだな」

 

ダガーを構えながら、俺は呟く。

 

残機も残り2つ……仕方ない、やるか。

 

俺は右足を強く踏み込んで、大きく息を吸って。

 

「暗殺術」

 

腰を深く落としてナイフを構えると、足元に黒い渦が巻き起こった。

 

「『ババヤガ』」

 

俺はにいっと笑いながら、黒い刃のダガーを構え。

 

「この技を出したのは何年振りだろうか────」

 

そう言って俺は魔剣のミツルギに向かって行く。繰り出されるダガーを、魔剣のミツルギは再び魔法剣で迎え撃った。俺は魔剣のミツルギの放つ鋭い斬撃を紙一重で避け、攻撃に転じた。間髪入れずに繰り出すダガーを、魔剣のミツルギは振り向きざまに斬撃で受け流す。

 

「お前は鋼のリュウジより強いのかっ!!」

 

絶え間なくダガーを繰り出しながら、俺は楽しげに言う。顔の前に魔法剣を構えてダガーの刃を受けた魔剣のミツルギは、そのまま斬り伏せようとするが、俺は更に強い力で押し返した。

 

「いや、鋼のリュウジよりやや下だな。奴はもっと強かった!!」

 

俺がそう言うと、再び魔剣のミツルギが剣を振るいダガーと魔法剣が弾き合う。

 

「鋼のリュウジを呼んでこいっ!!この手で殺してやるっ!」

「ならボクを殺してから行くんだなっ!!」

 

魔剣のミツルギが魔法剣を振り上げる。俺の胴体を狙っていたのか、俺は背後に大きく飛んで避けて、宙に浮かんだまた、

 

「『暗殺術─────』」

 

両手に2本のダガーを握り、力を込めて。

 

「『インビジブル』!!」

「─────っ!?」

 

空中でダガーを振るう俺に、魔剣のミツルギに咄嗟に剣を体の前で構える。魔剣のミツルギは無意識に近い動きだったが、直後、見えない斬撃が1発、2発剣を震わせた。魔剣のミツルギはそれらを魔法剣で受けた。柄を握りしめた両手がビリビリと震えていた。魔剣のミツルギは何かを悟ったのか、あらためて魔法剣を構える。

 

「アクア様の力を思い知れっ!『魔法剣・花鳥風月』!!」

 

突然地面から現れた巨大な水柱が、俺の連撃を防ぐ。

 

面白い技を使う……。

 

俺が地面に着地した元に、一瞬で水柱の陰から魔剣のミツルギが間合いを詰めた。

 

「いい反応速度だなっ!!」

 

間髪入れず、次の斬撃を放つ魔剣のミツルギにダガーで応じていると、

 

「ミツルギくんっ!」

「ミツルギさんっ!」

「こいつですか!?アクア様を襲ったやつは!?」

「キョウヤ!!」

 

夢中になっている間に、駆け付けて来たらしき女が4人いた。紅魔族1人、人間が2人に、エルフだった。

 

「来るなっ!!」

 

と魔剣のミツルギが叫ぶ。

 

「こいつは強いっ!下手に手を出したら殺されるぞっ!」

「「「っ!!」」」

 

4人がビクッと身をすくませる。

 

「女に構ってる暇があるのか?」

 

俺は虫唾が走った様に苛立ち、魔剣のミツルギにダガーを振るう。こと更に重たい一撃を魔法剣で受け止め、強引に跳ね返す。すると、夜空に光がさし始めて来た。

 

夜明けがもう近い。

 

「悪いが、勝負はおわずけだ。仕事は失敗してしまったが、数人の勇者候補は始末出来た」

 

俺は斬撃で門を破壊し、地面を思い切り蹴って外へ駆け出した。

 

「こんな屈辱は初めてだ。まぁいい、勇者候補をまた減らしたんだ。残りの仕事はゆっくり時間をかけてやるとしよう」

 

その時、

 

「ちょっと、待ちなさいあんた!!」

 

振り向くとその先に居たのは、あの青い髪の女だった。

 

「あんたが殺した人達はもう、生き返ったんですけどぉー?」

 

何を言っているんだアイツは、脳みそが足りないんじゃないのか!?なんだ生き返ったって!?人間を蘇生できる訳ないだろう!!

 

俺は胸の中でそう吐き捨てると、煮えたぎるような怒りを抱えたまま、魔王軍の陣地に戻って行った。

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