世界会議の会場が襲撃されて数時間後、コッコロは目を覚ました。コッコロは高級のベッドに寝かせられており、隣のベッドにはアイリス王女が腰掛けながらコッコロに声を掛けてきた。
「目が覚めましたか?」
「アイリスさま!?、お怪我はございませんか!?」
「私は大丈夫です。コッコロさまはお怪我されてませんか?」
「わたくしも無事です。申し訳ございません、わたくしの力及ばず」
コッコロはベッドが降りて片膝を付いて頭を下げた。アイリス王女はにっこりと笑って。
「いえ、油断していた私にも不備はありました。お気になさらずに」
「はい…………それにしても、ここは何処なのでしょうか?」
コッコロは部屋を見渡してみると、ピンク色の壁に可愛らしい鏡や家具などが置かれていた。
「見たところ、ここは何処かの高級宿にも思われますが…………」
「確かに、少し高そうな物が置かれておりますね」
アイリス王女とコッコロは何があったのか、思い出し始める。
「わたくし達はあの老紳士に連れ去られたのでしょうか?」
「はい、そのようです。今頃クレアもレインもお兄様も心配しているでしょう…………」
2人は途方にくれてると、ドアがノックされて何者かが入って来た。
「…………失礼しますね。少し様子を見に参りました」
コッコロは老紳士が入って来た途端、慌ててアイリス王女の前に立つ。
「現れましたねへんたいふしんしゃ!アイリス王女さまには指一本触れさせません!」
「私はアイリス王女、名を名乗りなさい!」
老紳士は紳士的な態度を取りながら帽子を取って挨拶を始める。
「これは失礼しました、私の名前はダニエルと申します。以後、お見知りおきを」
「ダニエルという者。私達をどうするつもりですか?」
「ここはどこなんでしょうか?」
「はぁ…………小さい子がいる生活とはいいものですねぇ…………。アイリス王女様に似合う可愛い部屋を仕立てた甲斐があったというものです」
ダニエルはうっとりしながらアイリスとコッコロを見つめながら話し出す。
「ここは【コンチネンタル・ホテル・エルロード】の特別室です。快適に過ごせておりますかな?必要なものがあれば何でも言って下さいね」
「では、わたくしの武器と装備を返していただけないでしょうか?」
「大変申し訳ありませんが、抵抗されては困りますのでこちらでお預かりさせていただきます」
「くっ…………」
コッコロは肩透かしを食らわされたみたいにダニエルを睨みつける。すると、アイリス王女が口を開いた。
「でしたら、ピザをご用意して頂けますか?」
「…………は?」
コッコロは予想を遥かに超えた言葉を聞いて驚いて思わず2度見する。
「い、いや、アイリス王女さま!?ここは、抵抗しなければ!」
「かしこまりました。直ぐにご用意しましょう」
「それは用意出来るんですか!?」
「早速買って来ますのでこれで失礼します」
ダニエルはどこか嬉しそうにしながら静かにドアを閉めて鍵をかけて去って行った。コッコロは直ぐに、
「あの、アイリスさま?なぜピザを要求されたのですか?。まさか、この時間を使って脱出するおつもりなのですか!?」
コッコロが尊敬の眼差しをしながらアイリス王女を見ると、
「いえ、以前王城でレインが美味しそうに食べていた庶民的な味がとても気に入ったので頼んだのです。王城ではクレアに見つかったらしかられますし。それに、お兄様も言っておられました。「我慢は体に悪い」「贅沢したっていいじゃないか」と」
「そ、そう言われましても…………」
「じたばたしてても仕方ありません。ここで色んな庶民的な食べ物を食べてからでも遅くはありませんよ」
アイリス王女がにっこりと笑うと、コッコロは納得がいかない顔をしながらアイリス王女の隣に座り込むと、
「お待たせ致しました、特性ピザでございます」
「もう買って来たんですか!?」
ダニエルがバタバタと慌ただしくドアを開けてピザを持って来た。コッコロはピザを受け取ると、アイリスは嬉しそうにダニエルに声をかける。
「まぁ!こんなに沢山。ありがとうございます」
