翌日、俺は今だに悪夢にも悩まされており、寝不足気味だった、サキュバスの淫夢があれば解消されるがクリスが住み始めたので頃合いを見て宿に行く事にした。寝不足気味の俺はフラフラと部屋から出て茶の間に向かった。
「ふぁ〜ねみ〜」
「あっ」
茶の間の扉を開くとクリスが下着姿で法衣に着替えていた途中だった。
クリスの顔は真っ赤になっていた。
「ななな!?」
《リュウジ様!?エリス様がお着替えなさってるのですよ!?》
「ん……?なんだエリスか、コーヒー飲みてぇ…」
フラフラと歩きながらコーヒーポットにクリエイト・ウォーターを発動させて水を溜めて、ティンダーで囲炉裏に火を付けてゴロンと横になっていた。今だに下着姿のクリスはワナワナと震えながら俺に言い放つ。
《リュウジ様!?起きてください!》
「あの〜もしもし!?」
「あぁ?なんだよ?、寝みぃんだからほっといて……」
「いやあのね!?あたし今着替えてるんですけど!?」
「あ?……あっわり、顔洗って来るわ……」
「はい!そうして下さい!」
ようやく目が覚めたのか、俺は状況を把握してそそくさと浴室に向かって行った。
そして、目を覚ました俺は再び茶の間の扉をノックした。
「ごめんマジで寝ぼけてた、もう着替えたか?」
「うーんと、変なところはないね、はい、どーぞ?」
扉を開くとそこには盗賊クリスではなく、幸福の女神エリスが座っていた。
「おはようございます、鋼のリュウジさん、マリューさん」
「おざまーす」
《おはようございます、エリス様》
ぶすっとした顔をしながらペコッと頭を下げた。
「ん?どうしたんですか?機嫌悪いんですか?」
コーヒーをズズっと飲みながら俺は答える。
「天界行くなら早く言えよ」
「あはは……ごめんなさい!今日は天界に行ってきますね!」
「はぁ、そうっすか」
「明日には戻って来ます、くれぐれもトラブルは起こさないで下さいね?」
「へいへい、ごゆっくり」
「んー?、怒ってるんですか?」
エリスは頬を膨らませながら俺の顔を見た。
俺は別に怒ってる訳じゃないがなんかイライラするんだよなぁ
「怒ってねぇよ、ネメシスによろしくな?」
「わかりました、では行ってきます!」
エリスは指パッチンをして魔法陣を展開させ光に包まれていき、天界に向かった。
《リュウジ様?もしかして……行かれるのが寂しいんですか?》
マリューに言われるとリュウジは顔を真っ赤にして否定した。
「バッ…バカいえ!そんなんじゃねぇ!」
《はいはい、そう言う事にしておきますよ、ウィズ様の元に行かれて魔法を覚えるのですよね?そろそろ支度なさったらどうですか?》
「クソが……体手に入れたら覚えてろよ!」
マリューに嫌味たらしく言われた俺は覚えたいと思った魔法をウィズに教わる為に店に立ち寄った。
「ウィズ〜、おはよー!」
「あら、リュウジさんおはようございます!魔法どうでしたか?」
「うん、気に入った魔法があったから教わりに来たよ!」
「そうでしたか、どんな魔法を教わりたいんですか?」
「うーんと、この本に載ってた『スパーク』『ライトニング』『ライトニング・ストライク』『カースド・ライトニング』だね、他にも支援魔法も覚えたいけどそれはまた今度アクアにでも頼むさ」
「雷魔法にしたんですね、お似合いだと思いますよ?」
「うん、でも雷魔法より先に覚えたい魔法があるんだ」
「え?なんですか?」
「『カースド・ダークネス』」
ウィズは少し顔を歪めた。
「リュウジさん本気ですか!?お読みになってるなら効果はご存知ですよね?」
「うん、大丈夫だよ悪用したりしないから」
「ホントにですか?カースドダークネスは”悪魔”や”アンデッド”にも効く呪いの魔法ですがレベルと魔力に比例します。けど、使い方を誤れば大変な事になりますからね?」
「うん、魔法は初めてじゃないから大丈夫、使い時も考えてるよ」
「なら良いのですが……」
「んじゃ、さっそく教えてください!」
「わかりました、日常生活に支障のない呪いを掛けますからね?」
「はーい、お願いします!」
「いきます!『カースド・ダークネス!!』」
ウィズは俺にカースド・ダークネスを放った。俺は目を開けて身体中を触り始めた。
「ん?ん?なんの呪いを掛けたの?」
「うふふ……もうそろそろ始まりますよ」
するとブラックナイトを装備した俺の右手がカタカタと急に勝手に動き出した。
「お?お?お?なんだ!?体が勝手に!?」
────────────────────────
10分後、カズマ達が店にやって来た。
