討議の後。ラグクラフト宰相に呼ばれた俺は宰相が待っている謁見の間に向かった。深呼吸をして、扉をノックする。
「鋼のリュウジです。指示通り来ました」
「鋼のリュウジ殿ですか、中にお入りなさい」
中からラグクラフト宰相の声が聞こえて来た。俺は扉を開けて中に入ると、王座にラグクラフト宰相が座っていた。俺はそのまま近くまで行き、騎士のように膝をついて頭を下げると、ラグクラフト宰相は口を開いた。
「先程はご苦労さまでした。話は纏まりましたかな?」
「いえ、まだです。仲間達も悩んでるようでして…………」
「そうですか…………。では、話題を変えましょうか、ダニエル討伐の報酬の話しでもしましょうか。聞けば、ダニエルを討伐したのは鋼のリュウジ殿だとか」
「はい」
「では、報酬をお支払いしましょう。しばしお待ち下さい」
え?待たされるの?どんだけ金くれるの!?
そんな淡い期待をしていると、ラグクラフト宰相は奥の部屋に入って行ってしまった。それから…………5分、10分しても、ラグクラフト宰相は部屋から出て来なかった。
おかしい、何かあったのだろうか?
「あの、宰相殿?どうかしたのですか?」
ガチャ!
すると、別の部屋のドアが開かれた。だが、現れたのは…………見覚えのある姿をした獣人の女騎士だった。俺は思わず腰を抜かした。
うそ…………。
「ラ…………ラフタリア…………?」
俺の言葉が届いたのかラフタリアはニッコリと微笑み、両手を広げて俺を待ち望んでいた。いつの間にか、俺の目から涙が零れていた。
「ラフタリア…………俺の知ってる、ラフタリアなのか……?」
ラフタリアは俺に応えるように、ゆっくりと頷いた。俺は堪らずラフタリアに抱き着いてしまった。
「ラフタリア!!ずっと、会いたかった…………!!」
ラフタリアを強く抱き締めた瞬間、俺の腹部に何かが刺さった。激しい激痛を感じた俺はゆっくりとラフタリアから離れて腹部を確認した。
「えっ…………?な、なん…………で?」
ラフタリアの手を見るとそこには剣が握られており、剣から俺の鮮血が滴り落ちていた。
「がはっ!?ひ、ヒール…………」
「『ライトニング』!!」
俺が傷口を右手で抑えながら回復魔法を唱えようとした瞬間、ラフタリアの後ろからライトニングが放たれて俺の手を弾いた。俺は断末魔をあげる。
「ぐあぁっ!!だ、だれだ!?」
王座の影から今まで姿を隠していたキャルが杖を俺に向けながら立っていた。処理しきれない情報量の多さに混乱した俺は騒ぎ出す。
「キャル…………!!なんのつもりだ!?」
「………………」
「なんとか言えよ!キャル!!」
すると、ラフタリアがキャルに何か指示を出したのか耳打ちをした。頷いたキャルは俺に杖を向けた。
「『テレポート』!!」
「キャル!!おいっ!説明しろ!キャル!!」
───────なんの説明もないまま、俺はどこかに飛ばされてしまった。着いた先はエルロード近くの森の真上だった。
この高さから落ちたら確実に死ぬ…………。
死を覚悟した俺は目を閉じた。地面にあと数メートルという所で俺は誰かにキャッチされた。
「ふい〜。危なかったですねぇ」
霞んだ視界を確認すると、ペコリーヌが俺を抱きかかえていた。
「ペコリー…………ヌ」
「どうしたんですか!?何があったんですか!?」
「…………ャルが…………」
まともに喋る事も出来なくなった俺は気を失ってしまった。ただ事じゃないと感じたペコリーヌは俺をおぶってエルロードの宿に戻って行った。
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目が覚めると、エルフの森の王族が貸し切りにしていた宿のベッドに寝かせられていた。ベッドの横には、ペコリーヌとコッコロがソファ座って寄り添うように眠っていた。俺は刺された場所を手で確認する。
傷口が完全に塞がってる…………あのラフタリアは俺を殺す気はなかった見たいだな。有り得ない、ラフタリアがこの世界にいる訳がない。何者かがラフタリアに化けたに違いない。
「けど、問題は…………キャルだな。あいつ、裏切りやがった!!」
俺が独り言を喋っていると、ペコリーヌとコッコロは目を覚まし、目を擦りながら立ち上がった。
「リュウジくん!無事ですか!?」
「リュウジさま、ご無事でなによりです」
「ああ、コッコロが俺を手当てしてくれたのか?」
「はい。幸い致命傷ではございませんでしてので、ヒールで治療致しました」
「ありがとう。コッコロ、悪いんだけど先にアクセルの街に帰っててくれないか?」
俺が苦虫を噛み潰したような顔をしながら懇願すると、コッコロは首を傾げる。
「ですが、今はペコリーヌさまを…………」