「では、私はこの辺で…………少々立て込んで来ましたので失礼します」
ダニエルはドアに鍵をかけて早足で階段を上がってアイリス王女とコッコロの部屋の真上にやって来た。ダニエルはドアをノックして中に入る。
「お待たせ致しました」
「おっそいわよ!人呼んどいて何してんのよ!?」
「ったく、呼んどいて待たせる奴がどこにいんだよ」
ダニエルの前には先程騒ぎを起こした1人のキャルと、王都の聖テレサ女学院に攻め込んで来たセレスディナがソファーに座っていた。ダニエルはソファーに立て掛けていたハンマーを手にしながら座り始める。
「いえいえ、拉致して来たアイリス王女とエルフの少女の様子を見て来ましてね?」
エルフの少女と聞いた途端、キャルは耳をピクピクと動かす。
「エルフの少女…………コロ助?」
「なんだキャル?知り合いか?」
セレスディナがキセルに火をつけて大きく煙を吐きながら声をかけた。
「え、ええ。以前鋼のリュウジに潜入した時いたエルフよ」
キャルの話を聞いていたダニエルが紅茶を飲みながら、
「なるほど、ではそのうち鋼のリュウジも動き出すでしょうね。それと、キャルさん?しばらく留守にしてたのですから何か手土産はないんですかな?」
そうダニエルに言われたキャルはツンとした態度をとりながらポーチを漁り始めた。
「言われなくても分かってるわよ!これでどうよ!?」
キャルは獣人の女性が写った写真を取り出し、テーブルに叩き付けた。ダニエルとセレスディナはまじまじと写真を見つめる。
「このご婦人はどなたです?」
「あたしも見た事ねぇな。こいつ誰だ?」
「あたしも知らないんだけど、リュウジの荷物に入ってたの。って事はその女はリュウジに関係してるヤツって事じゃない?」
話を聞いたダニエルは写真を手に取って何かを考え始めた。
「これは役に立ちそうですね。コレは私が預かっておきます」
「あっそ。勝手にしたら?」
「で?ダニエル。なんであたしらを呼んだんだ?」
セレスディナがダニエルに言うと、
「ええ、実はアイリス王女を誘拐した時にラグクラフトさんに協力して貰ったんですよ」
「それで?」
「その時、キャルさんに化けて貰いましてね?」
「はぁ!?」
何も事情を知らなかったキャルはテーブルをバンと叩いて騒ぎ出す。
「ふざけんじゃないわよっ!なにあたしがいない間にやってんのよ!?」
「まぁまぁ、これもラグクラフトさんの作戦の一つらしいですよ?」
「なぁキャル。ここにいちゃ不味いんじゃないか?今頃お前指名手配犯だぜ?」
セレスディナに言われた言葉を聞いて頭をぐしゃぐしゃに掻きむしって更に騒ぎ出す。
「そーよ!あたしヤバいじゃない!こうしちゃいられないわ!さっさとエルロードから脱出しなきゃ!!」
キャルは慌てながら部屋を出て行った。しんと静まり返った部屋の中でセレスディナは口を開いた。
「『テレポート』で出ればいいのに、余程慌ててたな」
「そのようですねぇ」
セレスディナはキセルに再び火をつけてふぅっと煙を吐き出しながら、
「で?あたしの出番はキャルが捕まった後か?」
セレスディナがダニエルに尋ねると、ダニエルは不気味に微笑む。
「ラグクラフトさんの指示だとそうなります」
「分かった。あんたはどうすんだ?」
「魔剣のミツルギに顔を見られましたし、ここに来るのも時間の問題でしょう。私はここでアイリス王女とエルフの少女と同じ空間にいるひとときを堪能しながらここの従業員と共にAdventuresを迎え撃ちます」
セレスディナはダニエルが手に持つハンマーを見つめる。
「その【トールハンマー】でか?」
「ええ。鋼のリュウジも雷魔法使いですし、負ける事は無いでしょう」
「なるほどな、んじゃラグクラフトからの指示があるまであたしも身を隠してるからな?」
「ええ、ラグクラフトさんの作戦は企画倒れになりますがね?」
「期待してるぜ?魔王軍幹部はもうあたしらしかいないんだからな」
そう吐き捨てたセレスディナはそのままキャルと同じように部屋を後にした。