「おいーっす、ウィズいるか〜?」
「くそリッチ〜?」
「おや?」
「こっこれは……」
カズマ一行が目の当たりにしたのは……頭を撫でられているウィズ、そして困った様な顔をしているリュウジがいた。
「おっおう……カズマ達か……」
「リュウジ?あんた、リッチーに何してんの?」
「どういう状況コレ!?なんでリュウジがウィズの頭を撫でてんだ?」
「いや〜新しい魔法を教わったらこんな感じになっちゃいました」
「みなさん、いらっしゃいませ〜♪」
ウィズはめちゃくちゃ機嫌が良さそうにカズマ達に挨拶をした。
「そっそれより、リュウジはどんな魔法を教わったんだ?」
「え?『カースド・ダークネス』」
「「えっ…」」
俺が答えると、アクアとめぐみんがドン引きしながら俺にプルプル指を刺した。
「あっあんた!!なんてもん覚えたのよ!?」
「そっそうですよ!よりにもよって闇魔法だなんて!トチ狂ってますよ!闇魔法よりまず爆裂魔法を覚えて下さいよ!」
「アクア、めぐみん?リュウジの覚えた魔法とはどんな魔法なのだ?」
「えっと…カズマには聞かれたくないのでコッチに来てください…」
「おい、なんで俺から離れるんだよ!?」
「ハッキリ言いましょうか?カズマが覚えたら確実にろくな事にしか使わないからですよ!」
めぐみんはダクネスを連れて店の角でヒソヒソと説明した。するとダクネスが興奮し始めて俺に祈願した。
「リュウジ!わたしにその呪いを掛けてくれ!」
「え!?良いけど……、ウィズ?これまだ続く?」
「えーっと、あと1時間くらいですかね?」
「長ぇ!!アクア、解呪魔法を唱えてくれないか?」
「仕方ないわねぇ…『セイクリッド・ブレイクスペル』!!」
アクアの解呪魔法で俺にかかった”ウィズの頭を撫でたくなる”呪いを解呪した。
「あっ、解呪された!解呪の事を考えてなかったな……『セイクリッド・ブレイクスペル』も教わる事が出来たし、『カースド・ライトニング』の雷魔法を覚える予定だったけど予定変更して呪いを解呪する為に優先して先に覚えておこう」
俺は冒険者カードを取り出してウィズとアクアから教わった2つの魔法を取得した。これで溜め込んでいた250ポイントが3ポイントしかなくなった。
「さて、ダクネスに試してみようかな?」
「よっよし!のっ望むところだ!」
「なんで興奮してんだよ」
さて、放つと言ってもはいそれとは思いつかないんだよなぁ、『カースド・ダークネス』は”自由に呪いを設定出来る”と言うのがネックになるなぁ、良く考えないと……あっなるほど……そういう事か。
俺は不気味な笑みを浮かべた。
「いくぞ、ダクネス…『カースド・ダークネス』!!」
俺はカースド・ダークネスをダクネスに発動させた。一瞬ダクネスの周りが黒くなったが異変はなく、ダクネスは身体中を触り始めて確認した。
「ん?…なんだ?なにも変わらないではないか!」
「いや?ちゃんと発動してるよ」
「ん?……なんか臭くないか?」
「え?そう言えば確かに臭いますね、なんですかこの臭いは?」
「ホントね、嗅ぎなれた臭いなんですけど?」
「アクアもか?俺も実は嗅ぎなれた臭いだなって思ってたんだ」
「なんか鼻がツンとする臭いですね、リュウジさん?ダクネスさんに一体どんな呪いを掛けたんですか?」
「『体臭がカメムシの臭いになる呪い』」
俺は鼻をつまんだカズマに叩かれた。
「おまっ!!なんつー呪い掛けてんだぁぁぁ!くっさぁ!」
「リュウジありえないんですけど!?店中カメムシの臭いじゃない」
「すいませんダクネス、ちょっと離れて下さい」
「なっ!?貴様!!乙女になんと言う呪いを!!ぶっ殺してやる!」
「くせーから近付くなよ!」
「はうっ!?」
「すまんダクネス、離れてくれ」
「ひぅん!?」
「ダクネスごめんね、離れてくれるかしら?」
「ひゃい!!」
「ダクネスさん……」
ダクネスを除き、その場の全員が鼻をつまんだ状態でダクネスを避けようとしていた。ダクネスはこのようなプレイは初めてなのか興奮しながら涙目になって俺を追いかけた。
「悪かった、解呪するから!『セイクリッド・ブレイクスペル』」
シュインと光に包まれるとダクネスは身体中の臭いを嗅ぎ始めた。
女の子がする事じゃないのだが……。
「スンスン…、どうしようカズマ!自分の臭いが分からなくなってしまった!カズマも嗅いでみてくれ!」
「えぇ!?俺!?アクアやめぐみんに頼めよ!」
「仕方ないわね!ほらダクネス、こっちにいらっしゃい?」
「アクア、頼む!」
「スンスン…ダクネス大丈夫よ!カメムシの臭いは消えてるわ!」