「そこは俺がカバーするよ。ウォルバクとマリューが心配だから様子を見て来てくれ」
「かしこまりました…………では、先に戻っております」
「ありがとう、『テレポート』!!」
俺はテレポートでコッコロを送り届けた。見送ったペコリーヌは俺の方を向いた。
「コッコロちゃんを遠ざけたという事は、余程の事ですよね?何があったんですか?」
「…………キャルと会った」
「えっ!?ほんとですか!?。けど、刺された理由とどんな関係が?」
「刺された時、俺をテレポートで飛ばしたのはキャルだ」
そう言った途端、ペコリーヌは唖然としていた。
「え……え?嘘ですよね?やだなぁ、リュウジくん。そんな嘘はヤバいですね☆」
「嘘じゃない…………」
「そう…………ですか…………」
ペコリーヌはそのまま俯いて、
「すいません、一人にさせて下さい…………」
「ああ、助けてくれてありがとうな。後は俺がやるから」
「はい…………失礼します」
ペコリーヌは部屋を出て行くと、入れ替わりにクリスが入って来た。
「あれ?ペコリーヌ?どうしたの?」
「すいません…………放っておいて下さい」
「えっ?」
ペコリーヌはそのまま自室に向かって歩いて行った。クリスは心配そうに見つめると、
「何があったの!?刺されたって聞いたけど!?」
「ああ、誰かがラフタリアに化けてな。キャルも一枚噛んでる」
「キャルさんが!?」
「キャルはもう犯罪者だ。俺はこれから新しい鎧を作りに行ってくる」
俺は荷物からヴィブラニウムと鎧に使う生地を取り出して出掛ける支度をした。支度をしながら、
「誰がサインした?」
「ミツルギさん、メリッサさん、あたし」
「アオイは?」
「少し考えさせて欲しいって」
「ゆんゆんは?」
「ゆんゆんさんも、検討中」
「セシリーやカズマ達は?」
「…………サイン、出来ないって。リュウジはどうするの?」
「分かってて来たんだろ?」
「一人にしたくなかったから」
クリスが俺を引き寄せ、ハグをした。それから数時間後、クレアさん達に連絡を取り、兵士を集めてキャルの逮捕に乗り出す事にした。俺はクレアさん、ミツルギと合流した。
「鋼のリュウジ殿、猫の獣人キャルの通報が止まらない。と言ってもほとんどがガセネタだ。…………これ以外は」
そう言ってクレアさんが俺に書類を渡した。書類に目を通したミツルギが手を挙げる。
「ボクと兵士達だけで向かいます」
「了解した」
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その頃、カズマ達は人通りのない廃屋にやって来ていた。カズマはイージスの盾を持ちながらキャルと話をしていた。
「キャル、お前はテロの事件に関係してないんだろ?だから俺をここに寄越したんだろ?」
「何があったか話してくれませんか?大丈夫です。私達はキャルの味方です」
「…………誘拐事件、あれはあたしじゃないわ」
「えっ?どういう事?映像じゃキャルが写ってたけど?」
「それは…………」
キャルが重い口を開こうとしたその時、
「カズマ、兵士達が来たど!」
「しょうがねぇなぁっ!!お前を犯人だと思ってる連中が来たぞ!」
「生け捕りはしないでしょうね、大人しく自首するつもりはないわ」
「わ、私的には自首したいんですけど…………?」
「カズマ!来るぞ!キャルと共に逃げろ!」
「紅魔族的に、こういう展開嫌いじゃないです!むしろ、燃えます!」
「ここはオラ達に任せるべ!」
部屋に王都の兵士達が突入し、剣を抜いた。アクアを除いた4人は抵抗はするが、相手に本気で魔法を放つキャルをカズマが目を止める。
「キャル、やめろ!死んじまうぞ!」
「分かってるわよ!」
そう言って、カバンを背負って駆け出すと、逃走の為に杖を使って魔法で兵士達に応戦する。しかし、路地にも多くの兵士達が待機し、キャルを狙っていた。さらに屋根からも窓を突き破って兵士が襲って来た。剣を装備した兵士達を相手にしながら、竜人化したカズマとキャルは路地を突き進む。キャルを逃がす為、ダクネスが『デコイ』で引き付ける。
「今だ、行け!」
キャルは別の路地を進むと、商業地区に差し掛かった。そのまま逃走を図るが、ペコリーヌが行く手を阻んだ。
「ペコリーヌ!?」
「キャルちゃん、止まって下さいっ!」
「うるさいっ!邪魔すんなぁぁぁっ!」
キャルとカズマはペコリーヌと向かい合うが、遂に完全に兵士達に取り囲まれる。そこに、ミツルギもやって来た。
「3人とも、大人しくしろ」
大勢の兵士達に剣や槍を向けられ、3人は両手をあげる。すぐそばでアクア、めぐみん、ダクネス、マヒルも兵士達に捕らえられた。
「カズマ…………君達は犯罪者だ」