「そうか、良かった……」
「恐ろしい魔法ね、いいリュウジ?リッチー?カズマさんには絶対教えちゃダメよ!?」
「そうです、カズマの事ですからいやらしい呪いを作るに決まってます」
「しっしねぇし!ぜってぇしねぇし!」
「はい…もちろんです!リュウジさんもそれを承知で取得したので」
「カズマには『スティール』があるだろ?俺には必殺技ないんだもん」
「『ゴッドブロー』があるだろ!」
「そりゃそうだけど、元々はアクアのだし?さて、次はウィズだな!『カースド・ダークネス』!!」
俺は再び不気味な笑みを浮かべ、今度はウィズにカースド・ダークネスを発動させた。
「ちょっとリュウジ、リッチーにどんな呪いを掛けたのかしら?」
「ウィズ?ちょっと喋って見て?」
「ん?リュウジさん?わたすに何しただ?」
「「「「!?」」」」
急に言葉のイントネーションが変わったウィズにカズマが反応した。
「おっおい?ウィズ!?どうしたんだ!?」
「ほえええ!リュウジさん!わたすの言葉に何しただ!?」
「『ズーズー弁になる呪い』を掛けてみた!」
「また陰湿な呪いをかけたなぁ〜」
「これでも手加減してるんだぞ?本気で考えたら死んじゃうしさ」
「こわっ!」
カズマは青筋を出しながら俺から離れた。カズマはようやく俺の恐ろしさを知ったらしい。その後、俺はウィズにかかった呪いを解呪させた。
「さて、他にも魔法を覚えないとな、『スパーク』でも覚えるか」
「『スパーク』ですか?スパークは静電気魔法、攻撃ほどの威力はありませんよ?」
「ウィズ、そんな事ないよ?『スパーク』を教えてくれる?」
「はい、わかりました『スパーク』」
ウィズの人差し指と親指の間にパチパチと電気が帯電していた。
「これが『スパーク』ですよ?」
「うん、これも使い方でいい武器になるよ」
俺は直ぐにスパークを習得し、めぐみんに近付いた。
「めぐみん、帽子を取ってくれないか?」
「はい?帽子をですか?」
「うん、ちょっと頭を撫でさせてくれないか?」
「頭をですか!?なんなんですか!?セクハラですか!?」
「ちょっとだけだよ、髪撫でるだけでセクハラって……」
「えっちょっと何?リュウジって髪フェチなの?黒髪フェチなの?」
「いや違うから、ちょっとだけだから!」
「うーん、わかりました……」
めぐみんは帽子をとり俺の前に立ち、俺はめぐみんの頭を撫でながら魔法を唱えた。
「『スパーク』」
「ん?なんか頭がピリっとしましたが?痛くありませんね?」
「そろそろ良いかな〜?」
ニヤニヤしながら俺はめぐみんの頭から手を離した。その瞬間綺麗な黒い髪がボアッとなった。
「ぎゃぁぁぁぁ!なんて事してくれるんですか!!髪型が台無しじゃないですか!!」
「あははははははーー!ウケる!」
「あんた、カズマより幼稚な事するわね……」
「さて、新しい魔法も覚えたし、クエスト行こうかな〜」
「あら?リュウジ知らないの?今ギルドに行ってもクエストそんなに無いわよ?」
「え?なんで?」
アクアが俺に何があったのか教えてくれた。
「なんでも魔王軍幹部が近くの廃城に住み着いたらしいの、それで勅令かけられちゃってね、まともなクエストが受けられないのよ」
魔王軍幹部だと!?
「魔王軍だと!?」
「そうなんだよ、だからしばらくはクエストは無理だな……」
「いや、カズマやる事はあるだろ?俺たちは
「なんだ?リュウジ、何か作戦でもあるのか?」
「おう、任せとけ」
「その前に、カズマ?爆裂魔法を放ちに行きますよ?」
「コイツ!!こんな時にまで!!今日くらい我慢しろ!」
「ダメです、行きますよ!」
「あっ、カズマ?行く前に『レベルドレイン』頼んで良いか?」
「またか!?お前そんなに下げてどーすんだよ!」
「これも魔法を覚える為だよ、さっ!やってくれ!」
「まったく!」
カズマは俺の肩に手をぽんと置いてレベルドレインを発動させ、俺のレベルをまたレベル1に戻した。その後、カズマとめぐみんは店を出て爆裂魔法を放ちに行ってしまった。
チームワークが無い……まぁ自由にしろって言ったのは俺だけど
「仕方ない、高額クエストのモンスターにでも『カースド・ダークネス』でも撃って見るか」
「んじゃ、私達は屋敷に戻ろうかしら、ダクネス?帰りましょ?」
「そうだな、またな?リュウジ」
「おう、またな?ウィズ、行ってくるね?」
「はい!行ってらっしゃい!」
俺はその足でギルドに向かった。
今回リュウジが取得した魔法
『スパーク』、『カースド・ダークネス』
支援魔法は第2章で覚えます。